この記事の見どころ
元ネタ
★ 楽曲の核心 — 子どもたちの合唱
I know I can (I know I can)
Be what I wanna be (be what I wanna be)
If I work hard at it (if I work hard at it)
I'll be where I wanna be (I'll be where I wanna be)
俺にはわかる(俺にはわかる)
なりたいものになれると(なりたいものになれると)
一生懸命やれば(一生懸命やれば)
いたい場所にいられると(いたい場所にいられると)
Be – b-boys and girls, listen up
You can be anything in the world, in God we trust
An architect, doctor, maybe an actress
But nothing comes easy, it takes much practice
B-ボーイ、B-ガール、聞け
神を信じれば、この世界で何にだってなれる
建築家、医者、女優だって
だが楽な道はない、練習と努力が必要だ
★ ヘロインに落ちた歌手の話
Like, I met a woman who's becoming a star
She was very beautiful, leaving people in awe
Singing songs, Lena Horne, but the younger version
Hung with the wrong person, got her strung on that heroin
Cocaine, sniffing up drugs, all in her nose
Could've died, so young, now looks ugly and old
No fun, 'cause now when she reaches for hugs, people hold they breath
'Cause she smells of corrosion and death
たとえば、スターになりかけていた女性と出会った
とても美しく、人々を魅了していた
Lena Hornのように歌う、もっと若い版
悪い人間と付き合い、ヘロインに溺れた
コカイン、鼻からドラッグを吸い続けた
死にかけた、若くして、今は醜く老けた
楽しみもない、ハグしようとすると人々は息を止める
腐敗と死の匂いがするから
Watch the company you keep and the crowd you bring
'Cause they came to do drugs and you came to sing
So if you gonna be the best, I'ma tell you how
Put your hands in the air, and take the vow
付き合う人間と連れてくる群れに気をつけろ
奴らはドラッグをやりに来た、お前は歌いに来た
最高になりたいなら、俺が教えてやる
手を上げて、誓いを立てろ
★ 10歳の少女への警告
Be – b-boys and girls, listen again
This is for grown-looking girls who's only 10
The ones who watch videos and do what they see
As cute as can be, up in the club with fake ID
Careful, 'fore you meet a man with HIV
You can host the TV, like Oprah Winfrey
Whatever you decide, be careful – some men be
Rapists – so act your age, don't pretend to be
Older than you are, give yourself time to grow
さあ——bボーイも女の子も、もう一度聞いてくれ
これは大人びて見える、まだ10歳の少女たちへ
ミュージックビデオを見て、そこで見たことを真似する子たちへ
いかにも可愛くしてクラブに偽IDで入っている子たちへ
気をつけろ、HIV(エイズウイルス)を持った男に出会う前に
お前だってテレビの司会者になれる、オプラ・ウィンフリーみたいに
何を選ぶにしても気をつけろ——男の中には
レイプ犯がいる——だから自分の年齢らしく振る舞え、年上のふりはするな
自分の実際の年齢より大人のふりをするな、成長する時間を自分に与えろ
You thinking he can give you wealth, but so?
Young boys, you can use a lot of help, you know?
You thinking life's all about smoking weed and ice
You don't wanna be my age and can't read and write
Begging different women for a place to sleep at night
Smart boys turn to men, and do whatever they wish
If you believe you can achieve, then say it like this
男がお前を豊かにしてくれると思ってるか?でもそれが何だ?
若い男の子たちよ、お前たちには多くの助けが必要だぞ、分かるか?
人生はただマリファナを吸ってアイス(ジュエリー)を着けることだと思ってるのか
俺の年齢になって読み書きもできないようにはなりたくないだろ
寝る場所を求めて色んな女に懇願してる羽目にはなりたくないはずだ
賢い男の子は大人になって、自分のやりたいことを何でもできるようになる
できると信じるなら、こう言ってみろ
I know I can
Be what I wanna be
If I work hard at it
I'll be where I wanna be
俺にはわかる
なりたいものになれると
一生懸命やれば
いたい場所にいられると
★ コンシャスHH最高峰のアフロセントリズム宣言
Be – be–fore we came to this country
We were kings and queens, never かつてアメリカ南部で黒人を侮辱するために使われた極めて差別的な蔑称。Nasはこの言葉を引用することで、その侮蔑を真っ向から否定し、アフリカの栄光を語る
There was empires in Africa called クシュ(Kush)王国:古代ヌビア(現在のスーダン)に存在した高度な文明を持つアフリカの王国。エジプトを支配した時代もあった
トンブクトゥ:現在のマリに位置する西アフリカの古代都市。12〜16世紀に学問・交易の中心地として黄金期を誇った , where every race came to get books
To learn from Black teachers, who taught Greeks and Romans
Asians, Arabs, and gave them gold, when
Gold was converted to money, it all changed
Money then became empowerment for Europeans
さあ——この国(アメリカ)に来る前は
俺たちは王であり女王だった、決して「ポーチ・モンキー(蔑称)」などではなかった
アフリカにはクシュと呼ばれる帝国があった
トンブクトゥ、あらゆる民族が本を求めてやってきた場所
ギリシャ人とローマ人に教えた黒人の教師たちから学ぶために
アジア人、アラブ人、そして彼らに金を与えたのだ、そのとき
金が貨幣に変換されると、すべてが変わった
そして金はヨーロッパ人の権力の源となった
The Persian military invaded
They heard about the gold, the teachings, and everything sacred
Africa was almost robbed naked
Slavery was money, so they began making slave ships
Egypt was the place that Alexander The Great went
He was so shocked at the mountains with Black faces
Shot up they nose, to impose, what basically
Still goes on today, you see?
