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Slang Dictionary

flow

フロウ

まず結論

ラップの flow は、言葉をビートに乗せるときのリズムの取り方、つまり節回しです。

名詞なら「あいつのフロウ」、動詞なら「ラップする、ビートに乗る」。どちらもラッパーの腕前の話によく出てきます。

一方で、水の流れや cash flow(資金繰り)のような普通の英語の flow も歌詞にはよく混ざっています。

フロウは「何を言うか」ではなく「どう乗せるか」

同じ歌詞でも、どこで息を継ぐか、どの音節を拍の頭に置くか、どこで詰めてどこで伸ばすかで、聞こえ方はまるで変わります。その乗せ方の全体が flow です。

歌詞の中身を言う lyrics や bars とは別の評価軸で、「リリックはいいけどフロウが単調」のように分けて語られます。

Complex は、Rakim が複雑な多音節の韻を、落ち着き払った語り口で乗せたと書いています。勢いで押すだけではないフロウの手本として、Rakim の名前はよく挙げられます。

動詞の flow と、ほめ言葉としての flow

動詞の flow は「ラップする」とほぼ同じ意味ですが、なめらかにビートに乗っている感じを含みます。I can flow. は「俺はちゃんと乗れる」という自信の表明です。

名詞の flow には形容詞がよく付きます。sick flow、crazy flow、smooth flow はほめ言葉で、どれも腕前を評価する言い方です。

普通の英語の flow との境目

flow は日常語でもあるので、歌詞の flow がすべてラップの話とは限りません。cash flow は資金繰り、blood flow は血流、go with the flow は「流れに任せる」です。

ラップの flow かどうかは、主語がラッパー自身か、mic や beat が近くにあるかで見当がつきます。

語源と背景

flow は古英語から続く基本動詞で、水などが流れることを指します。Wiktionary はラップの用法を「ビートに合わせて巧みにラップする力」という音楽用語として載せています。

言葉がよどみなく流れ出る様子からの比喩と考えるのが自然ですが、ヒップホップの中で誰がいつ使い始めたかを示す確かな資料は見つかりませんでした。

ラップの flow を AAVE 固有の概念と説明する記事も見かけますが、裏付けのある語源説ではないので、ここでは比喩の延長として扱います。

例文

例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。

  1. 1.His flow is so smooth on this beat.

    このビートだと、あいつのフロウがめちゃくちゃなめらかだ。

    smooth は flow をほめる定番の形容詞。引っかかりなく乗っている感じを言います。

  2. 2.She switched her flow halfway through the verse.

    彼女、バースの途中でフロウを切り替えた。

    switch one's flow は、リズムの取り方をガラッと変えること。ラップ評でよく見る表現です。

  3. 3.The lyrics are fine, but the flow feels stiff.

    歌詞は悪くないけど、フロウが硬い。

    lyrics と flow を分けて評価する典型的な言い方です。stiff は「ぎこちない」。

  4. 4.He can flow on anything, fast or slow.

    あいつは速いビートでも遅いビートでも乗れる。

    動詞の flow。on のあとにビートの種類を置きます。

  5. 5.That flow sounds a lot like his old stuff.

    そのフロウ、昔のあいつの曲にかなり似てる。

    フロウの真似は bite と呼ばれて嫌われることがあります。似ているという指摘は、軽い批判にもなります。

  6. 6.Let's just go with the flow tonight.

    今夜は流れに任せよう。

    こちらはラップと関係ない日常の決まり文句。歌詞にもよく出てくるので、区別しておくと読み違えません。

この曲ではこう使われていた

解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、flow を含む曲は72曲で、16人中14人のラッパーに出てきました。MF DOOM や GZA の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はMF DOOM 15曲、GZA 12曲、Rakim 10曲、Kool Keith 6曲、Ghostface Killah 5曲です。

似た表現との違い

spitラップする
spit は言葉を吐き出す勢いに焦点がある動詞。flow はリズムへの乗り方、なめらかさに焦点があります。
barsラップの小節・歌詞
bars は書かれた中身や一行ごとの切れ味を言う語。flow は同じ中身をどう聞かせるかの話です。
delivery声の出し方・伝え方
delivery は声色や抑揚まで含めた伝え方全般。flow はその中でも特にリズムの取り方を指します。
rhyme韻・ラップ
rhyme は韻そのもの、または韻を踏んだ歌詞。flow とは評価する場所が違います。

使うときの注意

よくある質問

flow と rhyme の違いは何ですか。
rhyme は韻や歌詞の中身、flow はそれをビートに乗せるリズムの取り方です。韻が固くてもフロウが単調ということはありえます。
フロウがいいとは具体的にどういう状態ですか。
言葉の詰め方や間の取り方がビートとかみ合っていて、聞いていて引っかかりがない状態です。わざとずらして面白く聞かせるのも、フロウの腕前のうちに入ります。
flow をほめるときによく使う形容詞は何ですか。
smooth、sick、crazy、ill などがよく使われます。逆に stiff や choppy はぎこちなさを言う語です。

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