WAX&THINK

It Was a Good Day — Ice Cube スラング・英語解説

It Was a Good Dayに出てくるスラングや言い回しの意味を、和訳つきで一つずつ読み解きます。

アーティスト
Ice Cube
リリース年
1992
プロデューサー
DJ Pooh
収録アルバム
The Predator
エリア
LA
BPM
92
サンプル元
The Isley Brothers "Footsteps in the Dark" (1977)

この記事の見どころ

  1. 01 「何も悪いことが起きなかった」だけで最高の一日になる、という発想の曲
  2. 02 gotta、kinda、y'all、they was など、くだけた口語の使い方がそのまま学べる
  3. 03 drop-top、jacker、bones、Fatburger、Goodyear Blimp。90年代前半のロサンゼルスの固有名詞が多い

[PR] メルカリで探す

元ネタ

解説

■この曲で何を学べるか

「今日は何も悪いことが起きなかった」。ただそれだけで、人生最高の一日になる。

その逆説がこの曲の核だと思っています。

1992年のアルバム『The Predator』に収められ、1993年2月にシングルとして出ました。Isley Brothersの甘いスロージャムを下敷きに、Ice Cubeが一日の流れを、時系列で淡々と語ります。

英語学習の面では、動詞の短縮形、くだけた文法、そして固有名詞の宝庫です。朝起きるところから、深夜のハンバーガーまで、LAの一日がそのまま会話の語彙になっています。

■「普通の日」が、実は普通ではない

犬が吠えない、パトカーが素通りする、誰も銃を撃たない。聴き手にとってはごく当たり前のことが、この曲では「奇跡のような一日」として語られます。

つまり、普段はそうではない、ということです。曲の底には、当時のサウス・セントラルの現実がずっと流れています。

その対比を知ってから聴くと、軽いはずの語りが、少し違って聴こえてくるはずです。

ストーリーの流れ(まず曲全体をつかむ)

曲は、朝から深夜までの一日を、時間順に追っていきます。バースごとの舞台を先に押さえておくと、解説が追いやすくなります。

Verse 1は、朝の目覚めからバスケットボールのコートまで。神に感謝し、朝食を食べ、車に乗り込み、仲間とコートに向かう場面です。

Verse 2は、午後の場面です。シャワーを浴び、警察に絡まれずに通り過ぎ、友人の家でサイコロ遊びとドミノを楽しみます。

ここで曲のいちばん大事な一行が出てきます。「知り合いの誰も、サウス・セントラルで殺されなかった」。

Verse 3は、夜から深夜です。デートの流れから、夜中のドライブ、ファストフード、ページャーの鳴る音まで。

最後に「銃を使わずに済んだ」と語って終わりますが、アウトロで、急に語りが止まります。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現(スラング・韻・言葉遊び・AAVE)

ここは、歌詞の中の表現を一つずつ取り上げる章です。性的・暴力的な行は取り上げず、日常の語彙や慣用句を中心に解説します。

固有名詞やスラングのunitは、行を引かずに背景だけを書いています。▶を押すと、PVの該当箇所から再生できます。

gotta thank God / kinda odd 短縮形と話し言葉

★ 口語/短縮形
Ice Cube(Verse 1) 0:33

Just wakin' up in the mornin', gotta thank God
I don't know, but today seems kinda odd

