WAX&THINK

Gangsta's Paradise — Coolio feat. L.V. スラング・英語解説

Gangsta's Paradiseに出てくるスラングや言い回しの意味を、和訳つきで一つずつ読み解きます。

アーティスト
Coolio feat. L.V.
リリース年
1995
プロデューサー
Doug Rasheed
収録アルバム
Gangsta's Paradise
エリア
LA
BPM
80
サンプル元
Stevie Wonder "Pastime Paradise" (1976)

この記事の見どころ

  1. 01 冒頭の一行は旧約聖書の詩篇23篇の引用。聖書の言葉が、ストリートの語りに入ってくる
  2. 02 ain't never、Me be treated、got me chasin'。教科書にない、口語の文法がそのまま学べる
  3. 03 twenty-four、what's cookin'、reach me。短い言葉に、生き方への迷いが込められている

[PR] メルカリで探す

解説

■この曲で何を学べるか

「As I walk through the valley of the shadow of death」。この有名な一行から始まる「Gangsta's Paradise」は、1995年の映画『Dangerous Minds』の主題歌として出た曲です。

Coolioがバースを、L.V.がコーラスを歌っています。

言葉の使い方は、粗削りですが、内容はとても内省的です。暴力の中で育った若者が、自分の人生を、冷静に振り返っている曲として読めます。

英語学習としては、聖書の引用、口語の文法、そして短い言葉で重たい内容を言い切る書き方が、ひと通り入っています。

■「天国」という言葉が、反語になっている

タイトルの paradise(楽園)は、本来は、穏やかな理想の場所を指します。ところが歌詞で語られるのは、「ここで一生を過ごしている」と皮肉まじりに語られる、ストリートの現実です。

この反語の使い方が、曲全体のトーンを決めています。聞き手は、タイトルの時点で、ただの武勇伝ではないことを察します。

ここからは、行ごとに言葉を拾って、その仕掛けを見ていきます。

ストーリーの流れ(まず曲全体をつかむ)

曲は、2つのバースと、コーラスの繰り返しで、ひとつの生き方を描きます。バースごとの役割を先に押さえます。

Verse 1は、自分の人生を振り返る場面です。聖書の引用で始まり、強がりと、祈りが、交互に出てきます。

Chorusは、L.V.が歌います。「私たちは人生の大半を、ギャングの楽園で過ごしている」と、同じ4行を繰り返します。

Verse 2は、そうなった理由の説明です。自分が育った環境と、その中でしか生きられなかった事情が語られます。

Bridgeは、L.V.による問いかけです。「なぜ私たちは、こんなに目が見えないのか」。

Verse 3は、周りの大人たちへの不満と、自分が手にしていない助けについて語ります。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現(スラング・韻・言葉遊び・AAVE)

ここからは、歌詞の中の表現を、1つずつ取り上げます。上に短い用例、下に意味と使い方を置いています。

暴力的な描写は、引用せず、背景だけにとどめています。▶を押すと、PVの該当箇所から再生できます。

As I walk through the valley of the shadow of death 聖書の引用

★ 引用/聖書
Coolio(Verse 1) 0:26

As I walk through the valley of the shadow of death

死の影の谷を歩むとき

▶ 曲の最初の一行。旧約聖書の有名な一節です。

the valley of the shadow of death は、旧約聖書の詩篇23篇に出てくる一節です。「たとえ死の影の谷を歩むとも」という、よく知られた言い回しです。

聖書の中では、神が共にいるから恐れない、という文脈で使われます。この曲では、その言葉を、危険と隣り合わせの暮らしに重ねています。

As I walk through 〜 の as は、「〜するとき、〜しながら」という時間の接続詞です。同時に進む動作や状況を示します。

聖書の一節から始めることで、これから語られるのは、暴力の自慢ではなく、生き方への問いだと、聞き手に伝えています。

語法 — どう使うか ▼

as + 主語 + 動詞: As I walked home, it started to rain.(歩いて帰るうちに、雨が降り出した)。同時進行を表します。

the valley of the shadow of death は、文章やスピーチでも、「極めて危険な状況」を指す引用として使われます。

I take a look at my life and realize there's nothin' left

★ 構文/口語
Coolio(Verse 1) 0:28

▶ 引用は省き、語の使い方を中心に解説します。

take a look at 〜 は、「〜をよく見る」という言い方で、look at より、少し意識して見る感じが出ます。

realize there's nothin' left の realize は、「はっきり気づく」。there's nothin' left は、「何も残っていない」という意味で、left は、「残された」の過去分詞です。

