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The 1st Time 和訳・意味・スラング解説 | Jamo Gang

アーティスト
Jamo Gang feat. Slug of Atmosphere
リリース年
2020
プロデューサー
DJ Premier
収録アルバム
Jamo Gang EP
エリア
NY/LA
BPM
90

この記事の見どころ

  1. 01 DJ Premierがプロデュース——プレミアのスタジオで「偶然」生まれたコラボの経緯
  2. 02 Slug(Atmosphere)を客演に迎えた「DJ Premier × Slug」という夢のコラボが初実現
  3. 03 Ras Kass(LA)、El Gant・J57(NY)、Slug(Minneapolis)——地域を超えた東西中西部の連帯
解説

■この曲の意味(要約)

2020年リリースのJamo Gang EP収録曲。Jamo Gangは西海岸のRas Kass、ニューヨークのEl GantとJ57によるスーパーグループ。DJ Premierのスタジオでの偶然のセッションから生まれたこの曲は、各MCが独自の視点でリリシズム・スキルへの誇り、ストリートの現実、そして人生の皮肉を描く。タイトル「The 1st Time」はRefrain「And I said it the first time(初めに言ったはずだ)」から来ており、自分の言葉の真実性と一貫性への宣言を象徴する。

■概要

2020年リリース。プロデュースはDJ Premier。Ras Kass(カリフォルニア州ラスカンジュラス出身)、El Gant(ニューヨーク)、J57(ニューヨーク)の3MCグループJamo Gangに、Atmosphere(ミネアポリス)のSlugが客演参加。DJ Premierのスタジオでのセッション中に生まれた楽曲で、J57がアトランタのAtmosphereライブ後にSlugへ客演を依頼したことで実現。ミュージックビデオはJ57が監督を務め、DJ PremierとSlugも出演した。BPMは約90のミッドテンポ・ブーンバップ。

■導入(制作背景)

Jamo Gangの3人がDJ Premierのスタジオを訪れた際、Premierが未発表のビートを披露。El Gantがその場で「このビートで録らせてくれ」と直談判し、Premierは「基準に達しなければ出さない」という条件で承諾した。その後J57がアトランタのAtmosphereライブに足を運び、終演後にSlugを客演へ誘い快諾を得た。J57にとってこの曲は「非常に大きな意味を持つ」作品であり、地域・世代を超えたヒップホップの連帯を体現している。

Intro

★ DJ Premierへの呼びかけ——Guruへの追悼

Preemo
Jamo
RIP Guru
And I said it the first time
And I said it the first time

プリーモ(DJ Premier)
ジャモ(Jamo Gang)
Guru、安らかに眠れ
そして俺は最初から言ってた
そして俺は最初から言ってた

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「Preemo」はDJ Premierの愛称。「RIP Guru」はGang StarrのMCであり2010年4月に他界したGuru(Keith Elam)への追悼。DJ Premierのパートナーだったグルの名前を冒頭で呼ぶことで、この曲が単なるコラボ以上の意味——Gang Starr直系のブーンバップ精神の継承——を持つことを示す。「And I said it the first time」が本曲のリフレインとなる。

Verse 1 — Ras Kass

★ サウンドチェック——古典的ヒップホップの開幕宣言

Mic check, mic check, one-two, one-two
Like a Biz Markie song, is this thing on?

マイクチェック、マイクチェック、ワン・ツー、ワン・ツー
Biz Markieの曲みたいに——これ聞こえてるか?

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「Mic check(マイクチェック)」はヒップホップの定番の開幕フレーズ。「Biz Markie」は1988年のコメディックなラッパー——「Just a Friend」等で知られる。Biz Markieを引用することで懐かしいゴールデンエイジへのリスペクトを表しながら、ユーモラスにバースをスタートさせる。

I battled Godzilla and dissed King Kong
Then pull out a handgun that's six feet long

ゴジラとバトルしてキングコングをディスした
それから6フィート(約1.8メートル)もある拳銃を引き出した

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誇張法(ハイパーボール)によるフレックス——ゴジラ・キングコングという怪獣と戦うほどの実力と、あり得ない長さの銃という荒唐無稽な比喩で自分のスキルの大きさを表現。Ras Kassの知性的なリリシズムの中に笑いを織り交ぜる特徴的なスタイル。