朝起きたら、まず神様に感謝しないと。うまく言えないけど、今日はなんだか変だ

▶ 曲の最初の2行。くだけた短縮形がまとまって出てきます。

gotta は、have got to が縮まった形で、「〜しなければ」。ここでは主語の I も落ちています。

kinda は、kind of の短縮形で、「ちょっと、なんだか」とぼかす言い方です。kinda odd は「ちょっと変だ」。

wakin' と mornin' の -in' は、-ing の語尾の g が落ちた形。会話ではほぼこの発音になります。

ひとつの文の中に、短縮が3つも入っている。この曲の語りの軽さが、冒頭からよく出ています。

語法 — どう使うか ▼

gotta / kinda / wanna は、会話でそのまま使われる短縮形です。書き言葉では避けるのが基本です。

seem は、「〜に思える」。It seems kinda weird. のように、ぼかして言うときに便利な動詞です。

No barkin' from the dog, no smog / no hog 否定の名詞を並べる

★ 韻/構文
Ice Cube(Verse 1) 0:39

No barkin' from the dog, no smog
And mama cooked the breakfast with no hog

犬は吠えない、スモッグもない。母さんの朝食に豚肉も入ってない

▶ 「ない」を並べて、いつもと違う朝を描いています。

no 〜 を、名詞の前に並べていく書き方に注目です。No barkin'、no smog、with no hog。

動詞を使わず、「ない」で朝を描いています。

dog、smog、hog は、同じ響きの3語。頭の音を変えるだけで、同じ韻を3回続けられます。

hog は、豚のこと。ここでは、豚肉の食品(ベーコンなど)を指していると読めます。

smog は smoke + fog の合成語。ロサンゼルスの大気汚染を指す言葉として、有名な単語です。

語法 — どう使うか ▼

with no + 名詞: He left with no warning.(予告なしに出ていった)。without と同じ意味で使えます。

smog は、smoke と fog を合わせた混成語(blend word)の代表例です。

got my grub on, but didn't pig out 食べ物のスラング

★ スラング/慣用句
Ice Cube(Verse 1) 0:45

I got my grub on, but didn't pig out

しっかり食べたけど、食べすぎはしなかった

▶ 動物の名前を使った、食べ物の表現が並ぶ行です。

grub は、食べ物のスラングです。Grub's up!(ごはんだよ)のように、家庭の食事にも使われます。

get my 〜 on は、「〜を始める、思い切りやる」という言い回しです。get my groove on のように、いろいろな名詞に使えます。

pig out は、「豚のようにがっつり食べる」という句動詞。didn't pig out で、「食べすぎはしなかった」となります。

前の行に hog が出てきているので、豚つながりで、動物の語彙が連続しています。

語法 — どう使うか ▼

pig out (on 〜): We pigged out on pizza.(ピザを食べまくった)。食べすぎを笑って言うときに使います。

get one's 〜 on は、get your party on(盛り上がる)のように、後ろの語を変えて応用できます。

Hooked it up for later / hit the door / another twenty-four

★ 句動詞/口語
Ice Cube(Verse 1) 0:50

Hooked it up for later as I hit the door
Thinkin', "Will I live another twenty-four?"

あとで会う約束を取りつけて、ドアを出る。もう24時間、生きられるだろうか、と思いながら

▶ 出かける場面。句動詞が連続する2行です。

hook it up は、「手配する、うまく話をつける」という句動詞です。ここでは、あとで会う約束を、うまくまとめたという意味です。

hit the door は、「ドアに向かう、出かける」。hit は、hit the road(出発する)のように、場所を表す名詞と組み合わせて使えます。

後半の Will I live another twenty-four? は、「あと24時間生きていられるか」。さらっと言っていますが、街の危険が、この一言で顔を出します。

ここで、曲の裏にある緊張感が、最初に姿を見せます。

語法 — どう使うか ▼

hit + the + 名詞: hit the road(出発する)、hit the books(勉強を始める)、hit the gym(ジムに行く)。

hook up は、文脈によって意味が変わります。「手配する」のほか、「機器をつなぐ」「会う」などの意味があります。

I got me a drop-top 再帰的な me の使い方

★ 口語/車
Ice Cube(Verse 1) 0:56

I gotta go 'cause I got me a drop-top

行かなきゃ、だってオープンカーを手に入れたから

▶ 車の語彙と、口語の me の使い方に注目です。

drop-top は、屋根が開く車、つまりコンバーチブルのスラングです。convertible の俗な言い方で、ヒップホップによく出てきます。

ここでの注目は、got me a 〜。me は、動詞の目的語のようで、実は意味を足さない形です。

「自分のために一台手に入れた」というニュアンスを足しています。

この me は、与格の代名詞(dative)と呼ばれる用法で、アメリカ南部や黒人英語で特によく聞きます。

標準英語に直すと I got a drop-top ですが、me を入れるだけで、「ご機嫌でやってのけた」という口調が出ます。

語法 — どう使うか ▼

get me a 〜: I got me a new pair of shoes.(新しい靴を手に入れた)。口語では、自分のために買った、という気持ちが入ります。

