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Shady 2.0 Cypher 和訳・解説 | Eminem, Slaughterhouse & Yelawolf

アーティスト
Eminem, Slaughterhouse & Yelawolf
2011
種別
Cypher

この記事の見どころ

  1. 01 Shady Records全員集合——Eminem・Slaughterhouse(4人)・Yelawolfの計6名が「Tried by 12」ビートで連続バースを披露した2011年最大のサプライズ
  2. 02 各ラッパーの個性が凝縮——Yelawolfの南部語り口、Joe Buddenの社会批評、Crooked Iのウエスト・フロウ、Joell Ortizのブルックリン剛直、Royce da 5'9"のウィット、そしてEminemの鬼神フロウ
  3. 03 Casey Anthonyからスラングの言語遊びまで——2011年時事ネタを縦横無尽に組み込んだEminemの超高密度ラスト・バースは語るだけで1記事になる
解説

■この動画の意味(要約)

2011年10月11日放送のBET Hip Hop Awardsで、Eminem率いるShady Recordsの全員がステージに集結。East Flatbush Project「Tried by 12」のビートを使い、Yelawolf→Joe Budden→Crooked I→Joell Ortiz→Royce da 5'9"→Eminemの順に連続バースを披露した。各ラッパーが自らのスタイルを全力で叩き込む一方、Eminemのクロージング・バースは時事ネタ・言語遊び・ショッキングな比喩で視聴者を圧倒し、「史上最高のサイファー・パフォーマンス」の一つとして語り継がれる。

■概要

Shady Records 2.0は2011年に結成されたEminem主宰のレーベル刷新版で、Yelawolfの加入とSlaughterhouse(Joe Budden・Royce da 5'9"・Crooked I・Joell Ortiz)の合流により大型化。このサイファーはその記念碑的パフォーマンスとして制作された。使用ビートはEast Flatbush Project「Tried by 12」(1993年)のインストで、ハードなブーンバップが全員のフロウを引き立てる。

Intro · Eminem

Welcome to Detroit / This is the BET / Shady 2.0 / Cypher 2011

デトロイトへようこそ / ここはBET / シェイディー2.0 / サイファー2011

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Eminemがデトロイト代表として登場を宣言。「Shady 2.0」は新体制のShady Recordsを示すキャッチフレーズ。BETはBlack Entertainment Televisionの略。

Myself, Slaughterhouse / And Yelawolf / White Dawg, get 'em!

俺自身、スローターハウス / そしてイェラウルフ / ホワイト・ドッグ、やれ!

Verse 1 · Yelawolf

Put these mothafuckas in a box, then I / Send 'em away, put 'em in a gray 'llac and pop the trunk

こいつらを箱に詰めて / グレーのキャデラックに積んでトランクを開けてやる

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'llac = Cadillac(キャデラック)の略。「箱に入れてトランクに放り込む」=競合ラッパーを葬るという比喩的表現。

Put a brick inside that Xerox when I print up a page / Movin' keys, I can relate, 'cause I live in a cage

コピー機に煉瓦を詰めてページを刷る / キーを動かす(麻薬売買する)、俺には分かる——檻の中に生きてきたから

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keys = 麻薬(コカイン)のキロ単位スラング。「ゲットー育ちの苦境」を比喩的に表現。

I throw up the A, I take 'em to school, I give 'em a grade / An easy E for effort; that's WWA / White with an attitude, alphabet soup is on my plate

Aサインを掲げ、奴らに授業してやる、成績をつけてやる / 「努力」でEを進呈——それがWWA / 態度のあるホワイト、俺の皿はアルファベットスープ(ごちゃ混ぜ)

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WWA = White With Attitude、NWA(N***az With Attitude)のパロディ。YelawolfはアラバマとNetiveアメリカン出身の白人ラッパー。「Aサイン」はアトランタを示すサイン。

All I got is Zs, they sleepin' on me, I can't get 'em awake / I spoon-feed 'em a sound in a room full of deceivers and clowns

俺が持ってるのはZだけ——連中は俺を舐めてて目を覚まさない / 詐欺師とピエロだらけの部屋でスプーンで音楽を食べさせてやる

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「Zs」= 睡眠・無視のスラング(snoring)。「sleepin' on me」= 実力を過小評価されているの意。

Plenty of white boys to pick from this year / But before you pick a pepper, you better pick up your heater