★ マンブルラップへの批判——本物のMCの宣言

Mumble rappers getting paid, what they hitting for?
We the best, cut a check, start a bidding war

マンブルラッパーが金を稼いでる——何のためにやってるんだ?
俺たちが最高だ、小切手を切れ、入札戦争を始めろ

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「mumble rappers(マンブルラッパー)」は2010年代後半に登場した歌詞より感情・フロウ重視のラッパーへの批判的呼称。Ras Kassら技巧派MCが「ライムスキルより雰囲気」のトレンドに対して、スキルの価値を主張する。「cut a check(小切手を切る)」はビジネス用語——俺たちの価値を認めて金を払え。

We define premier, we prime-time, combine crimes
Beats and rhymed lines (And I said it the first time), huh

俺たちこそが「プレミア(最高)」を定義する、プライムタイム、犯罪を組み合わせる
ビートと韻を踏んだライン(そして俺は最初から言ってた)、ふん

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「premier(プレミア)」はDJ Premierの名前とかけた二重の意味——「最高・一流」でもありプロデューサーDJ Premierの名でもある。「prime-time(プライムタイム)」は最も視聴率の高い時間帯——最高の舞台にいること。「And I said it the first time」が楽曲のリフレインとして初登場。

★ Aaron Hernandez——NFLスター転落の比喩

Hang in there like Aaron Hernandez

Aaron Hernandezのように耐え続けろ

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Aaron Hernandez(アーロン・エルナンデス)はNFLニューイングランド・ペイトリオッツのスター選手。2013年に殺人罪で逮捕・収監され、2017年に獄中で自殺(首吊り)した。「hang in there(耐える)」は激励の慣用表現だが、「hang(首を吊る)」のダブルミーニングで彼の死を皮肉った黒いユーモア。Ras Kassのシニカルな知性が光るライン。

She got a dope personality if you can get to it
'Cause screw it, can't even get near love
She on the train fully immersed in her earbuds

彼女は素晴らしい個性を持ってる——そこにたどり着ければの話だが
もうどうでもいい、愛に近づくことさえできない
彼女は電車でイヤホンに完全に没入してる

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「dope(ドープ)」は「すごい・最高」のスラング。現代の孤独感とデジタル孤立を描写——イヤホンをして外界をシャットアウトする女性のイメージ。ストリートの男からの片想いという世俗的なシーンを挟むことで、バースに人間的な温かみを加える。

★ スティーブン・ホーキング——ブラックユーモアのボディブロー

Or speed walking, stop it, Steve Hawkin'
Bro paralyzed, so how is he even talking?
I don't know
It ain't a Jamo Gang gig, then I don't show

それか速歩き——やめろよ、スティーブ・ホーキング
あいつは麻痺してるのに、どうやって話してるんだ?
わからん
Jamo Gangのギグじゃないなら、俺は出ない

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「Steve Hawkin'(スティーブン・ホーキング)」——理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士はALSで全身麻痺を患いながら音声合成装置で話し続けた。Ras Kassのシグネチャーである知的でありながら物議を醸す比喩——速歩きをフラフラ歩くホーキングに例える荒削りなブラックユーモア。最後は「Jamo Gangのギグじゃないなら俺は出ない」というグループへの忠誠宣言で締める。

Verse 2 — J57

★ Vanilla Sky——夢と現実の境界

Yo, they pass the torch, I live a dream like Vanilla Sky
Been vilified and criticized, but still alive

よお、バトンが渡された、俺はVanilla Skyのような夢の中を生きてる
悪者にされ批判されてきたが、まだ生きてる

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「pass the torch(松明を渡す)」は責任や遺産を次世代へ継承すること——ゴールデンエイジのMCたちから受け継いだもの。「Vanilla Sky(バニラ・スカイ)」は2001年のトム・クルーズ主演映画——夢と現実が混在する世界が舞台。「vilified(ヴィリファイド)」は「悪意を持って中傷された」の意。

Oedipus complex from Mother Earth, the son immersed
King of the underdogs, battle-scarred for what it's worth

