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Check the Rhime — A Tribe Called Quest スラング・英語解説

Check the Rhimeに出てくるスラングや言い回しの意味を、和訳つきで一つずつ読み解きます。

アーティスト
A Tribe Called Quest
リリース年
1991
プロデューサー
A Tribe Called Quest
収録アルバム
The Low End Theory
エリア
NY
BPM
95
サンプル元
Minnie Riperton "Baby, This Love I Have" (1975) / Average White Band "Love Your Life" (1976)

この記事の見どころ

  1. 01 Q-TipとPhife Dawgの掛け合いを、「相手に呼びかける→答える」の会話文として読める
  2. 02 on point、come correct、dead wrong、no home training など、そのまま使えるスラングと慣用句
  3. 03 Linden Boulevard、Lou Brock、Mr. Clean。固有名詞で語る思い出と比喩

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解説

■この曲で何を学べるか

A Tribe Called Questの「Check the Rhime」は、二人のMCが、昔の思い出をキャッチボールのように語り合う曲だと思っています。1991年の9月に、2枚目のアルバム『The Low End Theory』からの先行シングルとして出ました。

声が分かりやすく掛け合うので、英語の会話の練習素材としても、とても読みやすい曲です。「You on point?」「All the time」と、問いと答えがそのまま歌詞になっています。

曲の中で、昔の思い出話、自慢、業界への一言と、話題が次々に切り替わります。1行ずつ拾っていくと、会話の日本語にそのまま置き換えられる表現が、たくさん見つかります。

■「ライム」の綴りが、そもそも遊びになっている

タイトルの Rhime は、通常の綴り rhyme とは違います。歌詞の中でも、rhyme が使われているので、この綴りは意図した言葉遊びだと思っています。

言葉を扱うグループが、綴りの段階から言葉を遊んでいる。この感覚が、曲全体のノリにも現れています。

ここでは、1行ずつ、掛け合いの構造と、口語の使い方を整理していきます。

ストーリーの流れ(まず曲全体をつかむ)

曲は、二人のMCが、昔の思い出話をしながら交互にバースを回す構成です。誰がどこを担当しているかを先に押さえます。

Verse 1は、Q-TipとPhife Dawgの会話です。昔、Linden Boulevardで二人でライムの練習をした思い出を、呼びかけと返事のかたちで語ります。

Verse 2は、Phife Dawgのソロです。自分の腕前を誇り、批判してくる相手に言い返し、自分は誠実で、ごまかしがないとアピールします。

Hookは、「Check the rhyme y'all」の繰り返しです。聞き手を巻き込む、コール&レスポンスの形です。

Verse 3は、Verse 1と同じ導入で始まりますが、二人の役割が入れ替わっています。Phife Dawgが、Q-Tipに昔の思い出を問いかけます。

Verse 4は、Q-Tipのソロです。知識への姿勢、音楽業界への警戒、「ラップはポップではない」という主張が語られます。

最後は、アメリカ各地と、ロンドンへの挨拶で閉じます。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現(スラング・韻・言葉遊び・AAVE)

ここからは、歌詞の中の表現を1つずつ取り上げます。上に短い用例、下に意味と使い方の解説を置いています。

固有名詞や、誤解を招きやすい行は、引用を省いて背景だけを説明しています。▶を押すと、PVの該当箇所から再生できます。

Back in the days on the boulevard of Linden / kick routines

★ 思い出/口語
Q-Tip & Phife Dawg(Verse 1) 0:28

Back in the days on the boulevard of Linden
We used to kick routines and the presence was fittin'

