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Ms. Jackson — Outkast スラング・英語解説

Ms. Jacksonに出てくるスラングや言い回しの意味を、和訳つきで一つずつ読み解きます。

アーティスト
Outkast
リリース年
2000
プロデューサー
Earthtone III (Outkast & Mr. DJ)
収録アルバム
Stankonia
エリア
Atlanta
BPM
88
サンプル元
Richard Wagner "Treulich geführt (Bridal Chorus)" (1850)

この記事の見どころ

  1. 01 謝罪ソングの定型表現(I'm sorry、never meant to、for real)がそのまま学べる
  2. 02 She be doin'、them boys、done got、ain't invited など、AAVEの文法が具体例で並ぶ
  3. 03 puppy love、up the creek、let bygones be bygones と、日常で使える慣用句も多い

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解説

■この曲で何を学べるか

タイトルの「Ms. Jackson」は、恋人の母親のことです。OutKastのAndré 3000が、その人に向けて「ごめんなさい」と何度も繰り返す、世界でいちばん有名な謝罪の歌かもしれません。

2000年に出たアルバム『Stankonia』からのシングルで、グループにとって初めてBillboard Hot 100で1位になった曲です。

勢いのあるサウンドのうえで歌われるのは、わりと切実な話です。親の立場、子どもの養育、すれ違い。

その言い回しが、英語学習の素材としてとても素直に使えます。

■二人のラッパーが、それぞれの立場で語る

サビを歌うのはAndré 3000。バースは、Big BoiとAndré 3000が分担しています。

Big Boiのバースは、子どもの母親との行き違いを、少し強い口調で語ります。André 3000のバースは、恋人の母親に向けて、丁寧に気持ちを伝えます。

同じ話題を、トーンの違う二人の語りで聴ける。この構造も、曲の聴きどころだと思っています。

ストーリーの流れ(まず曲全体をつかむ)

この曲には、時間が進む物語はありません。かわりに、「謝る人」と「怒っている人」の両方の言い分が、順番に出てきます。

Introは、「baby's mamas' mamas(子どもの母親たちの母親たち)」への呼びかけで始まります。聞き手が誰に向けた曲なのかを、最初に決めてしまう入り方です。

Chorusは、André 3000が歌う謝罪の言葉。「ごめんなさい、Ms. Jackson」を繰り返すだけで、曲の主題がすぐに分かります。

Verse 1はBig Boi。子どもの母親との行き違い、養育費の話、パーティーに呼ばれなかったことへの不満が出てきます。

Bridgeは、André 3000が、二人の関係は子どもの恋ではなく、本気だと伝える場面です。

Verse 2は、André 3000が、恋人の母親に向けて、意図は悪くなかったと説明し、これからのことを約束します。

Verse 3は、再びBig Boiが語ります。嫉妬、裏切り、噂話といった問題を並べて、「過去のことは水に流そう」と締めます。

※本ページは批評・教育目的で、解説に必要な範囲の断片のみを引用しています。全歌詞の対訳は掲載していません。

学ぶ表現(スラング・韻・言葉遊び・AAVE)

ここからは、歌詞の中の表現を1つずつ取り上げる章です。短い用例を上に置き、下で意味と使い方を説明します。

行を引かずに背景だけを説明するunitもあります。▶を押すと、PVの該当箇所から再生できます。

baby's mamas' mamas 所有格が連なる呼びかけ

★ 文法/スラング
André 3000(Intro) 0:14

this one right here goes out to all the baby's mamas' mamas

この曲は、子どもの母親たちの母親たちみんなに捧げる

▶ 曲の最初。所有格のアポストロフィが続く珍しい形です。

baby's mamas' mamas は、所有格が重なった形です。baby's が「赤ちゃんの」、mamas' が「母親たちの」。

baby mama は、子どもの母親を指す口語です。結婚していない相手や、関係が終わった相手を指すときに多く使われます。

その母親の「母親」に曲を捧げる、というのが冒頭の挨拶です。つまり、Ms. Jackson本人に向けた曲だ、と最初に予告しています。

もうひとつは goes out to 〜。ラジオの定番で、「この曲は〜に捧げます」という決まり文句です。

語法 — どう使うか ▼

This one goes out to 〜: This one goes out to everyone who stayed.(この曲は残ってくれた全員に捧げる)。ラジオやライブでの定番です。

