この記事の見どころ
ブロンクス出身のプエルトリコ系ラッパー、Big PunとFat Joeが、Dr. DreとSnoop Doggの1992年西海岸クラシック「Deep Cover」のビートを丸ごと流用し、東海岸マフィオソ・ラップとして完全再構築した楽曲。ゴッドファーザー・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカといったマフィア映画の美学を纏いながら、ブロンクスのストリートの冷酷なリアリティを語る。Big Punのラップ技術の到達点「Little Italy」ラインは、スタジオの口慣らしから偶然生まれた歴史的パンチラインとして語り継がれる。
1997年プロモ用12インチ先行リリース後、1998年デビューアルバム『Capital Punishment』に収録。Loud Recordsからリリースされた本作はビルボード200最高5位・R&B/Hip-Hopアルバムチャート1位を記録。Big Punはラテン系ソロラッパーとして史上初のRIAAプラチナ認定(100万枚超)を獲得した。プロデューサーはBig PunとFat Joe(Terror Squad Productions)だが、原曲はDr. Dre・Snoop Doggy Dogg・C. Wolfeが作曲した「Deep Cover」(1992)のトラックを実質流用。Snoop DoggはMVに本人出演し東西の融和を象徴した。
1997〜98年はヒップホップにとって最大の転換期だった。TupacとBiggieの相次ぐ銃撃死(1996・1997年)が東西抗争の悲劇的な終幕を告げ、シーン全体が融和へ向かい始めた時期。ブロンクス出身のBig Punがヒップホップ発祥の地から世界へ名乗りを上げ、しかも西海岸の象徴的アンセムを深いリスペクトで再構築したこの曲は、まさにその時代の証言であり、治癒の音楽だった。ラテン系コミュニティにとっては「自分たちもメインストリームを支配できる」という歴史的な希望の音でもあった。
I support Pun in anything he does, anything he loves
A brother from another mother sent from the above
A thug n***a just like me, one of the best, might be
Even better, leavin' n***as kneelin' on they right knee
Spike Lee couldn't paint a better picture
You small change, I'm blowin' out your brains, gettin' richer
Hit you with the MAC (MAC), smack your b****, n***a, what?
You gettin' stuck – my trigger finger's itchy as a f***
Truck jewels (Jewels), cruisin' in the Land, bumpin' "Cash Rules"
Last crew to want it caught a hundred tryna pass through
That's true So who the next to get it?
T.S. — the best that did it
Get it off your chest, kid, admit it, and it's…
どんなことをしていてもPunを支持する、彼が愛するものすべてを
別の母から生まれた兄弟、天から遣わされた存在
俺と同じサグ野郎、最高の一人かもしれない
それ以上かもな、奴らを右膝をついて跪かせてきた
スパイク・リーだってこれより良い絵を描けない
お前は小銭、俺はお前の脳みそを吹き飛ばしながら金持ちになる
MAC(マシンガン)でぶん殴る、お前のビッチを張り倒す、どうだ?
お前は詰んだ——俺の引き金を引く指は痒くてしょうがない
ランドローバーを乗り回し、「Cash Rules」(CREAM)をかけながら宝石を見せびらかす
うちのシマを荒らそうとした最後のクルーは百発食らって通り過ぎた
本当のことだ、次にやられるのは誰だ?
T.S.(テラー・スクワッド)——最高の連中がやり遂げた
胸のうちを吐き出せ、坊主、認めちまえ、それが…
I know these dirty cops that'll get us in
If we murder some wop
イタリア系マフィアを消してくれたら
俺たちを中に入れてくれる汚職警官を知ってるぜ
Ready for war Joe, how you wanna blow they spot?
戦争の準備はできてるぜ、ジョー——
奴らのアジトをどうやって急襲する?
