WAX&THINK
検索

Check the Rhime 和訳・意味・スラング解説 | A Tribe Called Quest

アーティスト
A Tribe Called Quest
リリース年
1991
プロデューサー
A Tribe Called Quest
収録アルバム
The Low End Theory
エリア
NY
BPM
95
サンプル元
Minnie Riperton "Baby, This Love I Have" (1975) / Average White Band "Love Your Life" (1976)

この記事の見どころ

  1. 01 「You on point, Phife? All the time, Tip」——ヒップホップ史上最も有名なコール&レスポンスの誕生
  2. 02 Minnie RipertonほかファンクとソウルのレコードをSP-1200とAkai S950で緻密に重ねたQ-Tipの15歳からのビジョン
  3. 03 「Industry rule number four-thousand-and-eighty」——レコード会社への警告が独立精神のアンセムに
解説

■この曲の意味(要約)

Q-TipとPhife Dawgがクイーンズのリンデン通り時代を回顧しながらバトンを渡し合う、コール&レスポンスの完全体。技術自慢、仲間への敬意、そしてレコード業界への警告をユーモアと品格で包んだ、ATCQの自己紹介にして思想宣言。

■概要

1991年アルバム『The Low End Theory』収録。Minnie Riperton「Baby, This Love I Have」(1975)のメロウなベース&ギター、Average White Band「Love Your Life」(1976)のホーンリフ、Grover Washington Jr.「Hydra」(1975)のスネア、Lafayette Afro Rock Band「Hihache」(1973)のパーカッションを精緻にレイヤーした複数サンプリング構造。制作はQ-TipとAli Shaheed Muhammadが担当。

■導入(時代背景)

1991年、ギャングスタラップが西海岸で席巻するなか、クイーンズ発のATCQは暴力も拝金主義もないジャズ・サンプリングとウィットで真逆のロードを歩んだ。「Check the Rhime」はその姿勢の結晶——コール&レスポンスという最も原始的なヒップホップ形式を、最も洗練されたサンプリング技術で包んだ問答の傑作。

Intro · Q-Tip

Uh, uh, uh, uh
Uh, uh, uh, check the rhyme

ウー、ウー、ウー、ウー
ウー、ウー、ウー、ライムを確かめろ

Verse 1 · Q-Tip & Phife Dawg

★ リンデン通りの記憶

Back in the days on the Linden Boulevard(リンデン・ブールバード)。クイーンズ区を走る大通りで、ATCQのメンバーが育った地域。彼らの音楽的ルーツが詰まった聖地
We used to kick routines and the presence was fittin'

昔、リンデン通りの大通りで
俺たちはルーティン(ライムの練習)をやっていた、雰囲気も完璧だった

解説を見る
「Boulevard of Linden」はクイーンズのLinden Boulevardへの直接的な言及。ATCQの幼少期の練習場——ストリートのコーナーやフレンドの家の前でライムを競い合った記憶が楽曲全体のノスタルジアを支える柱となっている。

It was I, Q-TipのニックネームはQ-Tip The Abstract。「Abstract(抽象的)」は彼の詩的・実験的なアプローチを表す。Phife Dawgとの対比で「知性の象徴」として機能する
And me, the Phife Dawgの自称。身長5フィート3インチ(約160cm)という小柄な体格を誇りを持って宣言するPHIFEのユーモアと自己肯定の美学

俺がThe Abstract(Q-Tip)で
俺がFive Footer(Phife Dawg、5フィートの男)だ

解説を見る
Q-TipとPhife Dawgがそれぞれの「称号」で自己紹介するインタープレイ。「The Abstract(抽象的な詩人)」vs「The Five Footer(小柄だが無敵のラッパー)」——この対比がATCQのデュオとしての緊張と調和の核心を一行で表す。

I kicks the mad style so step off the ホットドッグのソーセージ。ここではrhyming slangの一種で「frankfurter=curter(邪魔者)」という意味合い。「どけ、お前みたいなソーセージ野郎」という侮辱表現
Yo, Phife, you remember that routine

俺はクレイジーなスタイルをぶちかます、だからそこをどけ、ソーセージ野郎
ヨォ、Phife、あのルーティン覚えてるか

解説を見る
「Kicks the mad style」——ATCQのスラングで「mad」は「最高に・猛烈に」という強調語。Q-Tipが自らのスキルを宣言しつつPhifeに話を振る自然なバトンパス。

