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Incarcerated Scarfaces 和訳・意味・スラング解説 | Raekwon

アーティスト
Raekwon
リリース年
1995
プロデューサー
RZA
収録アルバム
Only Built 4 Cuban Linx...
エリア
NY
BPM
87
サンプル元
David Axelrod "A Divine Image" (1971)

この記事の見どころ

  1. 01 "incarcerated scarfaces"——夢を持ちながら塀の中に閉じ込められたスカーフェイスたちへ捧げる連帯の言葉
  2. 02 "Rae's a heavy generator, but yo, guess who's the black Trump?"——黒人版トランプを自称するRaekwonの野心宣言
  3. 03 "pardon the French, but let me speak Italian / Black stallions wildling on Shaolin"——スタテンアイランド(Shaolin)をイタリアマフィアの世界に重ねる比喩の妙
解説

■この曲の意味(要約)

映画的なスキットで幕を開け、Raekwonが「incarcerated scarfaces(収監されたスカーフェイスたち)」へ向けて連帯と野望を語る1995年の東海岸ハードコア金字塔。RZAがDavid Axelrodのソウルをサンプリングして構築した重厚なブームバップの上で、Raekwonは出世・暴力・貧困・プライドを縦横に展開する。3つのバースはそれぞれスタイルの異なる語り口を持ちながら、「時間は切れていく、だが俺は諦めない」という一貫したテーマで貫かれている。

■概要

1995年8月1日リリースのRaekwonソロデビュー作『Only Built 4 Cuban Linx...』収録。プロデュースはRZA。David Axelrodの「A Divine Image」(1971年)をサンプリングし、ミッドテンポ(約87BPM)の不穏でメロウなブームバップビートを構築。アルバム全体が映画『スカーフェイス』からインスパイアされたコンセプト作であり、Raekwonは「Lex Diamonds」というペルソナを纏ってマフィア的な世界観を描く。本曲はアルバムの5曲目に収録され、フィルムノワール的なトーンを決定づける重要トラックとして機能する。レーベルはLoud Records / RCA Records。

■主なスラング・キーワード

incarcerated scarfaces
「収監されたスカーフェイスたち」。映画『スカーフェイス』のトニー・モンタナのような野心を持ちながら、塀の中(刑務所)にいる仲間たちへの敬意と連帯。タイトルかつ曲のコアテーマ。
Lex Diamonds
Raekwonがアルバムで採用したペルソナ。洗練されたファッションと冷徹さを併せ持つギャングスターのキャラクター。
the black Trump
1995年当時のドナルド・トランプは不動産富豪の代名詞。「黒人版トランプ」と自称することで、ストリートからの成り上がりと富の蓄積への強い野心を示す。
dough / paper / knots
いずれも「金(現金)」を意味するストリートスラング。Knotsは輪ゴムで束ねた札束を指す。
Land(Land Cruiser)
トヨタ・ランドクルーザー。1990年代NYストリートでステータスシンボルとして人気の高かったSUV。
Timbs
Timberland(ティンバーランド)のブーツ。1990年代のNYストリートファッションを象徴するアイテム。Wu-Tang Clan周辺で特に愛用された。
Wallabees
Clarks Wallabee(クラークス・ワラビー)。ウータン界隈で定番の靴。RZAやGhostface Killahが好んで着用し、Wu-Tang Clanのドレスコードの一部となった。
Shaolin
Wu-Tang ClanがStaten Island(スタテンアイランド)に付けたコードネーム。少林寺(Shaolin Temple)から来ており、カンフー映画への傾倒を反映する。
Ac'
Acura(高級車ブランド)の略。Acura Integraなどが1990年代NYストリートで成功の象徴として多用された。
politic
「話し合う、連絡を取り合う、情報交換する」という意味のストリートスラング。政治的に動くという含意もある。
sons who
「誰がボスか証明する」「誰を子分にするか決める」の意。「son」はNYスラングで部下・格下を意味する動詞として使われる。
yard(for the feds)
100ドルのこと(yard = $100)。「feds(連邦捜査官)」への情報提供の報酬として100ドルを受け取ったという意味。

