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Say 和訳・意味・スラング解説 | Method Man

アーティスト
Method Man
リリース年
2006
プロデューサー
Erick Sermon
収録アルバム
4:21... The Day After
エリア
NY
BPM
88
サンプル元
Lauryn Hill "So Much Things to Say" (2002) / orig. Bob Marley

この記事の見どころ

  1. 01 Lauryn Hill「So Much Things to Say」(ボブ・マーリーカバー)をサンプリング——業界に裏切られた者同士の共鳴
  2. 02 「Radio lyin' then, that ain't where the hip-hop live / It lives in the streets」——2006年のヒップホップ原点回帰宣言
  3. 03 「Until you dudes can write some rhymes / Keep that in mind when you find yourself reciting mines」——批評家への最後通牒
解説

■この曲の意味(要約)

Wu-Tang Clanの看板MCとして頂点を極めたMethod Manが、2006年のアルバム『4:21... The Day After』でぶつけた業界批判の告白曲。ラジオ、批評家、変節した仲間、レーベルへの怒りと幻滅を、Erick Sermonの無骨なブーンバップに乗せてリアルに吐き出す。サンプリング元Lauryn Hillも同時代に業界から否定された——二人の怒りがコーラスで重なる構造が曲の核心。

■概要

2006年アルバム『4:21... The Day After』収録。プロデュースはEPMD/Def Squad出身のErick Sermon。Lauryn Hillが2002年の『MTV Unplugged No. 2.0』でカバーしたBob Marley「So Much Things to Say」のボーカルをサンプリング。東海岸ブーンバップを死守したサウンドは、クランク・ミュージックとスナップが席巻していた当時のメインストリームへの明確な対抗表明。

■導入(時代背景)

2000年代中盤、TR-808を多用した南部クランクがビルボードを支配し、NYのハードコアラッパーたちは「時代遅れ」と切り捨てられ始めていた。Method Manは前作『Tical 0: The Prequel』(2004)で低評価を受け、キャリアの岐路に立っていた。そこに現れたのがErick Sermon——「1トラックに10万ドル払うプロデューサーは要らない」と宣言し、旧友との協力でブーンバップの原点に立ち返った。

Intro · Lauryn Hill & Method Man

Yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah
Yeah

(イントロ——Lauryn Hillのフックが繰り返される)

Verse 1 · Method Man

★ 業界への幻滅——雨が降り続ける

Damn, I hate it when it rain
Ever since I came in the game, some hated on the fame

くそ、雨が降るのが嫌だ
ゲームに入って以来、名声を妬む奴らがいた

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「I hate it when it rain」——喜ばしくない状況が続く比喩。「ゲームに入った(入業した)ときから」という時制が、Method Manのキャリア全体を見渡す視点を設定する。

A lot of n***as done changed and started actin' strange
Even labels turning they backs and started backin' lames

多くの仲間が変わってしまい、おかしな振る舞いをし始めた
レーベルまでも背を向けて、 「使えない奴・本物じゃない奴・クオリティが低いラッパー」。ヒップホップで最も辛辣な批判語の一つ。商業的に成功した「本物じゃない」アーティストを指す を支援し始めた

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「Labels backing lames(レーベルがダサい奴を支援する)」——2000年代中盤、老舗NYレーベルが商業主義に走り、ハードコアラッパーを切り捨てた現実への直接的な告発。

★ ラジオへの反乱

Radio is the same, whole lotta speculatin'
These mutherf**kas 「defecating(排便する)」のスラング発音。「Wu-Tangの名前の上で大便をしている」=「汚している・貶めている」という強烈な比喩 on the name

ラジオも相変わらず、憶測ばかり垂れ流す
この野郎どもはWu-Tangの名前の上に糞をしている

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「Defacatin' on the name」——「defecating(排泄する)」のスラング変形。Wu-Tang Clanの評判を「汚している」「踏みにじっている」という、これ以上ない下品かつ鮮明な侮辱の比喩。

Wu-Tang, if this is where the hip-hop is
Radio lyin' then, that ain't where the hip-hop live
It lives in the streets, we eat to live, they livin' to eat

Wu-Tang、もしここがヒップホップの居場所なら
ラジオが嘘をついているなら、そこにヒップホップは住んでいない
ヒップホップはストリートに生きる——俺たちは生きるために食う、奴らは食うために生きる

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「We eat to live, they livin' to eat」——生存のための行動(本物)と金のための行動(偽物)の対比。ヒップホップの本質はラジオではなくストリートにあるという哲学的宣言。

