Slang Dictionary
clout
クラウト
まず結論
clout は「影響力、発言力、権力」を指す名詞です。ヒップホップでは、名声やフォロワー数、知名度といった、見た目の影響力を指す意味にも広がっています。
clout chasing は「名声を追いかけること、売名行為」で、実力より注目を優先する態度を批判する言い方です。
実は古い英語で、もともとは「握りこぶしでの一撃」を意味しました。歌詞では、古くから使われてきた影響力の意味と、SNS時代の知名度の意味の両方が出てきます。
影響力という基本の意味
clout の基本は、人や組織が持つ影響力、発言力です。political clout(政治的な影響力)のように、権力に関係する話題で、古くから使われています。
Rakim や Nas が1990年代の曲で使った clout も、この意味で、仲間内や街での発言力を指しています。
SNS時代の clout
近年のスラングの clout は、SNSでの知名度やフォロワー数、話題性を指します。have clout は、世間への影響力や、注目度の高さを持っていることです。
実績や技術とは別に、目立つ力そのものを指すので、批判的なニュアンスが混ざることもあります。
clout chasing とは
clout chasing は、名声を得るために、話題性だけを追うことです。有名人との関係を利用する、過激な発言で注目を集めるといった行為を、冷ややかに指す言い方です。
ラッパーは、本当の実力を重んじる立場から、売名的な振る舞いを批判するときに、この言葉を使います。
もとは一撃の意味
clout は古英語で、布の切れ端や、握りこぶしでの一撃を指していました。「一撃を食らわせる力」から、影響を与える力という意味に広がったと考えられています。
今でも、clout が殴打の意味で使われる場合がありますが、現代の歌詞では、影響力の意味が中心です。
語源と背景
clout は古英語の clūt に由来し、布切れ、そして打撃を意味する語でした。「強い一撃」の比喩から、人に影響を与える力という意味が生まれたとされます。
ヒップホップでは、早い時期から、街や業界での発言力を指す語として使われてきました。1990年代の歌詞にも、その用法が確認できます。
SNS時代になって、知名度やフォロワー数を指す意味が加わり、clout chasing のような派生表現が一般に広がりました。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.He has a lot of clout in this industry.
彼はこの業界で大きな影響力を持っている。
clout の基本の意味です。業界での発言力、人脈の広さを指す、一般的な使い方です。
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2.She's just chasing clout.
彼女はただ名声を追いかけているだけだ。
clout chasing の形で、売名行為への批判を表しています。実力より注目を優先する態度を指します。
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3.That post got him some clout.
その投稿で、彼は少し知名度が上がった。
SNSでの知名度の意味です。投稿の反響で、注目度が高まった様子を表します。
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4.He used her name for clout.
彼は売名のために彼女の名前を使った。
for clout の形で、注目を集めるための手段を指します。批判的なニュアンスで使われます。
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5.No clout, no problem.
名声はなくても、問題ない。
名声を必要としない、という強がりの言い方です。実力主義の姿勢を示します。
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6.Local clout isn't global fame.
地元での影響力は、世界的な名声とは違う。
影響力の範囲を区別する言い方です。街での発言力と知名度は別物だ、という含みがあります。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、clout を含む曲は10曲で、16人中6人のラッパーに出てきました。Rakim や J. Cole の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はRakim 3曲、J. Cole 2曲、MF DOOM 2曲、Kool Keith 1曲、Megan Thee Stallion 1曲です。
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Rakim 「Juice (Know the Ledge)」
"Don't doubt the clout"
自分の影響力を疑うな、という強気の一行です。古い用法の clout が、街での発言力を指して使われています。
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Nas 「Halftime」
"enough props, enough clout"
敬意(props)も影響力(clout)も、十分に手に入れた、という誇示です。二つの語を並べて、成功の度合いを示しています。
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MF DOOM 「Question Mark」
"come up and earn clout"
のし上がって、影響力を稼ぐ方法を指しています。clout が、努力して得るものとして語られています。
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Kool Keith 「Make Up Your Mind」
"the Phantom pushin more clout"
高級車のファントムが、さらに力を誇示する、という描写です。車と clout を結びつけて、成功の象徴にしています。
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J. Cole 「Middle Child」
"it won't be for clout"
名声のためではない、と自分の動機を否定する言い方です。clout が、売名の対象として使われています。
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Megan Thee Stallion 「Shots Fired」
"I know you want the clout"
相手が名声を欲しがっているのは分かっている、という皮肉です。clout chasing の文脈で、売名行為を指摘しています。
似た表現との違い
- influence影響力
- 一般的な影響力を指す語です。clout は、名声や知名度の側面を、くだけた口語で表します。
- props敬意、称賛
- 他人から得る敬意を指します。clout は、その敬意の結果として持つ、影響力そのものを指します。
- fame名声
- 世間に知られていることを指す語です。clout は、知られていることに加えて、動かす力を含みます。
- weight重み、発言力
- 発言の重みを指す口語です。clout と近いですが、clout のほうが SNS 時代の知名度の意味も持ちます。
使うときの注意
- clout は肯定的にも否定的にも使われます。have clout は肯定、clout chasing は否定的な意味になります。
- 古い歌詞の clout は、SNS の知名度ではなく、街や業界での発言力を指します。時代を意識して読みます。
- clout を「クラウド(群衆)」と取り違えることがあります。綴りも発音も違う別の語です。
- ラップでは、clout を追うことは軽蔑されがちです。実力や経験を重んじる価値観と対になっています。
- 動詞としての clout(強く打つ)は、古い用法で、現代のスラングでは使われにくくなっています。
よくある質問
- clout chasing とはどういう意味ですか。
- 名声を得るために、話題性だけを追うことです。売名行為に近く、批判的な意味で使われます。
- clout と fame はどう違いますか。
- fame は世間に知られていること、clout は人や物事を動かす力を指します。知名度に加えて、影響力が強調されます。
- clout は SNS の用語ですか。
- 現代では SNS の文脈でよく使われますが、もとは古い英語で、1990年代のヒップホップの歌詞にも、影響力の意味で出てきます。
- 日本語ではどう訳せばいいですか。
- 「影響力」「発言力」「知名度」あたりが近い訳です。clout chasing は「売名」と訳すと、自然に伝わります。