この記事の見どころ
2020年リリースのJamo Gang EP収録曲。Jamo Gangは西海岸のRas Kass、ニューヨークのEl GantとJ57によるスーパーグループ。DJ Premierのスタジオでの偶然のセッションから生まれたこの曲は、各MCが独自の視点でリリシズム・スキルへの誇り、ストリートの現実、そして人生の皮肉を描く。タイトル「The 1st Time」はRefrain「And I said it the first time(初めに言ったはずだ)」から来ており、自分の言葉の真実性と一貫性への宣言を象徴する。
2020年リリース。プロデュースはDJ Premier。Ras Kass(カリフォルニア州ラスカンジュラス出身)、El Gant(ニューヨーク)、J57(ニューヨーク)の3MCグループJamo Gangに、Atmosphere(ミネアポリス)のSlugが客演参加。DJ Premierのスタジオでのセッション中に生まれた楽曲で、J57がアトランタのAtmosphereライブ後にSlugへ客演を依頼したことで実現。ミュージックビデオはJ57が監督を務め、DJ PremierとSlugも出演した。BPMは約90のミッドテンポ・ブーンバップ。
Jamo Gangの3人がDJ Premierのスタジオを訪れた際、Premierが未発表のビートを披露。El Gantがその場で「このビートで録らせてくれ」と直談判し、Premierは「基準に達しなければ出さない」という条件で承諾した。その後J57がアトランタのAtmosphereライブに足を運び、終演後にSlugを客演へ誘い快諾を得た。J57にとってこの曲は「非常に大きな意味を持つ」作品であり、地域・世代を超えたヒップホップの連帯を体現している。
★ DJ Premierへの呼びかけ——Guruへの追悼
Preemo
Jamo
RIP Guru
And I said it the first time
And I said it the first time
プリーモ(DJ Premier)
ジャモ(Jamo Gang)
Guru、安らかに眠れ
そして俺は最初から言ってた
そして俺は最初から言ってた
★ サウンドチェック——古典的ヒップホップの開幕宣言
Mic check, mic check, one-two, one-two
Like a Biz Markie song, is this thing on?
マイクチェック、マイクチェック、ワン・ツー、ワン・ツー
Biz Markieの曲みたいに——これ聞こえてるか?
I battled Godzilla and dissed King Kong
Then pull out a handgun that's six feet long
ゴジラとバトルしてキングコングをディスした
それから6フィート(約1.8メートル)もある拳銃を引き出した
★ マンブルラップへの批判——本物のMCの宣言
Mumble rappers getting paid, what they hitting for?
We the best, cut a check, start a bidding war
マンブルラッパーが金を稼いでる——何のためにやってるんだ?
俺たちが最高だ、小切手を切れ、入札戦争を始めろ
We define premier, we prime-time, combine crimes
Beats and rhymed lines (And I said it the first time), huh
俺たちこそが「プレミア(最高)」を定義する、プライムタイム、犯罪を組み合わせる
ビートと韻を踏んだライン(そして俺は最初から言ってた)、ふん
★ Aaron Hernandez——NFLスター転落の比喩
Hang in there like Aaron Hernandez
Aaron Hernandezのように耐え続けろ
She got a dope personality if you can get to it
'Cause screw it, can't even get near love
She on the train fully immersed in her earbuds
彼女は素晴らしい個性を持ってる——そこにたどり着ければの話だが
もうどうでもいい、愛に近づくことさえできない
彼女は電車でイヤホンに完全に没入してる
★ スティーブン・ホーキング——ブラックユーモアのボディブロー
Or speed walking, stop it, Steve Hawkin'
Bro paralyzed, so how is he even talking?
I don't know
It ain't a Jamo Gang gig, then I don't show
それか速歩き——やめろよ、スティーブ・ホーキング
あいつは麻痺してるのに、どうやって話してるんだ?
