この記事の見どころ
1995年、性的暴行罪で収監されていた2Pacが出所した日の夜に録音した復活宣言。刑務所・射撃事件・敵対者への憎悪・Death Row移籍という人生の激動をすべて飲み込み、「俺はRidah(忠義の戦士)だ」という一点に集約した楽曲。Wild-Westな闘争心とギャング的連帯が全編を貫く。
1996年アルバム『All Eyez on Me』(Death Row Records)の冒頭トラック。プロデューサーはDaz Dillinger(Dat N***a Daz)。Joeski Love「Pee-Wee's Dance」(1986年)の重低音ピアノループをサンプリングし、イントロにはリングアナウンサーのマイケル・バッファーの声を使用。BPM 87の催眠的なミッドテンポが2Pacの攻撃的フロウを最大限に引き立てる。
1995年10月13日——2Pacはシュグ・ナイトが支払った140万ドルの保釈金で刑務所から出た。契約書はトイレットペーパーに書かれ、その日の夜にはタルザナのCan-Amスタジオへ直行。ステーキとシャンパンで出所を祝った直後、ブースに入り「Ambitionz Az a Ridah」を録音した。ダズ・ディリンジャーは「トイレに行って戻ったら3ヴァースすべて完成していた」と証言している。
I won't deny it, I'm a straight rider の2Pac流スペル。忠義を尽くして戦う者・死を恐れないギャングスタ。単なる乗り手ではなく、仲間のために命を張る人間の意。
You don't wanna f*** with me
Got the police bustin' at me
But they can't do nothin' to a Gangster(ギャングスタ)の略。街のルールで生き、恐れを知らない人間を指す敬称。
否定しない、俺は筋金入りのライダー(忠義の戦士)だ
お前は俺に関わりたくないはずだ
警察が俺に向けて撃ってくる
でもGに対して何もできやしない
★ 戦場の傷とラップスターの矛盾
So many battlefield scars while driven in 豪華な車・高級車。成功の象徴だが、ここでは危険と富が同居するラップスターの矛盾を示す。
This life as a rap star is nothin' without guard
プラッシュ・カー(豪華な車)を乗り回しながら、戦場の傷が絶えない
ガード(警護)なしにラップスターの人生など意味がない
Was born rough and rugged, addressin' the mass public
My attitude was "f*** it," 'cause motherf**kers love it
タフでワイルドに生まれ、大衆に語りかけてきた
「どうにでもなれ」が俺のスタンス——みんなそれが好きだから
To be a soldier, must maintain composure at ease
Though life is complicated, only what you make it to be
ソルジャー(兵士)であるためには、落ち着いて冷静さを保たなければならない
人生は複雑だが、お前が何をするかだけが問題だ
And my ambitions as a ridah
To catch her while she hot and horny, go up inside her
Then I spit some game in her ear, "Go to the telly, ho"
ライダーとしての俺の野望は
熱く興奮している彼女をつかまえて、中に入ること
それから耳元でゲームを吹き込む、「ホテルへ行こう」
Equipped with money in a Benz 'cause, b****, I'm barely broke
I'm smokin' bomb-ass weed, feelin' crucial
ベンツに乗って金を持っている——俺はほぼ破産していないぞ
最高のウィードを吸って、最高の気分だ
From player to player, the game's tight, the feeling's mutual
From hustlin' and prayers to breakin' motherf**kers to pay us
プレイヤーからプレイヤーへ、ゲームはタイト(厳しい)、気持ちは一緒だ
ハッスル(努力)と祈りから、俺たちに払わせるためのやつらを叩きのめすまで
I got no time for these b****es (Hell no), 'cause these hoes tried to play us
I'm on a 生計の手段・稼ぎ口。ここではラップで大金を稼ぐキャリアへの野望を指す。 mission, want a mil' so I'm wishin'
こいつらに構う時間はない——こいつらは俺たちを利用しようとしたから
ミール・チケット(稼ぎ)ミッション中、百万ドルが欲しくて願っている
Can't trust a b**** in the business so I got with Death Row Records。シュグ・ナイトが設立したウエストコーストG-FunkのレーベルでDr. Dre、Snoop Dogg等を擁した。2Pacは1995年に移籍。
Now these money-hungry b****es gettin' suspicious
Started plottin' and plannin' on a scheme to come and trick us
業界の女は信用できないからDeath Rowを選んだ
今や金に飢えた連中が怪しい動きをしている
俺たちを騙す計略を企て始めた
★ 仲間との連帯
But thug n***as be on point and game tight
Me, Syke and Bogart are strapped up the same night
Got problems, then handle it, motherf**kers see me
These n***as is jealous, 'cause deep in they hearts they wanna be me