■歌詞和訳・解説

Skit — Film Dialogue

He looks determined without being ruthless
Something heroic in his manner

残酷さのない決意を持つように見える
立ち振る舞いに英雄的なものがある

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映画的なナレーションで始まるスキット。犯罪の世界に生きながら「英雄的な何か」を持つ人物の描写——Raekwonが自らのペルソナ「Lex Diamonds」を第三者の目線で紹介する演出。

There's a courage about him, doesn't look like a killer
Comes across so calm

勇気はあるが、殺し屋には見えない
とても落ち着いた印象を与える

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「killer」に見えないという逆説がポイント。Wu-Tangの美学——暴力を内包しながら表面上は冷静沈着でいること——の体現。Raekwonのライムスタイル自体も「計算されたクールネス」で知られる。

Acts like he has a dream
Full of passion

夢を持っているかのように振る舞う
情熱に満ちている

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ストリートのアウトローを「夢と情熱を持つ人間」として描くことで、単純な犯罪讃美ではない複雑な人間像を提示。『スカーフェイス』のトニー・モンタナも「American Dream」を追い求める人物として描かれた。

You don't trust me, huh?
Well, you know why
I do, we're not supposed to trust anyone in our profession anyway

俺を信用しないのか?
まあ、理由はわかるだろ
わかってる——俺たちのような商売では、誰も信用すべきじゃないんだから

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犯罪組織の不信と孤独を描く台詞。「our profession」という言葉で麻薬取引・犯罪を「職業」として語る冷徹さが際立つ。映画『スカーフェイス』の世界観を踏まえた対話形式の演出。

Intro — Raekwon

Knock n***as out the box all the time
n***as know my motherf**kin' repertoire, big ones (Uh-huh)

いつも奴らをぶっ飛ばしてきた
奴らは俺のレパートリーを知ってる、でかいやつを(そうだ)

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「out the box」は「枠の外へ(= 圧倒する)」の意。「repertoire(レパートリー)」をライムとも武器とも取れる二重の意味で使用。「big ones」は大きな楽曲とも大きな銃とも解釈できるダブルミーニング。

(Yeah, motherf**ker, straight up)
(I'll f**k your whole team up) Take care of B.I., Chef
(Yeah, bust it, yo, yo) Fly G.I. n***as

(そうだ、マジの話)
(お前のチームごとぶっ壊す)B.I.の面倒を見ろ、シェフ(Raekwonの別名)
(さあいくぜ)イかした軍人スタイルの奴ら

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複数の声がオーバーラップするイントロの構造。「Chef」はRaekwonの別名(料理人=ドラッグを調合する者)。「B.I.」はビジネス(Business Interests / Business Is...)の略。「G.I.」は軍人スタイルを意味し、Wu-Tangの軍事的チームワークを暗示。

Chorus

Now, yo, yo, what up, yo? Time is runnin' out
It's for real, though, let's connect, 話し合う・連絡を取り合う・情報交換するというストリートスラング , ditto

よお、聞けよ、時間は切れていく
マジな話だ、繋がって、語り合おう、同感だろ

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「Time is runnin' out」はチョーラスの核心。刑務所の時間、命の時間、チャンスの時間——あらゆる「残り時間」への緊迫感。「politic」は「話し合う」の意で、仲間との連携を呼びかける。

We could trade places, get lifted in the staircases
Word up, peace, incarcerated scarfaces

立場を交換して、階段で浮き上がれる
マジだ、平和を——収監されたスカーフェイスたちへ

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「trade places」は社会的立場の逆転——底辺から頂点へ。「get lifted in the staircases」は文字通り階段で大麻を吸うことと、現実から「浮き上がる」ことのダブルミーニング。「incarcerated scarfaces」——塀の中にいる仲間たちへの連帯の言葉がタイトルとして機能する。

Verse 1 — Raekwon

Thug-related style attract millions, fans
They understand my plan, who's the kid up in the green トヨタ・ランドクルーザー。1990年代NYストリートのステータスカー ?