昔、リンデン通りで、俺たちはルーティンを披露してた。その場の雰囲気もぴったりだった

▶ Verse 1の頭。思い出語りの型が出ています。

Back in the days は、「あの頃は」と、昔を振り返る言い方です。標準的には back in the day と単数で言うことが多い表現です。

kick routines は、ライムの掛け合いや、ネタを披露すること。kick は、ヒップホップでは「(ライムを)繰り出す」という意味でよく使われます。

Linden は、ニューヨーク・クイーンズのLinden Boulevard。二人が、10代の頃に、ライムの練習をした場所です。

後半の the presence was fittin' は、「その場の空気がちょうど合っていた」。fitting は、形容詞で、「ふさわしい」という意味です。

語法 — どう使うか ▼

used to + 動詞: We used to play here.(ここでよく遊んだ)。懐かしさを表す定番の型です。

kick は、kick a freestyle(フリースタイルをやる)のように、ラップの場面で、「繰り出す」に使われます。

It was I, The Abstract / And me, the Five Footer 呼び名と文法

★ 文法/ニックネーム
Q-Tip(Verse 1) 0:31

It was I, The Abstract
And me, the Five Footer

それは俺、The Abstractと、俺、Five Footerだった

▶ 二人のニックネームが、一行ずつ出てくる場面です。

The Abstract は、Q-Tipのニックネーム。the Five Footer は、Phife Dawgのニックネームで、背が低いことにちなんでいます。

文法の面で、It was I という言い方に注目です。It was me が口語では普通ですが、ここは主格の I を使った、硬めで丁寧な言い方になっています。

次の行では、And me, the Five Footer と、me に戻っています。同じ文の中で、硬い言い方と口語が混ざる、遊びです。

ニックネームで自己紹介する、というのも、ヒップホップの定番の流れです。

語法 — どう使うか ▼

It was I.: 形式的な言い方で、日常では It was me. が普通です。This is she.(電話で「私です」)のように、固い場面に残っています。

-footer のように、five-foot(5フィートの背丈)を人にして、呼び名にすることもあります。

I kicks the mad style / mad は「すごい」の強調

★ スラング/AAVE
Q-Tip(Verse 1) 0:31

I kicks the mad style so step off the frankfurter

俺はすごいスタイルで繰り出すから、フランクフルトから下がってろ

▶ 一人称なのに -s が付く、ユニークな動詞の形です。

この行の mad は、「怒っている」ではなく、「ものすごい、とても」の強調です。ニューヨークのスラングで、mad style は、「すごくかっこいいスタイル」。

動詞は I kicks。一人称なのに、動詞に -s が付いています。

リズムや、言い回しの個性を優先した、ヒップホップならではの形です。

step off は、「下がれ、どけ」。誰かに離れるよう言う、強い言い方です。

frankfurter は、ソーセージ(フランクフルト)で、ここでは、意味よりも、kicks や step off との語感の遊びに使われていると思います。

語法 — どう使うか ▼

mad + 名詞: mad love、mad skills(とてつもない腕前)。ニューヨーク周辺の強調語です。

Step off.: 「どけ、離れろ」。ケンカ腰の場面でよく使われる表現です。

spiffy like Mr. Clean 商品キャラクターの直喩

★ 直喩/語彙
Q-Tip(Verse 1) 0:38

That we used to make spiffy like Mr. Clean?

俺たちがMr. Cleanみたいにピカピカに仕上げてた、あのルーティンのこと?

