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Passin' Me By 和訳・意味・スラング解説 | The Pharcyde

アーティスト
The Pharcyde
リリース年
1992
プロデューサー
J-Swift
収録アルバム
Bizarre Ride II the Pharcyde
エリア
LA
BPM
90
サンプル元
Quincy Jones "Summer in the City" (1973)

この記事の見どころ

  1. 01 J-Swiftによるスタン・ゲッツのボサノヴァ・サンプリングが生む独自のユーモラスな失恋叙事詩
  2. 02 ギャングスタ・ラップ全盛のLAで「失恋」を主題にしたオルタナティブな黒人男性像の提示
  3. 03 Bootie Brown・Slimkid3・Imani・Fatlipの4人が輪唱形式で語る青春の切なさと滑稽さ
解説

■この曲の意味

「Passin' Me By」は「高嶺の花(Out of your league)」という普遍的なテーマを扱う。どれほど憧れても、相手には届かない——その切なさとユーモアを4人のMCがリレーで語る。ギャングスタ・ラップが支配するLAで、武器ではなく失恋を詩にした革命的な楽曲。

■概要

1992年デビューアルバム「Bizarre Ride II the Pharcyde」収録。J-Swiftがスタン・ゲッツのボサノヴァをサンプリングし制作。Delicious Vinyl所属。4人のMCがそれぞれの「片思い」体験を語るオムニバス構成が特徴。

Verse 1 · Bootie Brown

★ 先生への淡い恋心

Now, in my younger days, I used to sport a shag
When I went to school, I'd carry lunch in a bag
With a apple for my teacher 'cause I knew I'd get a kiss

昔、若かった頃、俺はシャグ(モジャモジャ頭)をしてたんだ
学校に行くときはランチをバッグに詰めて
先生にりんごを持っていったんだ、キスしてもらえると思って

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「shag(シャグ)」は1970〜80年代に流行したモジャモジャのカットスタイル。先生にりんごを贈るのはアメリカの小学生の伝統的なスキンシップ。このノスタルジックな情景から片思いの物語が始まる。

Always got mad when the class was dismissed
But when it was in session, I always had a question
I would raise my hand, to make her stand, come to my desk, and
Help me with my problem, it was never much
Just a trick to smell her scent and try to sneak a touch

授業が終わると悲しくなったもんだ
でも授業中はいつも質問があって
手を挙げて、先生を立たせて、俺の席まで来させた
問題を教えてもらうふりをして、でも本当は大したことじゃなかった
ただ香りを嗅いで、ちょっと触れたかっただけなんだ

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質問のふりをして先生を呼び寄せるという子供らしい計略が微笑ましくコミカルに描かれる。「sneak a touch(こっそり触れる)」という告白が、ギャングスタ・ラップの暴力的な描写とは対照的な無邪気さを示す。

Oh, how I wish I could hold her hand and give her a hug
She was married to the man, he was a thug
His name was Lee, he drove a Z
He'd pick her up from school promptly at three o'clock

ああ、手を握って抱きしめられたらどんなに良いか
でも彼女には旦那がいた、ワルな男で
名前はリー、Zカー(日産フェアレディZ)に乗ってた
毎日きっちり3時に学校に迎えに来るんだ

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「thug(サグ)」の夫、「Z(日産フェアレディZまたはニッサンZ)」という具体的なディテールがLAのリアリティを伝える。完璧なタイミングで迎えに来る夫の存在が片思いの壁として具体化する。

I was on her jock, yes, indeedy, I wrote graffiti on the bus
First, I'd write her name, then carve a plus
With my name last, on the looking glass
I seen her yesterday, but still, I had to let her pass

俺は彼女に夢中だった、そうさ、バスにグラフィティを書いた
まず彼女の名前を書いて、それからプラス記号を刻んで
鏡の上に、最後に俺の名前を
昨日も彼女を見たけど、やっぱり通り過ぎさせるしかなかった

Chorus · Fatlip, Slimkid3 & Whodini sample

★ タイトルの反復

She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on pass—

彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと通り過ぎ——

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Whodiniの「Friends」(1984)のサンプルに乗せてコーラスが流れる。「Passin' me by」は単に通り過ぎるという意味と、人生のチャンスを逃すという二重の意味を持つ。途中で切れる構成が切なさを増幅する。