サグなスタイルが何百万のファンを引きつける
みんな俺のプランを理解してる——グリーンのランクルに乗ってるあのガキは誰だ?

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「thug-related style」は暴力や犯罪と結びついたラップスタイル——それが大衆を惹きつけるという逆説。「green Land(緑のランドクルーザー)」に乗る自分を第三者視点で描く映画的手法。

Me and the RZA connect, blow a fuse, you lose
Half-ass crews get demolished and bruised

俺とRZAが繋がればヒューズが飛ぶ、お前の負け
半端なクルーは壊滅して傷だらけになる

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「blow a fuse(ヒューズが飛ぶ)」は電力過負荷の比喩——RZAのビートとRaekwonのリリックが合わさった時の爆発的な化学反応を表す。「half-ass crews」は中途半端なグループへの挑発。

Fake be fronting, hourglass-heads n***as be wanting
Shutting down your slot, time for pumping

偽物が見栄を張り、砂時計頭の奴らが欲しがる
お前の枠を閉鎖して、ポンプアップの時間だ

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「fronting(フロンティング)」は実態と違うふりをすること。「hourglass-heads」は時間を無駄にしている奴らの比喩。「shutting down your slot」は競争相手の席を奪うこと。「pumping」は活動を加速させること。

Poisonous sting, which thumps up and act chumps
Rae's a heavy generator, but yo, guess who's the 1995年当時の不動産富豪ドナルド・トランプを模した黒人版富豪としての自己誇示 ?

毒の刺し、ドカンと来て間抜けにする
Raeは強力な発電機だ——だが、黒人版トランプは誰だと思う?

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「poisonous sting」はRaekwonのリリックの毒性と破壊力。「heavy generator」は電力を生み出す存在——Wu-Tangの経済エンジンとしての自負。「black Trump」は1995年当時の富豪の象徴であるトランプを黒人の文脈に置き換えた大胆な自己表現。

Dough be flowing by the hours, Wu, we got the collars
Scholars, word life, peace to Power and my whole unit

金は時間ごとに流れ込んでくる、Wu、俺たちが首輪を持ってる
学者たちよ、マジの話だ、Powerと俺のユニット全員に敬意を

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「we got the collars(首輪を持つ)」は支配権・主導権を握ること。「Scholars」は五%ネイション(Nation of Gods and Earths)の教義で知識を追求する者への称号。「Power」はWu-Tang関係者の名前またはスラングで「知識と力」を意味する。

Word up, quick to set it, don't wet it
Real n***as lick shots, peace Connecticut

マジだ、素早く仕掛けろ、湿らすな
本物の奴らは銃を撃つ——コネチカットに敬意を

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「quick to set it」は素早く行動・ラップで仕掛けること。「don't wet it」はビートやゲームを「湿らせる(= 台無しにする)」な、という意。「lick shots」は銃を撃つ行為。コネチカット州への言及はニューヨーク周辺の仲間への連帯の挨拶。

Chorus

Now, yo, yo, what up, yo? Time is runnin' out
It's for real, though, let's connect, politic, ditto
We could trade places, get lifted in the staircases
Word up, peace, incarcerated scarfaces

よお、聞けよ、時間は切れていく
マジな話だ、繋がって、語り合おう、同感だろ
立場を交換して、階段で浮き上がれる
マジだ、平和を——収監されたスカーフェイスたちへ

Verse 2 — Raekwon

Chef'll shine like marble, rhyme remarkable
Real n***as raise up, spend your money, argue

シェフは大理石のように輝く、ライムは驚異的
本物の奴らは立ち上がって、金を使って、言い合いをする

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「shine like marble(大理石のように輝く)」は高級素材——成功と洗練の象徴。「remarkable」と「marble」の脚韻が鮮やか。「raise up, spend your money, argue」はストリートでの生き方を3段階で圧縮。