That we used to make spiffy like アメリカの洗剤ブランド「Mr. Clean」のマスコット。坊主頭でピカピカに磨かれたイメージ。「spiffy(垢抜けた・きちんとした)」との組み合わせで「完璧に磨き上げた」の意
Um... um... a tidbit, um... a smidgen

Mr. Cleanみたいにスピッフィー(完璧)に仕上げていたあのルーティンを
うーん…ちょっとだけ…少しだけ(Phifeが覚えていない様子)

解説を見る
Phife Dawgがわざと「覚えていない」演技をすることで、Q-Tipが詳しく語るという構造が生まれる。この「天然ボケとツッコミ」のダイナミクスが曲全体のユーモアの源泉。

I don't get the message so you gots to 「pigeon」は伝書鳩。「run the pigeon」で「メッセージを届ける・ちゃんと伝える」の意。Q-TipがPhifeに「もっとはっきり言え」と促す
Heh, okay

メッセージが届かないから、ちゃんと伝書鳩を走らせてくれ
へへ、わかった

解説を見る
「Run the pigeon(伝書鳩を走らせる)」——ヒップホップの比喩的表現。古典的なコミュニケーション手段(伝書鳩)をスラングに転用することで、ATCQの歴史意識とユーモアが同時に現れる。

★ コール&レスポンスの核心

You on point, Phife? All the time, Tip
You on point, Phife? All the time, Tip
You on point, Phife? All the time, Tip
Well, then grab the microphone and let your words rip

調子はいいか、Phife? いつでも万全、Tip
調子はいいか、Phife? いつでも万全、Tip
調子はいいか、Phife? いつでも万全、Tip
じゃあマイクを掴んで、言葉を解き放て

解説を見る
「You on point?(準備できてるか)/ All the time(いつでも)」——ヒップホップ史上最も有名なコール&レスポンスのひとつ。3回繰り返すことで儀式的な高揚感を生み出し、Phifeへのマイクパスを最高潮に演出する。この3連発のやり取りは後にヒップホップの「お手本」として無数のMCに引用された。

Verse 2 · Phife Dawg

★ Phife Dawgの自己紹介

Now here's a funky introduction of how nice I am
Tell your mother, tell your father, send a telegram

さあ、俺がどれだけ上手いか、ファンキーに自己紹介しよう
お母さんに伝えろ、お父さんに伝えろ、電報を打て

解説を見る
「Send a telegram(電報を打て)」——即時通信が当たり前の時代に「電報」という旧式の手段を使うことで、ニュースの重大性をユーモラスに誇張する。Phife Dawgのスキルが「歴史的事件」に匹敵すると宣言する自信の塊。

I'm like an energizer 'cause, you see, I last long
My crew is never ever ヒップホップスラングで「ダサい・クオリティが低い・本物じゃない」の意。使えないMCや偽物のヒップホップを批判する際の決定的な蔑称 because we stand strong
Now if you say my style is wack, that's where you're dead wrong

俺はエナジャイザー(電池)みたいだ、なぜなら俺は長持ちするから
俺のクルーは決してワック(ダサい)じゃない、なぜなら俺たちはしっかり立っているから

解説を見る
「Energizer(エナジャイザー)」は当時の有名な電池ブランドのCMキャラクター(バッテリーで動く太鼓を叩くウサギ)に例えた比喩。「Wack(ワック)」はヒップホップで最も強力な批判語——ここではATCQが絶対にその反対側にいると宣言する。

I slayed that Buddy in 「I Left My Wallet in El Segundo」(1990)はATCQの前作からのシングル。カリフォルニア州エルセグンドを舞台にしたロードトリップ・コメディ的な楽曲。自分たちの過去曲への自己言及 then ATCQのデビューシングル(1990年、アルバム『People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm』収録)。ここでは自らのヒット曲を並べることでキャリアの実績を誇示する
You'd be a fool to reply that Phife is not the man
'Cause you know and I know that you know who I am

El Segundoでその野郎をやっつけ、Push it Alongでも証明した
Phifeがボスじゃないなんて言ったら馬鹿だぞ

解説を見る
「El Segundo」と「Push it Along」はATCQの自作曲への言及——自らのディスコグラフィーをライムに織り込む自己参照的な技法。過去の実績を積み上げてPhifeの現在のスキルを正当化する。

A special shout of peace goes out to all my pals, you see
And a middle finger goes for all you punk MC's