mama は、くだけた言い方です。baby mama は、日常会話でも使われるようになりました。

I'm sorry, Ms. Jackson / never meant to 謝罪の型

★ サビ/語法
André 3000(Chorus) 0:31

I'm sorry, Ms. Jackson, ooh, I am for real

ごめんなさい、Ms. Jackson、本気です

▶ 曲の中心になるサビ。謝罪の言い回しがそのまま入っています。

I'm sorry に続いて、I am for real と入ります。for real は、「本気で、本当に」という口語です。

ただ謝るだけでなく、「本気で謝っている」と添える。この一言で、謝罪の軽さを打ち消しています。

もうひとつは Never meant to 〜。mean to 〜 は、「〜するつもりだ」。

過去の否定形にして、「〜するつもりはなかった」という弁明になります。

ここでは主語の I が落ちています。話し言葉では、主語を省略することがよくあります。

語法 — どう使うか ▼

I never meant to + 動詞: I never meant to hurt you.(傷つけるつもりはなかった)。謝罪で頻出の形です。

for real: Are you for real?(本気?)。疑う場面でも、確かめる場面でも使えます。

I apologized a trillion times 誇張の数字

★ 誇張/語彙
André 3000(Chorus) 0:38

▶ サビの3行目。引用は省き、語の使い方だけを解説します。

a trillion times は、「何兆回も」という意味です。もちろん実際には、数えた回数ではありません。

英語では、a million times、a thousand times のように、数字を大きくして「何度も何度も」と言うことが多くあります。

apologize は、「謝る」という意味の動詞です。apologize to 人 for 理由 の形で使います。

ここでは、謝った相手と理由を省略して、回数だけを言い切っています。聞き手に、「それでも許してもらえない」という状況を想像させる書き方です。

語法 — どう使うか ▼

I've told you a million times.(何度も言っただろう)。数字の誇張は、苛立ちを表すときの定番です。

apologize は、I apologize. と単独でも使えます。ビジネスの場では、I apologize for the inconvenience. が決まり文句です。

My baby a drama mama don't like me コピュラ省略と don't

★ AAVE文法
Big Boi(Verse 1) 0:51

My baby a drama mama don't like me

ドラマを起こしてばかりのあの母親は、俺のことが気に入らない

▶ Verse 1の1行目。動詞が2か所、標準英語と違っています。

この行は、動詞が2か所、標準英語と違っています。ひとつは My baby a drama mama。

be動詞(is)が抜けています(my baby('s) mama is a drama mama の省略とも読めます)。

もうひとつは、don't like me の部分で、三人称単数なのに doesn't ではなく don't が使われています。

be動詞の省略(コピュラ省略)と 三人称単数の don't は、AAVE(アフリカ系アメリカ人英語)の規則的な特徴です。

drama mama は、ゴタゴタを持ち込む母親のことです。drama と mama で、韻も踏んでいます。

語法 — どう使うか ▼

She don't like me.: AAVEでは、三人称単数でも don't を使います。方言の規則で、誤用ではありません。

drama は、「演劇」以外に、「もめごと、大げさな騒ぎ」の意味でも日常的に使います。I don't need the drama.(面倒なのはごめんだ)。

She be doin' things / them boys 習慣のbeと、them の指示用法

★ AAVE文法
Big Boi(Verse 1) 0:53

She be doin' things like havin' them boys

彼女はよく、あの連中を連れてきたりする

▶ AAVEの代表的な文法が1行に2つ入っています。

She be doin' things の be は、習慣のbe(habitual be)と呼ばれる用法です。「いつも〜している、よく〜する」という、繰り返される行為を表します。