But this time is for the uninvited
Go 'head and rhyme to it, b***h n***a, mics is getting fired

だが今回は招待されなかった者たちのためだ
さあラップしてみろ、このヘタレ、マイクは燃え上がってる

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「uninvited(招待されなかった者)」はメインストリームから排除された人々、または刑務所にいる仲間たち。「mics is getting fired」はマイクが発砲されるほど過激に使われるという比喩——ラップの武器化。

More fiends, chicks be burning like chlorine
n***as recognize from here to Baltimore to Fort Greene

もっと多くの中毒者、女たちは塩素のように燃える
ここからボルティモアからフォートグリーンまで奴らは認める

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「fiends(中毒者)」はドラッグの蔓延するストリートの現実。「burning like chlorine」は性病の比喩(chlorineは消毒液)。Baltimore~Fort Greene(ブルックリン)という地名の羅列で東海岸全域への名声を示す。

But hold up, モエ・エ・シャンドン。高級シャンパンの代名詞。1990年代ヒップホップの成功の象徴として頻出 もう一度タップで詳細 → be tasting like throw-up
My mob roll up, dripped to death, whips rolled up

でも待ってくれ、モエが嘔吐物のような味がする
俺のギャングが集結して、バリバリにキメて、高級車で乗りつける

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「Moët tasting like throw-up」は成功の象徴だったシャンパンへの倦怠感——富に慣れきった状態の逆説的表現。「dripped to death」は最高のファッションに身を包むこと。「whips」は高級車のスラング。

You never had no wins, sliding in these dens
With Timberland(ティンバーランド)のブーツ。Wu-Tang周辺のストリートファッションの定番 , with MAC-10's and broke friends

お前には勝ちがなかった、これらのアジトに潜り込んで
ティンバーランドを履いて、MAC-10を持って、金のない仲間たちと

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「dens(アジト)」はドラッグの売買所や仲間の溜まり場。「MAC-10」はサブマシンガン。「broke friends(金のない仲間)」という正直な描写がリアリズムを増す——成功していないのにそのライフスタイルを演じる偽物への批判。

You got guns? Got guns too, what up, son?
Do you wanna battle for cash and see who 「誰がボスか、誰を格下にするか」を決める。sonはNYスラングで部下・格下を意味する動詞 ?

お前、銃持ってるか?俺も持ってるぞ、どうだよ?
金を賭けてバトルして、誰がボスか決めようじゃないか?

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直接的な挑発の連打。「what up, son?」の「son」は格下への呼びかけ。「battle for cash」はラップバトルと銃バトルの両方を重ねる。「who sons who」で支配関係を決める——ヒップホップの競争原理を凝縮。

I'll probably wax tracks, smack rap n***as, you, facts
n***as' lyrics are wack, n***a

俺はトラックを磨き上げ、ラップの奴らをぶっ叩く、お前に、事実として
奴らのリリックはダサい、以上

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「wax tracks」はレコードを磨く(= 最高のトラックを作る)こと。「smack rap n***as」は直接的な攻撃性の誇示。「wack(ダサい)」はヒップホップで最大の侮辱語のひとつ——リリカルな力量への自信と競合への軽蔑。

Can't stand unofficial, wet tissue, blank busting Scud missiles
You rolling like Trump, you get your meat lumped

非公式な奴は嫌いだ、濡れたティッシュ、空のスカッドミサイルを撃つだけ
トランプみたいにデカい顔してると、ぼこぼこにされるぞ

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「wet tissue(濡れたティッシュ)」は弱さの象徴——脅威にならない相手への侮蔑。「blank busting Scud missiles」は空砲のスカッドミサイル——見た目だけで中身のない威嚇。「rolling like Trump」はトランプのように尊大に振る舞うことへの警告。

For real, it's just slang rap democracy
Here's the policy, slide off the ring, plus the Clarks Wallabee。Wu-Tang Clanのドレスコードの定番シューズ

