Slang Dictionary
beef
ビーフ
まず結論
beef はスラングで「確執」「もめごと」「因縁」を意味します。have beef with 〜 で「〜ともめている」です。
ラッパー同士の公開バトルを指すことも多く、Nas と JAY-Z の対立はその代表例としてよく語られます。
牛肉の beef も歌詞にそのまま出てくるので、肉の話か、争いの話かを見分ける必要があります。
have beef with が基本形
I got beef with him. は「あいつとはもめてる」。beef は数えられない名詞として扱うことが多いですが、a beef と言う人もいます。
What's the beef? は「何が不満なんだ」「何でもめてるの」と事情を聞く言い方です。
squash the beef は「もめごとを収める」、手打ちにするという意味で、仲直りの場面でよく使われます。
ケンカより根の深いもの
beef は一回の口論より、続いている因縁に使われがちです。昨日の言い合いより、何年も引きずっている確執のほうがしっくりきます。
そのため、歌詞の中で beef と言われると、銃や報復といった重い話に発展する前触れとして響くことがあります。
一方で、ラッパー同士の beef は曲で言い返し合う「ディス合戦」を指すことも多く、必ずしも暴力の話とは限りません。
肉の beef との見分け方
burger、patty、cook、cow などがあれば肉です。with、over、squash などと組んでいれば、もめごとの beef です。
ラッパーは肉と確執の両方を一行に入れて遊ぶことがよくあります。牛を育てる、肉を切るといった描写がもめごとの比喩になっていないか、一度疑ってみると発見があります。
語源と背景
beef はフランス語経由で英語に入った「牛肉」の語です。
動詞の beef(文句を言う)は、1888年のニューヨークの新聞に例があるとされ、名詞の「不満・苦情」は1900年前後の記録が知られています。
なぜ牛肉が不満の意味になったのかは分かっていません。兵士が配給の牛肉に文句を言ったからという説や、18世紀イギリスの泥棒言葉 cry beef(警報を上げる)とのつながりを見る説がありますが、どれも確証はありません。
「不満」から「確執」「対立」への広がりは20世紀のアメリカ口語で進み、ヒップホップでは1990年代にはラッパー同士の対立を指す語として定着していました。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.I don't got beef with nobody.
おれは誰とももめてない。
二重否定は口語らしい形。意味は「誰とも確執はない」です。
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2.What's the beef between those two?
あの二人、何でもめてるの?
between を使って当事者同士の確執を尋ねる言い方です。
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3.They finally squashed the beef after ten years.
彼らは10年ごしにようやく和解した。
squash the beef で「もめごとを収める」。
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4.He's always beefing about the rent.
あいつはいつも家賃のことで文句を言っている。
動詞の beef は「文句を言う」。古い用法ですが今も通じます。
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5.That rap beef sold a lot of records.
あのラップの対立でレコードがたくさん売れた。
rap beef はラッパー同士の公開バトル。音楽メディアの見出しでもよく見ます。
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6.I'll have the roast beef sandwich.
ローストビーフサンドをください。
もちろんこちらは牛肉です。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、beef を含む曲は45曲で、16人中13人のラッパーに出てきました。Nas や J. Cole の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はNas 6曲、J. Cole 5曲、Kool G Rap 5曲、MF DOOM 5曲、Ghostface Killah 4曲です。
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Nas 「Ether」
"wanted beef"
2001年の JAY-Z への返答曲で、相手陣営が beef を望んだ、と言い放ちます。ラッパー同士の確執を指す beef の、もっとも有名な使用例の一つです。
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Nas 「Made You Look」
"leave the beef alone"
金を稼げ、もめごとからはゆっくり離れろ、という忠告です。beef を避けるべきものとして扱う、少し大人びた視点が出ています。
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Nas 「One Mic」
"some beef is everlastin'"
終わらない確執もある、という一節です。beef が一時的なケンカではなく、根深い因縁を指すことがよく分かります。
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GZA 「4th Chamber」
"unnecessary beef"
余計なもめごとは育てる牛が増えるだけ、と続く言葉遊びです。確執の beef と牛肉の beef を一行の中で重ねています。
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Kool G Rap 「Rikers Island」
"don't get into a beef"
刑務所のライカーズ島を舞台に、弱い者は争いに首を突っ込むなと警告します。get into a beef(もめごとに巻き込まれる)という形の例です。
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Aesop Rock 「Catacomb Kids」
"watered-down beef"
こちらはハンバーガーの水っぽい肉で、確執の意味ではありません。burgers が近くにあることで判断できます。
似た表現との違い
- dissけなす・ディスる
- diss は相手をけなす行為そのもの。beef はその結果として続く確執の状態です。diss が始まると beef になる、という順番です。
- throw shots当てこする
- 名指しせずに相手を皮肉る行為。beef ほど表立っていない段階で使われます。
- fair one素手のタイマン
- もめごとを一対一の素手で決着させる約束。beef の解決方法の一つとして出てくる語です。
- dramaごたごた
- 人間関係のいざこざ全般。beef より軽く、うわさ話レベルのもめごとにも使えます。
使うときの注意
- beef with 〜 の with を against にはしません。have beef against は不自然に聞こえます。
- 冗談で I got beef with you. と言うと、相手が本気に受け取ることもあります。
- beef up は「強化する」という別の熟語で、確執とは関係ありません。
- beefy は「がっしりした」で、これもスラングの確執とは別の意味です。
よくある質問
- beef と fight の違いは何ですか。
- fight は実際のケンカや口論そのもの、beef はその背景にある確執や因縁です。fight が一回でも、beef は長く続くことがあります。
- rap beef とは何ですか。
- ラッパー同士が曲の中で互いをけなし合う対立のことです。ディストラックの応酬がファンの注目を集めることもあります。
- beef は動詞としても使えますか。
- 使えます。beef about は「文句を言う」、beef with は「〜と対立する」です。ただし歌詞では名詞のほうがずっと多く出てきます。
- squash the beef の squash は何ですか。
- 「押しつぶす」という意味の動詞です。もめごとを押しつぶして終わらせる、というイメージで和解を表します。