ペルシャ軍が侵略してきた
彼らは金、教え、そして神聖なものすべての噂を聞いていた
アフリカはほぼ丸裸に奪われた
奴隷制度は金になった、だから彼らは奴隷船を作り始めた
エジプトはアレクサンドロス大王が訪れた場所だった
彼は黒い顔をした山(スフィンクス)に大きなショックを受けた
その鼻を打ち砕いて、基本的に今でも続いていることを
押しつけたのだ、分かるか?
If the truth is told, the youth can grow
They learn to survive, until they gain control
Nobody says you have to be gangstas, hoes
Read more, learn more, change the globe
Ghetto children, do your thing
Hold your head up, little man, you're a king!
Young princess, when you get your wedding ring
Your man will sing, "She's my Queeeeeen!"
真実が語られるなら、若者は成長できる
コントロールを得るまで、生き延びる方法を学ぶのだ
誰もお前たちにギャングスタや女(ホーズ)になれと言っていない
もっと読め、もっと学べ、世界を変えろ
ゲットーの子どもたちよ、お前たちの道を歩め
頭を上げろ、坊主、お前は王様だ!
若いプリンセスよ、結婚指輪をもらう時
お前の男は歌うだろう、「彼女は俺の女王だ!」と
I know I can
Be what I wanna be
If I work hard at it
I'll be where I wanna be
俺にはわかる
なりたいものになれると
一生懸命やれば
いたい場所にいられると
Save the music, y'all
Save the music, y'all
Save the music, y'all
Save the music, y'all
Save the music
音楽を守れ、皆の衆
音楽を守れ、皆の衆
音楽を守れ、皆の衆
音楽を守れ、皆の衆
音楽を守れ
I know I can (I know I can)
Be what I wanna be (be what I wanna be)
If I work hard at it (if I work hard at it)
I'll be where I wanna be (I'll be where I wanna be)
...
(Children's choir fades out)
俺にはわかる(俺にはわかる)
なりたいものになれると(なりたいものになれると)
一生懸命やれば(一生懸命やれば)
いたい場所にいられると(いたい場所にいられると)
...
(子どもたちの合唱がフェードアウトしていく)
制作の戦略的動機
Salaam Remiの証言によれば、この楽曲の構想は「ラジオ局が自分たちのハードコアな曲を流してくれない」という現状に対するカウンターとして生まれた。「それなら、ラジオが絶対に断れないような、子どもたちへのポジティブな曲を作ってやろう」——この戦略的動機から制作を開始。その結果、「子どもたちへの手紙」という形を取ったコンシャスHHがBillboard Hot 100・12位の大ヒットとなり、メインストリームにコンシャスラップが食い込める証明となった。
2002年 — 母の死とJay-Zビーフの後
2002年4月、Nasの母Ann Jonesが乳がんで逝去。この喪失体験がアルバム『God's Son』全体に内省的な深みをもたらした。同時に2001年のJay-Zとの歴史的ビーフ(「Ether」vs「Takeover」)でシーンの支持を完全回復した直後——Nasは「Nas Escobar」というギャングスタ・ペルソナを脱ぎ捨て、ストリートの賢者「God's Son(神の子)」としてのアイデンティティを確立した。「I Can」はその成熟の証明として世に放たれた。
キーワード解説
制作秘話 01
Ludwig van Beethoven作曲「バガテル イ短調 WoO 59(エリーゼのために)」(1810年)——西洋クラシック音楽の最も有名なメロディの一つ——をSalaam Remiがヒップホップ・ビートに乗せた。単純なサンプリングではなく、ピアノのイントロ部分を子どもたちの合唱コール・アンド・レスポンスのフックと組み合わせるという大胆なアレンジ。クラシック音楽の権威性をハイジャックして黒人コミュニティへのメッセージを乗せるという構造自体が、アフロセントリズムのテーゼ(「西洋文明の基盤はアフリカにある」)と完璧に共鳴している。
制作秘話 02
サビのコール・アンド・レスポンスは、シンガーソングライターのAngela Hunte(アンジェラ・ハンテ)がリード・ボーカルとバックグラウンド・ボーカルのディレクションを担当。HunteはJay-Zの「Empire State of Mind」(2009年)の共同作曲者としても知られる実力派。無垢な子どもたちの声とNasの重みあるラップが交差する構成が、楽曲に圧倒的な説得力と神聖な雰囲気をもたらしている。レコーディングはフロリダ州オーランドのTranscontinental Studiosとニューヨークのソニー・ミュージック・スタジオで行われた。
制作秘話 03
「I Can」が制作・リリースされたのと同じ2002年、宇多田ヒカルがアルバム『Deep River』収録の「幸せになろう」で「エリーゼのために」のフレーズを引用した。太平洋を挟んで、アメリカのヒップホップと日本のR&Bが同じクラシック旋律を同時期に再解釈したという音楽的シンクロニシティは、ベートーヴェンのメロディの持つ普遍的な感情的訴求力を証明している。
後世への影響
Nas
Queensbridge, New York · 1991–
クイーンズブリッジ出身のNasir Jones。1994年「Illmatic」でデビューし、歌詞の密度と詩的表現力でヒップホップ文学の地平を開いた。