マジな話、これはスラング・ラップの民主主義だ
これがポリシーだ、指輪を外して、ワラビーも脱げ(= 全部渡せ)

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「slang rap democracy」は独創的な造語——ストリートスラングで語るラップが公平に競い合う場所。「slide off the ring, plus the Wallabees」は貴重品(リング・靴)を強奪する命令——または音楽的なバトルで全てを奪う比喩。

Check the status, soon to see me at, Caesar's Palace eating salads
We beating mics sending keys to Dallas

ステータスを確認しろ——もうすぐシーザーズ・パレスでサラダを食ってる俺が見られる
俺たちはマイクをぶちかまして、ダラスにキーを送ってる

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「Caesar's Palace」はラスベガスの高級ホテル兼カジノ——成功の象徴。「salads」は健康的な食生活で成功者のライフスタイルを示す。「sending keys to Dallas」は「鍵(麻薬の隠語・またはビジネスの鍵)」を全国に送るという成功の拡大。

I move rhymes like retail, make sure s**t sell
From where we at to my man's cell

俺はライムを小売りのように動かして、確実に売れるようにする
俺たちのいる場所から、仲間の独房まで

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「move rhymes like retail」はラップを商品として流通させるビジネス的視点。「my man's cell(仲間の独房)」——刑務所にいる仲間にも届くようにという願いが込められており、「incarcerated scarfaces」というテーマと直結。

From staircase to stage, minimum wage
But soon to get a article in Rap Page

階段から舞台へ、最低賃金から
でももうすぐラップ雑誌に記事が載る

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「from staircase to stage」——アパートの階段(「get lifted in the staircases」)からライブの舞台へという上昇軌跡。「minimum wage」は貧困の出発点。「Rap Page」は1990年代の実在したヒップホップ雑誌で、掲載されることが成功の証だった。

But all I need is my house, my gat, my Acura(高級車)の略。1990年代NYストリートの成功の象徴 もう一度タップで詳細 →
Bank account fat, it's going down like that

でも俺が必要なのは、家と銃とAcuraだけ
銀行口座はパンパン——そういう感じで進んでいく

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シンプルな成功の定義——家・護身用の銃・高級車・太った銀行口座。マスメディア的な「アメリカンドリーム」をストリート版に翻訳したRaekwonの価値観宣言。「it's going down like that」は「そういう流れでいく」という宣言。

And pardon the French, but let me speak Italian
Black stallions wildling on Shaolin

フランス語は失礼、だがイタリア語で話させてくれ
黒い種馬たちがシャオリンで暴れまわってる

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「pardon the French(フランス語は失礼)」は英語の慣用句で「汚い言葉を使うが許してくれ」の意。「speak Italian」はイタリアン・マフィアの語り口でいく宣言。「Black stallions」は黒人男性を力強い馬に例える。「Shaolin(少林)」はStaten Island(スタテンアイランド)の隠語。

That means the island of Staten
And n***as carry gats and mad police from Manhattan

つまりスタテン島のことだ
そして奴らはガットを持ち歩き、マンハッタンからは大勢の警官が来る

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スタテンアイランド=Shaolinの解説を自ら行う珍しいライン。「gats(ガット)」は銃のスラング。「mad police from Manhattan」——マンハッタンから大量の警察が来るという包囲状況が、「incarcerated scarfaces」というテーマを補強する。

Chorus

Now, yo, yo, what up, yo? Time is runnin' out
It's for real though, let's connect, politic, ditto
We could trade places, get lifted in the staircases
Word up, peace, incarcerated scarfaces

よお、聞けよ、時間は切れていく
マジな話だ、繋がって、語り合おう、同感だろ
立場を交換して、階段で浮き上がれる
マジだ、平和を——収監されたスカーフェイスたちへ

Verse 3 — Raekwon

I do this for barber shop n***as in the Plaza
Catching asthma, Rae is sticking gun-flashers