I'm fed up, that n***a Ryderson, I'm givin him sleep
R.I.P., make me the king of all I see

もうたくさんだ、あのRydersonって奴、眠らせてやる(ぶっ倒す)
安らかに眠れ——俺の目に見えるすべての王にしてくれ

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「Givin' him sleep」——「眠らせる」=「ぶっ倒す・倒す」のヒップホップスラング。「R.I.P.」は敵を象徴的に「葬った」後の宣言として使う。

And when death call, I'm good, I got call ID

死が電話してきても大丈夫、着信拒否できるから

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「Call ID」=「発信者番号通知(Caller ID)」のダジャレ。「死(death)」からの電話を着信拒否できる、つまり死を恐れていないという強さの表現。

See it was Clan in the front, now they just gon' front
Like my joints is on アメリカの有名なニキビ治療薬ブランド。「ビートがProactivに乗ってる」は「俺の曲が流行らない・プレイされない」という皮肉な比喩——Proactivはスキンケア用品で音楽とは無関係なのに、まるでそれに乗っているかのように「bump(響く)」しないという諧謔 , and they just don't 「bump(バンプ)」はスラングで「スピーカーから大音量で鳴り響く・ヒットする」の意。曲が誰かのカーステレオやスピーカーで大音量でかかることがステータスだった時代の表現

昔はClanが前に出ていた、今は奴らただフロント(見せかけ)するだけ
俺のビートはProactivに乗ってるみたいで、バンプ(響かない)しないって言うじゃないか

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「Clan in the front, now they front」——「front(フロント)」は「先頭に立つ」と「偽る・見せかけをする」の二重の意味。かつて前線にいたWu-Tang仲間が今は「見せかけ」だけになったという嘆き。

★ スキルを失ったのは俺じゃない

Then n***as gon' say I lost my skill
When in fact, they all been programmed and lost they feel, for real

そして奴らは俺がスキルを失ったと言うだろう
実際は、奴らが全員プログラムされて感覚を失ったんだ、マジで

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バース全体の結論。「スキルを失った」のはMethod Manではなく、商業主義にプログラムされたリスナー・メディア・業界側——という逆説的な批判構造が1バース全体を貫いている。

Chorus · Lauryn Hill & Method Man

★ Lauryn Hillのサンプル——同じ痛みを持つ者の共鳴

They've got so much things to say right now
They've got so much things to say, yeah

奴らには今、言いたいことがたくさんある
奴らには言いたいことがたくさんある、ああ

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Lauryn Hillの2002年『MTV Unplugged No. 2.0』からのサンプリング。彼女も業界から「不安定」「商業的に失敗」と批判された。Bob Marleyのオリジナル「So Much Things to Say」は不当な批判に対して「自分は真実を知っている」と言い続ける歌。三つの時代の「同じ怒り」がコーラスに重なる。

Verse 2 · Method Man

Damn, another artist chokes again
They ain't cut as close as him or even broke the skin

くそ、また別のアーティストが失速した
奴らはMethod Manほど近くにも来ていないし、皮膚すら傷つけてもいない

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「Cut as close as him」——刃物の比喩。競合するラッパーたちがMethod Manのレベルに届いていないという自信の表明。

See how n***as ain't your friends when there ain't no ends
Don't care who the case offend, don't underrate my pen

金(ends)がなくなると誰も友達じゃないとわかる
誰が気を悪くしようと構わない——俺のペン(ライティング力)を過小評価するな

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「No ends(金がない)」——「ends」はスラングで金銭。成功が傾いたときに去っていく人間関係の現実を一行で切り取る。「Pen(ペン)」はラッパーとしての作詞能力の象徴。

I got what it takes to win, while y'all thinkin' I'm trash
Lovin' the taste of success and this drink in my glass

俺には勝つためのものが揃っている、お前らが俺をゴミだと思っている間も
成功の味と、このグラスの中の一杯を愛している

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批判を受けながらも自信を失わないMethod Manの姿勢。「Drink in my glass」は成功を享受する余裕のある生活の象徴。

Watch 'em cosign that 「ダサい・クオリティが低い・本物じゃない」の意。ヒップホップで最も致命的な批判語。使えないラッパーや偽物の音楽を指す s***, give it a pass
'Til it's gone, quicker than Red, can't get rid of them 「crabs(カニ)」はヒップホップスラングで「足を引っ張る奴・嫉妬して他人を引きずり下ろそうとする人間」。バケツの中のカニが互いに這い上がろうとする他のカニの足を引っ張る行動から来たメタファー