take a look と realize が、同じ主語 I でつながっています。語りの視点が、行動から気づきへ、動いています。

この行から、バース全体が、外の出来事ではなく、内側の気持ちへ向かっていきます。

語法 — どう使うか ▼

take a look at 〜: Take a look at this.(これを見てみて)。会話で頻繁に使います。

nothing left は、I have nothing left to lose.(失うものは何もない)のように、定番の型にもなります。

I've been blastin' and laughin' so long that / my mind is gone

★ 現在完了進行/構文
Coolio(Verse 1) 0:32

Even my mama thinks that my mind is gone

母さんでさえ、俺の頭がおかしくなったと思ってる

▶ 前の行から続く、長い一文の結びです。

前の行の I've been 〜ing so long that 〜 は、「〜し続けて、もう〜なほどだ」という構文です。ここでは、続けてきた生き方の結果として、周りの反応を述べています。

I've been 〜ing は、現在完了進行形で、「ずっと〜し続けている」という意味。過去から今まで、同じ状態が続いていることを表します。

この行の my mind is gone は、「正気を失った」という意味の慣用句です。lose one's mind と同じ系統の言い方です。

Even my mama の even は、「〜でさえ」。最も味方であるはずの母親でさえ、そう思う、という落差を作る強調語です。

語法 — どう使うか ▼

so + 形容詞/副詞 + that 〜: He ran so fast that nobody could catch him.(あまりに速く走ったので、誰も追いつけなかった)。

have been + 動詞ing: I've been waiting for an hour.(1時間ずっと待っている)。

I ain't never crossed a man that didn't deserve it

★ AAVE/二重否定
Coolio(Verse 1) 0:37

But I ain't never crossed a man that didn't deserve it

でも、それに値しない相手に手を出したことは一度もない

▶ 強がりの宣言。否定が重なった、口語の文です。

ain't never は、否定語が2つ並んだ形です。標準的には I have never と言うところですが、口語やAAVEでは、否定を重ねることで、「一度もない」という強調になります。

cross a man は、「相手を怒らせる、相手に害を加える」という意味です。cross には、「(人の)意に反する」という意味があります。

後半の a man that didn't deserve it は、「それに値しない人」。deserve は、「〜に値する、〜を受けて当然だ」という動詞です。

ここでも、否定が重なっていますが、didn't deserve it は、通常の否定で、意味は「値しなかった」です。肯定の裏返しとして、「手を出した相手はみな、それに値した」と言っていることになります。

語法 — どう使うか ▼

ain't never: I ain't never seen that.(それは一度も見たことがない)。強調の二重否定です。

deserve: You deserve a break.(あなたは休みを取って当然だ)。ポジティブにも使います。

Me be treated like a punk? You know that's unheard of

★ 構文/反語
Coolio(Verse 1) 0:41

Me be treated like a punk? You know that's unheard of

俺が弱虫扱いされる? そんなことはありえない

▶ 主語が me になっている、特殊な形の反語です。

Me be treated like a punk? は、Me, be treated like a punk? と、主語が me で、動詞が原形です。「俺が?そんな扱いを?」という、信じがたい気持ちを込めた反語の形です。

文法の上では不完全ですが、口語では、驚きや、あり得ない、という気持ちを示すために、この形がよく使われます。

punk は、ここでは「弱虫、なめられる人」。Check the Rhime など、ほかの曲でも出てくる語で、強がりの場面でよく使われます。

unheard of は、「前代未聞の、ありえない」という意味の形容詞です。an unheard-of price のように、名詞の前でも使います。

語法 — どう使うか ▼

Me, do that?: 「私が、そんなことを?」と、驚きや反発を示す言い方。Him, lie to me? のように応用できます。

unheard of: It's unheard of for a rookie to win.(新人が優勝するなんて前代未聞だ)。

You better watch how you're talkin' and where you're walkin'

★ 助言/内韻
Coolio(Verse 1) 0:41

You better watch how you're talkin' and where you're walkin'