top は、屋根のこと。hardtop(固定屋根)とsofttop(幌)という使い分けもあります。

not a jacker in sight 「〜は見当たらない」の型

★ スラング/構文
Ice Cube(Verse 1) 1:05

Lookin' in my mirror, not a jacker in sight

ミラーを見ても、車を狙うやつは一人も見えない

▶ 赤信号で止まっている場面です。

jacker は、carjacker(車を奪う者)の短縮形です。信号待ちの車が狙われる、という警戒が、背景にあると読めます。

not a 〜 in sight は、「〜は一人も見当たらない」という型です。not a cloud in the sky(空に雲ひとつない)と同じ形です。

Lookin' in my mirror の部分は、主語の I'm が落ちた形で、「ミラーを見ながら」という意味になっています。

ここでも、危険がないことが「うれしい」という、曲の逆説が出ています。

語法 — どう使うか ▼

not a + 名詞 + in sight: There was not a soul in sight.(人っ子ひとり見えなかった)。映画や小説でよく使う言い方です。

carjack は、car と hijack の合成語。車を力ずくで奪うことです。

Called up the homies and I'm askin' y'all 呼びかけの語彙

★ スラング/代名詞
Ice Cube(Verse 1) 1:14

Called up the homies and I'm askin' y'all
"Which park are y'all playin' basketball?"

仲間に電話して聞く。「どこの公園でバスケやってる?」

▶ 友達に電話をかける場面。二人称複数の言い方に注目です。

homies は、homeboy(地元の友達)の複数形で、仲間や友人を指します。

y'all は、you all の短縮形で、「あなたたち」。アメリカ南部、黒人英語でよく使われる、二人称複数の代名詞です。

標準英語には、you の単数と複数を区別する言葉がありません。y'all は、その不便を埋める形として、広く使われるようになりました。

Called up は、call up(電話をかける)の過去形。主語の I が落ちた形です。

語法 — どう使うか ▼

y'all: Y'all coming tonight?(みんな今夜来る?)。親しい複数の相手への呼びかけです。

call up は、phone よりくだけた、電話をかける動詞です。

the police rolled right past me 警察に絡まれない日

★ 句動詞/文化
Ice Cube(Verse 2) 1:44

Saw the police and they rolled right past me

警察を見かけたけど、そのまま素通りしていった

▶ Verse 2の中盤。何も起きないことが、ここでも幸運として語られます。

roll past は、「ゆっくり通り過ぎる」。車が進む様子に roll を使うのは、口語でよくある言い方です。

right past me の right は、「ちょうど、まっすぐ」という強調の副詞です。すぐそばを通り過ぎた、という意味になります。

ここで描かれているのは、警察と接触しないという、それだけの出来事です。当時のこの地域の若者にとって、それが一日の幸運に数えられた、と読めます。

他の行と同じく、ここでも「何も起きなかった」ことを、そのまま喜びとして語っています。

語法 — どう使うか ▼

right + 前置詞: right here、right behind you。位置や時間を、はっきり示す強調です。

roll は、車やバスなどが進む動詞としても使えます。The bus rolled into the station. のように使います。

Yo! MTV Raps、What's the haps on the craps?

★ 文化/韻
Ice Cube(Verse 2) 2:00

What's the haps on the craps?

サイコロ賭博の様子はどうだ?

