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Work the Angles 和訳・意味・スラング解説 | Dilated Peoples

アーティスト
Dilated Peoples
リリース年
1997
プロデューサー
KutMasta Kurt
収録アルバム
Worst Come to Worst (single)
エリア
LA
BPM
95

この記事の見どころ

  1. 01 KutMasta Kurtがブルースリーのサントラをサンプリングしたブーンバップの傑作
  2. 02 DJ Revolutionによるスクラッチ・フックが「ターンテーブリズム」の極致を体現
  3. 03 "Work the angles"——あらゆる角度を利用してサバイブするストリートの知恵
解説

■この曲の意味(要約)

1998年、LAアンダーグラウンドシーンの旗手Dilated Peoples(Iriscience、Evidence、DJ Babu)がリリースした出世作。G-FunkやShiny Suit時代のメインストリームに背を向け、MCとDJの対等な関係性とリリシズムへの回帰を宣言。「あらゆる角度を計算して動く」という生存戦略が全編を貫く。

■概要

プロデュースはKutMasta Kurt。ブルース・リー主演映画『ドラゴン危機一発』のサントラ(Peter Thomas Sound Orchestra「Amulet」)とSugar Billy Garner「I Got Some」のブレイクを使用。スクラッチ・フックはDJ Revolutionが担当。Beat JunkiesのDJ BabuはDilated Peoplesのレギュラーメンバー。BPMは90前後のオーソドックスなブーンバップ。

■主なスラング・キーワード

work the angles
あらゆる角度・状況を計算して最大限に活用すること。幾何学の比喩から転じた戦略的な処世術。
build twice
「二度確認して作れ」——「測って、測って、切れ」に相当する慎重さの格言。Five Percenter Nationの「build(知識を積む)」の意も含む。
indigenous
先住民族的・土着の。ここでは「元来の知恵」や「生来の本能」という意味合い。
Feds
FBI・連邦捜査官のこと。転じて「監視者・密告者・信頼できない者」。
flagrants
バスケのフレグラントファウル(悪質な反則)から転じた「不当な攻撃・理不尽な一撃」。
Mayday
緊急救難信号。毎日が非常事態という意。

■歌詞和訳・解説

Intro · DJ Revolution

Di-dilated Peoples
Di-di-dilated Peoples
Di-di-di-dilated Peoples
Di-di-di-dilated Peoples

ダイレイテッド・ピープルズ(スクラッチで刻まれるグループ名)

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DJ Revolutionによるスクラッチ・イントロ。グループ名をターンテーブルで切り刻み、楽曲への期待感を高める。ヒップホップのDJが「名刺代わり」にグループ名をスクラッチするクラシックな手法。

Chorus · Dilated Peoples

I work the angles sharp and precise
Dilated Peoples so you better build twice

俺は鋭く正確に角度を利用する
Dilated Peoplesだ——だから二度確認しろ

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「work the angles」は幾何学的比喩。鋭角・鈍角を活用するように、あらゆる状況の隙を計算して動くこと。「build twice」はFive Percenter(5パーセンター)の用語「build(知識・議論を積み上げる)」と「測って二度確認してから切れ」という職人の格言の双方を掛けている。

Act like you know, not now, but right now
Dilated Peoples
The name is Iriscience

わかってるふりをしろ——今じゃない、今すぐだ
Dilated Peoples
名前はIriscience

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「act like you know」はヒップホップの定型句で「理解してる素振りをしろ/本物を認識しろ」。"not now, but right now"の矛盾した強調が独特のリズムを生む。Iriscience(アイリサイエンス)はメンバーRakaaのラップネーム——"iris(虹彩)"と"science(知識)"の合成語。

Verse 1 · Iriscience

I go through rivers (What?) so I don't leave a scent
I travel both directions but leave one set of prints

川を渡って(何?)臭いを消す
両方向に移動するが、足跡は一組だけ残す

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動物が川を渡って追跡者を撒く狩猟の比喩。「足跡は一組」——動きを読まれないよう、行動の痕跡を最小化する戦術。スパイ・サバイバルの戦略を日常的処世術に転用している。

It's just a little trick, of the indigenous
Developing inner visions of what religion is

それはただの先住民の小さな知恵
宗教とは何かについて内なるビジョンを育てている

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「indigenous(先住民族的)な知恵」として土着のサバイバル術を提示。「inner visions」は外部から押しつけられた宗教ではなく、自分自身の内的な霊性を探求するという姿勢。Five Percenter的な自己知識の追求が背景にある。