口のきき方と、歩く場所には気をつけたほうがいい

▶ 警告の一行。次の行の暗示とセットで読みます。

You better 〜 は、had better の短縮形で、「〜したほうがいい」という、強い助言です。前に見た曲のサビにも、同じ形が出てきました。

watch how 〜 は、「〜の仕方に気をつけろ」。watch は、見るだけでなく、「注意する」という意味でも使います。

talkin' と walkin' が、行の中で音を合わせています。内韻と呼ばれる技法で、警告の言葉にも、リズムを乗せています。

このあとの行は、警告に従わなかった結果を、暗示しています。そこはここでは引用せず、読み手に任せます。

語法 — どう使うか ▼

watch your mouth / watch how you talk: 「口のきき方に気をつけろ」。たしなめるときの定番の言い方です。

You better 〜 の better の前に、'd(had)が省略されている点にも注目です。

I'm the kinda G the little homies wanna be like

★ スラング/短縮形
Coolio(Verse 1) 0:53

I'm the kinda G the little homies wanna be like

俺は、年下の連中が憧れるタイプのGだ

▶ 自分が、若者の手本になっている、という自覚の行です。

G は、gangster の略で、「ギャングスタ、一人前の男」。ヒップホップでは、敬意を込めて呼ぶ言い方にもなります。

the little homies は、「年下の仲間たち」。homies は、地元の友達のことで、little が付くと、年下の子たちを指します。

kinda G the little homies wanna be like は、関係代名詞が省略されています。the kind of G (that) the little homies want to be like です。

この行は、自分が、若者にとって悪い手本になっていることを、どこか誇りと苦さを混ぜて語る場面です。次の行で、祈りの場面が出てくることで、その複雑さがはっきりします。

語法 — どう使うか ▼

the kind of 〜 (that) 〜: He's the kind of guy people trust.(彼は、人が信頼するタイプの男だ)。kinda は、kind of の短縮形です。

wanna be like 〜 は、「〜のようになりたい」。wannabe という名詞(憧れ屋)にもなります。

On my knees in the night sayin' prayers in the streetlight

★ 対比/描写
Coolio(Verse 1) 0:59

On my knees in the night sayin' prayers in the streetlight

夜、街灯の下で、膝をついて祈りの言葉を唱える

▶ Verse 1の締め。強がりから、祈りに切り替わる一行です。

on my knees は、「膝をついて」。祈るときの姿勢で、on one's knees は、懇願や降参を表す表現でもあります。

say prayers は、「祈りを捧げる」。say を使うのが、祈りの定番の言い方です。

in the night と in the streetlight は、前置詞の同じ形で、内韻のように並んでいます。夜の街灯の下、という一枚の絵が、すぐ浮かびます。

ここまで強がっていた語り手が、最後には、一人で祈っている。この対比が、曲の一番の聴きどころだと思っています。

語法 — どう使うか ▼

on one's knees: He went down on his knees and begged.(膝をついて懇願した)。

say a prayer は、pray より、日常的で、具体的に唱える感じがあります。

They've been spendin' most their lives livin' in the gangsta's paradise

★ コーラス/構文
L.V.(Chorus) 1:02

They've been spendin' most their lives livin' in the gangsta's paradise

彼らは、人生の大半を、ギャングの楽園の中で過ごしてきた

▶ 曲のタイトルが出てくるコーラス。主語が少しずつ変わります。

spend + 時間 + 〜ing は、「〜して時間を過ごす」という型です。ここでは、spending most their lives living in 〜 と、-ing が続いています。

most their lives は、most of their lives の of が落ちた形。口語では、of を省いて、短くすることがよくあります。

タイトルの gangsta's paradise は、「ギャングの楽園」。皮肉を込めて、楽園という言葉を使っています。

コーラスの2回目からは、主語が They から We に変わります。他人事ではなく、自分たちのこととして、語りが近づいてくる仕掛けです。

語法 — どう使うか ▼

spend + 時間 + 〜ing: I spent the weekend cleaning.(週末を掃除に費やした)。時間の使い方を言う、基本の型です。

most of 〜 の of を省く言い方は、most people(ほとんどの人)のように、名詞が直後に来るときに使われます。

I can't live a normal life, I was raised by the street

★ 受け身/文化
Coolio(Verse 2) 1:20

I can't live a normal life, I was raised by the street

普通の暮らしはできない。俺は路上に育てられたんだ

▶ Verse 2の2行目。環境が人を作る、という語りです。

was raised by 〜 は、「〜に育てられた」という受け身です。普通は、by my parents のように、人が入る場所に、the street が入っています。