▶ テレビ番組の名前と、短い韻の1行です。

この直前に、Yo! MTV Raps が出てきます。これは、MTVで放送されていたヒップホップ専門の番組で、当時のラッパーが、映像で広く知られるきっかけになりました。

友人の家で、その番組が流れている、という描写です。テレビの前に集まって、新しい曲を見る習慣が、固有名詞ひとつで伝わります。

the haps は、happenings(出来事、状況)の短縮形です。What's the haps? は、「最近どう?」くらいの挨拶になります。

haps と craps は、同じ音の語尾で終わっています。サイコロ賭博の名前(craps)に韻を合わせた、短い言葉遊びです。

語法 — どう使うか ▼

What's the haps?: 古めのスラングで、What's up? と同じ意味。happenings を縮めた語です。

craps は、2つのサイコロを使う賭けごと。ラップの歌詞で、よく取り上げられます。

break 'em with the seven, seven-eleven サイコロ遊びの語彙

★ スラング/ゲーム
Ice Cube(Verse 2) 2:11

And watch me break 'em with the seven, seven-eleven, seven-eleven

見てろ、7と、7か11で全部かっさらってやる

▶ サイコロ賭博(craps)の専門語彙が並ぶ行です。

この行は、サイコロ賭博の craps の用語を、リズムに乗せたものです。seven と eleven は、最初に出ると勝ちになる目です。

break 'em は、相手の持ち金を「崩す、巻き上げる」という意味の言い方。'em は、them の短縮形です。

続く行に出てくる back door Little Joe も、サイコロの目を指す隠語です。ゲームの語彙を知っていると、歌詞の面白さが段違いに分かります。

seven を繰り返して、リズムを作っているところにも注目です。意味より、音のほうを優先した、ラップならではの行です。

語法 — どう使うか ▼

'em: them の短縮形で、口語でよく使われます。Let 'em go.(行かせてやれ)。

break は、お金に関して「崩す」「破産させる」の意味でも使います。The casino broke him. のように使います。

we played bones, and I'm yellin', "Domino"

★ スラング/ゲーム
Ice Cube(Verse 2) 2:20

Then we played bones, and I'm yellin', "Domino"

それからボーンズをやって、俺が「ドミノ」と叫ぶ

▶ サイコロの次は、ドミノ。ゲームの名前が続きます。

bones は、ここではドミノ牌を指すスラングです。サイコロにも使いますが、この文脈では、ドミノだと読めます。

I'm yellin', "Domino" は、ドミノで勝ったときに叫ぶ決まり文句を、ここで再現しています。

アメリカの黒人コミュニティでは、ドミノは、ごく日常的な遊びです。屋外のテーブルで、牌を叩きつけて遊ぶ光景を、思い浮かべるとよいです。

ここは、I'm yellin' と現在形になっています。過去の話を語っているのに、現在形に切り替えるのは、場面を目の前に見せる、語りの技法です。

語法 — どう使うか ▼

歴史的現在(historical present): 過去の話を、あえて現在形で語ると、臨場感が出ます。友人に昔話をするとき、英語でも日本語でも自然に使います。

yell は、「叫ぶ、大声で言う」。shout とほぼ同じです。

nobody I know got killed in South Central L.A.

★ 核心の一行/関係代名詞
Ice Cube(Verse 2) 2:24

Plus nobody I know got killed in South Central L.A.

