この記事の見どころ
STORM
★ 豪邸への強襲とScarfaceの亡霊
The 殺し屋・体制の汚れ仕事をする者。本作では権力と富の象徴である豪邸を強襲する者たち storm the mansion
They pass by the fountain
With the neon pink sign
That says 1983年映画『スカーフェイス』のネオンサインの文句。1994年Nasのアルバム曲タイトルでもあり、ヒップホップにおける究極の野望を象徴するフレーズ
殺し屋・体制の汚れ仕事をする者。本作では豪邸を強襲するユースたちの比喩 たちが豪邸を強襲する
奴らは庭園の噴水の脇を通り抜けていく
その傍らには、ネオンピンクに光るサインがある
そこには「世界はお前のものだ」と書かれている
And where do we begin?
And do we have time for everything?
さて、俺たちは一体どこから始めようか?
これらすべてを終わらせるだけの時間は、俺たちに残されているのか?
★ 住宅危機と「世界はお前のもの」の皮肉
We need another room
But houses are so expensive
俺たちには別の部屋が必要だ
だが、家というものはあまりにも高価すぎる
The hitmen storm the mansion
They pass by the fountain
With the neon pink sign
That says the world is yours
And do we have time for everything?
And where do we begin?
There is still time
We must watch the all...
ヒットマンたちが再び豪邸を強襲する
奴らは噴水の脇を通り抜けていく
ネオンピンクに光るサインを横目に
そこには「世界はお前のものだ」と書かれている
すべてをやり遂げるだけの時間は残されているのか?
俺たちは、どこから手をつければいい?
まだ時間は残されている
俺たちは、そのすべてが崩れ去るのを見届けなければならない...
★ ソウルフルなピアノが導く転換点
We say your
Heat heat heat.
Heat heat heat up here
But it won't last forever
Heat heat oh heat heat.
俺たちはこう言う
熱く、熱く、燃え上がれ
ここはひどく熱を帯びている、暴発寸前だ
だが、こんなものは永遠には続かない
熱く、燃え上がれ、ああ、熱く
Like an empty fire
Like your desire
まるで空っぽの炎のように
お前の底知れぬ欲望そのもののように
Like an empty fire
Stand tall, go higher
中身のない炎のように、ただ激しく燃え盛る
胸を張り、より高みへと昇っていけ
And on and on and on and on and I say
Ooh-oh, ooh-oh, ooh-oh-oh
Ooh-oh, ooh-oh, ooh-oh-oh
そして永遠に、繰り返す、俺はこう叫ぶんだ
ウー・オー、ウー・オー、ウー・オー・オー
ウー・オー、ウー・オー、ウー・オー・オー
★ アンセムの核心——嵐の中の連帯
We stay united through the (1)嵐・激しい困難 (2)建物への突入・強襲(storm the building)(3)抑圧された感情の爆発——ダブルミーニングで機能するタイトルワード (hey, hey, hey, hey, hey)
Lay all your love right on my door (hey, hey, hey, hey, hey)
俺たちはこの激しい嵐の中でも団結し続ける(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
お前のすべての愛を、俺のドアの前に置いていってくれ(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
I never fall, I'm standing tall (hey, hey, hey, hey, hey)
Go take the darkness out my heart (hey, hey, hey, hey, hey)
俺は決して倒れない、堂々と立ち続ける(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
どうか、俺の心からこの暗闇を取り除いてくれ(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
But I know it may hurt
But it won't last forever
And on and on and on and on and on
これが痛みを伴うことは分かっている
だが、この痛みも永遠に続くわけじゃない
そして永遠に、繰り返していくんだ
★ レイヴカルチャーと破滅の美学
Feels like a (1)実際の麻薬(映像内でのボング使用)(2)集団でシンクロナイズして踊るトランス状態のコレクティブ・ハイ(3)UKレイヴカルチャーのPLUR精神(Peace, Love, Unity, Respect)の多幸感 , drug, drug
We gonna love, love, love
Until the sun comes up, up
まるでドラッグのような感覚だ、激しくキマる
俺たちは愛し合うんだ、深く、深く
太陽が昇り、夜が明けるその時まで
You're all out of luck, luck, luck
We don't give a fuck 'bout what?
