WAX&THINK

Real Hip Hop — Das EFX スラング・英語解説

Real Hip Hopに出てくるスラングや言い回しの意味を、和訳つきで一つずつ読み解きます。

アーティスト
Das EFX
リリース年
1995
プロデューサー
DJ Premier
収録アルバム
Hold It Down
エリア
NY
BPM
93
サンプル元
Norman Connors "The Creator Has a Master Plan" (1972) / Joe Tex "Papa Was Too" (1966) / Kellogg's "L'eggo My Eggo" ジングル

この記事の見どころ

  1. 01 Das EFXの真骨頂=固有名詞をぶつける「パンチライン直喩」のオンパレード(Pac-Man・Rodney・Webster・RuPaul…)
  2. 02 fat/wack・bring the ruckus・true to the streets・hold it down、90sアンダーグラウンドの生きた口語を「学ぶ表現」単位で解説(PV頭出しリンク付き)
  3. 03 DJ Premierが刻むブーンバップ+Eggoジングルのスクラッチ。「l'eggo my Eggo」の同音遊びが音と歌詞でリンク

[PR] メルカリで探す

解説

■"たとえ"の英語を浴びる一曲

Das EFX(ダス・エフェックス)は、Krazy Drayz(クレイジー・ドレイズ)と Skoob(スクーブ)の2人組。ニュージャージー州 Teaneck(ティーネック)出身で、EPMDに見出されてデビューした、90年代屈指のパンチライン職人です。

この「Real Hip-Hop」(1995) のいちばんの聴きどころは、なんといっても固有名詞をぶつける"たとえ(直喩)"の連打。

Pac-Man、Rodney Dangerfield、Webster、Carl Lewis、Jack Dempsey……アメリカの有名人・キャラ・商品名を like ~(〜みたいに)でつないで、自慢とジョークを一行ごとに決めてきます。

つまりこの曲は、英語の simile(直喩)と、その背後にあるアメリカの文化常識(cultural literacy)を、まとめて浴びられる教材なんです。

固有名詞が分かるほど面白さが跳ね上がります。だからこそ、一個ずつ解きほぐす価値があると思っています。

■「これがリアルだ」という宣言

Das EFXといえば、デビュー期の「iggedy(イゲディ)」スタイル(単語のあいだに「-iggedy」「-iddip」という無意味な音を挟み込む、早口の呪文のような独特の節回し)で一世を風靡しました。

この曲でも niggedy-know、briggedy-bring、smiggedy-smoke と、その癖はしっかり健在です。

ただしトラックは、DJ Premier(DJプレミア)が手がけた硬質な boom bap。ドラムの『ブン(キック)・バッ(スネア)』が前面に出た、90年代NYの硬派なヒップホップのビート様式 (boom bap)。

商業的な"きらびやかなラップ"が台頭しつつあった1995年に、アンダーグラウンドから「これが本物(real)のヒップホップだ」と言い切るタイトルそのものが、ひとつの態度表明になっています。

遊び心たっぷりのパンチラインで、しかし芯は硬派。その二枚腰がこの曲の魅力だと思います。

ストーリーの流れ — まず曲全体をつかむ

この曲に物語はありません。2人が交互に「俺たちが本物だ」を、これでもかと固有名詞のたとえで証明していく自慢合戦です。

先に全体の組み立てだけ押さえておくと、一個ずつのパンチラインに集中できます。

軸になるのは、何度も戻ってくるフック。「To the hiddip the hop ya don't stop / Das EFX with the real hip-hop」と、彼ら名物の"iggedy"節で「止まるな、これがリアルだ」と連呼します。

この呪文みたいなフックが、曲全体の背骨です。

あいだに挟まる6つの短いバースを、Krazy Drayz と Skoob が交互に担当。中身はほぼ全部、「俺は〇〇だ、△△みたいにな」という形のパンチラインの連打です。

ラッパーをPac-Manのように食う、敬意を払われない様をRodney Dangerfieldにたとえる、自分のスタイルをWebster(辞書)のように"well defined"だと言う。

アメリカの有名人や商品名を次々に引いて、自慢とジョークを同時に決めていきます。

下水道(the sewer)から這い上がってきた、というDas EFX独特の自己イメージも繰り返し出てきます。

締めのバースでは「ライムをLegoみたいに組む、だから l'eggo my Eggo」と、同音の言葉遊びで自分のスキルを誇示してフィニッシュ。

物語ではなく、言葉の瞬発力だけで全部持っていきます。初めて歌詞を追ったとき、たとえの手数の多さに素直に笑ってしまいました。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現 — 直喩・スラング・言葉遊び