▶ 家庭用洗剤のキャラクターが出てくる比喩です。

spiffy は、「こざっぱりした、洒落た」という意味の口語です。見た目が整って、きれいな状態を指します。

Mr. Clean は、アメリカの洗剤のブランドで、頭がつるんとした男性キャラクターが、ロゴになっています。「ピカピカ」の比喩として、よく使われます。

二人のルーティンを、「磨き上げた」と言う比喩です。洗剤のブランドを持ち出すところに、日常の物を比喩に使う、このグループらしさが出ています。

used to make spiffy の make A B(AをBにする)の形にも注目です。make 〜 spiffy で、「〜をきれいに整える」です。

語法 — どう使うか ▼

make + 目的語 + 形容詞: make it clean、make me happy。結果の状態を表す、基本の文型です。

spiffy は、spiffy outfit(洒落た服装)のように、見た目をほめるときに使えます。

You on point, Phife? All the time, Tip コール&レスポンス

★ 会話/スラング
Q-Tip & Phife Dawg(Verse 1) 0:46

You on point, Phife? All the time, Tip

調子はいいか、Phife? いつでもな、Tip

▶ 二人の掛け合いが、そのまま台本のように読める場面です。

on point は、「調子がいい、抜かりがない、的を射ている」という意味のスラングです。もともとは、軍隊などで先頭を行く役、という言葉から来ています。

You on point? は、Are you が省略された、疑問文。AAVEのコピュラ省略の例でもあります。

返事の All the time は、「いつでも」。短く返すことで、軽快な掛け合いに聞こえます。

この3行を3回繰り返した、呼びかけと返事の流れは、聴いていて、ラップというより、会話劇のようです。

語法 — どう使うか ▼

on point: Your outfit is on point.(その服、バッチリだね)。今でも若者言葉として使われます。

all the time は、「いつも」。always より、くだけた言い方です。

grab the microphone and let your words rip

★ 慣用句/語法
Q-Tip(Verse 1) 0:55

Well, then grab the microphone and let your words rip

じゃあ、マイクをつかんで、言葉をぶちかませ

▶ 掛け合いの締めの1行。バトンを渡す場面です。

let 〜 rip は、「〜を思い切りやらせる、勢いに任せる」という言い方です。let it rip で「思いきりやれ」。

grab the microphone は、「マイクをつかむ」ことで、ラップを始める動作を指します。ここは、命令文で、順番を促す行です。

Well, then は、前の流れを受けて、「それじゃあ」と進める言い方です。会話の接続詞としてよく使います。

Verse 1の締めとして、バトンをPhife Dawgに渡しています。会話から、次の独演に移る、きれいな切り替えです。

語法 — どう使うか ▼

let it rip: Just let it rip!(思い切りやれ!)。エンジンをふかす動作にも使われる、勢いを出す言い方です。

then は、「それなら」の意味でも使えます。If so, then go ahead.(そうなら、どうぞ)。

send a telegram / like an energizer 古い物と電池の比喩

★ 比喩/固有名詞
Phife Dawg(Verse 2) 0:55

Tell your mother, tell your father, send a telegram
I'm like an energizer 'cause, you see, I last long

母さんにも父さんにも伝えて、電報を打て。俺はエナジャイザー、長持ちするんだ

▶ Phife Dawgのソロの頭。身近な物を比喩に使います。

send a telegram は、電報を打つこと。「みんなに知らせろ」という、誇張した言い方で、古い通信手段が、わざと選ばれています。

Energizer は、アメリカの電池のブランドで、「いつまでも動き続けるウサギ」のCMで有名でした。ここでは、長持ちする自分の、比喩として使っています。

I'm like 〜 は、直喩の基本の型です。ここでは、電池に例えて、自分のスタミナを誇っています。

'cause, you see, I last long の you see は、「いいかい」という、会話の挿入句です。語りかけの調子が、ここでも出ています。

語法 — どう使うか ▼

last long: This battery lasts long.(この電池は長持ちする)。last は、「持続する」の動詞です。

you see は、説明を始めるときの挟み言葉。You know と同じ役割です。

never ever wack / dead wrong 強調の語

★ スラング/強調
Phife Dawg(Verse 2) 1:08

Now if you say my style is wack, that's where you're dead wrong

もし俺のスタイルがダサいと言うなら、そこがお前の大間違いだ

▶ 批判への反論の場面です。強調語に注目です。

wack は、「ダサい、質が低い」というスラング。ヒップホップでは、下手なラップや、つまらない物を、これで切り捨てます。

前の行の never ever は、never をさらに強めるための、同語反復です。never を重ねるだけで、「絶対に」の強調になります。

dead wrong の dead は、「完全に」という強調の副詞。dead serious(本気だ)、dead tired と同じ使い方です。

that's where 〜 は、「そこが〜なところだ」という、論点を指す言い方です。反論の場面で、よく使います。

語法 — どう使うか ▼

dead + 形容詞: dead wrong、dead right、dead serious。強調として便利です。

That's where you're wrong.(そこが君の間違いだ)は、議論で使いやすい決まり文句です。

you know and I know that you know who I am

★ 構文/反復
Phife Dawg(Verse 2) 1:13

You'd be a fool to reply that Phife is not the man
'Cause you know and I know that you know who I am