わからん
Jamo Gangのギグじゃないなら、俺は出ない
★ Vanilla Sky——夢と現実の境界
Yo, they pass the torch, I live a dream like Vanilla Sky
Been vilified and criticized, but still alive
よお、バトンが渡された、俺はVanilla Skyのような夢の中を生きてる
悪者にされ批判されてきたが、まだ生きてる
Oedipus complex from Mother Earth, the son immersed
King of the underdogs, battle-scarred for what it's worth
母なる地球へのオイディプスコンプレックス、その息子は没入している
アンダードッグの王、その価値のために戦いの傷を負って
★ Vitiligo——傷と循環の比喩
Uh, but what do I know? I'm just a wino
A vicious cycle, spotted out like Vitiligo, Michael
ああ、でも俺に何がわかる?ただのワイン野郎だ
悪循環——Vitiligo(白斑症)のMichaelのように目立って
I'm auto rifle, then not a typo
Hydro smoking ninety-nine defined around the time of my life
俺は自動ライフル——タイポじゃない
ハイドロ(上質な大麻)を吸いながら99年、人生の黄金期を定義した
★ GOAT(Preem)——DJ Premierへの最大の賛辞
They call me '57
Yeah, ain't nothing new we down with the goat (Preem)
Yeah, Jamo juggling jugulars going right for their throat
彼らは俺を「57」と呼ぶ
そう、新しくはない——俺たちはGOAT(プレミア)と繋がってる
そう、JamoはJugularをジャグリングしながら喉元を狙ってる
And I quote, we down with Atmosphere and the fact is clear
There's no one on a level this elevated, one
引用しよう——俺たちはAtmosphereと繋がってる、そして事実は明らかだ
このレベルにいる者は他にいない、一人だ
★ Slugのユーモラスな自己崩壊——バーの隅で小便
Two, three and to the four
In the corner of the bar started peeing on the floor
Break my neck trying to peep the score
But that's not a TV, that's the pizza warmer
ツー、スリー、フォーへ
バーの隅で床に小便を始めた
スコアを見ようと首を折りそうになった
でもあれはテレビじゃない、ピザウォーマーだった
I was with your mom, you should call her soon
Fit your whole universe in my laundry room
お前のお母さんと一緒にいたぞ——早めに電話した方がいい
お前の宇宙全体を俺のランドリールームに収めてやる
★ 「And I said it the first time」——リフレインの登場
Y'all pussy, you probably got a mouse in your mouth
You don't come out of your house (And I said it the first time)
お前らはビビリだ——多分口の中にネズミがいるんだろ
お前は家から出ない(そして俺は最初から言ってた)
I talk my s**t, I fly this frisbee
Lost in the mix of that Irish whiskey
俺は好き勝手しゃべる、このフリスビーを飛ばす
アイリッシュウイスキーの渦に迷い込んで
I just spent a little time in your city
But I hit decline 'cause I was kind of busy
You can probably find me at the back of the line
I always show up late and I don't even know why
お前の街にちょっとだけいた
でも電話を切ったのは少し忙しかったから
たぶん列の後ろに俺がいる
いつも遅れて現れるのに、自分でも理由がわからない
It doesn't matter, I'ma be twenty minutes behind
Don't even ask me 'bout it (And I said it the first time)
どうせ関係ない、俺は20分遅れる
それについて聞くな(そして俺は最初から言ってた)
★ Donnie Darko——時間と未来を見る目
Yeah, 'til the second my soul pass on
I'm trying to see in the future like Donnie Darko
When his man man with a mask on
そう、魂が去る瞬間まで
Donnie Darkoみたいに未来を見ようとしている
マスクをした「彼の男」が現れる時のように
If the planet stops spinning, I spit this last song
Inside my vision, the limited in this rare form
地球が回るのをやめても、俺は最後の曲を吐き出す
俺のビジョンの中に、このレア・フォームの限界がある
★ フライドチキンとケール——組み合わせの不条理
Half gone like a chemtrail
We don't go together like a bucket of friend chicken and fresh kale
コントレイルのように半分消えて
俺たちはフライドチキンのバケツと新鮮なケールのように合わない
I'm half a train to the track riding the left rail
Y'all half a brain when you rap and decide your pen fail