各見出しは「この曲から学べる英語表現」。各ユニットはまず上に英語の用例(1〜2行)を置いてあります。

先に英語を音で追い、行のどこが学習対象かを確かめてから下の日本語解説に進むと、英語が苦手でも置いていかれません。

To the hiddip the hop — Das EFX名物「iggedy」スタイル

★ 文化(フロウの様式)
Das EFX(Chorus) ≈0:05

To the hiddip the hop ya don't stop
Das EFX with the real hip-hop

ヒディップ・ザ・ホップ、止まんなよ/Das EFX、これがリアル・ヒップホップ

▶ 曲の冒頭と各バースの合間に戻ってくるフック。学習対象は上の行の崩した音。

まず上の行の hiddip the hop。これは普通の英語ではありません。

本来 hip-hop と言うところに、Das EFX名物の 「iggedy(イゲディ)」スタイル(単語に無意味な音を挟み込んで崩す節回し)がかかっています。

意味より音とリズムの遊びが目的で、彼らはこれを曲中で niggedy-know(=know)、briggedy-bring(=bring)のように多用します。

後半の ya don't stop(止まるな)は、ヒップホップ草創期からのお決まりの掛け声(ya don't stop)です。

つまりこのフックは、古典的な定番フレーズを、自分たちの崩し方で塗り替えてみせた一節なんです。聞き取れなくて当然なので、まずは"音で崩している"という事実だけ掴めればOK。

on your mark, get set — 徒競走の号令で幕を開ける

★ イディオム
Krazy Drayz(Verse 1) ≈0:22

Well on your mark and get set, can't forget to go

位置について、用意、そしてgo(スタート)を忘れずに

▶ Verse 1の一行目。Krazy Drayzがバースの口火を切る件。

行頭の on your mark, get set, go は、徒競走のスタートの号令です。日本語の「位置について、用意、ドン」にあたる決まり文句。

ここでは can't forget to go(goを忘れずに)と付けて、「さあ走り出すぞ=バースを始めるぞ」という合図に使っています。

曲の一行目に競走の号令を置くことで、これから始まる自慢のダッシュを宣言しているわけです。日常でも on your marks! はレースやゲームの開始で普通に使う表現です。

語法 — どう使うか ▼

on your mark(s), get set, go は徒競走やレースのスタート合図。「位置について・用意・スタート」。

比喩的に「さあ始めるぞ」という掛け声としても使われます。

the flow is Fat like Joe — 直喩+スラング fat

★ 直喩/スラング
Krazy Drayz(Verse 1) ≈0:26

In case you didn't know the flow is Fat like Joe

知らなかったなら言っとくが、俺のフロウはFat、Joeみたいにな

▶ Verse 1の入り、Krazy Drayzが自分のフロウを売り込む件。

ここで like ~(〜みたいに)を使った simile。likeやasを使って『AはBみたいだ』と例える比喩。ヒップホップのパンチラインの基本構文 (simile)が登場します。鍵は Fat。

スラングの この曲では「俺のフロウはfat(最高)だ」と自分のスキルを誇る褒め言葉。直後のlike Joeでラッパー Fat Joe の名前と掛けている (=phat)は「太い」ではなく「最高にイケてる・分厚くて良い」という褒め言葉。

そこに like Joe を付けることで、当時人気のラッパー Fat Joe(ファット・ジョー)の名前と掛けています。「俺のフロウはfat(最高)だ、しかもFat Joe並みにな」という二重の意味。

固有名詞ひとつで、スラングの自慢とラッパーへの目配せを同時にやってのけます。Das EFX流パンチラインの基本形です。

In case you didn't know(知らないといけないから言うが)も会話で使える前置き表現。

語法 — どう使うか ▼

fat / phat は90年代の褒め言葉で「イケてる・素晴らしい」。発音は fat と同じで、a phat beat(最高のビート)のように使います。

同時期の dope(ヤバい)、fresh(新鮮でかっこいい)と同じ仲間。

in case (you didn't know)(〜の場合に備えて/知らないといけないから)は、情報を付け足すときの定番。In case you didn't know, I'm the boss(言っとくけど、ボスは俺だ)のように、念押しのニュアンスで使う。

eat a rapper like I'm Pac Man — キャラに重ねる自慢

★ 直喩(パンチライン)
Krazy Drayz(Verse 1) ≈0:33

You're wack man, I eat a rapper like I'm Pac Man

お前はwack(ダサい)、俺はラッパーを食う、Pac-Manみたいにな

▶ Verse 1、相手のMCをけなしつつ自分を誇示する件。

典型的なパンチライン直喩です。まず この曲では相手のMCを一言でこき下ろす攻撃語。直前で学んだ fat の対義語として一緒に押さえると効率がいい もう一度タップで詳細 → =「ダサい・下手・イケてない」(反対は dope や fat)。

相手をこき下ろす最頻出スラングで、すぐ上で学んだ fat の対義語として一緒に覚えると効率がいいです。

そして eat a rapper like I'm Pac Man=「ラッパーを食ってやる、まるでパックマンのように」。ゲームのパックマンが点(敵)を次々食べる動きに、自分が他のラッパーを"食う=打ち負かす"様子を重ねています。

eat(食う)= 圧倒するというスラング的な動詞の使い方も含め、誰もが知るキャラ一つで情景を一発で立ち上げます。これがアメリカの文化常識を使ったパンチラインの作法です。

wack man / Pac Man で韻も踏んでいます。

more hits than Lou Piniella — 野球で「ヒット」を掛ける

★ 直喩(固有名詞)
Krazy Drayz(Verse 1) ≈0:40

▶ Verse 1、"straight from the cellar" と続けて自分のヒット数を誇る件。固有名詞の背景がキモなので用例引用は省き、語だけ解説します。