標準英語には、これに当たる動詞の形がありません。そのため、AAVEは、習慣と一時的な状態を、はっきり使い分けられる体系だと言えます。

もうひとつは them boys。them が、those の代わりに使われています。

「あの男たち」という意味です。

最後の tryna は、trying to の口語短縮形。fight me が続いて、「俺とケンカしようとしている」となります。

語法 — どう使うか ▼

He be late.: 「彼はいつも遅刻する」。He is late.(今、遅れている)との違いが、habitual be の特徴です。

them + 名詞 は、those の代わりに使われます。Look at them shoes.(あの靴を見ろよ)。

a piece of the American pie / take her bite out

★ 慣用句/比喩
Big Boi(Verse 1) 0:56

She need to get a piece of the American pie and take her bite out

彼女はアメリカのパイをひと切れもらって、自分の分をかじればいい

▶ 「アメリカン・パイ」の比喩を使った行です。

a piece of the pie は、「分け前、利益の取り分」という意味の慣用句です。ここでは、American が付いて、アメリカの豊かさの分け前、つまりアメリカン・ドリームの取り分、というニュアンスです。

take her bite out は、パイを食べる動作を続けた比喩です。自分で稼いで、自分で食べろ、と言いたいのでしょう。

文法の面では、She need to が、needs ではなく need になっています。ここでも、三人称単数の -s が落ちています。

比喩を選ぶとき、パイという食べ物の話に統一することで、行の中で一貫した絵になっています。

語法 — どう使うか ▼

a piece of the pie: Everyone wants a piece of the pie.(誰もが分け前を欲しがる)。ビジネスでも使える表現です。

take a bite は「ひとくちかじる」。そこから、take a bite out of 〜(〜を削る)という言い方にも広がります。

a baby and not a pay check 金づるではなく子ども

★ 語彙/語法
Big Boi(Verse 1) 0:58

And let her know her grandchild is a baby and not a pay check

孫は赤ちゃんであって、給料袋じゃないと伝えておけ

▶ Verse 1の中盤。養育費をめぐる言い分です。

a pay check は、給料のこと。「子どもは金づるではない」という意味で、a baby and not a pay check と、対比の形で言い切っています。

