この記事の見どころ
Eric B.&ラキムの解散から5年。ソロアーティストとしての復帰を満を持して宣言した楽曲。Pete Rockのソウルフルなビートに乗せ、ラキムは「俺がいなくなっていた間もヒップホップは俺のもの、そして今戻ってきた」と3ヴァースで圧倒的な存在感を示す。単なるカムバック曲ではなく、スキル・哲学・宇宙観まで凝縮した「MCの王の即位宣言」。
1997年11月4日、ソロデビューアルバム『The 18th Letter』(Universal Records)のリードシングルとしてリリース。プロデュースはPete Rock——ジャズ巨匠Cannonball Adderleyの「Autumn Leaves」(ライブ音源、1958年)からベースラインとホーンをサンプリングし、The Main Ingredient・James Brown・Kool & The Gangのドラムブレイクを組み合わせた重厚かつソウルフルなBPM 94のビートを構築した。
1990年代後半、ビギーとトゥパックの相次ぐ死でヒップホップシーンは深刻な傷を負っていた。東西抗争の終焉後、メインストリームは商業化が加速する一方で、「本物のMCスキル」を重視する声は根強かった。そこに「史上最も偉大なMC」と称されるラキムが現れ、「Guess Who's Back(誰が戻ってきたと思う?)」と問いかけた——その答えは自明だった。
★ 王の帰還の開幕
Yeah, yeah
"Once again, back is the incredible"
ああ、そうだ
「また帰ってきた、あの信じられないヤツが」
★ スタイルの返還宣言
It's the return of the Wild Style fashionist
Smashin' hits, make it hard to adapt to this
ワイルドスタイルの流行者の帰還だ
ヒットを叩き潰し、これに適応するのを難しくさせる
Put pizzazz and jazz in this, and cash in this
Mastered this, flash this and make 'em clap to this
これに活気とジャズを注入し、金を生み出す
これを極め、誇示し、拍手させる
DJ's throw on cuts and obey the crowd
Just pump the volume up and play it loud
DJよ、カットをかけてクラウドに従え
ただボリュームを上げて大音量でかけろ
Hip-hop's embedded, before I said I wouldn't let it
But me and the microphone is still magnetic
ヒップホップは俺に染み込んでいる、かつては手放すと言ったが
しかし俺とマイクはまだ磁石のように引き合っている
Straight off the top, I knew I'd be forced to rock
Dance floors just stop, the spot's scorchin' hot
最初から分かっていた、俺はロックするしかないと
ダンスフロアが止まる、その場所は灼熱だ
Hopin' I'll open Rakim Allah seminars
Massage at the bar, smokin' ten dollar cigars
ラキム・アッラーのセミナーを開くことを望む
バーでマッサージを受け、10ドルの葉巻を吸いながら
While I admire MIDI, with more vision than TV's
I find it easy catchin' diabetes from fly sweeties
MIDIを堪能しながら、テレビより遠くを見ている
上品な美女たちから糖尿病になりそうなくらい甘い経験をすることは簡単だ
★ ヴァース1の締め
Sit back and wait to hear a slammin' track
Rockin' jams, by popular demand, I'm back
腰を下ろしてスラミングなトラックを聴くのを待て
ジャムをロックする、大衆の要求に応えて俺は帰ってきた
★ NYの支配者宣言
I control the crowd, you know Ra hold it down
When it drop, you know it's jiggy when you hear the sound
俺がクラウドをコントロールする、ラーが抑えてるのは知ってるだろ
それが落ちた瞬間、音を聴けばクールだと分かる
From town to town, until it's world-renowned
And I rock New York City all year around
町から町へ、世界的に有名になるまで
そして俺は一年中ニューヨーク・シティをロックする
★ 哲学的なフロウ描写
It's on! So you can swerve when it's heard in clubs
Thought patterns displayed on Persian rugs
始まった!クラブで流れたらステップを踏め
思考のパターンがペルシャ絨毯に描かれる
Equations are drawn up in paisley form
Mic, it stay warm, my flow is Evian
方程式がペイズリー模様の形で描かれる
マイクは温かい、俺のフローはエビアン(純粋)だ
Deep as a Nautilus, you stay dipped in Ra's style
From the shores of Long Island to Panama Canal
ノーチラス号(海底2万マイルの潜水艦)のように深い、お前はラーのスタイルに浸かっている
ロングアイランドの岸辺からパナマ運河まで
Intellect pitches new trends like a clothes designer
I'm in effect, quicker than medicines in China
知性が服のデザイナーのように新しいトレンドを打ち出す
俺は機能している、中国の薬よりも素早く
Split the mic open, fill it with somethin' potent to go in
And take a toke then mental planes start floatin'
マイクを割り開き、強力な何かを詰め込む
一吸いすれば精神の飛行機が浮き始める
Hot science is smokin', altitudes cause chokin'
Product is hypnotic, you're soakin' and still smokin'
熱い知識が燃え上がり、高度が高すぎて息が詰まる
産物は催眠的、お前は浸かりながらもまだ燃えている
Showin' better scenes than grams of amphetamines
Plans to scheme, means I'll forever fiend
アンフェタミン(覚醒剤)のグラムより鮮明なシーンを見せてやる
企てる計画がある、つまり俺は永遠に渇望し続ける
★ ヴァース2のクライマックス
Long as the mic is loud and the volume's pumpin'
I'mma move crowds to two-thousand and somethin'
マイクが大きく、ボリュームが高い限り
俺は2000年代まで群衆を動かし続ける
★ 霊的なリリックの力