ここで出てくる Lou Piniella(ルー・ピネラ)は、メジャーリーグの名選手にして名監督。「packin' more hits than Lou Piniella(ルー・ピネラより多くのhitsを持ってる)」という一行です。

面白いのは hits の二重の意味。野球の hit(安打)と、音楽の hit(ヒット曲)を掛けています。

「野球選手より多くの安打(=ヒット曲)を打ってる」という、スポーツ選手の固有名詞を使った自慢です。straight from the cellar(地下室からそのまま)も、後で出てくる"下水道"と同じ、下から這い上がる自己像につながっています。

bringing the ruckus — 「大暴れしにきた」の常套句

★ イディオム/スラング
Skoob(Verse 2) ≈0:52

▶ Verse 2の入り、Skoobがクルーの登場を告げる件。固有語なので語の解説中心に。

Verse 2は the crew この曲ではクルーの登場を「殴り込みにきた」と告げる合図。90sNYの気合いを表す常套句で、bringing the ruckus, no doubtと畳みかける もう一度タップで詳細 → (クルーが大暴れしにきた)で幕を開けます。

ruckus は「騒ぎ・大騒動」。bring the ruckus で「殴り込みをかける・思い切りかき回す」という気合いの表現になります。

同じ言い回しはWu-Tang Clanの代表曲のタイトルにもなっていて、90年代NYの硬派なラップが好んで使ったフレーズです。no doubt(間違いなく)も、会話で相槌にも使える定番の一言です。

Reign Supreme like a Cutlass — 車名でダブルミーニング

★ 言葉遊び(固有名詞)
Skoob(Verse 2) ≈0:58

We's the roughest dream team, Reign Supreme like a Cutlass

最強のドリームチーム、CutlassみたいにReign Supreme(君臨)

▶ Verse 2、Skoobがクルーの強さを誇示する件。学習対象は行の後半。

後半の Reign Supreme like a Cutlass が仕掛け。reign supreme は「(他を圧して)君臨する・頂点に立つ」という慣用句です。

ところがここに like a Cutlass が付きます。Oldsmobile Cutlass Supreme(カトラス・スプリーム)というアメリカの定番車種があり、その車名の "Supreme" と、慣用句の "supreme(最高の)" を掛けているわけです。

「俺たちは君臨する(reign supreme)、カトラス・スプリームのようにな」。抽象的な慣用句を、具体的な車名へスッと着地させる二段構えです。

文頭の We's は We are/We're のAAVE的な崩しで、文法より語感を優先する歌詞ならではの形です。

語法 — どう使うか ▼

reign supreme は「(分野・場で)他を圧して君臨する」という慣用句。Their team reigns supreme in the league(彼らのチームはリーグで頂点に君臨している)。

supreme(最高・至高の)が核で、ここでは車名 Cutlass Supreme との語呂合わせに転用されています。

the B double O K-S — 名前を綴って名乗る

★ 言葉遊び(スペルアウト)
Skoob(Verse 2) ≈1:04

It's me, the nigga wit' G, the B double O K-S

俺だ、Gを従えたやつ、B・ダブルO・K・S(=BOOKS)

▶ Verse 2、Skoobが自分の名を綴って名乗る件。学習対象は行末の綴り遊び。

行末の the B double O K-S は、アルファベットを一文字ずつ読み上げて BOOKS と綴っています。double O は「Oが2つ(=OO)」という読み上げ方です。

これは Skoob(スクーブ)のもう一つの通り名 Books(ブックス)のこと。ちなみに Skoob という名前自体、Books を逆さに綴ったものです。

名前を一文字ずつ綴って名乗るのは、ヒップホップの自己紹介の定番芸。double O のように「同じ文字が続くときは double を使う」のは、英語で綴りを口で伝えるときの実用テクでもあります。

語法 — どう使うか ▼

綴りを読み上げるとき、同じ文字が連続したら double を使います。My name is Bobby, B-O-double-B-Y(ビー・オー・ダブルビー・ワイ)のように。

会話で名前やメールアドレスを伝えるときに役立つ言い方です。

rock shit like Metallica — ロックバンドで「rock」を掛ける

★ 直喩(固有名詞)
Skoob(Verse 2) ≈1:10

▶ Verse 2、Skoobが自分のパフォーマンスを誇る件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「pop shit and rock shit like Metallica(威勢よくかまして、Metallicaみたいにrockする)」という一行です。