これはプラザの床屋で屯する奴らのためにやってる
喘息になりながら、Raeは銃を見せつける奴らを仕留める

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「barber shop n***as」——床屋はNYの黒人コミュニティの社交場。「the Plaza」はスタテンアイランドの地元の商業施設または団地を指す。「catching asthma」は貧困な環境(換気の悪いアパート・汚染)への言及。「gun-flashers」は銃を誇示して脅す人間。

Well-dressed, skating through the projects with big ones
Broke elevators, turn the lights out, stick one upstairs

よそ行きの格好で、でかい銃を持って団地を滑るように歩く
壊れたエレベーター、電気を消して、上の階で一人を仕留める

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「projects(プロジェクト)」はニューヨークの公営住宅。「broke elevators(壊れたエレベーター)」は貧しい環境のリアルな描写。「turn the lights out」は停電または人を「消す(殺す)」こと。団地の暗い階段での犯罪を映画的に描く。

Switch like a chameleon, hit Brazilians
Pass the cash or leave your children, leave the building

カメレオンのように変化して、ブラジル系を狙う
金を渡すか、子供を残して去れ、建物を出ろ

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「switch like a chameleon」はスタイルを素早く切り替えるアダプタビリティ。「hit Brazilians」は実際の強盗ターゲットの描写——1990年代NYにはブラジル系移民コミュニティが存在した。「pass the cash or leave your children」という冷酷な選択肢の提示がノワール的緊張感を高める。

n***as, yo, they be folding like envelopes
Under pressure, like Lou Ferrigno on coke

奴らよ、封筒みたいに折れ曲がる
プレッシャーの下で、コカインをやったルー・フェリグノみたいに

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「folding like envelopes」は圧力に屈して折れることの鮮やかな比喩。「Lou Ferrigno」はボディビルダー兼俳優(テレビ版インクレディブル・ハルク)。薬物で強化された大男——コントロール不能な暴力——の比喩として使う独創的なパンチライン。

Yo, Africans denying n***as up in yellow cabs
Musty like f**k, waving they arms to Arabs

よお、アフリカ系のタクシー運転手が黒人乗客を拒否してる
体臭まみれで、アラブ系に向かって手を振ってる

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1990年代NYで実際に問題視された「タクシーによる黒人差別」の描写。アフリカ系移民ドライバーが黒人乗客を拒否することへの皮肉——移民間の人種的緊張と差別構造を赤裸々に描いた社会批評ライン。

Sit back, cooling like Kahlúas on rocks
On the crack spots, rubber band wrap all my 輪ゴムで束ねた札束。現金のスラング

クールにしてる、ロック(氷)入りのカルーアみたいに
クラックの売り場で、輪ゴムで縛った俺の金束

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「Kahlúas on rocks」はカルーア・リキュールのロック——余裕と洗練のイメージ。クラックの売り場という危険な場所で「cooling(落ち着いている)」というコントラストが映画的。「rubber band wrap all my knots」はドラッグマネーを束ねる日常のリアル。

View b***hes who f**k dreads on Sudafeds
Pussy's hurting, they did it for a 100ドルのスラング($100 = a yard)。連邦捜査官への情報提供料として受け取った金額 for the feds

スーダフェッドをキメてドレッドの男と寝る女たちを見る
体が痛むのに、連邦捜査官のために100ドルでそれをやった

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「Sudafeds(スーダフェッド)」は風邪薬だが、当時はドラッグの代替または覚せい剤の前駆体として乱用された。「dreads(ドレッドヘア)」の男性——ジャマイカ系や黒人男性。「yard(100ドル)for the feds」——連邦捜査官への情報提供(密告)の報酬として100ドルという衝撃的な安値。

Word up, cousin, n***a, I seen it
Like a 27-inch Zenith, believe it

マジだ、カズン、俺は見てきた
27インチのゼニスのようにはっきりと、信じてくれ

解説を見る
「27-inch Zenith」はZenithブランドの27インチテレビ。1990年代NYでは大型テレビが成功の象徴であり、またニュース・ドラマで現実を見る窓。「like a 27-inch Zenith」——テレビで見るように鮮明に目撃したという比喩でバース3を締める。

