この記事の見どころ
映画『スカーフェイス』のダイアログで幕を開け、RaekwonとGhostface Killahが「犯罪学(criminology)」をラップで語るマフィオソ・ハードコアの金字塔。C.R.E.A.M.で描いた貧困を超え、スタテンアイランドのストリートからマフィア映画的な世界観へ昇華。RZAのダーティなブーンバップに乗り、二人がスラングと暴力と誇りを入り混じらせた全18行のリリックは、1990年代東海岸ハードコアの集大成だ。
1995年6月26日にRaekwonのソロデビュー作『Only Built 4 Cuban Linx...』の第2シングルとしてリリース。プロデュースはRZA。ビートはBlack Ivoryの「I Keep Asking You Questions」のドラムブレイクとSweet Inspirationsの「Why Marry」のホーン・ヴォーカルをサンプリングし、冒頭にはブライアン・デ・パルマ監督の映画『スカーフェイス』(1983年)でアレハンドロ・ソサがトニー・モンタナを怒鳴るシーンが直接引用されている。録音はRZAのスタテンアイランドの地下スタジオで、エンジニアなしでほぼ一人で完結させた。
I told you a long time ago, you f**king little monkey, not to f**k me
前から言ってるだろ、この猿野郎、俺に逆らうなと
Ayy, ayy, who the f**k you think you talkin' to, huh? You wanna f**k with—
Who the f**k you think I am, your f**kin' bellboy?
おい、俺に向かって何を言ってんだ?俺と揉めたいのか——
俺が誰だと思ってる?お前のベルボーイか?
D'you wanna go to war? D'you wanna go to war? We'll take you to war, okay? (Coming up on half a mil, we build)
戦争がしたいのか?戦争がしたいのか?望み通りにしてやる(50万に近づいてる、俺たちは築く)
For real, y'all
Takin' you on another one, son
Uh, スペイン人歌手。ここではRaekwonが「俺もそいつ並みに金を稼いでる」という自己誇示として使用
Makin' Cash Rules Everything Around Me。Wu-Tang Clanのマントラ like that n***a
マジの話、みんな
また別の世界に連れてくぜ
フリオ・イグレシアス並みに
あいつみたいにC.R.E.A.M.を稼いでる
Yo, (Blaow) first of all, son, peep the arson
Many brothers I be sparkin' and bustin' mad light inside the dark
よお(ドカン)まず第一に、放火を見ろよ
暗闇の中でブチかまし、多くの奴らを照らしてやる
Call me dough snatcher, just the brother for the rapture
I hang glide, holdin' on strong, hard to capture
俺を金の強奪者と呼べ、終末に相応しい男
ハンググライダーで空を飛ぶ、しっかり掴まって離さない、捕まえられない
Extravagant, RZA bake the ビート・楽曲のこと and it's militant
Then I react like a convict and start killin' s**t
豪華絢爛、RZAが焼き上げたトラックは戦闘的
俺は囚人のように反応して、全部ぶち壊す
It's manifested, the gods work like appliances
Dealin' in my ①ラップの輪 ②五%ネイションの哲学における宇宙の循環 I revolve around sciences
それは顕現した、神々は電化製品のように働く
俺のサイファーの中で、俺は科学の周りを公転する
The Wu-Tangの36챔버즈を超えた架空の最終部屋——Ghostfaceの支配領域 , leave you trapped inside my hallway
You try to flee but you got smoked up by the doorway (Blaow)
第9챔버、俺の廊下に閉じ込めてやる
逃げようとしたら、ドアのところで消されるぞ(ドカン)
No question, I send your ass back right to the essence
Your whole frame is smothered in dirt, now how you restin'?
間違いない、お前を本質(魂の源)へ送り返す
お前の体全体が土に埋まってる、どうやって休んでるんだ?