the street は、単数の名詞で、「路上、ストリートという環境」。親ではなく、環境に育てられた、という強い言い方です。

live a normal life は、「普通の生活を送る」。live に目的語を取る形で、「どんな暮らしを送るか」を言う型です。

can't live と was raised で、現在の限界と、過去の原因を、続けて言っています。因果関係を、一行で説明する書き方です。

語法 — どう使うか ▼

be raised by 〜: I was raised by my grandmother.(祖母に育てられた)。生い立ちを話すときの定番です。

live a 〜 life: live a happy life(幸せな人生を送る)のように、形容詞を挟めます。

Too much television watchin' got me chasin' dreams

★ 無生物主語/口語
Coolio(Verse 2) 1:34

▶ 引用は省き、語の使い方を中心に解説します。

Too much television watchin' は、動名詞を含む名詞句が、主語になっています。「テレビの見すぎ」が、原因を担う主語になる、英語に多い言い方です。

got me chasin' dreams は、got me + 〜ing の形で、「〜させる、〜するはめになる」。got は、made に近い意味です。

chase dreams は、夢を追いかける。chase は、追いかけるという意味の動詞です。

テレビの中の成功像を、現実に求めた結果、今に至った、という流れを、一行で語っています。理由と結果が、無生物主語で、きれいにつながっています。

語法 — どう使うか ▼

get + 人 + 〜ing: That song got me thinking.(あの曲で考え込んだ)。get は、「〜させる」という意味でも使えます。

Too much 〜 can 〜 の形は、「〜すぎると〜になる」という、因果の一般論でも使えます。

I'm a educated fool with money on my mind 矛盾した語の組み合わせ

★ 撞着語法/口語
Coolio(Verse 2) 1:38

I'm a educated fool with money on my mind

俺は、教育を受けたバカ者で、頭の中は金のことでいっぱいだ

▶ 対立する言葉を並べた、短い自己紹介です。

educated fool は、「教養のあるバカ」という、矛盾する語を組み合わせた表現です。修辞学では、撞着語法(オクシモロン)と呼びます。

「楽園」と「ギャング」を組み合わせたタイトルと、同じ仕掛けです。曲全体に、対立する語を並べて、矛盾を描く姿勢があります。

a educated の a は、母音で始まる語の前では an が標準ですが、口語では、そのまま a と言うことがよくあります。

money on my mind は、「頭の中にお金のことがある」。on one's mind は、気にかかっている、という意味の決まり文句です。

語法 — どう使うか ▼

on one's mind: What's on your mind?(何を考えているの?)。気がかりを聞く、定番の言い方です。

oxymoron の例: deafening silence(耳をつんざく沈黙)、jumbo shrimp(巨大なエビ)。

Death ain't nothin' but a heartbeat away

★ 距離の表現/AAVE
Coolio(Verse 2) 1:49

Death ain't nothin' but a heartbeat away

死は、心臓ひと打ちの距離にすぎない

▶ 短く、重い一行。距離の言い方に注目です。

a heartbeat away は、「心臓がひと打つほどの距離」という比喩です。X away で、「Xの距離にある」という言い方ができます。

ain't nothin' but 〜 は、「〜にすぎない」という、口語の言い回し。nothing but 〜 は、「〜だけ」。

ain't が付くと、より口語的になります。

ここでの二重否定のような形は、実は、ain't nothing but で、ひとつのまとまりです。意味は、肯定の「〜だけだ」になります。

死が、遠い出来事ではなく、すぐ隣にあるという感覚を、短い言葉で言い切っています。この曲の、もっとも静かな箇所のひとつです。

語法 — どう使うか ▼

X away: The station is five minutes away.(駅は5分の距離だ)。a heartbeat away のように、比喩にも広がります。

nothing but 〜: He did nothing but complain.(文句ばかり言っていた)。

I'm twenty-three now, but will I live to see twenty-four?

★ 構文/文脈
Coolio(Verse 2) 1:56

I'm twenty-three now, but will I live to see twenty-four?