続く行の I pay that に注目です。that が、前に並べた項目(学費、保育、医療費)をまとめて指しています。

X and not Y は、「YではなくX」という対比の言い方です。ここでは、基本の接続を使って、わかりやすく主張しています。

養育費について、感情を抑えて、事実を並べている行です。この曲の中でも、いちばん生活の細部が見える部分です。

語法 — どう使うか ▼

X and not Y: I'm a friend, and not a customer.(客ではなく友人だ)。対比を明確にする言い方です。

pay check は、paycheck とつなげて書くこともあります。

rib you up、custody war、my lawyers stay down

★ スラング/法律語
Big Boi(Verse 1) 1:08

She wanna rib you up to start a custody war, my lawyers stay down

彼女はお前をそそのかして、親権争いを始めさせたがる。こっちの弁護士はいつでも準備できてる

▶ 法律の語彙が出てくる行です。

rib 〜 up は、「〜をけしかける、焚きつける」という意味のスラングです。ここでは、子どもの母親の母親が、娘をそそのかしている、と言っています。

custody war は、親権争いのこと。custody は、「親権、保護」を表す法律用語です。

stay down は、「待機している、準備ができている、味方でい続ける」というスラングの用法です。ここでは、弁護士が控えている、という意味合いです。

wanna は wants to の短縮形。三人称なのに wanna で、ここでも -s は使われていません。

語法 — どう使うか ▼

child custody は、子どもの親権。She won custody of the kids.(彼女が子どもの親権を得た)。

ニュースや映画で頻出です。

stay down は、down(味方、乗り気)の延長で、I'm down.(俺はやる)という言い方もあります。

fish fries and cookouts、I ain't invited 黒人コミュニティの集まり

★ 文化/AAVE
Big Boi(Verse 1) 1:14

She had fish fries and cookouts for my child's birthday, I ain't invited

俺の子の誕生日に、フィッシュフライもクックアウトもやったのに、俺は呼ばれてない

▶ アメリカの食文化と、ain'tの使い方が分かる行です。

fish fry は、魚のフライを揚げて、みんなで食べる集まりです。cookout は、屋外でバーベキューをするパーティー。

どちらも、アメリカ南部やアフリカ系アメリカ人のコミュニティで、定番の集まりです。

誕生日にこれだけ集まりを開いているのに、自分は呼ばれていない、という不満が、食べ物の名前を並べるだけで伝わります。

I ain't invited の ain't は、am not、isn't、aren't などを全部まかなえる万能の否定形です。ここでは、I'm not invited の意味です。

invited は受け身の過去分詞。I ain't invited は、受け身で、「招かれていない」という状態を表しています。

語法 — どう使うか ▼

ain't: I ain't got time.(時間がない)。口語やAAVEで頻出で、標準英語では避けられる形です。

cookout は、アメリカの夏の風物詩。barbecue と近い意味ですが、より気軽な集まりを指します。

utmost respect when I fall through 立ち寄る、のスラング

★ 句動詞
Big Boi(Verse 1) 1:16

Despite it I show her the utmost respect when I fall through

それでも、俺が顔を出すときには、彼女に最大限の敬意を払ってる

▶ Verse 1の終わり近く。硬い語と口語が混ざる行です。

the utmost respect は、「最大限の敬意」という、かなり硬い言い方です。utmost は、「最高の、極限の」という意味の形容詞です。

それなのに、後半は、fall through。この fall through は、口語では「ひょっこり立ち寄る」という意味でも使われます。

硬い語と、くだけた句動詞が、1行の中で隣り合っています。ラップの語りが、あらたまった口調と、日常の口調を行き来する例です。

Despite it は、「それにもかかわらず」。前の行で並べた不満を受けて、それでも礼儀を守っていると、立場をはっきりさせています。

語法 — どう使うか ▼

fall through(立ち寄る): I'll fall through later.(あとで顔を出すよ)。ただし、The plan fell through.(計画が流れた)は、全く別の意味です。

show someone respect は、「敬意を示す」。show と respect の組み合わせで、よく使われます。

Me and your daughter got a special thang goin' on

★ 口語/発音
André 3000(Bridge) 2:05

Me and your daughter got a special thang goin' on

俺とあなたの娘のあいだには、特別なものが進行中なんです

▶ Bridgeの1行目。主語の形と、thangの綴りに注目です。

主語が Me and your daughter になっています。標準の文法では My daughter and I のように I を使いますが、口語では Me and 〜 で始まる文がごく普通に使われます。

thang は、thing を、南部の発音に寄せた綴りです。OutKastはアトランタ出身で、南部の発音を、あえて綴りに残して出しています。

got は、have got の have が落ちたもの。ここでは、「持っている」という意味で使われています。

goin' on は、「進行中の、起きている」。Something is going on. と同じ形が、動詞の -ing だけになっています。

語法 — どう使うか ▼

Me and my friend 〜 は、口語でごく普通に使われます。ただし、書き言葉や面接では、My friend and I が好まれます。

special thang は、ヒップホップやソウルで、「大切な関係」を指す言い方として、よく使われます。

You say it's puppy love, we say it's full-grown

★ 慣用句/対比
André 3000(Bridge) 2:10

You say it's puppy love, we say it's full-grown

あなたは子犬の恋だと言う、俺たちは大人の恋だと言う

▶ 対比で、二人の関係の捉え方を言い表した行です。

puppy love は、若い頃の、一時的な恋のこと。子犬のように、すぐに熱くなって、すぐ冷める、というニュアンスを含みます。

それに対して full-grown は、「成熟した、一人前の」。puppy(子犬)と対比させる語として選ばれています。

You say 〜, we say 〜 という、見解の対比の形は、立場の違う二人の言い分を、整理して並べるのに便利です。

puppy love のような、動物のたとえを使った慣用句は、英語に多くあります。puppy dog eyes(すがるような目)なども、同じ系統の表現です。

語法 — どう使うか ▼

puppy love: It was just puppy love.(ただの幼い恋だった)。大人が昔の恋を振り返るときによく使います。

You say X, I say Y は、意見が分かれる状況の言い方。You say tomato, I say tomahto. という有名な歌詞も、同じ型です。

