Slang Dictionary
dough
ドウ
まず結論
dough は本来「パン生地」ですが、口語では「お金」を指します。
ヒップホップ以前から使われている古いスラングで、一般の英語話者にもそのまま通じます。
bread(パン)も同じく「お金」なので、パン系の言葉はお金に化けやすい、と覚えると楽です。
使い方はシンプル
dough は数えられない名詞として扱います。make dough(稼ぐ)、get dough(手に入れる)、a lot of dough(大金)が基本の組み合わせです。
a dough、doughs のような形にはしません。money と同じ感覚で使えば大きく外れることはありません。
パン生地と見分けるには
料理やお菓子の話をしていればパン生地、稼ぎや支払いの話をしていればお金です。
ラッパーはこの二つをわざとぶつけてきます。生地がよく伸びる、こねる、焼くといった動作を、お金の話に重ねる言葉遊びはかなり定番です。
なので、dough を見かけたら一度「パン生地の性質」を思い浮かべてみると、隠れたダジャレに気づけることがあります。
響きの温度感
dough はやや軽くて、どこかユーモラスな響きがあります。生活費の心配から成金自慢まで、重すぎずに語れるのが便利なところです。
深刻な借金の話より、「今月ちょっと金欠」くらいの場面のほうが似合う語です。
お金スラングが食べ物だらけな理由
英語のお金スラングには、dough、bread、cheddar、cabbage のように食べ物の名前がやたらと多いです。
毎日の食事と生活費が直結している感覚が、そのまま言葉に表れているのだと思います。ラップの中で食べ物の名前が急に出てきたら、まずお金の話を疑ってみると読み違いが減ります。
語源と背景
dough は古英語の dāg(こねたもの)にさかのぼる語で、本来の意味はパンの生地です。
「お金」を指す用法は、1851年のアメリカの学生向け雑誌に見える例が、記録に残る最も古いものとされています。
なぜ生地がお金になったのかは、はっきりしていません。bread が古くから「暮らしの糧」の意味で使われていたことと関係がある、という見方はありますが、確かな記録で裏づけられた説ではないです。
例文
例文は意味と使い方を示すための解説用の作例で、実際の歌詞の引用ではありません。歌詞の引用は「曲での使われ方」に載せています。
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1.I need to make some dough this summer.
この夏はちょっと稼がないと。
make dough は「稼ぐ」の定番の言い方です。
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2.That watch must have cost a lot of dough.
その時計、相当高かっただろうね。
a lot of dough で「大金」。cost と組み合わせるのも自然です。
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3.Can you spot me some dough till Friday?
金曜までちょっと金貸してくれない?
spot me は「立て替えて」の口語。軽い借金のお願いです。
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4.They put all their dough into the studio.
彼らは有り金を全部スタジオにつぎ込んだ。
all their dough で「持っているお金すべて」。
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5.Knead the dough for ten minutes.
生地を10分こねる。
こちらは料理の dough。knead(こねる)があれば迷いません。
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6.He's rolling in dough since the tour.
ツアー以来、あいつは金がうなるほどある。
rolling in dough で「お金がありあまっている」。生地を転がすイメージと重なる言い回しです。
この曲ではこう使われていた
解析に使ったヒップホップ約440曲の歌詞のうち、dough を含む曲は27曲で、16人中10人のラッパーに出てきました。MF DOOM や GZA の曲に特に多く出てきます。出現数の多い順に並べると、内訳はMF DOOM 6曲、GZA 4曲、Nas 4曲、J. Cole 3曲、Kool G Rap 3曲です。
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"cars that cost dough"
街角で稼ぐ若者たちが欲しがる高級車を、dough がかかるクルマと言っています。大金という意味の、ごく素直な使い方です。
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Nas 「Life’s a Bitch」
"some kind of dough"
どんな形であれ、多少の金は持って帰る、という決意です。具体的な額ではなく「何かしらの稼ぎ」をぼかして言う言い方になっています。
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GZA 「Pass the Bone」
"a pocket full of dough"
ポケットいっぱいの金。気分のいい場面を描く、軽い自慢の dough です。
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MF DOOM 「Rapp Snitch Knishes」
"long dough like elastic"
long dough(大金)を、ゴムのように伸びると重ねています。生地がよく伸びる性質を利用した、パン生地とお金の言葉遊びです。
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Rakim 「The R」
"make more dough"
たたみきれなくなるまで稼ぐ、と続きます。札束を折る動きと、生地を折り込む動きの両方が浮かぶ一節です。
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Aesop Rock 「Leisureforce」
"half cookie dough"
こちらはクッキー生地そのもので、お金の意味ではありません。お菓子の描写の中に出てくる、本来の dough です。
似た表現との違い
- paper金(紙幣)
- paper は紙幣から来た言い方で、ヒップホップ色が強めです。dough はもっと古く、一般の会話にもなじんでいます。
- bread金
- 同じパン系のお金スラング。break bread(一緒に食事する、分け合う)という熟語もあり、意味の広がりは bread のほうが大きいです。
- cheddar金
- チーズからの連想。dough より新しく、遊び心が強い響きです。
- C.R.E.A.M.金がすべて
- Wu-Tang Clan の曲名から広まった頭字語。単なる「金」ではなく、金が支配する現実を語る言葉です。
使うときの注意
- dough は数えられない名詞です。two doughs のようには言いません。
- 料理の話の中では普通にパン生地なので、文脈を無視してお金と読むと妙な訳になります。
- 発音は「ドウ」で、gh は読みません。do(ドゥー)とも違うので注意が要ります。
よくある質問
- dough はヒップホップ発祥のスラングですか。
- 違います。1850年代のアメリカにはすでに記録がある古い口語で、ヒップホップがそれを引き継いで使っています。
- dough と money はどれくらい違いますか。
- 意味はほぼ同じで、dough のほうが砕けた響きです。書類やビジネスの場では money を使います。
- doughboy もお金の意味ですか。
- いいえ。doughboy は第一次世界大戦期のアメリカ歩兵を指す古い呼び名で、お金とは関係ありません。
- dough と bread、どちらがよく使われますか。
- 地域や世代で差があります。歌詞ではどちらも頻繁に出てきて、韻の都合で選ばれることも多いです。
- dough を使ったよくある言い回しはありますか。
- make dough(稼ぐ)、rolling in dough(金があり余っている)、short on dough(金が足りない)あたりが日常会話でもよく使われます。