今年は白人ラッパーが選り取り見取りだが / ペッパーを選ぶ前に、ヒーターを手に取れ

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heater = 拳銃のスラング。「Peter Piper picked a peck of pickled peppers」という英語の早口言葉(tongue twister)への伏線。

'Cause even Peter Piper could pick up a mic / But what it's like to pick a fight with me / Is like puttin' Nikes on a cheetah

ピーター・パイパーだってマイクは持てる / だが俺に喧嘩を売るってのは / チーターにナイキを履かせるようなもの

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「Peter Piper」はRun-D.M.C.の名曲(1986年)への言及。チーターにナイキ=すでに最速の生き物にランニングシューズ=無意味な対抗行為。

Better speed up, or at least in my case Adidas / I'm out this bitch, drinkin' Sprite by the two-liter

もっとスピードを上げるか、少なくとも俺の場合はアディダス / 俺はここを出る、2リットルのスプライトを飲みながら

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Nike→Adidas のブランド切り替えでオチをつけるウィット。Adidasはラン・DMCのシグネチャーブランド。「out this bitch」= この場を去る(カジュアルな退場宣言)。

Verse 2 · Joe Budden

Say I'm from the new school / I'ma say, "Check your tone and watch your mouth!" / If they teachin' how to Dougie, I'm condonin' droppin' out

俺がニュースクール出身だと言うなら / 「口のきき方を考えろ」と言ってやる / ダギーの踊り方を教えてるなら、俺は中退を推奨する

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「Teach Me How to Dougie」はCali Swag Districtの2010年ヒット曲。Joe Buddenはベテランとして「ダンス曲を学ぶくらいなら学校を辞めた方がまし」と皮肉。

Forced to wild, y'all birthed me, then gave me up / I just perfected being hip-hop's foster child

野性化を強いられた、お前らが俺を生んで捨てた / 俺はヒップホップの里子であることを完璧に極めた

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Joe Buddenはかつてメジャーデビューしながらも業界に見捨てられた経歴を持つ。「foster child(里子)」は業界に拾われたが主流には属さない立場の比喩。

The radio's the crime scene, the masses are the hostages / In my youth I'd throw shots, the fad was dodgin' it

ラジオが犯行現場、大衆が人質 / 若い頃は弾を撃ちまくった、流行はそれを避けることだった

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「ラジオが犯罪現場」= 商業ラジオが質の低い音楽で大衆を人質にしているという業界批判。

I'm grown, I ain't watchin' the throne, I'm sabotagin' it

大人になった今、俺は王座を眺めてるんじゃなく、破壊工作をしてる

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Jay-ZとKanye Westの2011年アルバム「Watch the Throne」への当て擦り。「俺はただ見物するんじゃなく倒しに来た」という宣言。

You see that four-headed monster in the storm looms? / Snipe 'em from a distance; the scope got a long zoom

嵐に現れる四頭の怪物が見えるか? / 遠距離からスナイパーで狙う、スコープのズームは長い

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「四頭の怪物」= Slaughterhouseの4人を指す。「snipe from a distance」= 業界の主流から距離を置きつつ精密に攻撃する戦略の比喩。

You Super Mario thugs is in the wrong room / Gotta figure here you won't get bigger if you on shrooms

お前らスーパーマリオのギャング気取りは部屋を間違えてる / きのこを食っても大きくはなれないと知れ

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スーパーマリオでキノコを取ると大きくなるが「shrooms(マジックマッシュルーム=麻薬)」を掛け合わせたダブルミーニング。浅いラッパーへの皮肉。

I'd have took the wine outta Amy house

エイミーの家からワインを持ち出してやったのに

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Amy Winehouseは2011年7月に27歳でアルコール中毒により死去。「もし俺がいればワインを取り上げて救えた」という追悼と皮肉が混じった表現。

I got this chick from uptown, she my summer bunny / Both parents broke, but she come from money

アップタウンから連れてきた女がいる、俺のサマー・バニー / 両親は破産してるのに、彼女は金持ちのふりをする

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「summer bunny」= 夏だけのカジュアルな恋愛相手のスラング。「uptown」= ニューヨークのハーレム・ワシントンハイツ地区。

She so bad, I make her hit the telly from a taxi / Then dead her in the Holiday Inn, learned that from Max B

彼女はいい女だが、タクシーでホテルに直行させて / ホリデーインでお払い箱にする——マックスBから学んだ

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Max B(ウェーヴィー・クロコ)はニューヨークのラッパー。「dead」= 関係を終わらせる。ダークユーモアが強いバース。

I made it right before their eyes, like I was Benihana's / Is it me, or is what I'm hearing just pitiful?