それに、知り合いの誰も、サウス・セントラルで殺されなかった

▶ この曲でいちばん大事な一行です。

ここまでの「いい日」の理由が、この一行で、はっきり言葉にされます。誰も殺されなかった、それだけで、特別な日になっています。

文法の面では、nobody I know が、nobody (that) I know の関係代名詞の省略です。「私の知っている誰も」という意味になります。

got killed は、get + 過去分詞 の受け身。be killed よりも、「事故や出来事として起きた」ニュアンスが強い形です。

South Central は、ロサンゼルス南部の地域の名前です。この曲の録音は1992年の5月で、同じ年の春には、市内で大きな暴動が起きていました。

語法 — どう使うか ▼

get + 過去分詞: He got arrested.(逮捕された)。be + 過去分詞 より、出来事として起きた感じが出ます。

目的格の関係代名詞の省略: the man I met(私が会った男)。会話では、むしろ省略するのが普通です。

I had the brew, she had the chronic / Lakers beat the Supersonics

★ スラング/固有名詞
Ice Cube(Verse 3) 2:47

It's ironic, I had the brew, she had the chronic
The Lakers beat the Supersonics

皮肉なことに、俺はビール、彼女はマリファナを持ってた。レイカーズがソニックスに勝った

▶ Verse 3の冒頭。スラングと、バスケットボールのチーム名が出てきます。

brew は、ビールのスラングです。chronic は、マリファナの、特に品質の高いものを指します。

ironic と chronic で、行の中で韻を踏んでいます。「ironic」と言いながら、その中身は、何が皮肉なのか、それとなくぼかしています。

the Lakers は、ロサンゼルスのNBAチームです。the Supersonics は、当時シアトルにあったチームで、のちに本拠地を移して名前も変わりました。

地元のチームが勝った、というだけで、一日の幸運が一つ増えます。大きな出来事ではなく、小さな良いことの積み重ねで語る曲の作りです。

語法 — どう使うか ▼

beat は、勝つときに使う動詞で、過去形も同じ beat です。The Lakers beat the Celtics.(レイカーズがセルティックスに勝った)。

ironic は、「皮肉な」。予想と反対のことが起きたときに使います。

Drove her to the pad and I'm coastin' 運転の語彙

★ スラング/運転
Ice Cube(Verse 3) 3:04

Drove her to the pad and I'm coastin'

彼女を家まで送って、のんびり流してる

▶ ドライブの場面。家と、走り方のスラングです。

pad は、家、部屋のスラングです。crib と同じ系統で、くだけた「住まい」の言い方になります。

coast は、エンジンを使わず惰性で進む、という意味の動詞です。そこから、力まず、のんびり流して走る、という意味にも使われます。

Drove her to the pad は、I が落ちています。I'm coastin' は、前後で時制が、過去から現在に切り替わっています。

ここも、前の unit で触れた歴史的現在の例です。場面が目の前で動いているように聞こえます。

語法 — どう使うか ▼

coast: We coasted down the hill.(坂を惰性で下った)。coast through 〜 は、「楽にやり過ごす」の意味でも使います。

pad は、ほかに「パッド、詰め物」の意味もあります。文脈で判断する語です。

like one of those fly dreams / a berry flashin' those high beams

★ スラング/警察
Ice Cube(Verse 3) 3:16

Today was like one of those fly dreams
Didn't even see a berry flashin' those high beams

今日はまるで、いい夢みたいな一日だった。パトカーが、ハイビームを光らせているのも見なかった

▶ 夢にたとえて、一日を振り返る場面です。

fly は、スラングで「かっこいい、最高の」という形容詞です。fly dreams は、「最高の夢」。

一日を、夢にたとえています。

berry は、パトカーを指すスラングとされます。屋根のライトが赤い果実のように見えることから、cherry や berry と呼ばれた、と説明されています。

those high beams の those は、「例の」という指示語。ハイビームとパトカーのライトが重なる、お馴染みの光景を指しています。

夢のようだ、という比喩は、この曲の終わりにある、あるできごとの伏線にもなります。

語法 — どう使うか ▼

like one of those 〜: It was like one of those movies.(まるで映画みたいだった)。出来事を、よくある型にたとえる言い方です。

fly は、飛ぶという意味のほかに、1990年代の若者のスラングで「かっこいい」の意味がありました。

Two in the mornin', got the Fatburger / Goodyear Blimp

★ 固有名詞/文化
Ice Cube(Verse 3) 3:31

Even saw the lights of the Goodyear Blimp
And it read, "Ice Cube's a Pimp"