Meet me at Vito's with Noodles,
We'll do this dude while he's slurpin' spaghetti
ヌードルスとヴィトーの店で落ち合おう——
ターゲットがスパゲッティをすすってる間に始末する
Dead in the middle of Little Italy,
Little did we know that we riddled two middlemen who didn't do diddly
リトル・イタリーのど真ん中で死体が転がる——
何もしていない2人の仲介人を、俺たちがハチの巣にしたとは誰も知るまい
Yeah – and you don't stop
Twenty-shot Glock with the cop-killers, fill 'em to the top
Yeah – and you don't stop
Joey cracks the rock, and Big Pun keeps the guns cocked
Yeah – and you don't stop
We'll make it hot, n***a, what? Bring it, I'll blow your whole spot
Yeah – and you don't stop
It's still 1-8-7 on an undercover cop
そうだ——止まらない
20発入りグロックに警官殺し(徹甲弾)を上まで詰め込んでる
そうだ——止まらない
ジョーイが岩(コカイン)を割り、ビッグ・プンが銃を構えてる
そうだ——止まらない
俺たちはアツくする、どうだ、かかってこい、お前のシマを吹き飛ばしてやる
そうだ——止まらない
今でも変わらない——覆面警官を殺す(187)
F*** the police, I squeeze first, make 'em eat dirt
Take 'em feet-first through the morgue, then lodge 'em in the deep earth
The street's cursed, the First Amendment's culturally biased
Supposed to supply us with rights, tonight, I hold my rosaries tight as I can
I'm one man against the world
Just me and my girl — Black Pearl Latina, más fina, but keeps it real
You know the deal, we steal from the rich and keep it
Peep it, it's no secret, watch me and Joe go back and forth and freak it
警察なんてクソ食らえ、俺が先に撃って、奴らに土を食わせる
足から先に霊安室に運んで、深い土の中に埋めてやる
この街は呪われてる、修正第一条(表現の自由)は文化的偏見がある
俺たちに権利を与えるはずなのに、今夜、俺はロザリオをできる限りきつく握りしめる
俺は世界を相手に一人で戦っている
俺と彼女だけ——ブラック・パール、ラテン系、más fina(最高に上品)だが現実を保つ
分かってるだろ、俺たちは金持ちから盗んでそれを手元に置く
見てろ、秘密じゃない、俺とジョーが交互に攻めてフリークしていくのを
Creep with me, as I cruise in my Bimmer
All the kids in the ghetto call me Don Cartagena
Kickin' ass as I blast off heat
And, you never see me talk to police
So, you should know that I really don't care
Pull you by the hair, slit your throat, and I'll leave you right there
So beware — it's rare that n***as want beef
Big Pun — speak, and let these motherf**kers know how we run the streets
俺とこっそり行こうぜ、BMW(ビマー)でクルーズしながら
ゲットーのガキたちは俺をドン・カルタヘナと呼ぶ
ケツを蹴り上げながら熱を撃ち放つ
俺が警察と話すのを見ることは絶対にない
だから分かるだろ、俺は本当に気にしないんだ
お前の髪を掴み、喉をかき切って、その場に放置する
気をつけろ——奴らがビーフを求めることはめったにない
ビッグ・プン——話せ、このくそ野郎どもに俺たちがどうやってストリートを支配しているかを教えてやれ
Creep with me, as I cruise in my Bimmer
All the kids in the ghetto call me Don Cartagena
俺と一緒に忍び寄れ、Bimmer(BMW)をクルーズしながら
ゲットーのガキたちは全員俺をドン・カルタヘナと呼ぶ
Kickin' ass as I blast off heat
And, you never see me talk to police
熱を吹き飛ばしながらケツを蹴り上げる
そして俺が警察と話すのを見ることは絶対ない
So, you should know that I really don't care
Pull you by the hair, slit your throat, and I'll leave you right there
だから俺が本当に気にしないことを知るべきだ
髪をつかんで、喉を切り裂いて、そこに置き去りにする
So beware — it's rare that n***as want beef
Big Pun — speak, and let these motherf***ers know how we run the streets
だから注意しろ——俺とビーフしたがる奴は滅多にいない
Big Pun——語れ、このmotherF***erどもに俺たちのストリートの走り方を教えてやれ
F*** peace, I run the streets deep with no compassion
Puerto Ricans known for slashin'
Catchin' n***as while they sleepin', no relaxin'
Keep your eyes open, sharp reflexes
Three TEC's is in the Jeep Lexus just in case police test us
Street professors, Terror Squad — ghetto scholars
Full-A-Clips mob inflicts the fear of God when the metal hollers
