Slang Dictionary
mic
マイク
まず結論
mic は microphone を縮めた綴りで、読み方は「マイク」です。ラップの歌詞ではただの機材ではなく、ラッパーが声を預ける舞台そのものを指すことが多い言葉です。
on the mic(マイクを握って)、mic check(音の確認)、drop the mic(マイクを落として終わらせる)など、決まった言い回しがいくつもあります。
綴りは mic と mike の2通りがあり、ヒップホップでは mic が主流です。歌詞のクレジットや曲名でも mic の綴りがよく見られます。
機材から「舞台」へ
mic は元々は microphone の略で、声を拾う機材です。ヒップホップでは、そこに立つ人が語る権利を持つという意味が加わりました。
「マイクを握る」は「発言権を取る」「ラッパーとして場に立つ」と同じ意味で、実際にマイクを持っていなくても使われます。
決まり文句を知っておく
mic check は、本番前に音を確認する合図です。ラップでは、曲の頭でこの言葉を置いて「聞こえてるか、これから始めるぞ」と宣言する使い方がよくあります。
pass the mic は「次の人に回す」、grab the mic は「語る番を取る」にあたります。サイファーでメンバーが順に回すときに耳にする言葉です。
drop the mic の二つの顔
drop the mic は、決定的な一言を放ってマイクを落とし、その場を去る動作を指します。英会話でも「完璧な締め」「反論の余地なし」という比喩として広く使われます。
一方で、バトルでは「落とす」より「置く」ことのほうが多く、実際に床へ投げる場面は多くありません。比喩としての使い方のほうが日常的です。
mic を擬人化する言い回し
ラッパーは mic を相手にするように語ることがあります。「マイクを引き寄せる」「マイクに魅了される」「マイクを握りつぶす」など、道具に人格を与えた比喩です。
Rakim が I never let the mic magnetize me no more と歌うのは、マイクに引き寄せられて流される自分を卒業した、という自己宣言です。
語源と背景
mic は microphone の clipping(短縮語)で、英語圏では20世紀半ばから使われる略称です。綴りは mike も古くからあり、辞書でも両方が載っています。
ヒップホップでは、DJ が音を回し、MC(Master of Ceremonies)がマイクで客を盛り上げるという分業から始まりました。その役割名の MC がマイクを握る人を指すので、mic は文化の中心に置かれた語です。
ラップ黎明期の MC は、パーティーの進行役として mic check を行い、客に声が届くかを確かめていました。今も曲の頭に mic check が入るのは、その名残です。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.Mic check, one two.
マイクチェック、ワン、ツー。
音量や声の通りを確かめる定番の掛け声です。曲やライブの頭で、これから始める合図としても使われます。
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2.Pass me the mic.
マイク貸して。
次に語る番が回ってきたときの一言です。サイファーやカラオケでも耳にする言い方です。
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3.He dropped the mic on that answer.
あの答えで彼が締めた。
実際にマイクは落とさず、反論の余地がないほど見事な一言だったという比喩です。
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4.She owns the mic.
彼女のマイクさばきは別格。
マイクを自分のものにしている、つまりステージを支配しているという褒め言葉です。
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5.Who's on the mic tonight?
今夜のMCは誰?
その夜の語り手や司会を尋ねる、イベントでよくある聞き方です。
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6.Don't touch the mic if you can't rhyme.
韻が踏めないならマイクに触るな。
ラッパーを名乗る資格がない者を牽制する決まり文句に近い言い方です。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、mic を含む曲は83曲で、16人中14人のラッパーに出てきました。Rakim や MF DOOM の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はRakim 18曲、MF DOOM 12曲、GZA 9曲、Ghostface Killah 8曲、Kool Keith 8曲です。
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Rakim 「Eric B. Is President」
"I never let the mic magnetize me"
マイクに引き寄せられて我を失うことはない、という宣言です。マイクを引力を持つ存在として描き、それに飲まれない自分を誇示しています。
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Rakim 「As the Rhyme Goes On」
"when the mic is held tight"
マイクをしっかり握る、という具体的な動作の描写です。語る場を逃さない構えが、短い一節に込められています。
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Nas 「It Ain't Hard to Tell」
"The mic is contacted"
マイクと自分が接触する、という少し硬い言い回しです。マイクを握った瞬間に聴き手を引き込むという自信が出ています。
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GZA 「Duel of the Iron Mic」
"Duel of the Iron Mic"
曲名自体にマイクが入っています。ラップの勝負を、鉄のマイクを使った決闘に見立てた題で、mic が武器扱いされる好例です。
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GZA 「Breaker Breaker」
"the mic clutched, like such"
マイクをぐっと握る動作を、声に出して示しています。握りしめる動きで、語る側の気迫を伝える表現です。
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MF DOOM 「All Outta Ale」
"One hand on the mic"
片手にマイク、もう片方に別の道具という対比が続きます。マイクを握るのが日常の動作である、というユーモアを込めた書き方です。
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MF DOOM 「Doomsday」
"Mic check"
曲の中に mic check をそのまま置いた例です。始まりの合図が、そのまま曲の入口として働いています。
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Kool G Rap 「Letters」
"My mic sound nice, check one"
mic check の定型を、自分のマイクの出来を誇る一行に作り替えています。check one はマイクテストで言う「ワン」を指します。
似た表現との違い
- mikeマイク(別綴り)
- 意味は同じです。ヒップホップの歌詞や曲名では mic のほうが多く、mike は動詞(マイクで録音する)として使われる場合もあります。
- MCエムシー
- mic を握る人、つまり語り手を指す言葉です。mic は道具、MC は人という違いがあり、MC は Master of Ceremonies の略とされています。
- cipherサイファー
- ラッパーが輪になって順に語る場です。そこで mic が回されるので、mic は場の中で受け渡される小道具の役目も持ちます。
- spitラップする
- mic の前で言葉を吐くように語る動作が spit です。mic が場所で、spit が行為という位置づけです。
使うときの注意
- mic の綴りは microphone の最初と最後を残した略ではなく、mike の発音に合わせた短縮形です。そのため「ミック」と読みたくなりますが、発音は「マイク」です。
- drop the mic を文字通りの動作と読むと、意味が取れなくなります。多くは比喩で、決定的な締めを指します。
- on the mic は、実際にマイクを持っていなくても使えます。「語っている最中」「ラップしている最中」という意味で受け取るのが自然です。
- ラップ以外の場面(会議や授業)で mic check と言うと、本当に音の確認を指すので、ヒップホップ的なノリは持ち込まないほうが無難です。
- 歌詞では mic が擬人化されることがあり、「マイクが俺を求めている」のような文は、道具に感情があるのではなく、語りの場に選ばれたという誇示と読みます。
よくある質問
- mic と mike はどちらが正しい綴りですか。
- どちらも辞書に載る正しい綴りです。ヒップホップの歌詞や曲名では mic が一般的で、このサイトでも mic に統一しています。
- drop the mic はどんなときに使いますか。
- 議論や発表で、相手が何も返せないほど決定的な一言を放ったときです。日常でも「あの一言でマイクを落としたね」と、締めの見事さをほめる比喩に使います。
- mic check はラップでどんな意味になりますか。
- 元は音の確認ですが、曲の頭に置くと「これから始める」「聞こえているか」という宣言の意味で使われます。曲の入口を示すかけ声と考えると分かりやすいです。
- MC と mic はどんな関係ですか。
- MC はマイクを握って語る人、mic はその道具です。ヒップホップでは道具と人の結びつきが強く、mic を握ること自体が MC の資格を示します。