母なる地球へのオイディプスコンプレックス、その息子は没入している
アンダードッグの王、その価値のために戦いの傷を負って

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「Oedipus complex(オイディプスコンプレックス)」はフロイト心理学の概念——母への執着。「Mother Earth(母なる地球)」をその対象に据えることで、大地への深い帰属意識を表現。「underdogs(アンダードッグ)」は弱者・不利な側——その王として戦い続ける自己規定。

★ Vitiligo——傷と循環の比喩

Uh, but what do I know? I'm just a wino
A vicious cycle, spotted out like Vitiligo, Michael

ああ、でも俺に何がわかる?ただのワイン野郎だ
悪循環——Vitiligo(白斑症)のMichaelのように目立って

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「wino(ワイノ)」は安ワインを飲む酔っ払い・社会の底辺を指す俗語で自己卑下の表現。「Vitiligo(白斑症)」はメラニン色素が失われる皮膚疾患——マイケル・ジャクソンが患っていたことで有名(「Michael」と言及)。「spotted out(目立つ)」との韻が鮮やか。

I'm auto rifle, then not a typo
Hydro smoking ninety-nine defined around the time of my life

俺は自動ライフル——タイポじゃない
ハイドロ(上質な大麻)を吸いながら99年、人生の黄金期を定義した

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「auto rifle(自動ライフル)」はラップの連射速度と破壊力のメタファー。「not a typo(タイポじゃない)」——意図的に放たれた言葉。「Hydro(ハイドロ)」は水耕栽培の高品質マリファナのスラング。「ninety-nine(99年)」は1999年——J57の音楽的黄金期への言及か、ヒップホップのゴールデンエイジの終盤への参照。

★ GOAT(Preem)——DJ Premierへの最大の賛辞

They call me '57
Yeah, ain't nothing new we down with the goat (Preem)
Yeah, Jamo juggling jugulars going right for their throat

彼らは俺を「57」と呼ぶ
そう、新しくはない——俺たちはGOAT(プレミア)と繋がってる
そう、JamoはJugularをジャグリングしながら喉元を狙ってる

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「'57」はJ57の名前の由来——Chevrolet '57(1957年型シボレー)などから来るプロデューサー名。「goat(GOAT)」はGreatest Of All Time——ここでは「Preem」(DJ Premier)を指し、業界最高のプロデューサーと共に働く誇りを示す。「jugulars(頸静脈)」を「juggling(ジャグリング)」する——殺傷力とパフォーマンス性の韻遊び。

And I quote, we down with Atmosphere and the fact is clear
There's no one on a level this elevated, one

引用しよう——俺たちはAtmosphereと繋がってる、そして事実は明らかだ
このレベルにいる者は他にいない、一人だ

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「Atmosphere(アトモスフィア)」——ミネアポリスのSlugとAntが中心のグループ。SlugをこのJamo Gangの曲に招いたことへの誇りと、コラボの歴史的意義を宣言。「elevated(エレベーテッド)」は「高められた・高次元の」——ジャンルの頂点を示す。

Verse 3 — Slug (Atmosphere)

★ Slugのユーモラスな自己崩壊——バーの隅で小便

Two, three and to the four
In the corner of the bar started peeing on the floor
Break my neck trying to peep the score
But that's not a TV, that's the pizza warmer

ツー、スリー、フォーへ
バーの隅で床に小便を始めた
スコアを見ようと首を折りそうになった
でもあれはテレビじゃない、ピザウォーマーだった

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Snoop Doggの「Gin and Juice」(「two, three, to the fo'」)への参照でバースをスタート。Slugのシグネチャーである自己卑下的でユーモラスなストーリーテリング——酔っ払ってバーの隅で小便し、ピザウォーマーをテレビと見間違えるというコミカルなシーンを描く。Atmosphere特有の「失敗する男」キャラクターの典型。

I was with your mom, you should call her soon
Fit your whole universe in my laundry room

お前のお母さんと一緒にいたぞ——早めに電話した方がいい
お前の宇宙全体を俺のランドリールームに収めてやる

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「I was with your mom(お前の母親といたぞ)」——「your mom」ジョークはヒップホップのバトルにおける古典的な挑発。続く「fit your whole universe in my laundry room」——「お前の世界観はコインランドリーサイズだ」という侮辱と、「俺のスペースに収まる程度の存在」という格差の表現。