I caught the understanding and the underhanded
I plan to build my ship and man it to another planet

理解と裏工作の両方を掴んだ
自分の船を建造して、別の惑星へ乗り込む計画だ

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「underhanded(不正な・陰謀的な)」の世界を理解しながら、そこから超越しようとする姿勢。「別の惑星へ」はメインストリームや既存の枠組みを完全に超越するという比喩的表現。

Under heavy surveillance, many different agents
Some are camouflaged, others are very blatant

厳重な監視下に置かれている、多くの異なるエージェントに
カモフラージュしている者もいれば、あからさまな者もいる

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「agents」は二重の意味——文字通りのFBI/CIAエージェント、そして日常生活の中で監視・妨害する人物全般。目に見えない脅威と見えている脅威を区別して対処する警戒心。

I study weapon systems and vocal fighting forms
I'm many moves ahead, the thoughts are highly formed

武器システムと声の戦闘スタイルを研究している
俺は何手も先を読んでいる、思考は高度に形成されている

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「vocal fighting forms(声の戦闘スタイル)」はMCingをカンフー/武術の「型」として捉える視点。チェス的思考で相手の何手も先を読む。ブルース・リーのビートとの完璧な意味的一致。

Like time times time is time squared
Went there, sayin', "Rakaa, you don't rhyme fair"

時間×時間=時間の二乗のように
そこへ行ったら「Rakaa、お前のライムは公平じゃない」と言われた

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数学的比喩で自分の力の指数関数的増大を表現。「don't rhyme fair(ライムが公平じゃない)」は他のラッパーへの優位性を示す皮肉——つまりIriscienceのライムは「ズルいくらい上手い」という意味。

But I never dummy lyrics and they kick it to my people
It's about communication not a rapper's ego

でも俺は歌詞を薄めることはしない、そして仲間に届ける
大事なのはコミュニケーション、ラッパーのエゴじゃない

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「dummy(馬鹿にする・薄める)」——商業的に分かりやすくするため歌詞の質を落とすことを拒否。ヒップホップの本質はMCの自己顕示欲ではなくリスナーとの対話にあるというフィロソフィー。90年代後半の「シャイニー・スーツ」的物質主義への批判。

Messages I sneak in they seem to seep in
Mixed with alcohol and weed on the weekend

忍び込ませたメッセージが染み込んでいく
週末のアルコールと大麻と混じり合って

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「sneak in(忍び込ませる)」「seep in(染み込む)」——リスナーが意識しないうちにメッセージが浸透していく仕組みを描写。教訓的な内容を娯楽の中に溶け込ませるというトロイの木馬戦略。

Shared among friends like various sins
One day it clicks it's no longer dim

様々な罪のように友人の間で共有され
ある日突然意味が解けて、もう暗くない

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音楽が口コミで広がる様子を「罪の共有」に例えた逆説。"it clicks"はある瞬間に突然理解が訪れること(啓示的理解)。"no longer dim(もう薄暗くない)"——無知から覚醒するイメージ。

Time release capsules humble the headstrong
Your thoughts of takin me head on are dead wrong

徐放性カプセルが頑固者を謙虚にさせる
俺に真正面から挑もうという考えは完全に間違い

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「time release capsules(徐放性カプセル)」は時間をかけてゆっくり効く薬のカプセル——Iriscienceの歌詞が後から後から効いてくることの比喩。「headstrong(頑固な)」ライバルも時間差で攻略される。

Hook · Dilated Peoples

I work the angles sharp and precise
Dilated Peoples so you better build twice
Act like you know, not now, but right now
Dilated Peoples
I work the angles sharp and precise
Dilated Peoples so you better build twice
Act like you know, not now, but right now
Dilated Peoples

コーラス繰り返し——DJ Revolutionのスクラッチがフックを構築

Verse 2 · Evidence

(Evidence) It's the master of Aikido
I let go, karate confrontations

(エビデンス)合気道の達人だ
空手の対決は手放す

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合気道は相手の力を利用して倒す武術——直接力で対抗するのではなく、状況を逆用する戦術の比喩。「let go(手放す)」はブルース・リーの「水のようになれ」的な柔軟性の哲学。サンプル元映画との意味的呼応。