Phifeがすごくないと言い返すなんて、バカだ。お前も俺も、お前が俺を知ってるって分かってる

▶ know が3回出てくる、言葉遊びの2行です。

You'd be a fool to 〜 は、「〜するなんて、愚かだ」という、仮定法の言い方です。You would be の短縮形です。

the man は、「できる男、頼れる存在」のスラング。You the man! と、ほめるときにも使えます。

次の行は、you know and I know that you know who I am。know が3回出てくる、くるくる回る文です。

「お互い分かってるよね」という強調のしかたです。

同じ語を、繰り返しながら文を組み立てるのは、英語のスピーチでも、リズムを作る技法のひとつです。

語法 — どう使うか ▼

You'd be a fool to 〜: You'd be a fool to refuse.(断るなんてバカだ)。助言を強めたいときに使います。

the man は、the guy 以外に、「リーダー、すごい人」という意味で使われます。

They get vexed, I roll next, can't none contest me

★ AAVE/二重否定
Phife Dawg(Verse 2) 1:25

They get vexed, I roll next, can't none contest me

あいつらは腹を立てるが、俺は次へ進む。誰も俺に異議は唱えられない

▶ 否定の語順が標準英語と違う行です。

vexed は、「イライラした、腹を立てた」という意味の、古風で硬めの語です。会話でも使えますが、ここでは、からかうニュアンスで使われています。

can't none contest me は、語順に注目です。標準では none can contest me や nobody can contest me。

can't none と、否定を、文の頭に置く形は、AAVEの特徴のひとつです。

contest は、「異議を唱える、争う」という動詞です。名詞のコンテスト、競技会とはアクセントの位置が違います。

I roll next は、「次へ進む」。roll は、前にも出た、「進む」という口語の動詞です。

語法 — どう使うか ▼

Ain't nobody 〜、Can't nobody 〜 のように、否定語を頭に置くのは、AAVEの定番の構文です。

contest は、名詞(コンテスト)のアクセントは前、動詞(異議を唱える)は後ろにあります。

five foot three and very brave / no home training

★ 慣用句/身長
Phife Dawg(Verse 2) 1:28

I'm just a fly MC who's five foot three and very brave
On top remaining, no home training 'cause I misbehave

俺はただの、5フィート3インチで、とても勇敢なイカしたMC。トップに居続けてる、躾けがないのは、俺がわんぱくだからだ

▶ 自己紹介の2行。身長と、行儀の話です。

fly は、前に出てきたとおり、「かっこいい」というスラングです。five foot three は、約160センチ。

背の低さを、自分の強みとして堂々と名乗っています。

no home training は、「家で躾けられていない、行儀が悪い」という口語です。You got no home training のように、相手を叱る場面で使われます。

ここでは、自分で自分に、「行儀が悪いのは、わんぱくだから」と、茶目っ気を込めて言っています。叱る言葉を、自己紹介に使うひねりです。

On top remaining は、remaining on top の語順を入れ替えた形で、brave と misbehave の韻を作るためです。

語法 — どう使うか ▼

five foot three: 身長の言い方で、「5フィート3インチ」。He's six foot two. のように、foot は単数のまま使います。

misbehave は、「行儀悪く振る舞う」。behave(行儀よくする)の反対の動詞です。

I come correct in full effect 準備万端で現れる

★ 慣用句/スラング
Phife Dawg(Verse 2) 1:33

I come correct in full effect

俺はしっかり準備して、全力で現れる

▶ ヒップホップの定番フレーズが、2つ並ぶ行です。

come correct は、「礼儀を守って、準備をして臨む」という意味のスラング。ケンカ腰のときにも、礼儀正しくするときにも、使われます。

in full effect は、「全開で、フルパワーで」。in effect は、本来は「有効で」の意味ですが、ヒップホップでは、勢いを表す言葉としても使います。