plan a pretty picnic but you can't predict the weather

★ 格言/頭韻
André 3000(Bridge) 2:10

You can plan a pretty picnic but you can't predict the weather

きれいなピクニックの計画は立てられても、天気は予測できない

▶ 格言のように聞こえる、この曲屈指の1行です。

この1行は、頭韻(alliteration)の見本です。plan、pretty、picnic、predict と、p音で始まる語が4つ並んでいます。

意味は、「計画を立てることはできても、結果を完全に決めることはできない」という格言のような内容です。ここでは、二人の関係の先行きを、天気にたとえています。

You can 〜 but you can't 〜 は、前半で可能なことを認め、後半で限界を示す対比の形です。

歌詞の中で、いちばん引用されやすい行のひとつです。音の気持ちよさと、意味の分かりやすさが両立しています。

語法 — どう使うか ▼

You can X, but you can't Y: You can ask, but you can't expect an answer.(聞くのは自由だが、答えは期待できない)。

predict the weather は、天気予報の定番の言い方。forecast も同じ意味で使えます。

Ten times out of nine、muzzle、decline 誇張と皮肉

★ 誇張/語彙
André 3000(Verse 2) 2:26

Ten times out of nine, now if I'm lyin', find

10回中9回、もし嘘をついてたら

▶ Verse 2の冒頭。数字の言い間違いに見える言い方です。

Ten times out of nine は、数として成り立たない言い方です。9回中10回、つまり100%を超えています。

「絶対に」を、あえて計算を狂わせて誇張した遊びです。

muzzle は、犬などの口にはめる口輪。自分が嘘をついているなら、口を封じてくれていい、という誇張です。

decline は、「断る、辞退する」。ここでは、そのときは弁解しない、という意味です。

if I'm lyin', find と、lyin' と find で、音も合わせています。ここでも、内韻の遊びが入っています。

語法 — どう使うか ▼

Ten times out of ten は、「100%、間違いなく」の定番の言い方です。ここは、それを崩した遊びです。

decline は、招待や申し出を断るときの丁寧な動詞。I must decline.(辞退せざるを得ません)。

crib with the Goodyear swing 固有名詞で作る夢の風景

★ 固有名詞/風景
André 3000(Verse 2) 2:33

Together dream 'bout that crib with the Goodyear swing

二人でグッドイヤーのタイヤのブランコがある家を夢見る

▶ 二人が思い描く未来の絵です。

Goodyear は、アメリカのタイヤメーカーです。Goodyear swing は、古いタイヤを、木から吊るして作るブランコのこと。

ブランド名ひとつで、アメリカの田舎の庭にある、素朴な風景が浮かびます。高級品ではなく、手作りのブランコで、「ささやかな幸せ」を描いているのがポイントです。

crib は、「家」のスラング。dream 'bout の 'bout は、about の頭が落ちた形です。

I hope we feel like this forever と、forever が、次の行で繰り返される、言葉遊びへとつながっていきます。

語法 — どう使うか ▼

dream about 〜: I dream about a quiet house.(静かな家を夢見ている)。dream of とも言います。

tire swing は、アメリカ英語での、タイヤのブランコの呼び名です。

Forever never seems that long until you're grown 時間の感覚

★ 反復/語彙
André 3000(Verse 2) 2:35

Forever never seems that long until you're grown

大人になるまで、「永遠」はそんなに長く感じない

▶ 「永遠」の意味を逆から語る、不思議な行です。

Forever never seems that long は、「永遠は、それほど長く感じられない」。一見矛盾している、forever と long の組み合わせです。