目の前でやって見せた、まるでベニハナのパフォーマンスのように / 俺だけか、それとも最近聴こえてくる音楽は哀れなのか?

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Benihana(紅花)は鉄板焼きを目の前で披露する日系レストランチェーン。「目の前でスキルを見せた」の比喩として使用。

The boy's Rodman with the trash talk / Magic or Walt with the black ball

俺はトラッシュトークのロッドマン / バスケットボールではマジックかウォルト

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Dennis Rodmanはトラッシュトークで知られるNBAの悪童。Magic Johnson・Walt Frazierはバスケの伝説。「black ball」はバスケットボールとブラックカルチャーの二重の意味。

I know hip-hop's alive and well / If it died, you other crews wouldn't survive the smell

ヒップホップは生きてて健在だと知っている / もし死んでいたら、お前ら他のクルーは腐臭に耐えられないだろう

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バースの締め。「ヒップホップが死んでも、腐った死体の臭いすら周りのクルーは耐えられない」という二重の皮肉で終わる。

Verse 3 · Crooked I

I spot a victim, the plot'll thicken when the clock is tickin' / I caught him slippin', I gotta give him a shot, I hit him / With proper spittin', hottest writtens and compositions

ターゲットを発見、時計が刻む中でプロットは厚みを増す / スキを突いて一発食らわせる / 本物のスピット、最高のライムと構成で

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「slippin'」= 油断している瞬間。「spit」= ラップすること。-in/-tion の脚韻を高速連打するCrooked Iの技法のデモンストレーション。

So competition's a contradiction / Somebody mention they got a Crooked, highly fiction

だから競合なんてのは矛盾に過ぎない / 俺に勝てると言う奴がいれば、それは完全なフィクション

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「Crooked」は自分の名前(Crooked I)と「曲がった・不正」の意を掛けている。「got a Crooked」= 自分に匹敵する存在がいると主張すること。

Opposition, I'll body quick as Bugatti engines / I'm on a mission to get richer, the sickest lyric-kicker

反対勢力は、ブガッティのエンジン並みの速さで葬り去る / 金持ちになる使命を持つ、最もヤバいリリックのキッカー

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Bugatti = 最高級スーパーカー。エンジンの加速を「相手を仕留める速さ」に喩えた。

Sip liquor, spit like a sick mixture / Of Notorious, Pun and L; get the big picture?

リカーを飲みながら、Notorious、Pun、Lの病的な混合物のようにスピットする——「The Big Picture」が見えたか?

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Notorious B.I.G.・Big Pun・Big L——全員「Big」の名を持つNYハードコアの早世した三大伝説。「The Big Picture」はBig Lの遺作アルバムタイトル(2000年)。3人全員「Big」→「big picture」= Big Lのアルバム名、という三重の掛け言葉。

My mind so deadly it's just like the beanie is close to a holster / It's over, control my whole coastal region

俺の頭脳はあまりに危険で、ビーニーがホルスターのそばにあるようなもの / 終わりだ、俺は沿岸地域全域を制圧する

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「beanie(ニット帽)」と「holster(銃のホルスター)」を結びつけた危険な知性の比喩。Crooked IはLong Beach出身でウエストコーストを代表。

Ruthless as Eazy, nigga, approach, I'm squeezin' / Believe me, dopest West-Coaster breathin'

Eazy-E並みの冷酷さ、近づいたら引き金を引く / 信じろ、生きているウエストコーストで最もヤバい奴

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Eazy-E(故人)はN.W.Aのリーダーでウエストコーストの象徴。Ruthless Records(Eazyのレーベル)とruthless(無慈悲)を掛けている。

You 'bout to die in this cypher / Before you die you should do the Jada and leave a will, for real

お前はこのサイファーで死ぬ / 死ぬ前にジャダ(ジャダキス)を見習って遺書を残せ、マジで

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Jadakissの「Will」(2004年)は意志表明と遺言書をダブルミーニングにした名曲。「サイファーでお前は終わる」という宣告。

Verse 4 · Joell Ortiz

I ain't a rap dude, I'm a dude who rap / Before this I was movin' crack

俺はラップ野郎じゃない、ラップをする野郎だ / これより前は麻薬を売ってた

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「rapper」という職業アイデンティティではなく「street dude who happens to rap」という自己定義。ブルックリン出身のJoellの実体験からの言葉。