グッドイヤー飛行船のライトまで見えた。そこには「Ice Cubeは最高」と書いてあった

▶ 深夜の場面。ロサンゼルスの固有名詞が続きます。

Fatburger は、ロサンゼルスで生まれたハンバーガーのチェーンです。深夜2時にそこでハンバーガーを買う、という描写が、地元の暮らしのリアルを伝えます。

the Goodyear Blimp は、タイヤメーカーの飛行船で、スポーツ中継などで空を飛びます。電光掲示のように、メッセージを流すことがあります。

それに「Ice Cubeは最高」と書いてあった、というのは、もちろん夢のような想像です。一日の幸運の締めくくりとして、空まで祝福した、という大きなオチです。

ここでの pimp は、「洒落た、かっこいい」という誉め言葉の意味で使われています。「ウラのある職業」のほうの意味ではありません。

語法 — どう使うか ▼

a blimp は、飛行船の一種。blimp という語は、アメリカで、スポーツの中継とセットでよく聞く語です。

it read 〜 は、「そこには〜と書いてあった」。掲示や看板について使う動詞 read の用法です。

my pager still blowin' up ポケベルの時代

★ スラング/時代
Ice Cube(Verse 3) 3:42

Halfway home and my pager still blowin' up

家までの半分まで来たのに、ポケベルが鳴りっぱなしだ

▶ 1990年代前半の、通信手段の話です。

pager は、ポケットベル。電話番号などのメッセージが表示される小さな端末で、携帯電話が普及する前の連絡手段でした。

blow up は、「爆発する」ですが、ここでは「通知が殺到して鳴りやまない」という意味です。前に見た、「ブレイクする」の意味とは、また別の使い方です。

Halfway home は、「帰宅の途中」。halfway は、「中間で、半分まで」という副詞や形容詞です。

メッセージが鳴り続けるほど、自分は人気者だ、という含みもあります。

語法 — どう使うか ▼

blow up: 「爆発する」「ブレイクする」「通知が殺到する」。My phone is blowing up.(携帯が鳴りっぱなしだ)は、今でもよく使います。

halfway through 〜 は、「〜の途中で」。halfway through the movie のように使います。

I didn't even have to use my AK / I gotta say

★ 構文/結び
Ice Cube(Verse 3) 3:45

Today I didn't even have to use my AK
I gotta say, it was a good day

今日は、AKを使う必要すらなかった。言わせてもらうと、いい日だった

▶ 曲の最後のバースの締めの2行です。

AK は、AK-47という自動小銃の略です。この行では、銃が出てきますが、「使わずに済んだ」という形で出てきます。

それも、「使わなくて済んだ」という形で出てきます。didn't even have to 〜 は、「〜する必要すらなかった」。

even が入ることで、普段は必要になる、というニュアンスが出ます。

最後の I gotta say は、「言わせてもらうよ」という前置きです。ここで、ようやくタイトルの it was a good day が登場します。

曲のタイトルを、最後に回して、結論として置いている構造です。ここまでの一日を、「だから、いい日だったんだ」と、一言でまとめています。

語法 — どう使うか ▼

don't even have to 〜: I didn't even have to ask.(頼む必要すらなかった)。意外なほど楽だった、という気持ちを込めます。