My rhymes and lyrics find spirits like a seance
Since fat crayons, I write and display chaos
俺のライムとリリックは交霊会のように霊魂を探し出す
太いクレヨンの頃から、俺は書き、カオスを展示してきた
My plan is damage, the diagram to where the jam is
I take advantage until the crowd go bananas
俺の計画はダメージを与えること、ジャムがある場所への設計図
クラウドが熱狂するまで俺は優位に立つ
What a rush! I hear cuts and I lust to touch
Microphones be clutched by the illustrious
なんという興奮だ!カットが聞こえ、俺はマイクに触れたくてたまらない
マイクは高名な者(ラキム)に握られるべきものだ
Word spread, I inherited many ways to say the unsaid
Born with three 7's in my head
言葉が広まる、俺は言葉にできないことを言う多くの方法を受け継いだ
頭の中に3つの7を持って生まれた
In time, no one can seem to blow your mind as far as this
To find, you'll need philosophers and anthropologists
時が経っても、誰もここまでお前の心を吹き飛ばせない
これを理解するには、哲学者と人類学者が必要だ
Astrologists, professors from your smartest colleges
With knowledge of scholarships, when Ra be droppin' this
占星術師、最高の大学の教授たち
奨学金の知識を持つ者たちが、ラーがこれを落とす時に必要だ
★ 最終ライン——カイロの埋葬
Some of the things that I know will be in your next bible
When I die, go bury me and my notebook in Cairo
俺が知ることの一部は次のバイブルに載るだろう
俺が死んだら、カイロに俺とノートを埋葬してくれ
With the great God from Egypt, manifest, was writin' rhymes
Align with the stars, I come back to bless the mic
エジプトの偉大な神と共に、顕現し、ライムを書いていた
星々と並んで、俺はマイクを祝福するために帰ってきた
★ Microphone Fiend の宣言
Word up, Rakim Allah the Microphone Fiend is back, yanahmean? (Rakim Allah!)
Til' death do us 'part, it's on
Rhyme animal, the incredible
マジで、Rakim Allah——マイクロフォン・フィーンドが帰ってきた、わかるか?(ラキム・アラー!)
死が俺たちを分かつまで、それは続く
Eric B. & Rakim 解散(1992年)
1987年「Paid in Full」でデビューしたEric B. & Rakimは、わずか4枚のアルバムで1980〜90年代初頭のヒップホップを完全に変革した。Rakimは「史上最も偉大なMC」として神格化されながら、1992年の解散後5年間ほぼ沈黙を保った。その間、NasのIllmatic(1994)・Biggie・Jay-Zら次世代が台頭し、「ラキムの時代は終わった」とも囁かれた。「Guess Who's Back」はその全ての憶測に対する答えだった。
Pete Rock × Rakim——黄金期の頂点同士の邂逅
Pete Rockは1990年代前半に「T.R.O.Y.」「They Reminisce Over You」でソウルフルなジャズラップの頂点を極めたプロデューサー。RakimはPete Rockがかねてより最大の敬意を捧げてきたMCだった。「Rakim Allah Seminars」「Guess Who's Back」でのコラボレーションは、当時のヒップホップシーンにとって「実現するとは思っていなかったドリームマッチ」の現実化であり、ファンから絶大な歓迎を受けた。
スラング・キーワード早見表
制作秘話 01
RakimはEric B.との活動を通じてDef Jam Recordsに在籍していたが、ソロキャリアに向けてUniversal Recordsと新たに契約を結んだ。この移籍は単なるレーベルチェンジではなく、自身のクリエイティブな方向性を完全にコントロールするための戦略的決断だった。「The 18th Letter」というアルバムタイトルは、アルファベットの18番目の文字「R」——Rakimの頭文字であり、「知識(Knowledge)」を意味するFive-Percent Nationの概念も反映している。
制作秘話 02
Pete Rockが選んだサンプル素材は、1958年のCannonball Adderleyの名ライブ「Live at Shelly's Manne-Hole」から「Autumn Leaves」のベースラインとホーン。「枯れ葉」という秋のメランコリーを帯びた旋律が、「王の帰還」という勝利の宣言と組み合わさることで、単なる浮かれた「バック!」ではなく、深みと重みを持つ復帰として機能する。James Brown「Funky Drummer」・The Main Ingredient・Kool & The Gangのドラムブレイクも加え、Pete Rock流の折り重なる複雑なリズム構造を形成した。
制作秘話 03
ソロキャリア初アルバムに当たり、Rakimはプロデューサーの人選に最大の注意を払った。Pete Rock以外にも、DJ Premier、Clark Kent、DJ Quikら当時のヒップホップ界を代表するプロデューサーが参加。「Guess Who's Back」がリードシングルとして選ばれたのは、Pete Rockのビートがラキムの「帰還の威厳」を最も体現していたから——とラキムは後のインタビューで語っている。
後世への影響
「Guess Who's Back」はラキムが単なる「懐かしいレジェンド」ではなく「今もシーンの最高峰に立つMC」であることを証明した。Nasが「I Am...」(1999)・Jay-Zが「Vol. 3...」(1999)と次作を急いだ背景には、ラキムの帰還がシーンに与えたプレッシャーがあったと言われる。
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The 18th Letter
Rakim
Rakim
Wyandanch, Long Island, New York · 1985–
本名William Griffin Jr.。Eric B.とのデュオ「Eric B. & Rakim」として1987年「Paid in Full」でデビューし、複雑な多音節ライムと内省的フロウでMCイズムを根本から変革した。「史上最も偉大なラッパー」に繰り返し選出され、Nas・Jay-Z・Eminemらほぼ全ての後続MCが影響を受けたことを公言している。Five-Percent Nationの思想とアフロセントリズムを哲学的リリックに昇華させ、1997年ソロデビュー作「The 18th Letter」で「王の帰還」を宣言した。