俺のすべての仲間に特別なピース(敬意)を送る、わかるだろ
そしてすべてのパンク(ヘタレ)なMCには中指を立てる

解説を見る
コントラストの妙——「peace(平和・敬意)」を仲間に向けながら「middle finger(中指)」を敵対MCに向ける。ATCQの楽曲における「愛とリスペクト」と「本物じゃないものへの拒絶」の両立を端的に示す。

'Cause I love it when you wack MC's despise me
They get 「怒る・苛立つ・悩まされる」の意。ジャマイカのパトワ英語由来で、1990年代のNYヒップホップとカリブ系コミュニティの言語的融合を示す , I roll next, can't none contest me

ワックなMCどもが俺を嫌うのが大好きだ
奴らはブチ切れ(ヴェックスト)するが、俺は次へ進む、誰も俺に勝てない

解説を見る
「Vexed(ヴェックスト)」はジャマイカのパトワ英語由来のスラング——クイーンズのカリブ系コミュニティとの言語的接続を示す。ATCQの言語的な多様性と文化的ルーツの深さがスラング一語に凝縮される。

I'm just a fly MC who's five foot three and very brave
On top remaining, no home training 'cause I misbehave

俺はただのフライ(カッコいい)MCで、5フィート3インチ、そして非常に勇敢
トップに居続ける、礼儀知らずだって? 俺はやんちゃだから

解説を見る
「Five foot three(5フィート3インチ=約160cm)」を堂々と宣言——小柄さを恥じるどころか、それを「クレデンシャル」に変えるPhife Dawgの自己肯定の哲学。「Fly MC(カッコいいMC)」は1980年代から使われるヒップホップの核心的な自己評価語。

I come correct in full effect, have all my hoes in check
And before I get the butt, the 男性器のスラング。「Jim」や「Jimmy」は1990年代初期のNYヒップホップで広く使われた隠語。コンドームを指す「jimmy hat」と組み合わせて使われることも多い must be erect

俺は完璧に来る、全力で、女たちも掌握している
ヤる前に、ジム(男のアレ)が勃ってなきゃダメだ

解説を見る
「Come correct(完璧に来る・準備万端で来る)」はヒップホップの核心的な自己主張のフレーズ。「Jim must be erect」は直接的なセクシャル表現だが、この時代のヒップホップでは標準的な自己誇示の一部として機能していた。

★ ポジティヴィティ宣言

You see, my aura's positive, I don't promote no junk
See, I'm far from a bully and I ain't a punk

俺のオーラはポジティヴだ、ジャンク(クズなもの)は促進しない
俺はいじめっ子でもなく、パンク野郎でもない

解説を見る
ATCQのフィロソフィーの宣言——「暴力もジャンクも促進しない」。1991年当時、ギャングスタラップとの差別化を明確にするこのポジショニングは、単なる音楽スタイルの違いではなく倫理的な立場表明だった。

Extremity in rhythm, yeah, that's what you heard
So just clean out your ears and just check the word

リズムの極限、そう、それが聞こえただろ
だから耳をきれいにして、言葉を確かめろ

Chorus · Q-Tip

Check the rhyme y'all, check the rhyme y'all
Check the rhyme y'all, play tapes y'all
Check the rhyme y'all, check the rhyme y'all
Check it out, check it out

ライムを確かめろ、みんな、ライムを確かめろ
ライムを確かめろ、テープを流せ
ライムを確かめろ、みんな、ライムを確かめろ
チェックしてくれ、チェックしてくれ

解説を見る
「Play tapes y'all(テープを流せ)」——カセットテープ全盛時代の1991年ならではのフレーズ。DJがパーティーで流す媒体がテープだった時代の、ヒップホップ文化のリアルなスナップショット。コーラスの反復が聴衆を一体化させるコール&レスポンスの構造そのもの。

Verse 3 · Phife Dawg & Q-Tip

★ 役割逆転のリプライズ

Back in the days on the boulevard of Linden
We used to kick routines and the presence was fittin'
It was I, the Phifer
And me, the Abstract

昔、リンデン通りの大通りで
俺たちはルーティンをやっていた、雰囲気も完璧だった
今度は俺、Phifer(Phife Dawg)が先に言う
そして俺がAbstract(Q-Tip)

解説を見る
ヴァース1のオープニング歌詞を「繰り返しながら役割を入れ替える」——Q-TipとPhife Dawgの立ち位置を逆転させることで、二人が対等なパートナーシップであることを構造的に証明する。単なる繰り返しではなく、ミラーリングによる対称美。

The rhymes were so 「bumpin'(響き渡る・グルーヴが凄い)」のヴァリエーション。ニューヨーク方言でライムやビートが強烈に刺さることを表す that the brothers rode the 「Amtrak(アムトラック)」の省略形。北東回廊を走るアメリカの鉄道。クイーンズからNJ/フィラデルフィアまで遠征してでも聴きに来たという誇張表現
Aiyo Tip, do you recall when we used to rock What?

