Slang Dictionary
raw
ロウ
まず結論
raw は本来「生の、加工していない」です。ヒップホップではここから二つの意味が育ちました。
ひとつは、ラップやビートが「飾りがなくむき出しで生々しい」というほめ言葉。もうひとつは、名詞の the raw で「混ぜ物をしていない純度の高いブツ」です。
どちらも「手を加えていない」という一点でつながっているので、根っこを押さえると両方が読めます。
ほめ言葉の raw
ラップの評価で raw と言うと、きれいに整えていない、荒削りで生々しい、という意味になります。洗練されていないことが欠点ではなく、迫力として評価されている言い方です。
raw beat、raw verse、raw sound のように使い、スタジオで磨き上げた音より、ざらついた質感のほうを好む耳から出てくる言葉です。
名詞の raw はカットしていないブツ
ストリートの文脈で the raw と言えば、売る前に混ぜ物(cut)をしていない、純度の高いドラッグを指します。Wiktionary はこれを「混ぜ物のない麻薬、特にクラック」と説明しています。
混ぜ物をすると量が増えて儲かる一方、品質は落ちます。だから the raw は、仕入れの段階の高価なブツという響きを持ちます。
生肉の raw との見分け方
raw meat、raw eggs のように食べ物が後ろに来れば、ただの「生の」です。歌詞では、生卵を飲む、生肉を食べるといった文字どおりの表現も普通に出てきます。
the raw と冠詞付きで名詞になっていれば、まずドラッグの話を疑います。
語源と背景
raw は古英語から続く基本語で、もとは「料理していない、生の」という意味です。
そこから「加工していない」(raw material は原材料)、「経験の浅い」(raw recruit は新兵)、「ひりひりする」(raw skin は擦りむけた皮膚)と、手が加わっていない状態全般へ広がりました。
ドラッグの意味の raw は、精製や加工の度合いではなく「混ぜ物で薄めていない」ことを言う点が特徴です。Wiktionary はスラングとして記録していますが、年代は示していません。
ほめ言葉の raw がいつからラップの評価に使われたかを示す資料も見つからなかったので、ここでは年代を書きません。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.I love how raw this demo sounds.
このデモの生々しい感じ、すごく好き。
整える前の荒さを、そのまま魅力として受け取っている言い方です。
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2.Her verse was raw and honest.
彼女のバースはむき出しで正直だった。
honest と組み合わせると、飾らずに本音をさらけ出したという意味が強まります。
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3.They kept the drums raw, no effects.
ドラムはエフェクトなしで生のまま残した。
音作りの話でよく使う言い方。加工しないことを選んだ、というニュアンスです。
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4.My knees are raw from falling off my bike.
自転車で転んで膝がすりむけてる。
こちらは「皮がむけてひりひりする」という意味。スラングではありません。
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5.He's still raw, but he's got talent.
まだ荒削りだけど、才能はある。
経験の浅さを言う raw。ほめるより、伸びしろを語る場面で使います。
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6.That was a raw deal.
あれはひどい扱いだった。
a raw deal は「不当な扱い、ひどい目」。ほめ言葉の raw とは反対方向の熟語です。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、raw を含む曲は24曲で、16人中10人のラッパーに出てきました。Ghostface Killah や MF DOOM の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はGhostface Killah 5曲、MF DOOM 5曲、Kool Keith 3曲、Nas 3曲、Megan Thee Stallion 2曲です。
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Ghostface Killah 「Kilo」
"Professors at war over raw"
混ぜ物なしのブツをめぐって争う、という場面です。professors はここでは腕利きの連中くらいの意味で、名詞の raw がはっきりドラッグを指しています。
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Ghostface Killah 「9 Milli Bros.」
"Staten's where the raw is"
本物はスタテンアイランドにある、という地元自慢です。純度の高いブツの話とも、むき出しのラップの話とも読めて、どちらの意味も重なっています。
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Ghostface Killah 「Winter Warz」
"Raw be the quote"
ラップのスタイルを語る流れの raw で、生々しさを看板に掲げています。be を使った言い回しも、口語らしいリズムを作っています。
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MF DOOM 「Kon Karne」
"Raw with the pen"
書く腕前がむき出しで強い、という自慢です。with the pen と組んで、歌詞を書く力をほめる raw になっています。
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Rakim 「Keep the Beat」
"keep the tempo raw"
テンポを飾らずに保つ、という一節です。音を整えすぎない、という音作りの姿勢として raw が使われています。
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Kool Keith 「Black Elvis」
"We get raw with this"
get raw は「遠慮なく本気でやる、荒々しくいく」という意味です。このあと括弧書きでギターを持って来いと続き、ロックスターのように振る舞う流れになっています。
似た表現との違い
- rugged荒々しい・タフな
- rugged は荒れた手触りや力強さを言う語。raw は手を加えていない、むき出しであることに焦点があります。
- dope最高・麻薬
- dope も「ほめ言葉」と「麻薬」の二つの顔を持つ語。raw はどちらの意味でも「純度」や「生々しさ」が軸になります。
- real本物の・偽りのない
- real は嘘のなさを言う語。raw は飾りのなさを言う語で、近い場面で一緒に使われることもあります。
- crackクラック・コカイン
- Wiktionary は、ドラッグの raw の例として特にクラックを挙げています。
使うときの注意
- raw は性行為について「避妊具なしで」という意味のスラングでもあります。人の行動について使うときは文脈に気をつけたい語です。
- the raw をすべて「生々しいラップ」と読むと、ブツの仕入れの話を取り違えます。冠詞が付いて名詞になっているかを見ます。
- 日常会話の raw は「生の」「すりむけた」がまず浮かぶ意味です。ほめ言葉として使うなら、音楽や作品の話だとわかる場面に限ったほうが通じます。
よくある質問
- raw と rugged はどう違いますか。
- どちらも荒々しさをほめる言葉ですが、raw は「手を加えていない」、rugged は「荒れていてタフ」に重心があります。
- the raw はどんなドラッグを指しますか。
- 混ぜ物で薄めていない、純度の高いドラッグです。Wiktionary は特にクラック・コカインを例に挙げています。
- raw talent はどういう意味ですか。
- まだ磨かれていない、素のままの才能です。荒削りだけれど光るものがある、というほめ方です。