WAX&THINK
← スラング索引に戻る

Slang Dictionary

spit

スピット

まず結論

spit はヒップホップでは「ラップする」です。口から言葉を勢いよく吐き出すイメージで、rap よりも力強い響きがあります。

spit bars(ラップをかます)、spit fire(火を噴くようにラップする)のように、目的語を取る形が定番です。

銃が弾を「吐く」比喩でも使われるので、主語が人か銃かで意味が分かれます。

rap と spit の手触りの違い

rap は中立的な動詞ですが、spit には「腹の底から吐き出す」勢いが乗ります。ライブやフリースタイルで、即興的に言葉をぶつける場面と相性のいい語です。

Can you spit? と聞かれたら「ラップできる?」という意味で、腕試しの誘いにもなります。

何を spit するか

目的語にはラップそのものを指す語が入ります。spit bars、spit verses、spit rhymes、spit the truth のような形です。

spit fire や spit heat は「火のように熱いラップをする」という比喩で、出来の良さを誇る言い方になります。

銃が spit するとき

歌詞では、銃を主語にした spit もよく出てきます。弾を次々と吐き出す様子を、つばを吐く動作に重ねた比喩です。

ラップの比喩か銃の話かは、近くに nine、gat、MAC のような銃の呼び名があるかどうかで見当がつきます。

ラッパーは自分のラップを武器にたとえることが多いので、どちらの spit か、わざとぼかして重ねている箇所もあります。

語源と背景

spit は「つばを吐く」を意味する古英語由来の基本動詞です。

Wiktionary はこれとは別に、AAVE とヒップホップのスラングとして「ラップする、言葉を発する」という語義を載せています。

言葉を勢いよく口から出すことをつばを吐く動作に重ねた比喩と見るのが自然ですが、いつ誰が使い始めたかを示す資料は見つかりませんでした。

近年は spittin' や spit facts の形で「本当のことを言っている」という意味にも広がっていて、Wiktionary はこれもユーモラスな用法として記録しています。

例文

例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。

  1. 1.He spit a verse for us right there in the car.

    あいつ、車の中でその場でバースをかましてくれた。

    過去形の spit。目の前で即興的にラップしてくれた場面の言い方です。

  2. 2.She can really spit, you should hear her live.

    彼女はマジでラップがうまい。ライブで聴くと分かるよ。

    目的語なしの spit で「ラップの腕がある」という意味になります。

  3. 3.Everybody in the cypher took turns spitting.

    サイファーの全員が順番にラップした。

    spitting は現在分詞。輪になって順に回していく場面でよく使う言い方です。

  4. 4.You're spitting facts right now.

    今のはマジでその通りだわ。

    spit facts は「事実を言っている」。ラップとは関係なく、会話の相づちとして使われます。

  5. 5.He spits bars like he's been writing for years.

    何年も書いてきたみたいな出来のラップをする。

    spit bars はラップの出来を語るときの定番の形です。

  6. 6.Don't spit on the sidewalk.

    歩道につばを吐くな。

    こちらは本来の意味。日常会話ではこの意味がまず浮かびます。

この曲ではこう使われていた

解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、spit を含む曲は42曲で、16人中11人のラッパーに出てきました。Ghostface Killah や GZA の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はGhostface Killah 7曲、GZA 6曲、Nas 6曲、Cardi B 5曲、Megan Thee Stallion 4曲です。

似た表現との違い

flow節回し・ビートに乗る
flow はリズムへの乗り方を言う語。spit は言葉を放つ勢いのほうに重心があります。
rapラップする
rap は最も中立的な言い方。spit のほうが口語的で、熱量や即興感が出ます。
drop(曲・バースを)出す
drop a verse は「バースを発表する」で、作品を世に出すことに焦点があります。spit は声に出してラップする行為そのものです。
kick(ライムを)かます
kick a rhyme もライムを放つという意味で、spit と近い使い方をします。

使うときの注意

よくある質問

spit と rap はどう使い分けますか。
意味はほぼ同じです。spit のほうが口語的で、勢いや即興性を感じさせたいときに使われます。
spit は過去形も spit でいいのですか。
標準的な過去形は spat ですが、アメリカ英語では spit をそのまま過去形に使うこともあります。歌詞ではリズムの都合でどちらも出てきます。
spit fire はどういう意味ですか。
文字どおりには「火を吐く」ですが、ラップの話なら熱のこもった、勢いのあるラップをすることです。ほめ言葉として使われます。

関連するスラング