ライムはそれほど「ランピン(強烈)」で、兄弟たちはアムトラック('zack)に乗ってでも来た
ヨォTip、俺たちがあれをやってた頃を覚えてるか? 何を?

解説を見る
「Rode the 'zack(アムトラックに乗った)」——ライムを聴くためにわざわざ鉄道で来た人々のイメージで、彼らのスキルの伝説的な吸引力を誇張する。「Aiyo」はニューヨーク・ヒップホップの典型的な呼びかけ語。

Those fly routines on your cousin's block?
Um, let me see... damn, I can't remember
I receive the message and you will play the sender

お前のいとこの家の前でやってたあのフライなルーティンを?
うーん、ちょっと待って…くそ、思い出せない
今度は俺がメッセージを受け取る側で、お前が送る側だ

解説を見る
ヴァース1でPhifeが「覚えていない」演技をしたのと対称的に、今度はQ-Tipが「思い出せない」と言う。役割の完全な入れ替わり——「I receive the message」はヴァース1の「run the pigeon」のミラーイメージとして機能する。

★ 役割逆転のコール&レスポンス

You on point, Tip? All the time, Phife
You on point, Tip? Yeah, all the time, Phife
You on point, Tip? Yo, all the time, Phife
So play the resurrector (Yeah), and give the dead some life

調子はいいか、Tip? いつでも万全、Phife
調子はいいか、Tip? そう、いつでも万全、Phife
調子はいいか、Tip? ヨォ、いつでも万全、Phife
じゃあレサレクター(復活者)を演じろ(ヤア)、死んだものに命を与えろ

解説を見る
ヴァース1のコール&レスポンスを完全に逆転——今度はPhifeがQ-Tipに問いかける。「Play the resurrector(復活者を演じろ)」はQ-Tipのヴァースが「死んだ(停滞した)ものに命(新鮮なライム)を吹き込む」という詩的な命令。曲の構造的な対称性が完成する瞬間。

Verse 4 · Q-Tip

Okay, if knowledge is the key, then just show me the lock
Got the scrawny legs but I move just like ルー・ブロック(1939–2020)。セントルイス・カーディナルズの伝説的な外野手で、MLB歴代最多盗塁記録保持者(当時)。Q-Tipが自らの「スピードと俊敏さ」をBrockに例える

わかった、知識が鍵なら、錠前を見せてくれ
脚は細いが、俺の動きはLou Brockみたいだ

解説を見る
「If knowledge is the key, show me the lock(知識が鍵なら錠前を見せろ)」——知識への渇望と実践的思考の宣言。Five-Percent Nationの「知識(Knowledge)」の概念とのつながりも示唆する。Lou Brockへの言及はスポーツ比喩を通じたスピードとアジリティの誇示。

With speed, I'm agile plus I'm worth your while
One hundred percent intelligent Black child

スピードがあって俊敏、そしてあなたの時間に値する
100パーセント知性的なブラック・チャイルド

解説を見る
「One hundred percent intelligent Black child(100%知性的な黒人の子供)」——Five-Percent Nation(ファイブ・パーセント・ネイション)のフィロソフィーへの直接的な言及。「黒人男性が本来持つ神的な知性」という概念を誇りを持って宣言する。Native Tonguesコレクティブのアフロセントリズムの核心。

My optic presentation sizzles the retina
How far must you go to gain respect? Umm
Well, it's kinda simple, just remain your own
Or you'll be crazy, sad and alone

俺の視覚的なプレゼンテーションは網膜を焼く
リスペクトを得るためにどこまで行かなければならないか? うーん
まあ、それはシンプルだ、ただ自分らしくいろ
さもなくば、気がおかしくなって、悲しくて、孤独になる

解説を見る
「Remain your own(自分らしくいろ)」——商業主義に魂を売る誘惑への警告。単純に見えるアドバイスだが、次の「Industry rule」へのブリッジとして機能する。自己を保つことが業界で生き残る唯一の方法という人生哲学。

★ 伝説の「Industry Rule」

Industry rule number four-thousand-and-eighty
Record company people are shady
So kids, watch your back 'cause I think they smoke crack
I don't doubt it, look at how they act