奴らはワック(ダサい)なものを保証して、お咎めなしにする
あっという間に消えていく——Redmanより速く、カニ野郎(足を引っ張る奴ら)は消えない

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「Crabs in a bucket(バケツの中のカニ)」——ヒップホップで広く使われる比喩。這い上がろうとするカニを他のカニが引きずり下ろす様子から「嫉妬・足の引っ張り合い」を表す。コミュニティ内のネガティブなダイナミクスへの批判。

When they're wrong, call the cops, their credibility's shot
It's time they learned what's hot really is and really is not

奴らが間違えたとき、警察を呼べ——信頼性はゼロだ
本当にホット(かっこいい)とはなにか、奴らに学ばせる時が来た

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「Credibility's shot(信頼性がゼロ)」——「shot(撃たれた)」は「完全に破壊された」の比喩。ヒップホップでの「信頼性(credibility)」はキャリアの根幹。

Off-brand n***as, Meth gon' let 'em know off top
Don't get smacked on DVDs, tryna show off グロック(Glock)。オーストリア製の半自動拳銃ブランドで、1990年代以降のアメリカのストリートカルチャーとヒップホップで最も言及頻度の高い拳銃。ここでは「DVDでガンを見せびらかしてイキる」行為を批判 もう一度タップで詳細 →

オフブランド(偽物)野郎どもに、Methが最初からはっきり言ってやる
DVDでグロック見せびらかして調子に乗ると、ぶっ叩かれるぞ

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「Off-brand(オフブランド)」——本物のブランド品ではなくコピー品のこと。転じて「本物じゃないラッパー・偽者」を指す。「DVDs」は2000年代中盤に流行した「Street DVD」文化——ストリートでの暴力や武器をリアルに映したDVDが出回っていた。

★ 敵の妨害にも止まらない

I can't stop 'cause my enemies plot, or 'cause the cops want me
Shackled and locked inside the penalty box

敵が謀略を巡らせても、警察が狙っていても止まれない
手錠をかけられペナルティボックスに閉じ込められたとしても

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「Penalty box(ペナルティボックス)」——アイスホッケーの反則退場席。刑務所・拘留の比喩。Method Manが実際に過去に法的トラブルを抱えていた経験が背景にある。

And while they waitin' for my s*** to flop
They gettin' pimped like hoes, sellin' they ass just to get my spot, come on, man

奴らが俺の曲がコケるのを待っている間
奴らは売春婦みたいにポン引きされ、俺のスポットを奪うために体を売っている

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「Pimped like hoes(売春婦のようにポン引きされる)」——業界に魂を売ったアーティストへの痛烈な比喩。「Spot(スポット)」はヒップホップシーンでの地位・ポジション。

Verse 3 · Method Man

★ 批評家への最後通牒

Ask Miss Hill, half these critics ain't got half this skill
Or been so hungry that they have to steal

Miss Hill(Lauryn Hill)に聞いてみろ——批評家の半分はこのスキルの半分も持っていない
食うために盗まなければならなかったほど腹を空かせたこともない

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Lauryn Hillを直接呼び出す——サンプリングを超えた精神的な連帯宣言。「Hungry(腹を空かせた)」は文字通りの貧困体験と、成功への飢えの両方の意味を持つ。批評家はその経験を持たないという批判。

If I didn't have my deal, and didn't have this 「大衆的な魅力・広い支持」。Gang Starrの1994年アルバム「Hard to Earn」収録の同名曲へのオマージュとも取れる。ヒップホップが商業的に成功するための「大衆受け」を指す
Then I'm back up in that trap, slingin' crack, it's real

もし俺にディール(契約)がなく、このマス・アピール(大衆的人気)もなければ
あのトラップ(麻薬の巣)に戻って、クラックを売っていた——これはリアルな話だ

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「Trap, slingin' crack(トラップでクラックを売る)」——音楽業界に入らなければ麻薬売買に戻っていたという告白。Staten Islandのストリートの現実と、音楽が救済手段だったというキャリアの本質を明かす。

And that ain't worth the time, so search and find
A new nerve and here's three words: stop working mine

それは時間の無駄だから、探して見つけろ
新しい神経を——そしてここに三言:俺の神経を触るな

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「Stop working mine(俺の神経を働かせるな)」——「work someone's nerves(神経を逆なでする)」というイディオムをライムに変形。批評家・メディア・業界人への端的な警告。