★ 「And I said it the first time」——リフレインの登場

Y'all pussy, you probably got a mouse in your mouth
You don't come out of your house (And I said it the first time)

お前らはビビリだ——多分口の中にネズミがいるんだろ
お前は家から出ない(そして俺は最初から言ってた)

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「pussy(プッシー)」は臆病者のスラング。「mouse in your mouth(口の中のネズミ)」——「猫が怖くてしゃべれない」的な意味か、臆病さをさらに強調する荒削りな比喩。「you don't come out of your house(家から出ない)」はリアルな世界で行動できない者への批判。そしてリフレイン「And I said it the first time」が初めてSlugの口から登場。

I talk my s**t, I fly this frisbee
Lost in the mix of that Irish whiskey

俺は好き勝手しゃべる、このフリスビーを飛ばす
アイリッシュウイスキーの渦に迷い込んで

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「talk my s**t(シットを話す)」は「好き勝手に、遠慮なくしゃべる」。「fly this frisbee(フリスビーを飛ばす)」——投げやりで自由な行動の比喩。「Irish whiskey(アイリッシュウイスキー)」への言及——白人MCとして自分のルーツとアルコールへの親和性をユーモラスに示すSlugらしい自己描写。

I just spent a little time in your city
But I hit decline 'cause I was kind of busy
You can probably find me at the back of the line
I always show up late and I don't even know why

お前の街にちょっとだけいた
でも電話を切ったのは少し忙しかったから
たぶん列の後ろに俺がいる
いつも遅れて現れるのに、自分でも理由がわからない

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Slugのトレードマーク——自分の社会不適合さを淡々と語る内省的スタイル。「hit decline(拒否ボタンを押す)」は着信拒否。「back of the line(列の後ろ)」は常に後手に回る性格。自己批判的でありながら笑いを誘う、Slugならではの「失敗する人間」の肖像。

It doesn't matter, I'ma be twenty minutes behind
Don't even ask me 'bout it (And I said it the first time)

どうせ関係ない、俺は20分遅れる
それについて聞くな(そして俺は最初から言ってた)

Verse 4 — El Gant

★ Donnie Darko——時間と未来を見る目

Yeah, 'til the second my soul pass on
I'm trying to see in the future like Donnie Darko
When his man man with a mask on

そう、魂が去る瞬間まで
Donnie Darkoみたいに未来を見ようとしている
マスクをした「彼の男」が現れる時のように

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「Donnie Darko(ドニー・ダーコ)」は2001年のカルト映画——タイムトラベルと未来の予知が題材。「his man man with a mask on」はDonnie Darkoに未来を告げる謎のウサギのぬいぐるみ「Frank」を指す。El Gantが死の瞬間まで未来を見据えてラップし続けるという決意の比喩。

If the planet stops spinning, I spit this last song
Inside my vision, the limited in this rare form

地球が回るのをやめても、俺は最後の曲を吐き出す
俺のビジョンの中に、このレア・フォームの限界がある

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「if the planet stops spinning(地球が回るのをやめても)」——世界の終わりでさえも止まらないという不退転の覚悟。「rare form(レアフォーム)」はベストコンディション・最高の状態——「今が最も充実している」という自己確信の表現。

★ フライドチキンとケール——組み合わせの不条理

Half gone like a chemtrail
We don't go together like a bucket of friend chicken and fresh kale

コントレイルのように半分消えて
俺たちはフライドチキンのバケツと新鮮なケールのように合わない

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「chemtrail(ケムトレイル)」は飛行機雲——陰謀論でも語られる。「half gone(半分消えた)」は存在の曖昧さ。「bucket of fried chicken and fresh kale(フライドチキンとケール)」——ソウルフードとヘルシーフードの対比——全く合わない二つのものの比喩としてユーモラスに使う。

I'm half a train to the track riding the left rail
Y'all half a brain when you rap and decide your pen fail

俺は左レールを走る列車の半分
お前らはラップする時に頭が半分しか働いてないから、ペンが失敗する

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「left rail(左レール)」——アンダーグラウンド・インディペンデントな道(メインストリームの「右」に対する「左」)。「half a brain(頭が半分)」は「スキルが足りない」——他のラッパーのライミングスキルを批判。「pen fail(ペンの失敗)」は歌詞を書く能力の欠如。