業界ルール第4080条
レコード会社の人間は怪しい
だからキッズたち、背後に気をつけろ、奴らはクラックでもやってるんじゃないか
疑う余地もない、奴らの行動を見ればわかる

解説を見る
「Industry rule number four-thousand-and-eighty(業界ルール第4080条)」——ヒップホップ史上最も有名な格言のひとつ。架空の「業界規則集」の条文を引用するフォーマットで、レコード会社への不信感を法的権威の形式で包む。Q-TipとPhife Dawgがインディペンデントな精神を持ち続けた理由がここに凝縮されている。

Well, off to better things like a hip-hop forum
Pass me the rock and I'll score 'em with 「礼儀正しさ・品格・適切な振る舞い」を意味する格式ある英単語。Q-Tipが「decorum」という知的な語彙をライムに使う——これこそがATCQの「educated MC」スタイルの象徴

さあ、より良いことへ——ヒップホップ・フォーラムみたいに
ボールをパスしてくれ、俺は品格(デコラム)をもって得点するから

解説を見る
「Decorum(デコラム)」という格式ある語彙のライム使用——Q-Tipの「educated MC(教養あるMC)」としてのアイデンティティの象徴。バスケットボールの比喩(「pass me the rock and score」)とアカデミックな語彙を同じ行に並べるのはATCQにしかできない対位法。

★ 「Rap is not pop」宣言

And proper, what you say, MC Hammer(マーシー・ハマー)。1990年の「U Can't Touch This」で大ヒットし、ポップなダンス・ラップで商業的成功を収めた。ATCQからすれば「ラップをポップに薄めた」象徴的な存在 ? Proper
Rap is not pop, if you call it that, then stop

適切に(プロパー)、何て言う、ハマー? 適切に
ラップはポップじゃない、そう呼ぶなら今すぐやめろ

解説を見る
「Rap is not pop, if you call it that, then stop」——ATCQの最も有名な格言のひとつ。MC Hammerを名指しすることで、商業的ポップ・ラップへの明確な反旗を翻す。この一行はヒップホップのアンダーグラウンド/メインストリーム論争の原点として今も引用され続ける。

Outro · Q-Tip

NC, y'all check the rhyme y'all
SC, y'all check it out y'all
Virginia, check the rhyme y'all
Check it out, check it out
In London, check the rhyme, y'all

ノースカロライナ(NC)、ライムを確かめろ
サウスカロライナ(SC)、チェックしてくれ
バージニア、ライムを確かめろ
チェックしてくれ、チェックしてくれ
ロンドンでも、ライムを確かめろ

文化的背景

Native Tongues コレクティブ

「知性とポジティヴィティ」の旗手たち

1988年頃からATCQ、De La Soul、Jungle Brothers、Black Sheepらが形成した非公式コレクティブ。ギャングスタラップが台頭する中で、アフロセントリズム・ジャズ・ユーモアを核に据えた対抗軸を構築した。「Check the Rhime」はその哲学の完全体——暴力なし、拝金主義なし、ただ「本物のライムと相互リスペクト」だけがある。

Q-Tip vs Phife Dawg

「詩人」と「ストリートの闘士」の永遠のデュオ

Q-Tip(The Abstract)は哲学的・実験的・内向き。Phife Dawg(The Five-Foot Assassin)は直接的・ユーモラス・外向き。この対比が「Check the Rhime」のコール&レスポンス構造を永続的な価値あるものにした。Phife Dawgは2016年3月22日、糖尿病の合併症により38歳で死去。この曲は彼の声が生き続ける場所となっている。

キーワード解説

楽曲を読み解く重要スラング・用語

The Abstract Q-TipのニックネームはQ-Tip The Abstract。実験的・詩的なアプローチの象徴
Five Footer Phife Dawgの自称。5フィート3インチ(約160cm)の小柄を誇りに変えた自己肯定の美学
Industry rule #4080 レコード会社への不信感を架空の「業界規則」として格言化した名フレーズ
Rap is not pop 商業的ポップ・ラップへの反旗。ヒップホップ純粋主義の宣言として今も引用される
vexed ジャマイカのパトワ英語由来の「怒る・苛立つ」。NYのカリブ系コミュニティとの言語的融合

制作の裏側

制作秘話 01

15歳のQ-Tipが構想したビート

「Check the Rhime」のビートのアイデアをQ-Tipが最初に構想したのは15歳の頃だったと記録されている。1991年の制作ではQ-TipとAli Shaheed MuhammadがE-mu SP-1200(ドラム)とAkai S950(ループ・サンプリング)を使用。SP-1200の「スナップの効いた太いドラムサウンド」とS950のわずか1.5秒というサンプリング制約の中で、5つの異なるレコードを精緻に組み合わせた音響構築が実現された。