Evidence scientist in innovation
I locks on when I travels around planets

Evidenceはイノベーションの科学者
惑星を旅するとき、俺はロックオンする

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「scientist(科学者)」はFive Percenter用語で「知識を探求する者」。「lock on(ロックオン)」はミサイルが目標を捕捉するイメージ——焦点を定めたら迷わず突き進む。宇宙的スケールの比喩はアンダーグラウンドHIPHOPの常套表現。

Smooth but got a rough edge like Wurlitzer pianists
Display mucho attack, receive payments for the cadence

滑らかだがWurlitzerピアニストのような荒削りのエッジも持つ
猛烈な攻撃を見せ、そのリズムへの対価を受け取る

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Wurlitzer(ワーリッツァー)は独特の温かみと荒削りな質感を持つエレクトリックピアノ。ソウルとジャズの文脈を引用しながら自分のフロウの二面性を描写。「cadence(韻律・リズム)」への「payment」——技術に金銭的価値が伴う。

A in this, you get hit foul with flagrants
Free agents on the dotted line more hard to sign

この業界で、お前はフレグラントファウルを食らう
点線上のフリーエージェントは署名が難しい

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「flagrants(フレグラントファウル)」はバスケの悪質ファウル——業界での不当な扱いの比喩。「free agents on the dotted line」は自由契約選手がレーベルに縛られることへの警戒。独立性の維持がテーマ。

Not easily impressed with gold mines and whole nines
I'm somewhere in-between never rushed and in a hurry

金脈やドレスアップ全部にも簡単には感動しない
俺は「急がない」と「急いでいる」の間のどこかにいる

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「whole nine(whole nine yards)」は「完全装備・全部揃えること」——物質的な誇示への無関心。「never rushed and in a hurry」の逆説:焦らずも絶えず動いているという戦略的姿勢。

And when I swing my bat I don't think I'll miss like baseball
Furies the jury's hung, from verdict and got no chance

バットを振るとき、野球みたいに外れるとは思わない
評決がかかって陪審が割れた怒り、チャンスなし

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野球の「バットを振って外さない」——自信満々のフロウ。「jury's hung(陪審員が割れた)」は法廷用語、評決が出ない状態——複雑な状況の比喩。Evidenceの常套的な法廷・犯罪テーマ。

Dilated comes first the rest are second like Stu Lantz
Oh yes it gets better everyday

Dilatedが一番、残りは二番——Stu Lantzみたいに
ああ、毎日良くなっていく

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■文化背景

1990年代後半、ヒップホップのメインストリームはG-FunkとShiny Suit時代(物質主義的ポップ・ラップ)に席巻されていた。その対極で、LAのアンダーグラウンドではMCとDJの対等な関係性、リリシズム、ターンテーブリズムへの回帰運動が起きていた。Dilated Peoples(Iriscience/Rakaa、Evidence、DJ Babu)はその旗手。DJ Babuは後に「turntablism(ターンテーブリズム)」という言葉を生み出した人物であり、Beat Junkies所属の技巧派DJ。本曲のスクラッチ・フックを手掛けたDJ Revolutionも西海岸屈指のターンテーブリスト。サンプリング元のブルース・リー映画との接続はWu-Tang ClanのカンフーHIPHOP哲学とも呼応し、1990年代アンダーグラウンドHIPHOPの東洋武術崇拝を象徴する。

■レガシー

「Work the Angles」はLAアンダーグラウンドシーンを世界的に知らしめた一曲。その後Dilated Peoplesは2000年「The Platform」、2001年「Expansion Team」(DJ Premier、Alchemist参加)でアンダーグラウンドHIPHOPの主流に。Evidenceはその後ソロ活動でも高い評価を受け、DJ Babuはターンテーブリズムの定義者として歴史に名を刻んだ。「角度を利用しろ」という哲学はHIPHOPの技巧と知性の象徴として、今もLAアンダーグラウンドのDNAに刻まれている。日本でもMUROやDJ Hasebe世代のDJたちに強い影響を与えた。

Dilated Peoples - Worst Come to Worst

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Work the Angles / Worst Come to Worst

Dilated Peoples

アーティストについて

Dilated Peoples

Los Angeles, California · 1992–2007, 2014–

Evidence・Rakaa Iriscience・DJ Babu(後にABB Records設立)の3人組。1997年シングル「Work the Angles」(KutMasta Kurtプロデュース)でデビューし、2001年セルフタイトルアルバムがRawkus Records産アンダーグラウンドHHの代表作となった。DJ BabuはBeat Junkiesの創設メンバーでもありターンテーブリズムの権威。