二つの定型句を並べて、ひとつの宣言にしています。短い行ですが、気合の入りが伝わります。

come correct は、correct が副詞として使われている、口語の形です。正式には correctly ですが、ここでは、短く言い切るのが好まれます。

語法 — どう使うか ▼

Come correct or don't come at all.: 準備していないなら、来るな、という強い言い方です。

in full effect: The party is in full effect.(パーティーは最高潮だ)。

my aura's positive, I don't promote no junk 誠実さの宣言

★ 二重否定/語彙
Phife Dawg(Verse 2) 1:38

You see, my aura's positive, I don't promote no junk
See, I'm far from a bully and I ain't a punk

いいかい、俺のオーラはポジティブで、ガラクタは売り込まない。いじめっ子とは程遠いし、臆病者でもない

▶ 批判への反論として、自分は誠実だと宣言する場面です。

aura は、人が放つ雰囲気、気配のこと。positive aura で、「前向きな空気」です。

I don't promote no junk は、二重否定。ここも、否定の強調として使われています。

「ガラクタは一切宣伝しない」という意味です。

far from a bully の far from 〜 は、「〜とは程遠い」。far from perfect(完璧とは程遠い)のように使います。

punk は、ここでは「弱虫、臆病者」の意味です。強がるだけの人、という意味合いで、使われています。

語法 — どう使うか ▼

far from + 名詞/形容詞: The result is far from satisfactory.(結果は満足には程遠い)。控えめに否定するときにも使えます。

promote は、「宣伝する、昇進させる」の2つの意味があります。ここでは前者です。

if knowledge is the key, then just show me the lock

★ 比喩/知性
Q-Tip(Verse 4) 2:38

Okay, if knowledge is the key, then just show me the lock

もし知識が鍵なら、さあ、その鍵穴を見せてくれ

▶ Q-Tipのバースの頭。比喩を使った、自信の表明です。

if knowledge is the key は、「知識は鍵だ」という、よくある格言を、条件文に置き換えた形です。「知識が鍵なら、鍵穴を見せてみろ」と、挑発の調子で続けます。

この比喩は、論理がきれいです。鍵(key)があるなら、錠(lock)がある。

知識を持っているのだから、どんな扉でも開けられる、という意味です。

just show me 〜 の just は、「さあ、ともかく」という、軽く促す語です。ここでは、少し自信の強い口調になっています。

Verse 4は、Q-Tipの知的な側面が表に出てくるバースです。同じグループでも、二人のキャラクターの違いが、はっきり出ています。

語法 — どう使うか ▼

If A is B, then C: If you are so smart, then solve it.(そんなに賢いなら、解いてみろ)。皮肉や挑発に使う型です。

