Slang Dictionary
bars
バーズ
まず結論
bars は bar(小節)の複数形で、ラップでは「歌詞の行、そのうち出来のいいもの」を指します。bars がある、と言えば「リリックの質が高い」という褒め言葉です。
16 bars は一般的なバースの長さで、16小節ぶんの歌詞を意味します。ラッパーの腕前は、この決まった枠の中で何を言うかで測られます。
同じ綴りの bars には「牢屋の鉄格子」「バー(酒場)」の意味もあり、歌詞ではこの二重の意味を掛けた言葉遊びがよく使われます。
小節から「歌詞」へ
bar は楽譜の縦線で区切られた小節のことです。1小節は4拍が基本で、ヒップホップの1行は多くの場合1〜2小節にあたります。
そこから、歌詞の行を数える単位として bars が定着しました。16 bars なら、およそ16行前後のバース1つ分を指します。
褒め言葉としての bars
He's got bars は「あいつは歌詞がうまい」という意味です。韻の数、言葉選び、比喩の巧みさなど、リリックの中身を評価するときに使います。
逆に、ビートやフローが良くても言葉が薄いラッパーは、no bars と言われてしまうことがあります。
spit bars という動き
spit bars は「ラップする」という意味で、歌詞を吐き出すように次々と出す様子です。ここでの bars は、1行ごとの出来を問われる言葉として働いています。
freestyle や cipher の場面では、その場で bars を出せるかどうかが力量の証になります。
鉄格子との二重の意味
bars は牢屋の鉄格子も指すので、behind bars(収監されて)という言い回しがあります。ラッパーは音楽の bars と鉄格子の bars を掛けて、言葉遊びにすることがあります。
さらに酒場の bar も同じ綴りなので、一つの単語で三重に意味を重ねた行も珍しくありません。
語源と背景
bar は楽譜の小節線から来た音楽用語で、英語圏のあらゆるジャンルで使われています。ヒップホップでは、拍に合わせて言葉を置くという仕組みが、そのまま小節単位の数え方につながりました。
1990年代には、ラッパーのパンチラインや凝った詩を指して bars と呼ぶ言い方が広まり、アルバムの批評でも使われるようになりました。
現在は、歌詞の質を語る口語として定着し、音楽に詳しくない人でも使う一般的なスラングになっています。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.That verse had crazy bars.
あのバース、歌詞がとんでもなく良かった。
bars を歌詞の出来を評価する名詞として使う、最も典型的な形です。
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2.He spits bars all day.
あいつは一日中ラップを吐き続ける。
spit bars で「ラップする」。息をするようにリリックが出てくる様子を伝えます。
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3.Give me sixteen bars.
16小節、聴かせてくれ。
セッションやオーディションで、一つのバースぶんを求める定番の頼み方です。
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4.No bars, just a good beat.
歌詞は薄いけど、ビートはいい。
リリックが貧弱なことを指摘する否定の形です。ビートと対比して使われます。
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5.He did ten years behind bars.
彼は10年、塀の中で過ごした。
鉄格子の意味の bars です。behind bars で収監されている状態を表す一般的な表現です。
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6.She's all about the bars, not the hype.
彼女が大事にするのは言葉の質で、話題性じゃない。
派手な宣伝より、リリックの中身を重視する姿勢を言う表現です。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、bars を含む曲は32曲で、16人中14人のラッパーに出てきました。Black Thought や Kendrick Lamar の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はBlack Thought 4曲、Kendrick Lamar 4曲、Aesop Rock 3曲、GZA 3曲、J. Cole 3曲です。
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GZA 「Knock Knock」
"hundred bars in length"
とても長いバースを、100小節の長さと数字で表しています。bars を長さの単位として使った分かりやすい例です。
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GZA 「Fame」
"Infinite bars"
終わりのない小節、つまり尽きない言葉の量を誇っています。bars が数え切れないほど出る自分の力量を表します。
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Kool Keith 「I'm Dangerous」
"The 16 sweet bars"
16小節という標準的なバースの長さを、そのまま名指しにしています。16 bars が基本単位であることが見える一行です。
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Black Thought 「Soundtrack to Confusion」
"with the bars alone"
ほかの武器は要らず、歌詞だけで相手を圧倒できるという誇示です。bars が実力そのものを指しています。
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Black Thought 「Funk Flex Freestyle 087」
"written bars filled with rage"
written bars は、あらかじめ書いたリリックのことです。bars が書かれた歌詞そのものを指す例です。
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MF DOOM 「All Outta Ale」
"Banned from all bars"
歌詞(bars)ではなく酒場の bars で、出入り禁止という意味に聞こえる言葉遊びです。同じ綴りの別の意味を並べて笑わせる一行です。
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Nas 「Ether」
"No jail bars"
鉄格子の bars を使った一節です。ラップの bars と牢屋の bars が同じ綴りであることを意識すると、遊びの層が見えてきます。
似た表現との違い
- lines歌詞の行
- 歌詞の行を指す一般的な言い方です。bars は出来のいい行という評価が入るのに対し、lines は中立的な言葉です。
- punchline決め台詞
- 聴き手を驚かせたり笑わせたりする一行です。bars は歌詞全体の質を指し、punchline はその中の決め手を指します。
- verseバース
- 曲を構成する一つのまとまりです。bars はそのバースを構成する小節を数える単位として使われます。
- flowフロー
- 言葉の乗せ方やリズムの運びを指します。bars が中身の言葉なら、flow は運び方だと整理できます。
使うときの注意
- bars を「バー(酒場)」だけだと読むと、歌詞の評価の意味が見えなくなります。ラップの話題では、まず歌詞の質を指すと考えるのが自然です。
- 単数の bar が出てきたときは、小節や酒場の意味に戻ることが多いので、複数形との使い分けに気を付けたい言葉です。
- 16 bars は目安であり、曲によって8 bars や24 bars のバースもあります。数字が違っていても同じ数え方の話です。
- behind bars は、ラップの文脈でも収監の意味で出ます。音楽の話をしていると思い込まず、前後の文を見て判断します。
- bars がある、という褒め言葉は、ラップ以外のスポーツや仕事の場面では通じにくいので、相手を選ぶ言い方です。
よくある質問
- 16 bars はどのくらいの長さですか。
- 1小節を4拍とすると64拍ぶんで、テンポにもよりますが約30秒から1分ほどです。標準的なバース1つがこの長さになります。
- bars と lyrics は同じ意味ですか。
- lyrics は歌詞全般を指す中立的な語です。bars は歌詞のうち、とくに出来のいい部分や、ラッパーの腕前を評価するときに使います。
- spit bars はどういう意味ですか。
- ラップする、という意味です。言葉を次々に吐き出す様子から来ていて、フリースタイルで特によく使われます。
- bars に三つの意味があるのはなぜですか。
- bar という語が元々、棒状のもの、小節、酒場などを広く指す語だからです。ラッパーは同じ綴りの別の意味を掛けて言葉遊びにします。