Skinny jeans don't mean your ass shoot, it means your booty claps

スキニージーンズは銃を撃つ意味じゃない、ケツが揺れてるってことだ

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スキニージーンズ流行を皮肉ったライン。「ファッション系ラッパー=本物のギャングじゃない」という古典的ハードコア批判。

Don't play like Tyler Perry / This the Slaughterhouse of pain, flow brown, tight and heavy

タイラー・ペリーのふりをするな / ここはスローターハウスの痛みの家、フロウはブラウン、タイトでヘビー

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Tyler Perryはコメディ映画・マデア・シリーズで知られる。「ふざけたキャラを演じるな」の意。「flow brown」= ブルックリンのダーティさを色で表現。

When it come to sixteens, I'm a fiend / Seen in the studio near a needle with a mean lean

16バーのことになると俺は中毒者 / スタジオでニードル(レコード針)とともに深くのめり込んでいる

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「sixteens」= 16小節のヴァース(ラップの標準単位)。「needle」= レコード針と麻薬注射針のダブルミーニング。「lean」= 前傾姿勢と、処方薬乱用スラングの両方。

Man, all these Olajuwons, we the dream team

みんなオラジュワン(ドリーム)だ、俺たちはドリーム・チーム

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Hakeem Olajuwon(ハキーム・オラジュワン)のニックネームは「The Dream(ドリーム)」。全員がドリーム級=Slaughterhouseはドリームチームという言葉遊び。

They fiendin' for us to break, like Beyonce's water / The four quarters doin' all the eatin'

連中は俺たちが破水するのを待ち望んでいる、ビヨンセの破水のように / 四つのクォーターが全部食ってる

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2011年Beyoncéは第一子(Blue Ivy)妊娠中。「破水(water breaking)」と「break(解散)」を掛け、「四つのクォーター」= Slaughterhouseの4人全員が稼いでいる意。

And y'all gotta know why I made the cut, I'm Puerto Rican / Ortiz keep the fire ready / And tryna put me out's like tryna steal a transvestite from Eddie

なぜ俺が選ばれたか分かるだろ、俺はプエルトリカン / オーティスは常に火を用意してる / 俺を消そうとするのは、エディからトランスベスタイトを盗もうとするようなもの

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Eddie Murphy(エディー・マーフィー)は1997年にトランスジェンダーの売春婦とのスキャンダルがあった。「誰も盗もうとしない」= 不可能なミッションという比喩。

Verse 5 · Royce da 5'9"

I'm do-or-die dope / And you can make the sticker sittin' on the door of that Phantom your suicide note

俺はやるかやらないかのドープ / ロールス・ロイス・ファントムのドアのステッカーを遺書にしろ

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Rolls-Royce Phantom(幽霊)の名前と「自分が幽霊になる(死ぬ)」を掛けた黒いユーモア。Royceらしい洗練された比喩。

Hi, Rihanna, is Nicki livin' witchu? / Let me know so I can buy binoculars and telescopes

ハイ、リアーナ、ニッキーはそこに住んでる? / 教えてくれたら双眼鏡と望遠鏡を買いに行く

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Rihanna(リアーナ)とNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)への下ネタ交じりの言及。2011年当時二人は共にヒット曲を出していた。

Don't ask me nuttin' 'bout Budden, I beat my girl too / You aks me why do I keep her, I say it's cheaper to

バドゥンのことは聞くな、俺も女を殴る / なぜ付き合い続けるかって? その方が安上がりだからだ

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Joe Buddenはパートナーへの暴力疑惑がある。Royceがバディの問題を自虐的に引き受けるブラックユーモア。「cheaper to keep her」はJohnnie Taylorの古典ソウル曲から。

Rappers, I'm your daddy, I tell you straight as this / You don't kill, but your father will, like Jaden Smith

ラッパーよ、俺はお前らの親父だ、これをまっすぐ言ってやる / お前は殺れないが、お前の父親は殺れる——ジェイデン・スミスのように

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Jaden Smithの父はWill Smith(「I, Robot」「Ali」等のアクション俳優)。「お前は大したことないが親父は凄い」という皮肉。

I tell you like I tell my Spanish chick / You fly, but I ain't goin' down on no landin' strip

スペイン系の彼女に言うように言ってやる / お前は飛んでるけど、俺はランディング・ストリップには降りない

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「landing strip(滑走路)」は陰毛のスタイルのスラング。Royce流の二重の意味を持つ下ネタ。