It take a lot more to hurt my pride, jerk my vibe
More than media lies, cried when Ol' Dirty Bastard(ODB)のニックネームの一つ。Wu-Tang Clanの個性派MC。2004年11月13日、コカイン中毒による心臓発作でスタジオで倒れ35歳で死去。Method Manがバースで直接追悼を示す唯一の個所 died, n***a

俺のプライドを傷つけたり、ヴァイブを狂わせるには、もっと多くのことが必要だ
メディアの嘘より多くのことが——Dirt Dog(ODB)が死んだときは泣いた、そうだ

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「Dirt Dog died」——Wu-Tang ClanのOl' Dirty Bastard(ODB)は2004年11月13日、35歳で急死。バース中の唯一の感情的な瞬間。メディアの嘘ではなく、本当の仲間の死だけが彼を揺るがすことができるという告白。

The last album, wasn't feelin' my style
This time my foot up in they ass, bet they feelin' me now

前のアルバム、奴らは俺のスタイルを気に入らなかった
今回は奴らの尻に足を突っ込んでやった——今は俺が感じられるだろう

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前作『Tical 0: The Prequel』(2004)への低評価を受けての発言。「Foot up in they ass(尻に足を突っ込む)」は「強烈にぶつかる・圧倒する」の比喩的表現。

'Cause Tical, he put his heart in every track he do
But somehow y'all find someway to give a whack review

なぜならTical(Method Manの別名)はすべてのトラックに心を込めている
なのに何故かお前らはどこかしらワック(ひどい)なレビューをする方法を見つける

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「Tical」——Method Manのソロとしての名義でもある自称。デビューソロアルバム「Tical」(1994)にも由来する。心を込めた作品が不当なレビューを受けるという創作者の本質的な痛みを語る。

It ain't all good, they writin' that I'm Hollywood
Tryna tell you my s*** ain't ghetto and they hardly hood

全然良くない——奴らは俺がハリウッド(浮ついた)と書く
俺の曲がゲットーじゃないと言おうとする——奴らこそフッドじゃない

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「Hollywood(ハリウッド)」——ヒップホップスラングで「実態のない・浮ついた・本物じゃない」の意。「Hood(フッド)」は「ゲットー・地元・本物のストリートを知っている」こと。批評家が本物のフッドの基準でMethod Manを評価できないという逆説。

★ 批評家への最後通牒

Come on, man, until you dudes can write some rhymes
Keep that in mind when you find yourself reciting mines

来い、お前らが自分でライムを書けるようになるまで
俺のライムを引用している自分に気づいたとき、そのことを肝に銘じておけ

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バース最後の決定的な一撃。「You find yourself reciting mines(俺のライムを引用している自分に気づく)」——批評家たちが実はMethod Manのリリックを無意識に口ずさんでいる現実を指摘する。批判する者が実は最大のファンであるというアイロニー。

Outro · Lauryn Hill

They've got so much things to say right now
They've got so much things to say, yeah
Yeah, yeah, yeah

奴らには今、言いたいことがたくさんある
言いたいことがたくさある、ああ

文化的背景

三世代の怒り

Bob Marley → Lauryn Hill → Method Man

「Say」のサンプリング構造は単なる音楽的引用ではない。Bob Marleyのオリジナル「So Much Things to Say」(1977)は「不当な批判と迫害の中で真実を守る」という抵抗の歌。それをLauryn Hillが2002年にアコースティックカバーし——彼女自身も当時業界から「精神的に不安定」と否定されていた。そのLauryn HillのバージョンをさらにMethod Manがサンプリングした2006年の「Say」は、三世代にわたる「業界に裏切られた本物」の怒りを一つの曲に圧縮した構造体となっている。

2006年のヒップホップ地図

クランク全盛期にブーンバップを死守した男

2006年はYoung JeezyのTrap Muzik、Lil JonのクランクサウンドがBillboardを席巻。T.I.やLil Wayneが東南部の覇権を確立していた年代。NYのベテランラッパーたちは「時代遅れ」と切り捨てられる圧力の中にあった。そこにMethod ManはErick Sermonの太いドラムブレイクとワームアップなサンプリング・ループをあえて選び、商業的妥協を一切拒否した。

キーワード解説

楽曲を読み解く重要スラング・用語

lames 本物じゃないラッパー・使えない奴。商業的に成功した偽者への最大の侮辱語
crabs in a bucket バケツのカニが互いの足を引っ張るメタファー。嫉妬によるコミュニティ内の破壊行動
Dirt Dog ODB(Ol' Dirty Bastard)の愛称。2004年35歳で急死したWu-Tangの個性派MC
Tical Method Manのソロ名義。1994年デビューアルバム「Tical」に由来する別名
Hollywood ヒップホップスラングで「浮ついた・本物じゃない・リアルじゃない」の意