ここも rock の二重の意味が仕掛け。スラングの rock(場を沸かせる・かます)と、ロックバンドの Metallica(メタリカ)の"ロック"を掛けています。

pop shit は「大口を叩く・挑発する」という口語。ヘヴィメタルの代名詞バンドの名を引くことで、「俺のライブはメタリカ級に激しい」という自慢に着地させています。

snake fake niggas — 「蛇=裏切り者」の内韻

★ スラング/韻
Skoob(Verse 2) ≈1:14

Stakes through the hearts of them snake fake niggas

杭を心臓にぶち込む、あの蛇みたいな偽物どもに

▶ Verse 2、敵を突き放す一行。学習対象は行末の韻を踏んだスラング。

行末の この曲では敵を『蛇みたいな偽物(snake fake)』と呼び、心臓に杭を打つと畳みかける。蛇のように忍び寄り噛みつく裏切り者のイメージ もう一度タップで詳細 → (蛇)は、スラングで「裏切り者・こっそり出し抜くやつ」を指します。

そこに fake(偽物)を重ねた snake fake は、母音をそろえた内韻。同じ「エイク」の音でたたみかけて、敵を一息にこき下ろしています。

頭の stakes through the hearts(心臓に杭を打つ)は、吸血鬼退治のイメージ。stakes と snake、fake の音まで連鎖させていて、意味と響きの両方で"蛇=偽物"を刺しにいっています。

語法 — どう使うか ▼

snake は名詞で「裏切り者」、動詞で「(人を)出し抜く・かすめ取る」。He snaked my idea(あいつに手柄を横取りされた)。

信用ならない人物を指す、今も現役のスラングです。

more Miracles than Smokey — ソウルの伝説で「奇跡」を掛ける

★ 言葉遊び(固有名詞)
Skoob(Verse 3) ≈1:36

▶ Verse 3、自分を引用したがる相手をあしらう件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「I hope he got more Miracles than Smokey(あいつがSmokeyよりmany Miraclesを持ってるといいな)」という一行です。

Smokey Robinson(スモーキー・ロビンソン)は、モータウンを代表するソウルの巨匠。彼が率いたグループ名が The Miracles(ミラクルズ)です。

ここでも Miracles の二重の意味が効いています。グループ名の Miracles と、ふつうの名詞 miracles(奇跡)を掛けて、「俺に挑むなら奇跡(=Miracles)がいくつあっても足りないぞ」と皮肉っているわけです。

in my Dangerfield like Rodney — コメディアンで「敬意ゼロ」

★ 直喩(文化常識)
Skoob(Verse 3) ≈1:42

You're in my Dangerfield like Rodney

お前は俺のDangerfield状態、Rodneyみたいにな(誰にも敬意を払われない)

▶ Verse 3、Skoobが相手を見下す件。固有名詞の背景知識が要るパンチライン。

これは背景知識がないと意味が取れない、上級のパンチラインです。Rodney Dangerfield(ロドニー・デンジャーフィールド)は、アメリカの伝説的コメディアン。

彼の決め台詞は「I don't get no respect(俺は全然リスペクトされない)」で、"敬意を払われない人"の代名詞そのものなんです。

だから「You're in my Dangerfield like Rodney」は、「お前はロドニーみたいに、俺の前ではまるで敬意を払われない存在だ」という見下し。

固有名詞がそのまま"概念"として機能する好例で、アメリカの大衆文化を知っているほど一行が立体的に効いてきます。逆に言えば、こういう一行を解きほぐすこと自体が、生きた文化を学ぶことになります。

stayin' true to the streets — 「下水道」から貫く忠誠

★ イディオム/自己像
Skoob(Verse 3) ≈1:48

Straight from the sewer, stayin' true to the streets

下水道(sewer)からそのまま、ストリートに忠実なまま

▶ Verse 3の締め、Skoobが自分たちの立ち位置を宣言する件。

イディオム stay true to ~=「〜に忠実であり続ける・初心を貫く」。stay true to yourself(自分らしさを貫く)の形で日常でも使う定番表現です。

ここでは true to the streets(ストリート=地元・育ちに忠実)。

面白いのは the sewer(下水道)という言葉。Das EFXは初期から自分たちを「下水道から這い上がってきた連中」というイメージで語ってきました(汚くて泥臭い場所=アンダーグラウンドの象徴)。

成功してメインストリームに出ても、出自であるストリートには嘘をつきません。商業化への抵抗という、この曲のタイトル「Real Hip-Hop」の精神そのものが、この一行にぎゅっと詰まっています。

語法 — どう使うか ▼

stay true to ~ は「〜に忠実でいる・裏切らない」。stay true to your roots(自分のルーツを大切にし続ける)、stay true to yourself(自分を曲げない)のように、信念・出自・人に対して使います。

true to ~ 単体でも「〜に忠実な」の形容詞句として機能します。

got the game to a Tee — 「完璧に」のイディオム

★ イディオム
Skoob(Verse 3) ≈1:52

And now we got the game to a Tee like Howie

今や俺たちはこのゲームをto a Tee(完璧に)押さえてる

▶ Verse 3、クルーがシーンを掌握したと誇る件。学習対象は行の後半のイディオム。

後半の to a Tee がイディオムです。to a T(to a tee)=「完璧に・寸分たがわず・ぴったり」。

「got the game to a Tee(このゲームを完璧に掌握してる)」という自慢になります。It fits you to a T(君にぴったりだ)のように、日常でもよく使う表現です。