制作秘話 02

5枚のレコードから組み上げたコラージュ

楽曲の音響構造は5つのサンプルによるコラージュ。ベース&ギターにMinnie Riperton「Baby, This Love I Have」(1975)、象徴的なホーンリフにAverage White Band「Love Your Life」(1976)、スネア&パーカッションにGrover Washington Jr.「Hydra」(1975)、キックドラムにDalton & Dubarri「I'm Just a Rock 'N' Roller」(1976)、追加パーカッションにLafayette Afro Rock Band「Hihache」(1973)。本来一緒に鳴るよう作られていない断片を、EQで帯域を調整しながら完璧なグルーヴとして統合した。

制作秘話 03

Bob PowerのSMPTEタイムコード同期技術

録音エンジニアのBob Powerはマンハッタンのバッテリー・スタジオで、SMPTEタイムコードを活用してサンプラーとテープ・マシンを同期させた。ドラム・パーツを複数のサンプルに分割してはテープに少しずつ重ねていくという手作業により、各サンプルの「ソニック・インテグリティ(音響的完全性)」を維持しながら多層的なビートを構築した。「Electric Relaxation」と並ぶATCQの制作技術の金字塔。

評価とその後の影響

指標
記録
意義
US Hot Rap Songs
トップ10入り (1991)
Native Tonguesスタイルの商業的正当性を証明した歴史的チャートアクション
The Low End Theory
ローリングストーン誌「史上最も偉大な500枚のアルバム」選出
本曲収録アルバムはジャズ・ラップの最高到達点として殿堂入り
Industry rule #4080
ヒップホップ最頻引用格言のひとつ
30年以上にわたりアーティストとファンがレコード業界批判の文脈で繰り返し参照
Rap is not pop
独立精神の象徴的フレーズ
インディペンデント・ヒップホップカルチャーのマニフェストとして今も生きている
コール&レスポンス
ヒップホップ教科書の定番事例
「You on point?」の構造は無数のMCとプロデューサーが自らの曲に取り入れた

後世への影響

「Check the Rhime」が変えたもの

「Check the Rhime」はヒップホップにおけるデュオ表現の教科書を書き換えた。単なる「バトン渡し」ではなく、二人の個性が「対称性」と「対比」によって高め合う構造——この設計思想は以降のヒップホップ・デュオのすべてに影響を与えた。

  • Jay-Z & Kanye 「Watch the Throne」(2011)における対話的なコラボレーション構造はATCQのデュオ表現の直系の子孫。
  • Kendrick Lamar 「Industry rule」の精神はKendrickが「Big Machine」や「The Heart」シリーズで継承した「レーベルへの不信とアーティストの独立」というテーマに直結する。
  • LoFi Hip-Hop Minnie Ripertonのメロウなベース・グルーヴを核にした温かいサンプリング美学は、現代のLoFi Beatsプレイリスト文化の直接的な源流のひとつ。
A Tribe Called Quest - The Low End Theory

Amazon で見る

Check the Rhime / The Low End Theory

A Tribe Called Quest

まとめ

  • Minnie Ripertonほか5枚のレコードを精緻に重ねたサンプリング・コラージュ——SP-1200とAkai S950の制約を超えた15歳のQ-Tipのビジョン。
  • Q-Tip(The Abstract)とPhife Dawg(The Five Footer)がコール&レスポンスを前後半で逆転させる「対称美」——デュオ表現の完全体。
  • 「Industry rule #4080」「Rap is not pop」——2行でレコード業界批判とヒップホップ純粋主義の歴史的宣言。
  • Native Tonguesコレクティブの哲学の結晶——暴力なし、ジャンクなし、ただ本物のライムとリスペクトだけがある1991年のマニフェスト。

アーティストについて

A Tribe Called Quest

Queens, New York · 1985–1998, 2006, 2016–2017

クイーンズ出身のQ-Tip、Phife Dawg、Ali Shaheed Muhammad、Jarobi Whiteによる4人組。Native Tonguesコレクティブの中核として、ジャズのサンプリング・アフロセントリズム・知的な詩性でヒップホップの黄金時代を定義した。「Electric Relaxation」「Check the Rhime」「Can I Kick It?」など多数の名曲を残した。Phife Dawgは2016年3月に糖尿病の合併症で死去。

同アーティストの記事