制作の裏側

制作秘話 01

「1トラック10万ドルは払わない」宣言

Method Manは『4:21... The Day After』の制作で公言した——「高額ギャランティーを要求するプロデューサーには金を払わない」。RZAとErick Sermonをエグゼクティヴプロデューサーに据え、長年の信頼関係のある同志たちとアルバムを作り上げた。「Say」のErick Sermonプロデュースは、その哲学の体現——EPMDやDef Squadで鍛えた職人技のブーンバップ。

制作秘話 02

「呪われた名盤」のサンプリング

Lauryn Hillの『MTV Unplugged No. 2.0』(2002)は発売当時、メディアから「未完成」「精神的問題の現れ」として酷評を受けた。しかし時間が経つにつれ、業界の偽善を暴いた最も誠実なアルバムの一つとして再評価されている。Method Manがこの「呪われた」音源をあえて引用したのは、Lauryn Hillの経験が自分自身の置かれた状況と完全に共鳴したから——業界に「ダメだ」と言われながら真実を叫び続けた者同士の連帯。

制作秘話 03

サンプルクリアランスの複雑さ

Lauryn Hillのバージョンはボブ・マーリーのオリジナル作品のカバーのため、楽曲著作権(作詞作曲:Bob Marley)と実演権(演奏:Lauryn Hill)の両方をクリアする必要があった。2000年代のサンプリング費用高騰の時代に、この複雑なライセンス処理をやり遂げたことは、曲へのMethod Manとレーベルの強いコミットメントを示している。

評価とその後の影響

指標
記録
意義
4:21... The Day After
Billboard 200 チャートイン
クランク全盛期にブーンバップで商業的存在感を維持した証明
サンプリング構造
Bob Marley → Lauryn Hill → Method Man
三世代の「業界批判」をつないだ稀有な音楽的継承
ODB追悼
バース中に直接言及
Wu-Tang内の絆の深さとストリートコードの誠実な表現
Erick Sermon × Method Man
東海岸クロスコラボの傑作
EPMDとWu-Tangという二つの東海岸レガシーの化学反応
批評家への宣戦布告
「reciting mines」の一行
批評家への最も洗練された反撃——引用してる時点でお前は俺の弟子だという逆説

後世への影響

「Say」が残したもの

「Say」は2006年当時の商業的なヒットには至らなかったが、ヒップホップのベテランが「業界批判」をテーマに作れる最高の作品の一つとして時間とともに評価が高まっている。「成熟したラッパーのリアル」——若い頃の怒りではなく、経験を積んだ上での幻滅と誇りが共存する稀有な楽曲。

  • Kendrick Lamar 「The Heart」シリーズや「Mortal Man」での業界批判と自己問答の姿勢は「Say」の精神的後継。ベテランの誇りを若世代が継承した形。
  • J. Cole 「2014 Forest Hills Drive」以降の批評家無視・インディペンデント精神は、Method Manが「Say」で見せた「お前らにわからなくても俺はやる」という姿勢の直系。
  • Wu-Tang 再評価 2010年代以降のWu-Tang Clanの「Once Upon a Time in Shaolin」などの動向と並行して、「Say」も「商業主義への抵抗」の文脈で再発見されている。
Method Man - 4:21... The Day After

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Say / 4:21... The Day After

Method Man

まとめ

  • Erick Sermon製の無骨なブーンバップ——クランク全盛期にNYハードコアの旗を降ろさなかったMethod Manの音楽的誇り。
  • Bob Marley → Lauryn Hill → Method Manと三世代をつなぐサンプリング——業界に裏切られた本物たちの連帯の系譜。
  • 「Until you dudes can write some rhymes, keep that in mind when you find yourself reciting mines」——批評家への最も洗練された反撃。
  • ODB追悼、ストリートの現実告白、Wu-Tang再建への意志——2006年のMethod Manの現在地をすべて詰め込んだキャリア中期の傑作。

アーティストについて

Method Man

Staten Island, New York · 1992–

Wu-Tang Clanの看板MC、本名Clifford Smith。1994年ソロデビュー作「Tical」でスターダムに。RZA製の暗黒ビートに絡みつく独特のフロウと声質は唯一無二。RedmanとのコンビやHBO「The Wire」出演など音楽・俳優の両面で活躍。