前の行では、Forever, forever ever? Forever ever? と、同じ語を何度も言い直しています。永遠を言うほど、実感がなくなっていく、という感覚の表現です。

until you're grown は、「大人になるまで」。若いうちは、永遠が遠く感じられず、「ずっと続く」と簡単に口にできる、という意味合いです。

that long の that は、「それほど」という程度の副詞。It's not that bad.(そんなに悪くない)のような使い方と同じです。

語法 — どう使うか ▼

not that + 形容詞: It's not that expensive.(そんなに高くない)。程度を弱めて言う口語の定番です。

grown は、grow の過去分詞ですが、grown man、grown-up のように、「大人の」という形容詞にもなります。

Become a magician to abracadabra all the sadder thoughts

★ 言葉遊び/語法
André 3000(Verse 2) 2:47

Become a magician to abracadabra all the sadder

魔法使いになって、悲しい考えをアブラカダブラで消せたらいいのに

▶ 名詞を動詞に変えた、遊びの1行です。

abracadabra は、魔法の呪文です。本来は名詞や間投詞ですが、ここでは to abracadabra と、動詞として使われています。

「魔法で消す」という意味を、動詞1語に圧縮した言い方です。名詞を動詞にする使い方は、英語ではよくある変化で、ラップでもしばしば使われます。

後半の thoughts of me, thoughts of she, thoughts of he は、she と he が、前置詞の後ろで主格のまま使われています。標準では her、him ですが、韻と語感を優先した形です。

魔法の呪文という、少し子どもっぽい語彙と、複雑な人間関係という内容の取り合わせが、この曲らしいところです。

語法 — どう使うか ▼

名詞の動詞化: Google it.(ググれ)、Let's coffee sometime.(今度お茶しよう)。名詞が動詞として使われる例は、日常でも多くあります。

thoughts of 〜 は、「〜についての考え」。thoughts about 〜 とほぼ同じ意味です。

I pray so much about it, need some knee pads

★ ユーモア/語彙
André 3000(Verse 2) 2:57

▶ 引用は省き、語の使い方だけを解説します。

knee pads は、膝を保護するパッド。スポーツや作業で使います。

祈るときに膝をつくので、「祈りすぎて膝あてが必要だ」という冗談になっています。

ここでの pray は、誰かの許しを願う気持ちの表れです。真剣な気持ちを、軽い言い回しで包む語り方が、André 3000の特徴です。

need some knee pads は、主語と I が落ちています。口語では、主語を省略して、短く言い切ることがよくあります。

so much は、「そんなに、とても」。pray so much で、頻度の多さを強調しています。

語法 — どう使うか ▼

pray about 〜: I pray about it every night.(毎晩そのことを祈る)。pray for 〜 は「〜を願って祈る」。

so much は、I like it so much.(とても気に入っている)のように、程度を強める定番の言い方です。

It happened for a reason, one can't be mad 総称のone

★ 文法/語法
André 3000(Verse 2) 2:57

It happened for a reason, one can't be mad

それには理由があって起きたことだ、怒るわけにはいかない

▶ 硬めの総称主語が、口語の中に混ざる行です。

one can't be mad の one は、「人は、誰でも」という意味の総称的な主語です。you よりも、改まった響きになります。

口語中心のラップの中に、この硬めの one が混ざることで、悟ったような、落ち着いた口調になっています。

for a reason は、「理由があって」という言い方で、Everything happens for a reason.(すべてのことには理由がある)という決まり文句でも有名です。

be mad は、アメリカ英語で「怒っている」の意味。be angry よりも、日常的でくだけた言い方です。

語法 — どう使うか ▼

One should 〜: One should always be polite.(人は常に礼儀正しくあるべきだ)。書き言葉やスピーチで使われる、総称の主語です。