Chorus

Now, yo, yo, what up, yo? Time is runnin' out
It's for real, though, let's connect, politic, ditto
We could trade places, get lifted in the staircases
Word up, peace, incarcerated scarfaces

よお、聞けよ、時間は切れていく
マジな話だ、繋がって、語り合おう、同感だろ
立場を交換して、階段で浮き上がれる
マジだ、平和を——収監されたスカーフェイスたちへ

Outro

Yo, yo, what up, yo? Time is runnin' out
It's for real, though, let's connect, politic, ditto

よお、聞けよ、時間は切れていく
マジな話だ、繋がって、語り合おう、同感だろ

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コーラスの解体バージョン。繰り返しによって「time is runnin' out(時間は切れていく)」というメッセージがより深く刻まれる——刑務所の時間、人生の時間、チャンスの窓、すべてが徐々に閉じていく緊迫感。

Get lifted in the staircases
Peace, incarcerated scarfaces

階段で浮き上がれ
平和を——収監されたスカーフェイスたちへ

Time is runnin' out
Politic, ditto
Incarcerated scarfaces

時間は切れていく
語り合おう、同感だ
収監されたスカーフェイスたちへ

■文化的背景

1990年代半ば、西海岸のG-Funk(Dr. Dre、Snoop Dogg)が商業的に席巻する中、ニューヨークはより暗く、より複雑なサウンドで対抗した。Wu-Tang Clanはその最先鋒であり、Raekwonのソロデビュー作『Only Built 4 Cuban Linx...』は「マフィオソ・ラップ(Mafioso Rap)」というサブジャンルを確立した金字塔だ。「Incarcerated Scarfaces」はその核心に位置するトラックで、映画『スカーフェイス』の野心・暴力・破滅の物語をスタテンアイランドのストリートに重ねて語る。コカインの蔓延、銃社会、タクシー差別、公営住宅の貧困——1990年代NYの現実がリリックに生々しく刻まれている。RZAはDavid Axelrodのソウルをサンプリングし、最小限の要素で最大限の不穏さを生み出した。Ghostface Killahとのコンビが「Criminology」でマフィオソ世界の扉を開いたとすれば、この曲ではRaekwonが一人でその世界の深部まで踏み込んでいく。

■評価とレガシー

『Only Built 4 Cuban Linx...』はローリングストーン誌をはじめ多くのメディアで「史上最も重要なヒップホップアルバム」の一つに選出されており、「Incarcerated Scarfaces」はそのフィルムノワール的世界観を決定づけるトラックとして特に高く評価される。Nas、Jay-Z、Big Punら後の東海岸リリシストが「映画的なストーリーテリング」をラップに持ち込む上で本作から直接影響を受けた。「slang rap democracy」というフレーズが示すように、スラングと詩性と暴力性を平等に扱う民主主義的なリリシズムは、以降のハードコアヒップホップの文体を形成した。日本では1990年代後半にアンダーグラウンドHIPHOPシーンがWu-Tang Clanの哲学を吸収し、SCARS・MSC・THINK TANKなどのグループがその影響を明確に受けた。クラシック盤として今も国内DJにプレイされ続け、「収監されたスカーフェイスたち」への連帯のメッセージは国境を越えて響き続けている。

アーティストについて

Raekwon

Staten Island, New York · 1992–

Wu-Tang Clanのメンバー、本名Corey Woods。1995年のソロデビュー作『Only Built 4 Cuban Linx...』でマフィオソ・ラップというサブジャンルを確立した。映画『スカーフェイス』を下敷きにした映画的世界観とGhostface Killahとのコンビネーション、RZAの地下スタジオで生まれたダーティなブーンバップが融合し、東海岸ハードコアの新たな頂点を築いた。「Cuban Linx」はヒップホップ史上最も重要なソロアルバムの一つとしてローリングストーン誌ほか各メディアで評価されている。

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