Verse 2 · Slimkid3

★ Shellyへの秘めた想い

When I dream of fairy tales, I think of me and Shelly
See, she's my type of hype, and I can't stand when brothers tell me
That I should quit chasin' and look for something better
But the smile that she shows makes me a go-getter

おとぎ話を夢見るとき、俺とシェリーのことを思う
彼女は俺好みの最高の女で、諦めて他を探せなんて言う奴らに腹が立つ
でも彼女の笑顔が俺をがんばり屋にさせるんだ

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「go-getter(がんばり屋)」は普通は仕事や野心に使う言葉だが、ここでは恋愛での粘り強さに転用。友人から「諦めろ」と言われても諦めない愚直さが、ユーモラスに描かれる。

I haven't gone as far as asking if I could get with her
I just play love by the ear and hope she gets the picture
I'm shooting for her heart, got my finger on the trigger
She could be my broad, and I could be her—

付き合えないかと聞くところまでいってない
ただ愛をその場の感覚でやって、彼女が気づいてくれるのを待っている
俺は彼女の心を狙ってる、引き金に指をかけて
彼女は俺の彼女になれるのに、俺は彼女の——

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「play love by the ear(耳で愛を演奏する)」は「play it by ear(その場の勘で対応する)」をアレンジした表現。「shooting for her heart(心を狙い撃ちする)」と銃のメタファーを使いながらも、実際には何も行動できない内気な男の矛盾が滑稽に描かれる。

All I could do was stare
Back as kids, we used to kiss when we played Truth Or Dare
Now she's more sophisticated, highly edu-ma-cated
Not at all overrated, I think I need a prayer
To get in her book, and it looks rather dry
I guess a twinkle in her eye is just a twinkle in her eye
Although she's crazy stepping, I'll try and stop the stride
'Cause I won't have no more of this passin' me by

俺にできることは見つめることだけ
子供の頃、ゲームで彼女とキスしたこともあった
今は彼女も洗練されて、かなり教育を受けて
全然大げさじゃない、俺は祈りが必要なくらいだ
彼女の本(心)に入るためには、チャンスはかなり薄い
彼女の目の輝きはただの輝きなんだろうな
彼女がどんなに颯爽と歩いていても、その歩みを止めようとするよ
もうこれ以上、こんな「通り過ぎる」状況には耐えられないから

Chorus

She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me—

彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと通り過ぎ——

Verse 3 · Imani

★ 「より良い男」になることで諦める

Time for me to voice my opinion, can't be pretending she didn't have me
Sprung like a chicken, chasing my tail like a doggie
She was kind of like a star, thinking I was like a fan
Damn, she looked good, downside, she had a man

俺の意見を言う時間だ、彼女が俺を夢中にさせなかったふりはできない
鶏みたいに舞い上がって、犬みたいに自分の尻尾を追いかけてた
彼女はスターみたいで、俺はファンみたいに思われてた
ちくしょう、すごくキレイだった、でも難点は彼氏がいたこと

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「sprung(舞い上がった)」は恋に完全にやられている状態のスラング。「chasing my tail(自分の尻尾を追いかける)」は犬の比喩で、無意味なことを繰り返す様子を表す。スターとファンの関係で片思いの非対称性を示す。

He was a ダサくてつまらない男という俗語。1940年代のスラングで「取るに足らない人物」を意味する , a nincompoop
She told me "Soon your little birdie's gonna fly the coop"
She was a flake like corn, and I was born not to understand
By letting her pass, I'd prove to be a better man

彼氏はダサくて間抜けな男だった
彼女は言った「もうすぐあなたの小鳥は巣立つわよ」
彼女はコーンフレークみたいにばらばらな人だった、俺には理解できなかった
彼女を通り過ぎさせることで、俺はより良い男になれる証明をするんだ

Chorus

She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me—

彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと通り過ぎ——

Verse 4 · Fatlip

★ 最も切ない告白——ラブレターがReturn to Senderで返ってきた

Now there she goes again, the dopest Ethiopian
And now the world around me begins moving in slow motion when–
Ever she happens to walk by, why does the apple of my eye
Overlook and disregard my feelings no matter how much I try?