I gotta say: I gotta say, that was impressive.(正直、あれはすごかった)。意見を述べる前置きとして、よく使います。

wait a minute, Pooh, stop this shit アウトロの急停止

★ 構成/口語
Ice Cube(Outro) ≈3:52

Ayy, wait, wait a minute, Pooh, stop this shit

ちょっと待て、プー、これを止めてくれ

▶ 曲の最後。トラックが止まる場面です。

最後の数行で、曲のトーンが急に変わります。Pooh は、このトラックを作ったDJ Poohのことで、Ice Cubeが、ビートを止めるように頼んでいます。

ここまでの、「いい一日」の語りが、突然ここで止まります。聴いている側は、夢から醒めたような感覚を覚えます。

wait a minute は、「ちょっと待って」。同じ語を繰り返す wait, wait は、慌てた感じを出します。

この終わり方は、「本当に起きたことなのか」とも、「いい日が本当は珍しい、現実に引き戻された」とも、読めるようになっています。ここは、聴き手に任された解釈です。

語法 — どう使うか ▼

Wait a minute.: 「ちょっと待って」。気づきや疑いの合図にも使います。

Wait a minute, that's not right.(待てよ、それは違う)。

stop this のように、this で目の前のものを指して止める言い方は、会話で頻繁に使います。

文化的背景

1992年のロサンゼルス

「何も起きない日」が、特別になる街

曲を録音したのは、1992年の5月だとされています。同じ年の春に、ロサンゼルスでは、大きな暴動が起きていました。

そうした時期に、「誰も撃たなかった」「警察に止められなかった」ことを、一日の幸運として語る。この曲の軽さは、重い現実の裏返しとして読めます。

ただし、この曲自身は、政治や事件を直接は語りません。ただ、いい日の細部を、並べているだけです。

そのぶん、背景を知って聴くと、各行の重さが変わります。

ロサンゼルスの固有名詞

Fatburger、Lakers、Goodyear Blimp が作る地図

この曲に出てくる固有名詞は、どれもロサンゼルスの日常にあるものです。ハンバーガーのチェーン、バスケットボールのチーム、上空を飛ぶ飛行船。

地図を広げなくても、固有名詞をたどるだけで、一日の動線が見えてきます。ヒップホップの歌詞を、地域のガイドブックとして読む、という楽しみ方もあります。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

gotta / kinda / y'all have got to / kind of / you all の短縮形。会話でそのまま使う
drop-top 屋根が開く車(コンバーチブル)のスラング
got me a 〜 「自分のために〜を手に入れた」。与格の me
not a 〜 in sight 「〜は一人も見当たらない」
jacker carjacker の短縮形。車を奪う者
the haps happenings の短縮。近況、出来事
bones ドミノ牌(サイコロの意味にもなる)
pad / crib 家、部屋のスラング
blow up 爆発する/ブレイクする/通知が殺到する
fly かっこいい、最高の(1990年代のスラング)

制作の裏側

プロデュースは、DJ Poohです。サンプルの中心は、Isley Brothersの「Footsteps in the Dark」。

70年代のソウルのスロージャムを、そのまま使っています。

ほかにも、The Momentsの「Sexy Mama」の一部が、サンプルとして使われています。同じ時代の、柔らかいソウルの素材が、土台になっています。

曲を録音したのは1992年5月で、アルバム『The Predator』は同年に出ています。曲はその後、1993年2月23日に、2枚目のシングルとして出ました。

サンプル元の「Footsteps in the Dark」は、このページの上部の埋め込みで聴けます。聴き比べると、元の曲の落ち着いた雰囲気が、そのまま引き継がれていることが分かります。

評価とその後

Billboard Hot 100では最高15位を記録しました。当時、Ice Cubeのシングルとして、最も高い順位でした。

R&B/Hip-Hopのチャートでは7位、英国のチャートでは27位を記録しています。

アルバム『The Predator』は、この曲を含めて、200万枚を超えて売れたとされています。

まとめ

  • 「It Was a Good Day」は、「悪いことが起きなかった」ことを、最高の一日として語る逆説の曲です。
  • gotta、kinda、y'all、got me a 〜など、くだけた口語の使い方が、一日の時間順に学べます。
  • drop-top、jacker、bones、pad、pager、flyなど、1990年代のスラングが、日常の場面と結びついて出てきます。
  • Yo! MTV Raps、Lakers、Fatburger、Goodyear Blimpなど、ロサンゼルスの固有名詞が、一日の地図を作っています。
  • 最後のアウトロで、語りが急に止まる構成は、曲の逆説を深める仕掛けになっています。

アーティストについて

Ice Cube

South Central Los Angeles, California · 1986–

本名O'Shea Jackson。N.W.Aの主要ライターとして「Straight Outta Compton」(1988)を手掛け、1989年に脱退。ソロ作「AmeriKKKa's Most Wanted」(1990)でデビュー。「The Predator」(1992)はLA暴動直後に全米ポップ・R&Bチャート同時1位を記録した。

→

この曲とつながる記事

[PR] この曲の中古盤・グッズをメルカリで探す