俺は左レールを走る列車の半分
お前らはラップする時に頭が半分しか働いてないから、ペンが失敗する
★ クリスタルメスとスターバックス——極端な対比
Men frail, let's sail or wait until the sun set on this boat
I stay woke like I sniffed a crystal meth rail
男たちは脆い、帆を張ろうか、それともこの船で日が沈むまで待つか
クリスタルメスのレールを鼻から吸ったように目が覚めている
Wash it down with Starbucks tall cup, chalk up
And deadlift these stars, f**k
スターバックスのトールカップで流し込んで、チョークアップして
これらのスターをデッドリフトする、くそ
★ 人種差別的警察と黙示録——社会批判の結末
You won't find truth in your Apple Watch
It's possible what I say in popular or profitable
Coach the game, Hayden Fox
So pay your racist cops
Front row for the apocalypse that we pay to watch
Apple Watchの中に真実は見つからない
俺の言葉が人気になるか儲かるかは可能性の話
Hayden Foxのようにゲームを指揮して
だからお前らの人種差別的な警官に払え
俺たちが金を払って見る黙示録の最前列
★ 「And I said it the first time」——有言実行の宣言で閉幕
And I said it the first time
そして俺は最初から言ってた
Jamo Gangというスーパーグループの意義:Ras Kassは1990年代から活動するLA出身の技巧派MCで「Soul On Ice」(1996年)で高い評価を得た。El GantはBrooklyn出身のベテランMC、J57はプロデューサー兼MCとして活動。異なる出自を持つ3人が集まったJamo Gangは、インディー・ヒップホップシーンにおける「スキル重視」の価値観を体現するグループ。Fat Beats Recordsの精神を受け継ぐ、アンダーグラウンドの守護者として位置づけられる。
DJ Premierとブーンバップの継承:DJ Premierは「The 1st Time」を手掛けることで、Gang Starrで確立した「ダスティなサンプルループ+スクラッチ+技巧的なMC」という公式を2020年代に接続。GriselDA Records(Westside Gunn、Conway the Machine)やJamo Gangへの楽曲提供を通じて、伝説的プロデューサーが現役であり続けることを証明し、ブーンバップの火を絶やさない役割を担っている。
Atmosphere(Slug)との東西中西部コネクション:Slugはミネアポリス出身——LA(Ras Kass)、NY(El Gant・J57)、Minneapolis(Slug)という地理的多様性が一曲に凝縮。これは特定のシーンに閉じないヒップホップの普遍性を示す。AtmosphereはBig Emoと呼ばれる内省的・エモーショナルなスタイルで知られ、ブーンバップのJamo Gangにおける異質さが逆に楽曲の幅を広げている。
DJ Premierのスタジオから始まった偶然:El Gantの証言によれば、Jamo Gangの3人がDJ Premierのスタジオを社交的に訪れた際、Premierが「in the chamber(制作中)」の未発表ビートを披露。El Gantが即座に「そのビートで録らせてくれ」と直談判。Premierは「基準に達しなければ世に出さない」という条件でMP3を渡し、「show and prove(実力を証明してみせろ)」と試練を課した。
アトランタでのSlug獲得:ビートを受け取ってから約1ヶ月後、J57とEl GantはAtmosphereのアトランタライブに赴き、終演後にバックステージでSlugと出会う。J57はPremierのビートにSlugのバイブスが完璧にマッチすると確信し、その場で客演を依頼。Slugが快諾したことで「DJ Premier × Slug」という長年のファンの夢が初めて実現した。
J57のディレクターデビュー:MVはJ57が初めて監督を務めた作品となり、DJ PremierとSlugも出演。「この曲はグループにとって非常に大きな意味を持つ」と語るJ57にとって、音楽的にも映像的にも集大成となる特別な作品。
インディー・ブーンバップ復権の一翼:2020年は新型コロナウイルスのパンデミックと人種差別への抗議運動が重なった歴史的な年。その状況下でリリースされた「The 1st Time」は、時代の混乱の中でスキルとリリシズムの価値を再確認させる作品として、ハードコアHHファンから高い評価を得た。
Ras Kassの再評価:1990年代に「Soul On Ice」でその知性的なリリシズムが高く評価されながら、2000年代以降は大きなブレイクに恵まれなかったRas Kass。Jamo Gangとしての活動を通じて、若いリスナーへのリーチと往年のファンへの再評価が進んだ。「The 1st Time」のVerse 1は特に彼のリリカルスキルが凝縮された好例として語られる。
DJ Premier × Atmosphere:「The 1st Time」が実現させた「DJ Premier × Slug(Atmosphere)」というコラボは、それぞれのファンベース間でも話題を呼んだ。ブーンバップのゴッドとエモ・ヒップホップの象徴が一つの曲に同居することで、ヒップホップのサブジャンル間の壁が取り除かれた瞬間として記憶されている。
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The 1st Time / Jamo Gang EP
Jamo Gang
Jamo Gang
New York / Los Angeles · 2019–
Ras Kass(カリフォルニア州出身)、El Gant(ニューヨーク)、J57(ニューヨーク)によるスーパーグループ。異なる出自を持つ3人がFat Beats Recordsの精神を継承しつつ、スキル重視のブーンバップを現代に展開。DJ Premierとのコラボで実現した「The 1st Time」(2020年)はAtmosphereのSlugを客演に迎え、地域・世代を超えたインディー・ヒップホップの連帯を体現した作品として高い評価を受けた。