★ クリスタルメスとスターバックス——極端な対比

Men frail, let's sail or wait until the sun set on this boat
I stay woke like I sniffed a crystal meth rail

男たちは脆い、帆を張ろうか、それともこの船で日が沈むまで待つか
クリスタルメスのレールを鼻から吸ったように目が覚めている

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「frail(脆い)」は弱い男への批判と「sail(帆走)」の韻。「stay woke(覚醒し続ける)」はBLM運動でも使われる「社会的不正義に目を覚ましている」という表現。それを「crystal meth rail(メスアンフェタミンの一線)」で吸ったような覚醒状態と比喩する——ドラッグの比喩でありながら政治的覚醒も同時に意味する。

Wash it down with Starbucks tall cup, chalk up
And deadlift these stars, f**k

スターバックスのトールカップで流し込んで、チョークアップして
これらのスターをデッドリフトする、くそ

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「Starbucks tall cup(スタバのトールカップ)」——日常の小道具を極端なものと並べるEl Gantのユーモア。「chalk up(チョークアップ)」はウェイトリフティングで滑り止めのチョークを手につけること——本番前の準備。「deadlift these stars(スターをデッドリフト)」——業界のスターたちを力づくで持ち上げる・追い越すという強さの表現。

★ 人種差別的警察と黙示録——社会批判の結末

You won't find truth in your Apple Watch
It's possible what I say in popular or profitable
Coach the game, Hayden Fox
So pay your racist cops
Front row for the apocalypse that we pay to watch

Apple Watchの中に真実は見つからない
俺の言葉が人気になるか儲かるかは可能性の話
Hayden Foxのようにゲームを指揮して
だからお前らの人種差別的な警官に払え
俺たちが金を払って見る黙示録の最前列

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「Apple Watch(アップルウォッチ)」——テクノロジーへの依存批判、真実はガジェットの中にはない。「Hayden Fox(ヘイデン・フォックス)」はTVシリーズ「Coach」(1989–1997)の架空のコーチキャラクター——戦略家の比喩。「racist cops(人種差別的警官)」への言及はBLM運動の文脈に直接繋がる。「front row for the apocalypse(黙示録の最前列)」——社会崩壊をエンターテイメントとして消費する現代社会の末路への暗示。

Outro

★ 「And I said it the first time」——有言実行の宣言で閉幕

And I said it the first time

そして俺は最初から言ってた

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楽曲全体を貫くリフレインで締める。「the first time(最初の時)」——自分の言葉は後から変えない、最初から一貫していたという誇り。Jamo Gangが「最初から」この水準のヒップホップを体現してきたという宣言であり、DJ Premierのスタジオで「証明してみせろ」と言われた時から変わらぬ姿勢の集約でもある。

■ キーワード・スラング一覧

歌詞の内容より感情・フロウ・オートチューンを重視するラッパーへの批判的呼称。Lil UziやLil Pumpなど2010年代後半に台頭。技巧派MCからの批判的視点で使われる。 小切手を切る=金を払う。「俺たちの価値を認めて報酬を支払え」という意味。ビジネス交渉の文脈から転じたスラング。 Greatest Of All Time(史上最高)の略語。ここではDJ Premierを指す。ヒップホップでは特定のアーティストへの最大限の賛辞として使われる。 安ワインを飲む酔っ払い・社会の底辺にいる人間のスラング。自己卑下的に使われることが多い。 水耕栽培(hydroponics)で育てた高品質マリファナのスラング。通常の栽培より効力が高いとされる上質品を指す。 「目覚め続ける」——社会的不正義、人種差別、権力の乱用に対して意識を高く保つこと。BLM運動で広く使われた言葉。 「好き勝手しゃべる」「遠慮なく本音をぶつける」。他者の目を気にせず自分の思いを直接的に表現すること。 ウェイトリフティングの種目で最も重い重量を扱う基本動作。転じて「重大な課題を力で克服する」「大きな存在を押し上げる」の比喩として使われる。