While I'll be trapped by sounds, locked behind loops
Throwin' n***as off airplanes 'cause cash rules ( C.R.E.A.M.のリフレイン )
俺は音に囚われ、ループの後ろに閉じ込められている
金のために奴らを飛行機から放り投げる(金が支配する)
Everything around me, black, as you can see
Swallow this murder one verse like 五%ネイションの哲学——神の境地・段位
見てのとおり、周りのすべてが暗い
この殺人級のバースを神の境地として飲み込め
Then analyze my soundtrack for satisfaction
You adapt like a flashback, chain reaction
俺のサウンドトラックを分析して満足を得ろ
フラッシュバックのように適応する、連鎖反応
Lace them n***as, son
奴らをしっかり仕上げろ、兄弟
AK's black, bust back like seventy MACs
I'm all that, street n***as knowin' my Style+Ease。スタイルと余裕を合わせた1990年代NYスラング , black
AKは黒、70丁のMAC-10のように撃ち返す
俺は最高だ、ストリートの奴らは俺のスタイルを知ってる
Ron G, you know he coincide with me, see
Marvelous menace for society
Ron Gよ、あいつは俺と合ってるだろ、わかるか
社会に対する驚異的な脅威
But anyway, let's toast, champagne thoughts with Ghost
I max the most shotguns through the nose
でもとにかく、乾杯しようぜ、Ghostとシャンパンを思い描きながら
鼻でショットガンを最大限に吸い込む
f**k rap, hip-hop put me on top
Ralph Lauren / Poloのこと。1990年代NYストリートブランド wears and Tommy Hilfiger。ブランドをストリートに持ち込む文化 fly s**t with a knot
ラップなんてどうでもいい、ヒップホップが俺をトップに押し上げた
ポロとトミーのいかしたものを、金の束と一緒に
The witty unpredictable live s**t, drive-by s**t
Do-or-die s**t, I'll take your PCPに浸したタバコ。ストリートで流通した危険なドラッグ and s**t
機知と予測不能なリアルなもの、ドライブバイのもの
やるかやられるかのもの、お前のライ(ドラッグ)を奪ってやる
And then you know I'm runnin' through the 刑務所(penitentiary)の略
Foul, fall through, child was wild
俺が刑務所を通過してきたのはわかるだろ
汚い、踏み込んでいく、あの頃の俺はワイルドだった
The old lady snitched, but f**k it, you know what?
One love, kid, no, I'm not doin' a 刑期・服役期間のスラング
あのおばさんが密告した、でもどうでもいい、わかるか?
ワンラブだ、俺は服役はしない
Too much to get, for what, 'cause six n***as got stuck
And the n***a トラック型のゴールドペンダントチェーン。1990年代NYストリートの流行ジュエリー ?
稼ぐことがたくさんあるのに、なぜ?6人の奴らが刺されたから?
そいつのチェーンがトラック型だったから?
Yo, f**k that, criminology rap, sneakers stay
Jet-black floatin' in the flyest Acura(高級車)。AcuraのことでNYストリートで成功の象徴 もう一度タップで詳細 → , n***a
(Bring it, yeah)
よお、そんなのはどうでもいい、クリミノロジー・ラップ、スニーカーは
最高のAcuraの中でジェットブラックに浮かんでる
(かかってこい、yeah)
Much love go to New York City
All my Tommy Hil', ice-rockin' n***as
ニューヨークシティへ大きな愛を
トミー・ヒルフィガーを着て、ダイヤをまとった仲間たちへ
1995年、西海岸のG-Funk(Dr. Dre、Snoop Dogg)が商業的に席巻する中、東海岸——特にニューヨーク——はより暗く、より複雑で、よりストリートの現実に根ざした音楽で応えた。Wu-Tang Clanはその最先鋒だった。「Criminology」は単なる暴力の讃歌ではなく、映画的語り口(スカーフェイスサンプル)、五%ネイションの哲学(god degree、cypher、sciences)、ストリートの実態(ドラッグ、逮捕、ジュエリー)を一曲に凝縮したコンセプチュアルな作品だ。RZAのアブストラクトなサンプリングと二人のMCの対照的なフロウ——Ghostfaceの爆発的な熱量とRaekwonの計算されたクールネス——が、この楽曲に他の追随を許さないダイナミズムをもたらした。
『Only Built 4 Cuban Linx...』は後世の批評家からローリングストーン誌の「史上最高のアルバム500選」に選出され、ヒップホップ史で最も重要なソロ作品の一つとして評価される。「Criminology」はその中でも特に「マフィオソ・ラップ(Mafioso Rap)」というサブジャンルを定義した曲として語り継がれる。Nas・AZ・Jay-Zなど後の東海岸のライターたちが軒並み影響を受けたコンセプト——映画的な世界観をラップに持ち込む手法——はここに一つの完成形を見る。日本でも1990年代後半のアンダーグラウンドHIPHOPシーンにWu-Tang哲学が深く浸透し、KREVAやMummy-Dなどが公言している影響の源泉にこの曲がある。
Raekwon
Staten Island, New York · 1992–
Wu-Tang Clanのメンバー、本名Corey Woods。1995年のソロデビュー作『Only Built 4 Cuban Linx...』でマフィオソ・ラップというサブジャンルを確立した。映画『スカーフェイス』を下敷きにした映画的世界観とGhostface Killahとのコンビネーション、RZAの地下スタジオで生まれたダーティなブーンバップが融合し、東海岸ハードコアの新たな頂点を築いた。「Cuban Linx」はヒップホップ史上最も重要なソロアルバムの一つとしてローリングストーン誌ほか各メディアで評価されている。