でもサグ(仲間)は準備万端でゲームも抜かりない
俺、サイク、ボガートは同じ夜に武装している
問題があるなら解決しろ、みんな俺を見ている
こいつらは嫉妬している——心の底では俺になりたいから
And now you got me right beside ya
Hopin' you listen, I catch you payin' attention
To my ambitions as a ridah
そして今、お前の隣に俺がいる
聞いてくれることを願って、お前が注目してくれていることを感じる
俺のライダーとしての野望に
I won't deny it, I'm a straight ridah
You don't wanna f*** with me (My ambitions as a ridah)
Got the police bustin' at me
But they can't do nothin' to a G
否定しない、俺は筋金入りのライダーだ
お前は俺に関わりたくないはずだ(ライダーとしての野望)
警察が俺に向けて撃ってくる
でもGに対して何もできやしない
★ 死を恐れない覚悟
It was my only wish to rise above these jealous
Coward motherf**kers I despise, when it's time to ride
I was the first to hop inside, give me the .9
嫉妬深い臆病者どもを超えることだけが願いだった
乗り込む時が来たら、俺が一番最初に飛び込んだ、.9(9mm)をくれ
I'm ready to die right here tonight and motherf**k they life
That's what they screamin' as they drill me, but I'm hard to kill
今夜ここで死ぬ覚悟はできている、やつらの命なんてどうでもいい
やつらは俺を撃ちながらそう叫ぶが、俺は殺しにくい
So I open fire until you kill me, witness my steel
Spittin' at 敵対者・ライバル。ここでは音楽業界の競争相手でもありストリートの敵でもある存在を指す。 , envious and after me
I'd rather die before they capture me, watch me bleed
だから殺されるまで撃ち続ける、俺の鉄を目撃しろ
俺を妬み、追いかけてくる敵に向かって撃ち返す
捕まるより死ぬ方がいい、俺が流血するのを見ろ
Mama (Dear Mama), come rescue me, I'm suicidal, thinkin' thoughts
I'm innocent so there'll be bullets flyin' when I'm caught
ママ(ディア・ママ)、助けに来て、俺は自殺的な考えを持っている
俺は無実だから、捕まる時には弾が飛び交うだろう
F*** doin' jail time, better day, sacrifice
Won't get a chance to do me like they did my n***a マイク・タイソン。1992年に性的暴行罪で有罪判決を受け3年服役したボクサー。2Pacは自分の裁判をタイソンの冤罪と同様に捉えていた。
刑務所なんてやってられない、死ぬ方がましだ
俺の仲間タイソン(マイク・タイソン)にやったようには俺にやらせない
Thuggin' for life, and if you right, then, n***a, die for it
Let them other bustas try, at least you tried for it
When it's time to die, then be a man and pick the way you leave
F*** peace and the police, my ambitions as a ridah
一生サグ(タフ)でいる、正しいと思うなら死ねるか試せ
他の腰抜けに試させろ、少なくともお前は試みた
死ぬ時が来たら、男として去り方を選べ
平和も警察もどうでもいい、ライダーとしての俺の野望だ
★ 復活と復讐のリリシズム
My murderous lyrics, equipped with spirits of the thugs before me
Stay off the block, evade the cops 'cause I know they comin' for me
俺の殺傷力のある歌詞は、俺より前のサグたちの魂を宿している
ブロック(ストリート)を離れ、警察を避ける——やつらが来ることはわかっている
I been hesitant to reappear, been away for years
Now I'm back, my adversaries been reduced to tears
再び現れることをためらっていた、何年も離れていた
今戻ってきたら、俺の敵たちは涙を流している
Question my methods to switch up speeds, sure as some b****es bleed
N***as'll feel the fire of my mother's corrupted seed
俺のやり方にケチをつけるなら、女が血を流すように確実にやり返す
やつらは俺の母から生まれた「堕落した種」の炎を感じることになる
Blast me but they didn't finish, didn't diminish
My powers, so now I'm back to be a motherf***in' menace
撃たれたが、やつらは仕留められなかった、俺の力を弱めることもできなかった
だから今俺は戻ってきた、とんでもない脅威として
They cowards, that's why they tried to set me up
Had b****-ass n***as on my team so indeed they wet me up