語源には諸説ありますが、綴りの頭文字 T を大文字にして固有名詞ふうに遊んでいるのがDas EFX流です。文字と音の見立てで、ただの慣用句をパンチラインに変えています。

語法 — どう使うか ▼

to a T / to a tee は「完璧に・ぴったり」。She described him to a T(彼女は彼をそっくりそのまま言い当てた)、This suit fits me to a T(このスーツは俺にぴったりだ)。

何かがぴたりと合う・完璧である様子を表す慣用句です。

bringin' up the rear — 「しんがりを務める」

★ イディオム
Krazy Drayz(Verse 4) ≈2:06

Well, it's me, Krazy Drayz, bringin' up the rear

さあ俺だ、Krazy Drayz、しんがりを務める(bringin' up the rear)

▶ Verse 4の一行目、Krazy Drayzが最後のバースへ入る件。

行末の bring up the rear がイディオムです。「列の最後尾につく・しんがりを務める・最後に控える」。

ここでは6つのバースを締めくくる立場を、「俺が最後を締めにきた」と表しています。マラソンや行進で「最後尾を歩く人」を指すのが元の意味です。

最下位という後ろ向きの意味ではなく、「大トリを務める」という誇りの側で使っているのがポイントです。rear(後方・最後尾)という単語も一緒に押さえておくと便利です。

語法 — どう使うか ▼

bring up the rear は「列の最後尾につく・しんがりを務める」。The youngest kids brought up the rear(いちばん幼い子たちが最後尾を歩いた)。

行列・レース・順番の締めを担う人を指すイディオムです。

we got to Hold It Down — 「守り抜く」のイディオム

★ イディオム
Krazy Drayz(Verse 4) ≈2:10

I swear, we got to Hold It Down e'ry year

誓うよ、俺たちは毎年(e'ry year)Hold It Down(守り抜く)

▶ Verse 4、Krazy Drayzがクルーの決意を述べる件。これはアルバム名そのもの。

注目は この曲では「毎年リアルなヒップホップを守り抜く」という決意の核。アルバム『Hold It Down』のタイトルそのものでもある もう一度タップで詳細 → 。これはこのアルバムのタイトルでもあり、イディオムとしては「(場・砦を)守り抜く・しっかり維持する・留守を任される」という意味です。

誰かが出かけるとき「hold it down while I'm gone(俺がいない間、ここを頼む)」のように使います。

ヒップホップでは「自分の地元・クルー・ジャンルの本質を守り続ける」という気概を表す言葉として頻出します。ここでは「毎年(every year)、俺たちはリアルなヒップホップを守り抜く」という宣言。

e'ry は every の崩し、got to(=have to/〜しなければ)も会話頻出。アルバム全体のテーマがこの一語に集約されています。

語法 — どう使うか ▼

hold it down は「持ち場を守る・しっかりやる・(不在の人の代わりに)取り仕切る」。Hold it down for me(あとは頼んだ)、holding down the fort(砦=持ち場を守る)とも近い表現です。

ヒップホップでは「地元やシーンを代表して頑張る・本質を守る」の意でよく使われます。

kick my feet up — 「足を投げ出してくつろぐ」

★ イディオム
Krazy Drayz(Verse 4) ≈2:16

So there, let me crack a beer and kick my feet up

じゃあほら、ビールを開けて足を投げ出してくつろがせてくれ

▶ Verse 4、余裕を見せて一服する件。学習対象は日常イディオム2つ。

この行には会話で使える口語が2つ入っています。まず crack a beer=「ビールを開ける」。

缶やビンの栓を"パキッ"と開ける音(crack)から来た言い方です。

そして kick one's feet up=「足を投げ出してくつろぐ・のんびり休む」。ソファに足を乗せてリラックスするイメージそのものです。

激しい自慢の合間に、あえて「ビール開けて足投げ出すわ」と余裕を見せる。この緩急の付け方が、パンチラインの畳みかけに一拍の間を作っています。

語法 — どう使うか ▼

kick your feet up(または put your feet up)は「くつろぐ・のんびりする」。Come in, kick your feet up(入って、ゆっくりしてって)。

crack a beer/soda は「(缶・ビンを)開ける」で、どちらもくだけた日常会話で頻出します。

more run than Carl Lewis — 陸上王者で「run」を掛ける

★ 言葉遊び(固有名詞)
Krazy Drayz(Verse 4) ≈2:25

▶ Verse 4、クルーの勢いを誇る件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「My crew is getting more run than Carl Lewis(俺のクルーはCarl Lewisより多くのrunを稼いでる)」という一行です。