お前はもう運の尽きだ、完全に詰んでいる
俺たちが何かを気にすると思うか? 知ったことか
★ Nick of Timeと星空の警告
It's only a 「In the nick of time(間一髪で、土壇場で)」という慣用句から。世界が崩壊する直前の刹那的な時間、あるいは破滅から救い出されるギリギリの瞬間を指す
When you see the stars, you better run
ほんのわずかな、残された時間しかないんだ
星空を見上げたら、走って逃げた方がいいぜ
Like an empty fire
Like your desire
Like an empty fire
Stand tall, go higher
And on and on and on and on and on
And I say
Uh-oh, uh-oh, uh-oh-oh
Uh-oh, uh-oh, uh-oh-oh
まるで空っぽの炎のように
お前の底知れぬ欲望そのもののように
中身のない炎のように、ただ激しく燃え盛る
胸を張り、より高みへと昇っていけ
そして永遠に、繰り返すんだ
俺はこう叫ぶ
アー・オー、アー・オー、アー・オー・オー
アー・オー、アー・オー、アー・オー・オー
★ オーディオビジュアルの究極の到達点
We stay united through the storm (Hey, hey, hey, hey, hey)
Lay all your love right on my door (Hey, hey, hey, hey, hey)
I never fall, I'm standing tall (Hey, hey, hey, hey, hey)
Go take the darkness out my heart (Hey, hey, hey, hey, hey)
But I know it may hurt
But it won't last forever
And on and on and on and on and on
俺たちはこの激しい嵐の中でも、一つに団結する(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
お前の愛をすべて、俺に預けてくれ(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
俺は決して地に伏さない、真っ直ぐに立つ(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
俺の心に巣食う闇を、外へ引きずり出してくれ(ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ)
痛むことは分かっている
だが、この苦しみも永遠じゃない
だから繰り返す、ずっと、永遠に
全寮制学校(Boarding School)
イギリスの全寮制学校はエリート育成の象徴であり、首相や王族を輩出する特権階級のインフラである。MVの舞台となる2034年のリーズの学校では、その秩序が完全に崩壊している。トイレでの顔面押しつけ、消火器の噴射、流血を伴う殴り合い、空き教室でのボング喫煙——制服(特権)を着こなしたまま獣になるという倒錯したビジュアルが、ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王(Lord of the Flies)』の現代的解釈として世界中の批評家を震撼させた。
Yung Leanと日本
Yung Leanの出世作「Kyoto(2013)」のタイトルが示す通り、日本は彼のアイデンティティの核心にある。ヴェイパーウェイヴの文脈での日本カルチャー(カタカナ・アニメ・アリゾナアイスティー)の活用から、YENTOWNとの「TOKYO DRIFT」コラボ、そして幾度もの来日——東京のアンダーグラウンドシーンと深いネットワークを持つ彼にとって、「STORM」で描いた閉塞的な管理社会への怒りは、日本のユース層のフラストレーションとも深く共鳴する。
キーワード解説
制作秘話 01
映像監督Romain Gavrasは、Justiceの「Stress」やM.I.A.の「Bad Girls」、Kanye West & Jay-Zの「No Church in the Wild」で暴動や都市の混沌を映像化してきた鬼才。GENERion(Ben Surkin)とのタッグは長く、2015年のM.I.A.「The New International Sound (Part II)」では少林寺武術学校の生徒数万人が一糸乱れぬ動きを見せるMVを制作し映像史に刻んだ。「STORM」はその「群衆の統制と狂気」というテーマをイギリスの不良学生カルチャーに置き換えた精神的続編である。
制作秘話 02
振付師Damien Jaletは、Luca Guadagnino監督のホラー映画リメイク『サスペリア(Suspiria)』やThom Yorkeのプロジェクトで、人間の肉体が持つ「動物的な不気味さ(Feral nature)」と「幾何学的な美しさ」を融合させてきた。STORM IIの後半の約3分間のロングシークエンスでは、スポーツのロッカールームの喧騒、サッカースタジアムのフーリガンのチャント、軍隊の行進といった「男性集団特有の暴力的な連帯感」をコンテンポラリーダンスへと変換。Julia Foxをはじめ世界中の批評家が「GOAT(史上最高)」と絶賛した。
制作秘話 03
STORM Iの心音やアラームを思わせるアグレッシブで不規則なビートから、STORM IIへのトランジションで突如として90年代のR&B・ハウスミュージックを彷彿とさせるソウルフルなピアノのコード進行が導入される。このピアノはレイヴパーティーの終焉(夜明け)に流れるチルアウト・アンセムの浄化機能を持ち、そこに荒々しいボーカルチョップ「Heat heat heat...」が乗ることで、切迫感と多幸感が同居する奇跡的なバランスを生み出している。衣装デザインはCharlotte Buchalが担当し、制服の裏地へのTipp-Ex落書きなど細部まで反抗精神を緻密に組み込んだ。
現代における意義
Stereogumは本作を「Video Is Incredible(信じられないほどの映像)」と称し、Esquireは「今年最高の映像の作り方」という特集を組んだ。AI生成コンテンツがSNSを埋め尽くす時代において、本作が提示した「汗と血にまみれた人間の肉体の躍動」と「一糸乱れぬコレクティブな熱狂」は、テクノロジーには決して代替できない芸術の真髄として世界中で絶賛された。
GENER8ION
Stockholm, Sweden · 2015–
ストックホルム出身のプロデューサーデュオ。Yung Leanとの長期的なコラボレーションでクラウドラップ・エクスペリメンタルヒップホップの最前線に立つ。