So get your wax on, like Daniel San, or I'ma have to / Run / Like De la Hoya in drag when cameras come

ワックスオンしろ、ダニエル・サンのように、じゃなきゃ俺はお前を追いかける / カメラが来たときにドラッグ姿で逃げるデ・ラ・ホーヤのように走って

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「Wax on, wax off」= 映画「ベスト・キッド」のダニエル(Daniel-san)の訓練シーン。Oscar De La Hoyaは2007年に女装写真がリークし記者から逃げた。

Point out the greatest rapper alive, I'll headshot him / Smack his girl on the butt and buy her some red bottom

最高のラッパーを指差してみろ、俺がヘッドショットしてやる / 彼女の尻を叩いてルブタン(赤底)を買ってやる

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red bottom = Christian Louboutinの靴(ソールが赤い高級ブランド)。「最強の奴を倒して彼女を奪う」という定番のブラガドーシャス(自慢)ライン。

Yeah, this what two million singles sold / And an album that's gold look like without having to sell your soul / Nickel

そう、これが魂を売らずにシングル200万枚 / ゴールドアルバムを達成した姿 / ニッケル

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「Nickel」= Royceのニックネーム(5'9" = 5セントコイン = Nickel)でバースを締める。ビジネス的成功を誇示しつつアイデンティティで終わらせるクロージング。

Verse 6 · Eminem

You 'bout to see peace destroyed, it'll never be restored / When I unleash these beastly hordes on your CD stores

平和が壊されるのを目撃する、永遠に回復しない / 俺がこの凶暴な群れをCDショップに解き放てば

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冒頭から宣戦布告。「CD stores」= 2011年当時まだ流通していたフィジカルメディア市場への圧倒的支配力の誇示。

Wanna stop it? You gon' need a priest, at least three swords / A license to ill from the Beastie Boys, three Ouija boards

止めたい? 神父が一人、少なくとも剣が三本必要だ / ビースティ・ボーイズからイルのライセンス、ウィジャボードが三枚

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「License to Ill」はBeastie Boysの1986年デビューアルバム。Eminemを止めるには超自然的な力が必要だという誇張。ウィジャボードは降霊術のボード。

And a squeegee, and please be warned, don't ask what the squeegee's for / Or the holy water, acid raps that'll eat these floors

スクイージーも。何のためのスクイージーかは聞くな / 聖水も。床を溶かすアシッドラップも

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「squeegee(窓拭きゴム)」という日常品を儀式リストに混ぜる不条理なユーモアはEminem流。「acid raps」= 強烈なリリックと化学薬品の二重の意。

Eat a hole in a rhyme book, you see these horns? / And as for me, you ask, when I'm gone, will he be mourned? / Is puke lukewarm?

ライムブックに穴を開けた、この角が見えるか? / 俺が去ったとき、弔われるかと聞くか? / 吐瀉物はぬるいか?

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「horns(悪魔の角)」= 自分を悪魔的存在として描く。「Is puke lukewarm?(吐いたものはぬるいか?)= 当然そうだ」という答えが自明な反語でYes/Noを表現。

Should Casey Anthony do porn? / Can that chick fit a newborn dead baby inside a frickin' shoebox with a shoehorn

ケイシー・アンソニーはポルノをすべきか? / あの女、靴べらで靴箱に死んだ赤ちゃんを詰め込めるか

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Casey Anthonyは2011年に2歳の娘殺害罪で無罪評決を受け全米に衝撃を与えた。Eminemが最も物議を醸すニュースをラップに直結させた例。

Yeah, big deal / I took some little kid's Big Wheel and spit in his frickin' big kids meal

そうだ、大したことだ / ガキのビッグ・ウィールを奪って、ビッグキッズミールに唾を吐いてやった

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Big Wheel = 子供用三輪車おもちゃ。Big Kids Meal = マクドナルドのこども向けセット「Happy Meal」の比喩。無邪気なものを蹂躙する悪童キャラの再演。

Is it dust we 'bout to kick up? / Can Yelawolf fit a fifth of rum in a big cup / Between his stick shift in his frigging pickup / And drink like a hick redneck hillbilly will 'til he gets hicc-ups?

俺たちが巻き起こすのは砂埃か? / ヤームウルフはピックアップトラックのシフトレバーの間に / ラムの5分の1ボトルをデカいカップに入れて / ヒック(田舎者)みたいにしゃっくりが出るまで飲めるか?