Carl Lewis(カール・ルイス)は、オリンピックで金メダルを量産した陸上短距離・走幅跳のレジェンド。"走る"人の代名詞です。

ここでも run が二重の意味。陸上の run(走る)と、スラングの get run(オンエア・話題・出番をたくさんもらう)を掛けています。

「陸上王者より走ってる=それだけ俺たちは注目されてる」という自慢です。

well defined like Webster — 「辞書」で二重に効かせる

★ 言葉遊び(固有名詞)
Skoob(Verse 5) ≈2:38

But this style of mine is well defined like Webster

だが俺のスタイルはwell defined(明確に定義されてる)、Websterみたいにな

▶ Verse 5、Skoobが自分のスタイルの確かさを誇る件。

well defined=「輪郭がはっきりした・明確に定義された」という形容。そこに like Webster を掛けてきます。

Webster(ウェブスター)はアメリカで最も有名な辞書「Merriam-Webster」のこと。辞書は言葉を define(定義)するものです。

だから「俺のスタイルは well defined(明確に定義されている)、まるで辞書(Webster)のように」と、define という動詞の二つの意味、「輪郭が明確」と「辞書が語義を定める」を一本の線で結んでいます。抽象的な自慢を、誰もが知る固有名詞に着地させる、Das EFXお得意の手口です。

raw from the jaw — 「口先からナマ」の内韻

★ スラング/韻
Skoob(Verse 5) ≈2:42

Ain't a badder nigga raw from the jaw than the Jabber-Jibber

口先からraw(生)でヤバいやつは、このJabber-Jibberの右に出ない

▶ Verse 5、自分のマイクさばきを誇る件。学習対象は韻を踏んだスラング。

キーワードは raw。もとは「生の・未加工の」ですが、スラングでは「飾りけがなくてヤバい・むき出しでカッコいい」という褒め言葉になります。

raw from the jaw(あごの奥=口先から生のまま)は、raw と jaw で母音をそろえた内韻。「口から出てくる言葉が加工なしでヤバい」という意味です。

badder は bad の比較級ですが、ここでの bad は反転スラングで「ヤバいほど良い」。Jabber-Jibber という擬音めいた自称まで、全部 -a- の音でつないでいます。

語法 — どう使うか ▼

raw はスラングで「むき出しでカッコいい・容赦なくヤバい」。His verse was raw(あいつのバースはえげつなくヤバかった)。

bad も文脈次第で「悪い」ではなく「最高にイケてる」に反転する、ヒップホップ頻出の反転語です。

get Stone like Sharon from Sliver — 女優名で「stoned」を掛ける

★ 言葉遊び(固有名詞)
Skoob(Verse 5) ≈2:46

▶ Verse 5、酔い・キマる感覚を女優名にかける件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「When I get Stone like Sharon from Sliver(SliverのシャロンみたいにStoneになるとき)」という一行です。

Sharon Stone(シャロン・ストーン)は、90年代を代表するハリウッド女優。Sliver(スライヴァー)は彼女の1993年の主演映画です。

仕掛けは名字の Stone。女優名の Stone と、スラングの get stoned(酒や大麻でキマる・ぐでんぐでんになる)を掛けています。

人名一つで「キマってる状態」を言い表す、固有名詞パンチラインの好例です。

★ 聴きどころ

connect my rhymes like Lego, l'eggo my Eggo — 同音三段重ね

Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:05

Well I connect my rhymes like Lego, so l'eggo my Eggo

俺はライムをLegoみたいに組む、だからl'eggo my Eggo(俺のエゴ/エゴ・ワッフルを離せ)

▶ 最終バース、Krazy Drayzが同音語を畳みかけて締める件。サンプルとも連動。

この曲いちばんの言葉遊びです。Lego(レゴ)→ l'eggo(=let go/離せ)→ Eggo(エゴ・ワッフル)と、よく似た音を3連続で畳みかけます。

「ライムをレゴ(Lego)のようにカチッと組み立てる、だから l'eggo my Eggo」。この "L'eggo my Eggo!" は、アメリカの冷凍ワッフル「Eggo」のCMの超有名なキャッチコピー(「私のエゴ(ワッフル)を取らないで!」)です。

さらに面白いのは、DJ Premierがこの曲のサンプルに実際にEggoのジングルをスクラッチで仕込んでいること。つまり歌詞の言葉遊びと、トラックの音ネタが同じ「Eggo」でリンクしているわけです。

音の偶然を芸にまで持っていく、聴くたびに感心してしまう一行だと思います。

語法 — どう使うか ▼

let go (of ~) は「(〜を)手放す・放す」。Let go of my arm(腕を放して)。

歌詞の l'eggo はこれを発音どおりに崩した綴りで、商品名 Eggo と韻を踏ませています。英語の言葉遊びは、こうした同音・近音(homophone)を重ねて作られることが非常に多いんです。

burn ya like Waco, need more than Maaco — 「燃やす」を二段で

★ 言葉遊び(固有名詞)
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:10

▶ Verse 6、相手を焼き尽くすと畳みかける件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「I burn ya like Waco, you need more than Maaco(Wacoみたいに焼いてやる、Maacoじゃ直せないぞ)」という一行です。

Waco(ウェイコ)は、1993年に大きな火災を伴う事件が起きたテキサスの地名。"炎上・焼き尽くす"のイメージで引かれています。

そして Maaco(マーコ)は、アメリカの自動車の板金・塗装(修理)チェーン。「Wacoみたいに燃やすから、Maacoに持ち込んでも直らないぞ」と、"燃やす→修理不能"を二つの固有名詞で畳みかけています。