今は23歳だが、24歳まで生きて見られるだろうか

▶ 年齢を使った、直接的な問いです。

live to see 〜 は、「〜まで生きて、それを見る」という言い方です。live to see the day のように、長生きして何かを見届ける、という意味で使います。

but で、現在の年齢と、未来への不安を対比させています。will I 〜? と、自分への問いの形にしているのも、効果的です。

この行は、このサイトで取り上げている「It Was a Good Day」にも、似た問いかけがあります。Will I live another twenty-four?(あと24時間、生きられるか)。

同じ時代のラップの、共通の不安として読めます。

年齢の言い方は、twenty-three と、数字を英語で言い切っています。年を数えることが、生き延びた時間を数えることになっています。

語法 — どう使うか ▼

live to see 〜: I hope to live to see my grandchildren.(孫を見るまで生きたい)。

I'm twenty-three. のように、年齢を言うときは、years old を省略するのが普通です。

why are we so blind to see / the ones we hurt are you and me

★ 呼びかけ/構文
L.V.(Bridge) 2:02

Tell me, why are we so blind to see
That the ones we hurt are you and me?

教えて、どうして私たちはこんなにも見えていないのか。傷つけているのは、あなたと私なのに

▶ ブリッジとアウトロで歌われる、曲のもうひとつの核です。

so blind to see は、「見ることに対して、盲目である」という、不思議な言い方です。標準では、so blind that we can't see と言いますが、ここでは、短く圧縮されています。

the ones we hurt は、「私たちが傷つけている人たち」。the ones は、the people の代わりで、関係代名詞の that が省略されています。

are you and me という結びで、傷つけているのは、他人ではなく、まさに自分たち自身だ、という気づきが示されます。

ここで主語が we と you and me になっているのが大事です。それまでの I と they の語りから、共有された責任の語りへ、切り替わっています。

語法 — どう使うか ▼

the ones + 関係節: the ones I love(私が愛している人たち)。the people と同じ意味で、関係代名詞を省略できます。

blind to 〜 は、「〜に気づかない」。このサイトの「The Message」の解説にも、同じ表現が出てきます。

Power and the money, money and the power 並べ替えの技法

★ 修辞/反復
Coolio(Verse 3) 2:38

Power and the money, money and the power
Minute after minute, hour after hour

権力と金、金と権力。一分また一分、一時間また一時間

▶ Verse 3の頭。繰り返しと並べ替えで、勢いを作る2行です。

Power and the money, money and the power は、2語を入れ替えて繰り返す、交差配列(キアスムス)という修辞の形です。権力と金が、互いを呼ぶ、という循環を、語順で見せています。

X after X は、「X、またX」と、同じ語を繰り返して、時間の積み重なりを言う型です。day after day(毎日毎日)、one after another(次々と)などがあります。

聞こえとしては、同じ言葉の繰り返しですが、意味としては、止まらない追求を描いています。心理的な追い立てられ感を、語順の工夫で表現しています。

この2行は、Verse 3の入り口として、語り手の目が、個人から社会へ移ることを、示しています。

語法 — どう使うか ▼

X after X: step after step、year after year。同じ名詞を繰り返して、連続を言う定番の型です。

chiasmus の例: Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country. は、有名な例です。

It's goin' on in the kitchen, but I don't know what's cookin'

★ 慣用句/比喩
Coolio(Verse 3) 2:47

▶ 引用は省き、語の使い方を中心に解説します。

What's cookin'? は、「何が起きているの?」という口語の慣用句です。もとは、「何を料理しているの?」という意味から来ています。

ここでは、その慣用句を、文字通りの台所の場面に重ねています。in the kitchen と what's cookin' で、比喩と字義が、同時に成立しています。

It's goin' on は、It's going on(進行中だ)。何かが起きているのに、自分には何も分からない、という疎外感が、短い言葉で伝わります。

このあたりのバースは、周りの大人たちが、自分に何も教えてくれない、という不満へつながっていきます。

語法 — どう使うか ▼

What's cookin'?: Hey, what's cookin'?(やあ、何してるの?)。くだけた挨拶としても使われます。

go on は、「起きる、続く」。What's going on?(何が起きているの?)は、頻出の表現です。

nobody's here to teach me / how can they reach me?

★ 韻/比喩
Coolio(Verse 3) 2:50

They say I got to learn, but nobody's here to teach me
If they can't understand it, how can they reach me?