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「hicc-ups」の最後の-upsで韻を最後まで引っ張る芸当。YelawolfのアラバマA出身という出自を南部ステレオタイプでいじる。hick/redneck/hillbilly = 南部白人の蔑称。

Flippin' the script up, like Mike Vick / Gettin' bit in his junk by a Pit, yup, I'm a sick pup

脚本をひっくり返す、マイク・ヴィックのように / ピット・ブルに股間を噛まれる——そうだ、俺は病んだ子犬

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Michael Vickはドッグファイトの主催で2007年に有罪判決を受け、NFL選手生命を一時失った。「pit(ピット・ブル犬)」と「pit(試合場)」を掛ける。

You said you're gonna do X-Y-Z / 'Til you fuck around and get dropped / Like an E when you add an I-N-G

X・Y・Zをやると言った / ところがまんまとドロップされる / ING を付けたときのE のように

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英語文法ルール:語末がeの単語にingを付けると e が消える(例:dance→dancing)。「お前の名前も消える」という言語遊び。Eminemのリリカルな知性が光る瞬間。

Don't put a K in front of that, though, when I MC / 'Cause I'm not the king of this microphone booth, it's more like a phone booth / Superman in this bitch, Kryptonite won't do / It gives me more power

ただし俺がMCするとき頭にKを付けるな / マイクブースの王じゃない、これは電話ボックスに近い / 俺はこの場のスーパーマン、クリプトナイトも効かない / むしろパワーが増す

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KMC = K + MC の語遊び。電話ボックス→スーパーマンが変身する場所という流れ。Eminemは「クリプトナイト(弱点)も俺には効かないどころか力になる」と宣言。

I bump the Fat Boys and / Eat rat poison, take meteor showers / Fresh outta the mental hospital

ファット・ボーイズをかけて / ネズミ毒を食い、流星雨を浴びる / 精神病院から出たてのホヤホヤで

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Fat Boys = 1980年代の肥満キャラのヒップホップグループ。「rat poison(ネズミ毒)を食う」「meteor showers(流星雨)を浴びる」は無敵の誇張。精神病院ネタはEminem自身のキャラクター「Slim Shady」の狂気キャラクターを指す。

Me pushin' up daisies, that thought is impossible / As if flashin' across the news / Posdnuos was caught with a prostitute

俺が土に還る(死ぬ)なんて考えは不可能だ / まるでニュース速報で / ポスドヌオスが売春婦と捕まったかのように

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Posdnuos(ポスドヌオス)= De La Soulのコンシャス・ラッパー。善良なイメージの彼が売春婦と逮捕されるくらいあり得ない=Eminemが死ぬなんてあり得ない、という反語的比較。

So kill the rumors, it ain't happenin'; I'ma rap 'til I'm fossil fuel

噂を消せ、そんなことは起きない——俺は化石燃料になるまでラップし続ける

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「fossil fuel(化石燃料)」= 地層に埋もれて化石になるまで、つまり永遠にラップし続けるという誓い。このバースの——そしてサイファー全体の——締めのライン。

■文化的背景と意義

このサイファーが録られた2011年はヒップホップにとって重要な転換点だった。Jay-ZとKanye Westが「Watch the Throne」で商業的な共同作業の頂点を示す一方、Shady Recordsはアンダーグラウンドとメジャーの間でリリシズムの純粋さを守ろうとしていた。

使用ビートはEast Flatbush Project「Tried by 12」(1993年)のインスト。ブーンバップの正統を踏まえたビート選択は、Eminemが「真のヒップホップ」への回帰を意識していたことを示す。

Slaughterhouseの4人は2012年に「Welcome to: Our House」でShady/Interscope からメジャーデビューする直前であり、このサイファーはその前哨戦として機能した。特にCrooked IとRoyce da 5'9"のバースは技術的完成度の高さで批評家から絶賛された。

アーティストについて

Eminem

St. Joseph, Missouri (raised in Detroit, Michigan) · 1996–

本名Marshall Bruce Mathers III。デトロイト出身の白人ラッパーとして人種の壁を越え、歴代最多売上を誇るラッパーに。1999年「The Slim Shady LP」でメジャーデビュー。「Stan」「Lose Yourself」「Eminem Show」などで社会現象を巻き起こした。アカデミー賞(「Lose Yourself」)、グラミー賞15回受賞。

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