Knowledge is the key. は、教育や自己啓発でよく聞く、格言のような言い方です。

scrawny legs but I move just like Lou Brock スポーツ選手の比喩

★ 直喩/固有名詞
Q-Tip(Verse 4) 2:38

Got the scrawny legs but I move just like Lou Brock

脚はひょろひょろだけど、動きはLou Brockそっくりだ

▶ 野球選手の名前を使った、直喩の行です。

scrawny は、「やせこけた、ひょろひょろの」。体が細いことを、少しからかうように言う形容詞です。

Lou Brock は、メジャーリーグのセントルイス・カージナルスの選手で、盗塁の名手として知られています。足の速さの比喩として出てきます。

just like 〜 は、「まさに〜のように」という、強調された直喩です。like の前に just を付けるだけで、似ている度合いが強まります。

細い脚を、短所ではなく、俊敏さの理由として語り直す。このひっくり返しが、バースの面白さです。

語法 — どう使うか ▼

move like 〜: He moves like a cat.(猫みたいな身のこなしだ)。動きの比喩に、よく使います。

scrawny は、skinny より悪い印象で、弱々しく見えるときに使います。

My optic presentation sizzles the retina 科学用語を混ぜる

★ 語彙/韻
Q-Tip(Verse 4) 2:48

My optic presentation sizzles the retina

俺の見せる姿は、網膜を焼き付ける

▶ 硬い専門語が、スラングの間に入る行です。

optic は、「目の、視覚の」という意味の形容詞。retina は、目の網膜です。

ふだんのラップでは、あまり出てこない、医学や科学の語彙です。

sizzle は、肉などを焼くときの「ジュージュー」という音を表す動詞。ここでは、網膜を焦がすほど、強烈な印象を与える、という誇張です。

語彙のレベルが、他の行より一段高いのが、この行の特徴です。ラップで、あえて難しい言葉を混ぜることで、知的なイメージを作っています。

このグループは、スラングだけでなく、辞書にも載る硬い言葉も、自在に混ぜるのが特徴です。

語法 — どう使うか ▼

sizzle: The steak was sizzling.(ステーキがジュージュー音を立てていた)。人気や熱気にも、sizzling hot のように使えます。

presentation は、「発表、見せ方」。ここでは、見た目の印象、という意味で使っています。

Industry rule number four-thousand-and-eighty / shady

★ 誇張/スラング
Q-Tip(Verse 4) 2:58

Industry rule number four-thousand-and-eighty
Record company people are shady

業界の掟、その4,080番。レコード会社の連中は信用ならない

▶ 音楽業界への警告を、冗談を込めて言う2行です。

rule number four-thousand-and-eighty は、掟の番号を、わざと大きく言う冗談です。「4,080番目」ということは、「それほど数え切れない掟がある」という、誇張になっています。

shady は、「うさんくさい、信用できない」という形容詞。もとは「日陰の」ですが、「やましいところがある」という意味で、口語でよく使われます。

デビューして間もない新人が、業界の裏を警戒する、というリアルな忠告として読めます。

number four-thousand-and-eighty と、数字を言葉で言い切るリズムも、聴きどころです。

語法 — どう使うか ▼

shady: a shady deal(怪しい取引)、shady business(うさんくさい商売)。shade の派生語です。

Rule number one は、「第一の掟」。冗談で、rule number one: have fun のように使います。

Rap is not pop, if you call it that, then stop

★ 主張/構文
Q-Tip(Verse 4) 3:16

Rap is not pop, if you call it that, then stop

ラップはポップじゃない。そう呼ぶなら、やめろ

▶ Verse 4の締めの1行。ジャンルについての主張です。

この行は、Q-Tipの、ジャンルへの姿勢を表す宣言です。Rap is not pop は、「ラップは商業的な流行歌(ポップ)とは違う」という立場の表明です。

if you call it that, then stop は、「そう呼ぶなら、やめろ」。if 〜 then ... の形で、条件と結論を短く並べた、強い言い切りです。