Waco / Maaco の韻も効いています。

keep 'em moving like I'm U-Haul — 引越屋で「動かす」を掛ける

★ 直喩(固有名詞)
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:14

▶ Verse 6、相手を追い立てると誇る件。固有名詞なので語の解説を中心に。

「I take it to ya crew and keep 'em moving like I'm U-Haul(お前のクルーに乗り込んで、U-Haulみたいに全員動かしてやる)」という一行です。

U-Haul(ユーホール)は、アメリカで誰もが知るレンタル引越トラックの会社。引越し=荷物を運んでmove(動かす)ものです。

keep 'em moving(そいつらを動かし続ける=追い立てる)と、引越屋 U-Haul の"荷物を動かす"を掛けています。生活に密着したブランド名を、そのまま攻撃のたとえに使うのがアメリカのパンチラインらしいところです。

school y'all like RuPaul — 「教育してやる」の動詞 school

★ スラング(動詞)
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:18

▶ Verse 6、相手に格の違いを教えると誇る件。学習対象は動詞のスラング用法。

キーワードは動詞の この曲では『格下に一方的に教え込む=完膚なきまでに打ち負かす』の意。I'm here to school y'all(お前らを教育してやる)と使う もう一度タップで詳細 → です。名詞の「学校」ではなく、動詞で「(相手に)教え込む・格の違いを叩き込む」の意味になります。

I'm here to school y'all=「お前らを教育してやりにきた」。バトルでは「格上が格下を一方的に打ち負かす」というニュアンスです。

締めの like RuPaul(ルポール)は、ドラァグクイーンのスーパースターの名前。ここは意味より y'all / RuPaul の韻を優先した、音でつなぐ固有名詞オチです。

knock 'em out like Jack Dempsey — 伝説のボクサーでKO

★ 直喩(固有名詞)
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:24

▶ Verse 6、相手をKOすると誇る件。固有名詞なので語の解説を中心に。

直前の「I throw a screwball and strike out the MC(変化球を投げてMCを三振に打ち取る)」は野球のたとえ。そのまま次の一行でスポーツを乗り換えます。

「I knock 'em out like Jack Dempsey(Jack Dempseyみたいにノックアウトしてやる)」。Jack Dempsey(ジャック・デンプシー)は、1920年代に一世を風靡した伝説のヘビー級ボクサーです。

knock out(KOする・ノックアウトする)を、実在のボクサー名で裏打ちする直喩。野球(strike out)からボクシング(knock out)へ、スポーツの比喩を連続で畳みかけています。

burn some sensi and chase it wit' a Guinness — 締めの一服

★ スラング(生活語)
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:28

I burn some sensi and chase it wit' a Guinness

上物を一服やって、Guinness(ギネス)で追いかける

▶ Verse 6の締め近く、力を抜いて一服する件。学習対象は生活語のスラング。

この曲では締めの一服として登場。sensimilla(種のない高品質な大麻)の略で、ジャマイカのラスタ文化由来の呼び名 もう一度タップで詳細 → (センシ)は、sensimilla の略で、上物のマリファナを指すスラングです。

動詞の chase がここでの学習ポイント。chase A with B=「AのあとすぐBで追いかける(口直し・追い酒する)」という飲み方の表現です。

Guinness(ギネス)はアイルランドの黒ビール。激しいバースの締めに「一服して黒ビールで流す」という、力の抜けた生活の風景を置いて余裕を見せています。

語法 — どう使うか ▼

chase A with B は「A(強い酒など)を飲んだ直後にBで追いかける」。a shot of tequila chased with lime(テキーラのショットをライムで追う)。

chaser(チェイサー=追い水・追い飲みの飲み物)はこの動詞から来た名詞です。

the illest, hit me with the hook — 最上級スラングと「hook」の二重

★ スラング/言葉遊び
Krazy Drayz(Verse 6) ≈3:32

The illest, now hit me with the hook because I'm finished

最高にヤバい俺、もう終わりだからhook(フック)をくれ

▶ 最終行、バースを締めてフックへ渡す件。学習対象は最上級スラングとhookの二重の意味。

まず この曲では最終行の自称。ill(ヤバい・イカした)の最上級で『最強・最高にイケてる』。もとは『病んだ』の意が90sに反転した もう一度タップで詳細 → 。ill(ヤバい・イカした)の最上級で「最強・最高にイケてる」の意味です。

もともと「病んだ」だった ill が、90年代には裏返って褒め言葉になりました。

後半の hit me with the hook が言葉遊び。hook には曲の「フック(サビ)」と、ボクシングの「フック(横殴りのパンチ)」の二つの意味があります。

「バースは終わった、次はhookをくれ」と曲の構成を指しつつ、直前までボクシングのたとえ(knock out)で殴り合っていた流れを受けて、"パンチ"の含みも残す。最後の一語まで多義で締める、Das EFXらしい終わり方です。