また彼女が来た、最高に素敵なエチオピア系の彼女
彼女が歩いてくるたびに、俺の周りの世界がスローモーションになる
俺の目の光(apple of my eye)である彼女は、なぜ
どれだけ頑張っても俺の気持ちを無視するんだ?

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「dopest Ethiopian(最高のエチオピア系)」——エチオピアへの言及は黒人コミュニティにおけるアフリカへの誇りと美の象徴。「apple of my eye(目の光)」は最愛の人を指す英語の慣用句。スローモーションの描写が恋の状態を詩的に表現する。

Wait, no, I did not really pursue my little princess with persistence
And I was so low-key that she was unaware of my existence
From a distance, I desired her, secretly admired her
Wired her a letter, to get her, and it went:

待って、俺は本当に積極的に彼女を追いかけなかった
俺があまりにも控えめだったから、彼女は俺の存在すら知らなかった
遠くから彼女を望み、こっそりと憧れた
彼女を振り向かせようとラブレターを送ったんだ、こんな内容で:

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「low-key(低姿勢・控えめ)」は過度に目立たないという意味の現代スラング。「wired her a letter(電報のように手紙を送った)」は昔ながらの恋愛の仕草を指す。積極的に動けなかった後悔が正直に語られる。

★ ラブレターの内容——最も正直な告白

"My dear, my dear, my dear
You do not know me, but I know you very well
Now let me tell you 'bout the feelings I feel for you
When I try or make some sort of attempt, I simp
Damn, I wish I wasn't such a wimp
'Cause then I would let you know that I love you so
And if I was your man, then I would be true
The only lying I would do is in the bed with you"
Then I signed: "Sincerely
The one who loves you dearly
P.S. Love Me Tender"
But the letter came back three days later: "Return to Sender"

「親愛なる、親愛なる、親愛なる
あなたは私のことを知らないけれど、私はあなたをよく知っています
さあ、あなたへの気持ちを伝えましょう
何かしようとすると、俺は情けない
ちくしょう、こんな意気地なしじゃなければよかった
そしたらあなたに、こんなにも愛していると伝えられるのに
あなたの男になれたら、浮気なんてしない
俺がすることになる唯一の嘘は、あなたとベッドの中でだ」
そして署名した:「敬具
心からあなたを愛する者より
追伸:愛してください」
でも手紙は3日後に返ってきた:「差出人に返送」

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「simp(情けない男)」は現代でも使われるスラングで、片思いの相手に過度に尽くす男性を指す。エルヴィス・プレスリーの「Love Me Tender」を引用した追伸が滑稽で切ない。最後の「Return to Sender(差出人返送)」はプレスリーの同名曲のタイトルでもあり、文字通り手紙が返ってきたという結末が楽曲の象徴的な締めくくりとなっている。

Chorus & Outro

She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
She keeps on passin' me by!
But nevertheless, I'll say it again
She keeps passin' me by
She keeps passin' me by

彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
彼女はずっと俺の横を通り過ぎていく!
それでも、もう一度言う
彼女はずっと通り過ぎる
彼女はずっと通り過ぎる

文化的背景

西海岸オルタナティブ・ヒップホップ

G-Funk全盛期のアンチテーゼ

1992年、Dr. DreとSnoop Doggが『The Chronic』でG-Funkの美学を確立した年に、The Pharcydeは銃撃戦でも麻薬売買でもなく「失恋」を主題にしたデビューアルバムをリリースした。Jurassic 5、People Under The Stairs、Blackaliciousらと並び、LAアンダーグラウンドに知的でユーモラスなヒップホップの潮流を作った先駆者。

サンプリングの核心

Stan Getz「Soul Eyes」のボサノヴァ

J-Swiftがプロデュースしたトラックの骨格は、スタン・ゲッツのジャズ・サックスをサンプリングしたメロウなループ。ボサノヴァの柔らかなリズムと切ない歌詞が完璧に同期し、失恋の普遍的な感情を時代を超えたサウンドに包んだ。このサンプリングの選択が楽曲を1990年代に留まらない古典的地位へと押し上げた。

Producer: J-Swift · Album: Bizarre Ride II the Pharcyde (1992) · Label: Delicious Vinyl