be mad at 人: Are you mad at me?(怒ってる?)。アメリカでは、angry よりよく使われます。

I will be present on the first day of school and graduation

★ 約束/語法
André 3000(Verse 2) 3:03

And yes, I will be present on the first day of school and graduation

そう、学校の初日にも、卒業式にも、俺はちゃんと出席する

▶ 謝罪のあとに、具体的な約束が出てくる行です。

be present は、「出席している、その場にいる」という意味です。present の発音は、形容詞のときはアクセントが前、動詞のときは後ろにあります。

ここでは、父親としての約束が、具体的な場面とセットで語られています。学校の初日と、卒業式。

人生の節目の、2つの場面だけを選んでいます。

yes と、わざわざ付け加えているのは、前の行で並べた言い訳や理屈を、いったん打ち切るための合図です。ここから先は、決意の言葉になります。

抽象的な愛情の話から、予定表に書ける約束へ。この具体性が、曲全体の信頼感につながっています。

語法 — どう使うか ▼

be present at 〜: All members must be present at the meeting.(全員が会議に出席しなければならない)。フォーマルな言い方です。

graduation は、卒業のこと。卒業式そのものを指すときにも使われます。

sent up the creek / without a paddle 窮地の慣用句

★ 慣用句/AAVE
Big Boi(Verse 3) 3:30

your little nosy-ass homegirls done got your ass sent up the creek, G

おせっかいな女友達のせいで、あんたは窮地に立たされた

▶ Verse 3の頭。慣用句と、AAVEの完了の done に注目です。

up the creek (without a paddle) は、「窮地に陥って、どうしようもない」という慣用句です。パドルなしで、川をさかのぼる、という光景から来ています。

done got は、AAVEの完了を表す done の用法。have gotten の意味ですが、「もうすでに起こって、取り返しがつかない」という強調を含みます。

nosy-ass は、-ass を形容詞に付けて強めるスラングです。ここでは、「ひどくおせっかいな」という意味になります。

最後の ride this thing on out は、「最後まで乗りきる」。on out のように、副詞を重ねて、終わりまでやり遂げる感じを強めています。

語法 — どう使うか ▼

up the creek: If the car breaks down, we're up the creek.(車が壊れたら、お手上げだ)。日常でよく使う慣用句です。

done + 過去分詞: He done told you.(もう言っただろう)。AAVEの完了標識で、いらだちや断定を強めます。

in the year 2G、they be the same thing 数字遊びと習慣のbe

★ 言葉遊び/AAVE
Big Boi(Verse 3) 3:43

in the year 2G, they be the same thing

2Gの年(2000年)には、どれも同じことになる

▶ 言葉遊びと、習慣のbeがもう一度出てくる場面です。

the year 2G は、数字遊びです。G は、grand(1,000)の略。

2G で2,000、つまり「2000年」を指しています。

この曲が出たのが2000年なので、「今年」という意味でもあります。お金の単位として覚えた G を、年の表記に転用したわけです。

they be the same thing は、be が習慣を表す用法。ここでは、「嫉妬も浮気も裏切りも、結局いつも同じものになる」という意味合いです。

その前の jealousy, infidelity, envy, cheating は、名詞を4つ並べた、列挙です。infidelity(不貞)という、硬い語彙が混ざっているところにも注目です。

語法 — どう使うか ▼

G: It cost me five Gs.(5,000ドルかかった)。grand の略として、ラップでも日常会話でもよく使います。

infidelity(不貞)は、新聞やドラマで使われる硬い語。cheating(浮気)が、口語です。

Let bygones be bygones 水に流す、の決まり文句

★ 慣用句/結び
Big Boi(Verse 3) 3:44

Let bygones be bygones and you can go on and get the hell on

過去は水に流して、さあ先に進めばいい

▶ Verse 3の締めの1行。曲を終わらせる決まり文句です。

Let bygones be bygones は、「過ぎたことは水に流そう」という慣用句です。bygones は、「過ぎ去ったこと」を意味する名詞で、この慣用句の中でしか、ほとんど使われません。

let 〜 be 〜 は、「〜を〜のままにしておく」という形。Let it be. と同じ構造で、過去を過去のままにしておく、という意味になります。

後半の get the hell on は、「さっさと先へ進め、とっとと行け」という、強い言い回しです。the hell は、強調として動詞の間に挟まれています。