平和なんてクソ、俺は深く容赦なくストリートを走る
プエルトリカンは切ることで知られてる
奴らが眠っている間に捕まえる、休む暇なし
目を開けとけ、反射神経は鋭く
警察が試してきた時のために、ジープのレクサスにTEC(銃)が3丁入ってる
ストリートの教授たち、テラー・スクワッド——ゲットーの学者
フル弾倉のモブが、金属(銃)が叫ぶとき神の恐怖をもたらす
Better acknowledge or get knocked down, until I'm locked and shot down
Heather B. couldn't make me put my Glock down
We lock towns, like rounds in the chamber
Boogie Down major like Nine, I bust mine every time
Plus, I'm the crime boss of New York
Where we taught to walk the walk, all my n***as carry chalk
And stalk our prey like a predator
Whoever want it — go and get it, set it, baby, and I'ma bury ya
So remember the Squad that I'm reppin'
I fill a clip of my weapon and punish n***as 'til it's Armageddon
認めろ、でなければ叩きのめされる、俺が閉じ込められ撃たれるまで
Heather B.(ラッパー)でも俺のグロックを下ろさせることはできない
俺たちは街を封鎖する、薬室に込められた弾のように
Boogie Downのメジャー、ナインのように、俺は毎回自分のものをぶっ放す
さらに、俺はニューヨークのクライム・ボスだ
歩き方を叩き込まれた場所、俺の仲間全員がチョーク(白墨/武器)を持ち歩く
そして獲物を捕食者のように追い詰める
欲しいなら——行って手に入れろ、セットしろ、ベイビー、お前を埋めてやる
だから俺が代表するスクワッドを覚えておけ
俺は武器に弾倉を詰め込んで、世界の終わり(アルマゲドン)が来るまで奴らを懲らしめる
1990年代中盤〜後半の東海岸HHで隆盛したマフィオソ・ラップ(Kool G Rap、Raekwon、Nas、Biggie、Jay-Z)の系譜において、Big PunとFat Joeはイタリア系マフィア映画の美学——ゴッドファーザー、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ、アンタッチャブル——をブロンクスのストリートに重ね合わせた。MVの冒頭でBig Punが理髪店で髭を剃られるシーンは映画『アンタッチャブル』のアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)への直接オマージュ。
ヒップホップはブロンクスでアフリカ系とカリブ海系・ヒスパニック系が共同で創った文化だが、1990年代中盤までラテン系ソロラッパーのメインストリーム進出は稀だった。Big PunがCapital Punishmentでラテン系初のプラチナを獲得したことは、ゲットーで暮らす移民2世全体への巨大な希望の提示となった。
TupacとBiggie死後の最緊張期、東海岸の2人が西海岸の象徴的アンセムを深いリスペクトで再構築し、Snoop Dog本人がMVにカメオ出演して「Punたちがあのビートを選んだ時点で本物のヒップホップへの敬意があった」と語ったことは、ヒップホップが再び一つの文化として融和していく歴史的マイルストーンだった。
「Little Italy」ラインはスタジオで録音前の口慣らし(tongue-twister)として Big Punが遊び半分で呟いていたもの。Fat Joeが「これは地球上で最もハードなシットだ。絶対にヴァースに入れろ」と猛烈に説得するも、Big Punは「頭がおかしいのか?笑われるに決まってる」と断固拒否。執拗な説得に折れ嫌々録音したところ、リスナーに度肝を抜かれ彼のキャリアを定義する一行となった。
Loud RecordsのSteve Rifkindは、Big Punのデモを聴いたことすらなかったが面談でそのポテンシャルを即座に見抜き、無名の新人に約2,500万円(当時のレート換算)の異例の契約を結んだ。
ビートはDr. Dre「Deep Cover」(1992)のトラックを実質流用。原曲はSly & The Family Stone「Sing a Simple Song」(1968)等を下敷きにDreが構築したG-Funkビート。東海岸のBig PunとFat Joeはこれを約92BPMのまま流用し、西海岸の太陽とは無縁の東海岸特有のダークな空気感へと変換することに成功した。
「Little Italy」ラインはラップ史上最も高密度な多音節ライムとして今も頻繁に引用される。Eminem、Nas、J. Coleをはじめ後世の無数のリリシストが「到達できない基準」として名を挙げた伝説のバー。テクニカルなラップと商業的成功が両立できることをBig Punが証明したことで「アンダーグラウンドでなければ深くない」という業界の固定観念は崩壊した。
2000年2月7日、Big Punは極度の肥満に起因する心不全で28歳にて急逝。ピーク時の体重は約317kgと報じられた。しかし彼が残した2年間の活動は——特にこの「Twinz」の31音節——四半世紀を経た現在も全く色褪せない。
日本では東京・渋谷の「Club HARLEM」で2004年に開催されたイベントパンフレットにTats Cru(NYのグラフィティチーム)によるBig Pun追悼壁画の写真が掲載され、日本のヒップホップコミュニティが彼の逝去を深く悼んでいたことが記録されている。Fat Joeは現在もBig Punをヒップホップ史上最高のリリシストの一人として世界中で伝え続けている。
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Capital Punishment
Big Pun · 1998 · Loud Records
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Big Pun
South Bronx, New York · 1995–2000
本名Christopher Lee Rios(1971–2000)。ブロンクス出身のプエルトリコ系ラッパー。1998年デビューアルバム『Capital Punishment』でラテン系ソロラッパー史上初のRIAAプラチナ認定を獲得。複雑な多音節内部韻と映画的ストーリーテリングで「史上最も技術的なラッパー」のひとりに挙げられ続ける。Fat Joeが率いるTerror Squadの主要メンバー。2000年2月7日、28歳にて肥満に起因する心不全で急逝。