stop が、前の pop と韻を踏んでいます。意味と音が、同時に決まる行です。

1991年は、ラップが、ポップチャートに入り始めた時期です。そうした流れに対して、ジャンルのアイデンティティを守ろうとする、当時の空気が見えます。

語法 — どう使うか ▼

call it that: Don't call it that.(そう呼ぶな)。呼び方に異議を唱えるときの言い方です。

pop は、popular の短縮形。音楽のジャンルとしての「ポップス」です。

NC, SC, Virginia, in London 各地への挨拶

★ 文化/略称
Q-Tip(Outro) 3:28

最後に、アメリカ各地と、ロンドンへの挨拶が並びます。この部分は、引用を省いて、背景だけを説明します(▶で該当箇所に飛べます)。

NC、SC は、それぞれノースカロライナ、サウスカロライナの略称です。州名を、2文字の略称で言うのは、アメリカでは日常的です。

シャウトアウトで、聞き手を巻き込むのが、このアウトロの狙いです。「どこで聴いている人にも、聞こえている」と、全国と海外へ語りかける形です。

地名の略称は、ヒップホップでは、地元や、客層への敬意を示す記号として、よく使われます。

語法 — どう使うか ▼

州の略称: NY、LA、NC、SC、TX など。2文字の略称は、住所や、ラップの歌詞でよく見かけます。

y'all は、you all の短縮形で、会場の聴衆への呼びかけに、ぴったりです。

文化的背景

Linden Boulevardの思い出

クイーンズの路上で始まった、二人のライム練習

「Check the Rhime」は、1980年代半ばに、Phife DawgとQ-Tipが、クイーンズのLinden Boulevardで繰り返していた、ライムの練習がもとになっています。

その頃の思い出を、温かい気持ちで振り返る曲です。会話のように進む構成になっているのは、そのためだと思います。

『The Low End Theory』

1991年の2作目からの先行シングル

この曲は、1991年9月に、Jive Recordsから、アルバム『The Low End Theory』の先行シングルとして出ています。

アルバムは、グループにとって2作目にあたります。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

back in the days 昔は。思い出話の定番の入り口
kick (a routine / rhymes) ライムやネタを披露する
on point 調子がいい、的を射ている
wack ダサい、質が低い
dead + 形容詞 dead wrong のように、完全に、の強調
can't none 〜 否定語を頭に置くAAVEの構文(誰も〜できない)
no home training 躾けられていない、行儀が悪い
come correct 準備をして、礼儀を守って臨む
in full effect 全開で、最高潮で
shady うさんくさい、信用できない

制作の裏側

「Check the Rhime」は、1991年9月に、Jive Recordsから、アルバム『The Low End Theory』の最初のシングルとして発売されました。

サンプルの主なものは、Minnie Ripertonの「Baby, This Love I Have」(1975年)です。ホーンのフレーズは、Average White Bandの「Love Your Life」(1976年)から来ています。

複数の曲から素材を取って、新しい曲に組み立てる手法は、ヒップホップのトラックメイクの基本です。サンプル元の曲を聴き比べると、どの部分がどこから来たのかが分かって、面白いです。

サンプル元の2曲は、元曲を聴いてから本曲に戻ると、どこがつながっているのかが分かりやすいです。制作現場の細かい話は、確かめられた範囲のみ書いています。

評価とその後

「Check the Rhime」は、A Tribe Called Questの代表曲のひとつとして、今も聴かれ続けています。

歌詞の呼びかけと返事は、聞くだけで会話の流れが分かるので、英語の会話の例としても読みやすい構造です。

まとめ

  • 「Check the Rhime」は、Q-TipとPhife Dawgの呼びかけと返事で組まれた、会話劇のような曲です。
  • on point、come correct、dead wrong、no home training、shadyなど、日常でも使えるスラングが、ひとつずつ学べます。
  • can't none contest、I kicks、I don't promote no junkなど、AAVEの否定や動詞の使い方が、具体例で出てきます。
  • Mr. Clean、Energizer、Lou Brockなど、身近な固有名詞を使った比喩が、聴き手に親しみを与えています。
  • Rap is not pop という一言には、1991年のヒップホップが、どう自己主張していたかが表れています。

アーティストについて

A Tribe Called Quest

Queens, New York · 1985–1998, 2006, 2016–2017

クイーンズ出身のQ-Tip、Phife Dawg、Ali Shaheed Muhammad、Jarobi Whiteによる4人組。Native Tonguesコレクティブの中核として、ジャズのサンプリング・アフロセントリズム・知的な詩性でヒップホップの黄金時代を定義した。「Electric Relaxation」「Check the Rhime」「Can I Kick It?」など多数の名曲を残した。Phife Dawgは2016年3月に糖尿病の合併症で死去。

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