学べと言われるが、教えてくれる人はここにいない。分かってもくれないなら、どうやって俺に届くというのか

▶ 周りの大人への不満が、一番はっきり出る2行です。

teach と reach が、行末で韻を踏んでいます。意味は、教えることと、届くこと。

ふたつを並べて、「教える人がいなければ、届かない」という筋を作っています。

reach me は、「私に届く、私の心に響く」。reach は、手を伸ばして届く、という意味から、人の心に届く、という意味にも広がります。

They say I got to learn は、they say (that) I have to learn。got to が、have to と同じ意味で使われています。

how can they reach me? は、反語の疑問文です。答えを求めているのではなく、「届くはずがない」と言っている形です。

語法 — どう使うか ▼

reach + 人: The message didn't reach him.(メッセージは彼に届かなかった)。連絡や、心に届くことにも使います。

how can 〜? の反語: How can you say that?(よくもそんなことが言えるな)。非難を含む使い方です。

文化的背景

『Dangerous Minds』

映画の主題歌として生まれた曲

「Gangsta's Paradise」は、1995年の映画『Dangerous Minds』のサウンドトラックのために作られた曲です。同年8月1日に、シングルとして発売されました。

映画は、荒れた地区の学校で、教師が生徒たちと向き合う物語です。曲の内容が、映画の舞台と重なる形で選ばれています。

ミュージックビデオは、アントワーン・フークワが監督し、映画の主演のミシェル・ファイファーも出演しています。

聖書の言葉

詩篇23篇と、ストリートの語り

最初の一行は、旧約聖書の詩篇23篇から取られています。聖書の言葉が、ストリートの暮らしを語る曲の入り口になっていることは、アメリカの黒人音楽の伝統とも結びついています。

ゴスペルやブルースの時代から、聖書の言葉は、苦しい生活の中で、生き方を語る言葉として歌われてきました。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

the valley of the shadow of death 詩篇23篇の一節。極めて危険な状況
ain't never 一度もない。二重否定による強調
Me be treated 〜? 主語 me の反語。「俺が?そんな扱いを?」
You better 〜 had better の短縮。強い助言・警告
spend + 時間 + 〜ing 〜して時間を過ごす
got me + 〜ing 〜するはめになる、〜させられる
educated fool 矛盾する語を組み合わせた撞着語法
a heartbeat away ほんのすぐそこにある
What's cookin'? 何が起きてる? 台所の比喩の慣用句
the ones we hurt 私たちが傷つけている人たち

制作の裏側

「Gangsta's Paradise」は、Coolioと、プロデューサーのDoug Rasheedらが作った曲です。Stevie Wonderの1976年の曲「Pastime Paradise」の旋律を、組み替えて使っています。

Coolioのバースの語りと、L.V.のコーラスが、元の曲の旋律の上に重なる構成です。

元の曲「Pastime Paradise」も、タイトルに「楽園」を含む曲です。聴き比べると、同じ言葉が、まったく違う文脈で使われていることが分かります。

なお、この曲をもとにしたパロディ曲として、Weird Al Yankovicの「Amish Paradise」がよく知られています。

評価とその後

1995年8月に発売され、Billboard Hot 100で3週にわたって1位を記録しました。同年の年間で最も売れたシングルになったと報じられています。

英国のチャートでは、ラップのシングルとして、初登場で1位になったと伝えられています。

グラミー賞では、最優秀ラップ・ソロ・パフォーマンスを受賞しました。ミュージックビデオのYouTubeの再生回数は、20億回を超えたと報じられています。

まとめ

  • 「Gangsta's Paradise」は、聖書の引用で始まり、内省で終わる、静かな告白のような曲です。
  • ain't never、Me be treated、got me chasin'、a educatedなど、口語やAAVEの文法が、具体的な行で学べます。
  • educated fool、gangsta's paradiseのように、矛盾する語を組み合わせた撞着語法が、曲全体の語り口になっています。
  • power and the money, money and the powerは、語順を入れ替える交差配列。修辞の技法を学ぶ素材にもなります。
  • 「Tell me, why are we so blind to see」の問いかけは、主語が I から we に変わる、曲の最後の仕掛けです。

アーティストについて

Coolio

Compton, California · 1987–2022

カリフォルニア州コンプトン出身のラッパー(本名Artis Leon Ivey Jr.)。1990年代前半にグループWC and the Maad Circleに参加したのち、1994年にソロでデビュー。1995年の「Gangsta's Paradise」(L.V.をフィーチャー)は映画『Dangerous Minds』の主題歌として世界的なヒットとなり、グラミー賞の最優秀ラップ・ソロ・パフォーマンスを受賞した。2022年に亡くなった。

→

この曲とつながる記事

[PR] この曲の中古盤・グッズをメルカリで探す