やつらは臆病者だ、だから俺を罠にはめようとした
俺のチームにクズがいたから、結果として俺は撃たれた
But I'm back 転生・生まれ変わり。2Pacは自分を刑務所から生まれ変わった新しい存在として描く。後のMakaveliというペンネームにもこの哲学が反映される。 , 収監されていた。2Pacは1995年に性的暴行罪でクリントン刑務所に服役。保釈後にDeath Rowと契約。
At the time I contemplate the way that God made it
でも俺は転生して戻ってきた、収監されていた
あの時、神がこうした理由を深く考えた
Lace 'em with lyrics that's legendary, musical mercenary
For money, I'll have these motherf**kers buried
I been gettin' much mail in jail, n***as tellin' me to kill it
Knowin', when I get out, they gon' feel it
伝説的な歌詞でやつらに向けてしかける、音楽的な傭兵
金のために、こいつらを埋葬してやる
刑務所でたくさんの手紙を受け取った、仲間が「やってくれ」と言っていた
出所したらやつらに感じさせることはわかっていた
Witness the realest, a who-ridah when I put the s*** inside
The cries from all your people when they find her, must remind ya
最もリアルな者を目撃しろ、俺がそれを入れる時のライダーを
彼女を見つけた時のみんなの叫びが、お前を思い出させるはずだ
★ 復讐と野望の宣言
(Thug life) My history'll prove I been it
Revenge on them n***as that played me and all the cowards that was down with it
Now it's your n***a right beside ya
Hopin' you listen, got you payin' attention to my ambitions as a ridah
(サグライフ)俺の歴史がそれを証明する
俺を利用したやつら、そいつらと一緒だった臆病者全員への復讐
今お前の隣に俺がいる
聞いてくれることを願って、お前が注目してくれるのを感じる、ライダーとしての俺の野望に
Death Row時代の2Pac
シュグ・ナイトは140万ドルの保釈金と引き換えに、2PacにDeath Row Recordsからの3枚のアルバムリリースを契約させた。この契約書はクリントン刑務所の独房内でトイレットペーパーの切れ端に書かれたという伝説がある。「Ambitionz Az a Ridah」はその契約の最初の成果物——出所当日の怒りとエネルギーが一切薄まることなく記録された音楽的証拠だ。
East Coast vs West Coastビーフ
1994年11月の銃撃事件後、2PacはNotorious B.I.G.とBad Boy Recordsによる陰謀説を確信した。この疑念が「Hit 'Em Up」(1996年)や本作のライン(「b****-ass n***as on my team」)として結晶化し、ヒップホップ史上最大のビーフを形成した。1996年のB.I.G.と2Pacの死は、このビーフの悲劇的な帰結となった。
キーワード解説
出所当日のCan-Amセッション
1995年10月13日、保釈されたその日に2PacはロサンゼルスのタルザナにあるCan-Amスタジオへ直行。ダズ・ディリンジャーが用意したビートを聴いた2Pacは即座にブースに入った。Kuruptの証言では「最初のヴァースを45分で録音した」。ダズは「トイレに行って戻ってきたら、3つのヴァースすべてが完成していた」と語る。刑務所内でリリックを書き溜めた9ヶ月分のエネルギーが、一夜にして解放された。
Daz Dillingerのプロダクション
プロデューサーのDaz DillingerはJoeski Love「Pee-Wee's Dance」(1986年)のピアノループとドラムブレイクをサンプリング。「Pee-Wee Hermanに関連するダンス曲をサンプリングして、ギャングスタのひねりを加えただけだ」とダズは語る。イントロにはリングアナウンサーマイケル・バッファーの「Let's get ready to rumble!」を使用し、楽曲全体を格闘技場への入場曲として演出。BPM 87のミッドテンポが2Pacの一語一語の重みを引き出す。
All Eyez on Me
「Ambitionz Az a Ridah」は『All Eyez on Me』(1996年)の冒頭を飾る。このアルバムはヒップホップ史上初の2枚組ダブルアルバムとして記録され、発売初週に566,000枚を売り上げた。Death Row移籍後わずか数ヶ月でのリリース——2Pacのスタジオワークの驚異的なスピードは、このアルバムで頂点を迎えた。
後世への影響
「Ambitionz Az a Ridah」はヒップホップにおける「監獄からの復活」という物語の原型を作った。Meek Mill、Jay-Z、Kendrick Lamarなど後世のアーティストが収監体験を音楽に昇華させる際、この楽曲の「出所→即スタジオ→宣言」というナラティブが参照点となった。
Amazon で見る
Ambitionz Az a Ridah / All Eyez on Me
2Pac
2Pac
East Harlem, New York (raised in Baltimore & Marin City, CA) · 1991–1996
Tupac Amaru Shakur(1971–1996)。Black Panther Party活動家の母Afeni Shakurのもとに生まれ、ストリートと詩の両方を生きた。服役中に全米チャート1位を達成し、1996年9月に26歳で銃撃により死去。死後も数十枚のアルバムが発表され続けるヒップホップ史上最も影響力のある人物のひとり。