語法 — どう使うか ▼

ill / illest はヒップホップの反転スラングで「ヤバい/最高にヤバい」。That beat is ill(このビート最高だ)。

hook は曲の「サビ(繰り返しの決め部分)」を指す音楽用語としても頻出します。

文化的背景

パンチライン文化

固有名詞が"武器"になるアメリカのラップ

この曲が示すように、アメリカのラップでは固有名詞(有名人・キャラ・商品名)を直喩でぶつけるのが、パンチラインの王道です。

聞き手がその名前の背景を知っている前提で、一行に意味を詰め込みます。

だから英語ネイティブにとっては一瞬で笑える一方、文化背景を共有しない学習者には"暗号"のように難しく感じられます。

逆に言えば、こうした固有名詞を一つずつ調べていく作業は、辞書には載らない生きたアメリカ文化(cultural literacy)を学ぶ、またとない入口になります。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

fat / phat 最高にイケてる・分厚くて良い(90s褒め言葉)
wack ダサい・下手(fat/dopeの反対)
ill / illest ヤバい/最高にヤバい(反転スラング)
reign supreme 他を圧して君臨する(慣用句)
stay true to ~ 〜に忠実であり続ける・初心を貫く
hold it down 持ち場・本質を守り抜く(アルバム名)
to a T 完璧に・寸分たがわず(慣用句)
like ~ (simile) 〜みたいに。固有名詞を引くパンチラインの基本構文

サンプル・制作の裏側

サンプル元

ジャズ・ソウル・CMジングルの三層 — DJ Premierの仕事

トラックを組んだのは DJ Premier。土台には、ジャズドラマー Norman Connors「The Creator Has a Master Plan」(1972) や、ソウルの Joe Tex「Papa Was Too」(1966) といった渋い素材が敷かれています(WhoSampled確認)。

そして極めつけが、冷凍ワッフルのCMジングル「L'eggo My Eggo」のスクラッチ。

歌詞の「l'eggo my Eggo」という言葉遊びと、トラックに刻まれたEggoの音ネタが同じ素材でリンクしています。

ジャズもソウルも、テレビCMの断片すらも分け隔てなく"楽器"にしてしまう、Premierのコラージュ感覚が出た一曲です。

スタイルの変化

「iggedy」を残しつつ、硬派へ

Das EFXは、デビュー作『Dead Serious』(1992) の "iggedy" スタイルで爆発的に売れ、フォロワーを大量に生みました。

だが模倣が増えると、彼らは次第にその癖を抑えめにして、より硬派でストレートなフロウへと舵を切っていきます。

この「Real Hip-Hop」は、ちょうどその過渡期の一曲。名物の崩し節を残しながらも、DJ Premierの硬質なビートに乗せて"本物"を名乗ります。

遊びと硬派さのバランスが、絶妙なところに着地していると思います。

評価とその後の影響

位置づけ

『Hold It Down』のリードシングル

「Real Hip-Hop」は、アルバム『Hold It Down』(1995) のリードシングル。商業的なヒットを狙うより、硬派なヘッズ(コアなファン)に向けて"本物"を提示する性格の強い一曲でした。

Pete RockやPMDによるリミックスも作られ、DJ Premier版とあわせて、90sアンダーグラウンドの愛聴曲として長く支持されています。

タイトルどおり、流行に流されず"リアル"を掲げる姿勢が、この曲を時代を超えて聴かせるものにしています。

学習素材としての価値

"たとえ"と"文化常識"のトレーニング

この曲は、英語の simile(直喩)がどう機能するかを、これでもかと実演してくれます。

like ~ ひとつで、自慢・侮辱・ジョークを一行に詰め込む技術。そして、それを解くために必要なアメリカの大衆文化の知識。

リスニングの難度は高めですが、固有名詞を一つずつ調べていくと、英語と文化が同時に体に入ってきます。手強いぶん、噛むほど味が出る教材だと思います。

まとめ

  • 「Real Hip-Hop」は、固有名詞を like ~ でぶつける「パンチライン直喩」の見本市。simileと文化常識をまとめて学べます。
  • fat/wack・ill/illest・reign supreme・stay true to ~・hold it down など、90sアンダーグラウンドの生きた口語とイディオムが拾えます。
  • Fat Joe・hits(Lou Piniella)・run(Carl Lewis)・rock(Metallica)のように、固有名詞と普通名詞の同音・多義を掛ける手口が全編に効いています。
  • 「Lego / l'eggo / Eggo」の同音三段重ねは、歌詞の言葉遊びとDJ Premierのサンプル(Eggoジングル)が連動した聴きどころ。
  • 名物「iggedy」スタイルを残しつつ硬派なPremierビートに乗る、商業化への「これが本物だ」という態度表明の一曲です。

もっと深く

背景を読む

制作の裏側・時代背景・評価の詳細は、各コラムで掘り下げている。

アーティストについて

Das EFX

Brooklyn, New York / Teaneck, New Jersey · 1988–

SkoobとKrazy Drayzによるラップデュオ。1990年代初頭の「iggedy」スタイルのファスト・ラップで一世を風靡し、イーストコースト・ヒップホップに多大な影響を与えた。

→

この曲とつながる記事

[PR] この曲の中古盤・グッズをメルカリで探す