一行の前半で穏やかな慣用句、後半で荒っぽい言い回し。Big Boiのバースが、そのまま曲の最後の言い分になっています。

語法 — どう使うか ▼

Let bygones be bygones.: 仲直りの場面で使う、少し古風な決まり文句です。

get the hell out(さっさと出ていけ)のように、the hell を挟むと、苛立ちが強調されます。

文化的背景

曲の背景

恋人の母親へ向けた、実在の謝罪

「Ms. Jackson」は、André 3000が、シンガーのErykah Baduと、その母親に向けて書いた曲だとされています。二人の間には子どもがいます。

Baduの母親にあたる「Ms. Jackson」は、この曲をポジティブに受け取り、その名前のナンバープレートを買ったと伝えられています。

個人的な話でありながら、誰でも身に覚えのある「家族への謝罪」に広がっているのが、この曲が長く愛されている理由のひとつです。

アトランタという土地

南部の発音と語彙が、そのまま歌詞に残っている

OutKastは、アメリカ南部のアトランタ出身のデュオです。歌詞には、thang、'bout、cookout、fish fryなど、南部の発音と文化がそのまま残っています。

ニューヨークやロサンゼルスのラップとは、言葉の雰囲気がだいぶ違います。聴き比べてみると、同じ英語でも、地域でこんなに違うのかと感じられます。

キーワード早見表

この曲で学んだ表現の整理

I'm sorry / never meant to 謝罪の定型。meant to=〜するつもりだった
for real 本気で、本当に
habitual be 「いつも〜している」を表すAAVEの be(She be doin' 〜)
don't / ain't の用法 三人称の don't、am/is/are not をまとめて表す ain't
them + 名詞 those の代わり(them boys)
done + 過去分詞 AAVEの完了標識。取り返しがつかない強調
puppy love 若い頃の一時的な恋、幼い恋
up the creek 窮地に陥って、どうしようもない
let bygones be bygones 過去は水に流す
G (grand) 1,000ドルの略。2G=2,000ドル、年号の言葉遊びにも使われた

制作の裏側

「Ms. Jackson」は、2000年10月24日に、アルバム『Stankonia』の2枚目のシングルとして発売されました。

制作は、OutKast自身のプロダクションチームのEarthtone IIIとして知られています。

サビをAndré 3000が歌い、バースをBig BoiとAndré 3000が分担するという、デュオならではの分け方です。

本ページでは、制作の細かい経緯は、確認できた範囲にとどめています。

評価とその後

「Ms. Jackson」は、OutKastにとって初めてのBillboard Hot 100の1位になった曲です。英国のシングルチャートでも、2位に入っています。

第44回グラミー賞(2002年)で、最優秀ラップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞しました。

まとめ

  • 「Ms. Jackson」は、謝罪の英語(I'm sorry、never meant to、for real、apologize)が、そのまま学べる曲です。
  • She be doin'(習慣のbe)、them boys、done got、ain'tなど、AAVEの規則的な文法が、短い行の中に具体的に出てきます。
  • puppy love、up the creek、let bygones be bygonesなど、日常でも使える慣用句がたくさん登場します。
  • fish fry、cookout、Goodyear swingなど、アメリカ南部の生活の風景が、固有名詞で描かれています。
  • thang、'bout、tryna、wannaなど、発音をそのまま綴りにした形が、会話のリズムを作っています。

アーティストについて

Outkast

Atlanta, Georgia · 1992–2014

Andre 3000(Andre Benjamin)とBig Boi(Antwan Patton)によるアトランタ出身のデュオ。1994年デビュー後、Dirty Southの旗手として南部HHをメインストリームに押し上げた。「Ms. Jackson」(全米1位)「Hey Ya!」など多数のヒットを生み、第46回Grammyで最優秀アルバム賞を受賞したヒップホップ史上最重要グループのひとつ。

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