■ 文化的背景

Jamo Gangというスーパーグループの意義:Ras Kassは1990年代から活動するLA出身の技巧派MCで「Soul On Ice」(1996年)で高い評価を得た。El GantはBrooklyn出身のベテランMC、J57はプロデューサー兼MCとして活動。異なる出自を持つ3人が集まったJamo Gangは、インディー・ヒップホップシーンにおける「スキル重視」の価値観を体現するグループ。Fat Beats Recordsの精神を受け継ぐ、アンダーグラウンドの守護者として位置づけられる。

DJ Premierとブーンバップの継承:DJ Premierは「The 1st Time」を手掛けることで、Gang Starrで確立した「ダスティなサンプルループ+スクラッチ+技巧的なMC」という公式を2020年代に接続。GriselDA Records(Westside Gunn、Conway the Machine)やJamo Gangへの楽曲提供を通じて、伝説的プロデューサーが現役であり続けることを証明し、ブーンバップの火を絶やさない役割を担っている。

Atmosphere(Slug)との東西中西部コネクション:Slugはミネアポリス出身——LA(Ras Kass)、NY(El Gant・J57)、Minneapolis(Slug)という地理的多様性が一曲に凝縮。これは特定のシーンに閉じないヒップホップの普遍性を示す。AtmosphereはBig Emoと呼ばれる内省的・エモーショナルなスタイルで知られ、ブーンバップのJamo Gangにおける異質さが逆に楽曲の幅を広げている。

■ 制作の裏側

DJ Premierのスタジオから始まった偶然:El Gantの証言によれば、Jamo Gangの3人がDJ Premierのスタジオを社交的に訪れた際、Premierが「in the chamber(制作中)」の未発表ビートを披露。El Gantが即座に「そのビートで録らせてくれ」と直談判。Premierは「基準に達しなければ世に出さない」という条件でMP3を渡し、「show and prove(実力を証明してみせろ)」と試練を課した。

アトランタでのSlug獲得:ビートを受け取ってから約1ヶ月後、J57とEl GantはAtmosphereのアトランタライブに赴き、終演後にバックステージでSlugと出会う。J57はPremierのビートにSlugのバイブスが完璧にマッチすると確信し、その場で客演を依頼。Slugが快諾したことで「DJ Premier × Slug」という長年のファンの夢が初めて実現した。

J57のディレクターデビュー:MVはJ57が初めて監督を務めた作品となり、DJ PremierとSlugも出演。「この曲はグループにとって非常に大きな意味を持つ」と語るJ57にとって、音楽的にも映像的にも集大成となる特別な作品。

■ 評価とその後の影響

インディー・ブーンバップ復権の一翼:2020年は新型コロナウイルスのパンデミックと人種差別への抗議運動が重なった歴史的な年。その状況下でリリースされた「The 1st Time」は、時代の混乱の中でスキルとリリシズムの価値を再確認させる作品として、ハードコアHHファンから高い評価を得た。

Ras Kassの再評価:1990年代に「Soul On Ice」でその知性的なリリシズムが高く評価されながら、2000年代以降は大きなブレイクに恵まれなかったRas Kass。Jamo Gangとしての活動を通じて、若いリスナーへのリーチと往年のファンへの再評価が進んだ。「The 1st Time」のVerse 1は特に彼のリリカルスキルが凝縮された好例として語られる。

DJ Premier × Atmosphere:「The 1st Time」が実現させた「DJ Premier × Slug(Atmosphere)」というコラボは、それぞれのファンベース間でも話題を呼んだ。ブーンバップのゴッドとエモ・ヒップホップの象徴が一つの曲に同居することで、ヒップホップのサブジャンル間の壁が取り除かれた瞬間として記憶されている。

Jamo Gang - Jamo Gang EP

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The 1st Time / Jamo Gang EP

Jamo Gang

アーティストについて

Jamo Gang

New York / Los Angeles · 2019–

Ras Kass(カリフォルニア州出身)、El Gant(ニューヨーク)、J57(ニューヨーク)によるスーパーグループ。異なる出自を持つ3人がFat Beats Recordsの精神を継承しつつ、スキル重視のブーンバップを現代に展開。DJ Premierとのコラボで実現した「The 1st Time」(2020年)はAtmosphereのSlugを客演に迎え、地域・世代を超えたインディー・ヒップホップの連帯を体現した作品として高い評価を受けた。